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一人じゃないよ
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ここで、アンドレさんが、
「どう見ても、あのドラゴン、アデル王女様しか見ていません。本当に、なにか言いたいことがあるような目です。アデル王女様に危害を加えるとは思えません」
と、ブリジットさんに言った。
ブリジットさんが、覚悟を決めたように、
「わかりました! では、アデル王女様、ほんの少しずつ、ドラゴンに近づいてみてください。危なそうなら、すぐに止めますので」
と、言ったので、私はうなずいた。
すると、ユーリが、
「ドラゴンが、アデルに危害を加えそうになった瞬間、ドラゴンを凍らせるけど、いい?」
と、不機嫌そうに言う。
「ダメにきまってるでしょ? ドラゴンは、伝説の生きものだよ?!」
私があわてて止めるけど、ユーリは、
「関係ないね。アデルに害を及ぼすものは、なんだって敵だから」
と、鋭い目でドラゴンをにらみながら言う。
はあー。ドラゴンよりも、断然ユーリのほうが、危なそうに見えるよ?
やっぱり、ホームシックで情緒不安定だから、余計に心配性になってるのかな?
仕方ない…。恥ずかしいけど、ユーリを安心させなきゃね。
私は、ユーリの顔をじっと見て、
「ともかく、大丈夫だから。絶対、無理はしない。心配しないで。ね、ユーリ」
そう言うと、覚悟を決めて、がばっとユーリのおなかのあたりに抱き着いた。
力いっぱい、ぎゅーっとする。
「ユーリ。寂しくて、国に帰りたいのかもしれないけど、一人じゃないよ。私もいるし、みんなもいる。大丈夫だよ」
そう言って、また、ぎゅーっとした。
ユーリは、美しい澄んだブルーの目を見開き、茫然としている。
「…なんですか? そのタックル…」
と、つぶやく、ジリムさんの声。
いやいや、タックルではなく、ハグですよ?!
「アディーが抱き着いた時はびっくりしたけど、理由がね…。うん、笑える」
と、クスクス笑いだすデュラン王子。
「アデルちゃん…、色々間違ってる気がするけど、…そのままでいてね」
とは、イーリンさん。
「こら、ずるいぞ、アデル! 俺もいますから、ユーリさん!」
と、言いながら、ユーリの背後から抱き着き、すぐに、魔力でふきとばされたランディ王子。
が、ユーリは相変わらず固まったままだ。ランディ王子のことは、無意識に吹き飛ばしたんだね。
やっぱり、すごい魔力だわ…。
それより、ユーリが大人しくなっている今がチャンスね。
ということで、ユーリと離れ、ちょっとずつ、ドラゴンに向かって歩いていく。
「アデル王女、ゆっくりですよ!」
と、小声で、ブリジットさんが指示をとばす。
皆が息をのんで見守る中、ドラゴンと私の距離が1mぐらいになった。
と思ったら、急にドラゴンが、私の方にトコトコと歩いてきた。
うわ、なんて、かわいいの?!
そして、目の前までくると、金色の瞳が私をじっと見る。
その瞬間、頭にびーんと何かが届いた。
(もしかして、ぼくのかあさん?)
ええ?! なに、これ?!
「今、しゃべった人いる?」
私があわてて聞くと、
「いえ、誰も一言も話してません」
と、ジリムさんの声。
…ってことは、ドラゴンが言ったの? しかも、私の頭の中に直接?
私もドラゴンの目をじっと見て、
(今、あなたが言ったの? 私はあなたのお母さんじゃないよ)
と、心の中で念じてみた。
すると、ドラゴンは、翼をひろげて、私のおなかあたりに突進してきた。
そして、私に抱きついた。まさに、さっき、私がユーリにしたように…。
「うそでしょ?! ドラゴンがこんなことするなんて! 信じられないわ…」
と、ブリジットさんの声が聞こえた。
(かあさん、かあさんだ!)
ドラゴンが抱き着いているせいか、さっきより、強烈に、頭の中にメッセージが届いてくる。
(いや、違うわよ。私は、あなたのかあさんじゃないし、そもそも、私、ドラゴンじゃないわ)
と、私も強く念じてみる。
すると、ドラゴンはキィーッと鳴きながら、更に強く、しがみついてきた。
「ドラゴンとアデルちゃんが、虹の大きな玉につつまれて、ひとつになってる!」
と、イーリンさんが驚いた声をあげた。
すると、覚醒したユーリが、猛然と歩いてきて、
「アデルに触るな! アデルから離れろ、このクソちび!」
と、ドラゴンに言い放った。
冴えわたった美貌は高貴なのに、この口の悪さ…。
すごい、ギャップ…。ユーリファンに聞かせてあげたいわ。
「どう見ても、あのドラゴン、アデル王女様しか見ていません。本当に、なにか言いたいことがあるような目です。アデル王女様に危害を加えるとは思えません」
と、ブリジットさんに言った。
ブリジットさんが、覚悟を決めたように、
「わかりました! では、アデル王女様、ほんの少しずつ、ドラゴンに近づいてみてください。危なそうなら、すぐに止めますので」
と、言ったので、私はうなずいた。
すると、ユーリが、
「ドラゴンが、アデルに危害を加えそうになった瞬間、ドラゴンを凍らせるけど、いい?」
と、不機嫌そうに言う。
「ダメにきまってるでしょ? ドラゴンは、伝説の生きものだよ?!」
私があわてて止めるけど、ユーリは、
「関係ないね。アデルに害を及ぼすものは、なんだって敵だから」
と、鋭い目でドラゴンをにらみながら言う。
はあー。ドラゴンよりも、断然ユーリのほうが、危なそうに見えるよ?
やっぱり、ホームシックで情緒不安定だから、余計に心配性になってるのかな?
仕方ない…。恥ずかしいけど、ユーリを安心させなきゃね。
私は、ユーリの顔をじっと見て、
「ともかく、大丈夫だから。絶対、無理はしない。心配しないで。ね、ユーリ」
そう言うと、覚悟を決めて、がばっとユーリのおなかのあたりに抱き着いた。
力いっぱい、ぎゅーっとする。
「ユーリ。寂しくて、国に帰りたいのかもしれないけど、一人じゃないよ。私もいるし、みんなもいる。大丈夫だよ」
そう言って、また、ぎゅーっとした。
ユーリは、美しい澄んだブルーの目を見開き、茫然としている。
「…なんですか? そのタックル…」
と、つぶやく、ジリムさんの声。
いやいや、タックルではなく、ハグですよ?!
「アディーが抱き着いた時はびっくりしたけど、理由がね…。うん、笑える」
と、クスクス笑いだすデュラン王子。
「アデルちゃん…、色々間違ってる気がするけど、…そのままでいてね」
とは、イーリンさん。
「こら、ずるいぞ、アデル! 俺もいますから、ユーリさん!」
と、言いながら、ユーリの背後から抱き着き、すぐに、魔力でふきとばされたランディ王子。
が、ユーリは相変わらず固まったままだ。ランディ王子のことは、無意識に吹き飛ばしたんだね。
やっぱり、すごい魔力だわ…。
それより、ユーリが大人しくなっている今がチャンスね。
ということで、ユーリと離れ、ちょっとずつ、ドラゴンに向かって歩いていく。
「アデル王女、ゆっくりですよ!」
と、小声で、ブリジットさんが指示をとばす。
皆が息をのんで見守る中、ドラゴンと私の距離が1mぐらいになった。
と思ったら、急にドラゴンが、私の方にトコトコと歩いてきた。
うわ、なんて、かわいいの?!
そして、目の前までくると、金色の瞳が私をじっと見る。
その瞬間、頭にびーんと何かが届いた。
(もしかして、ぼくのかあさん?)
ええ?! なに、これ?!
「今、しゃべった人いる?」
私があわてて聞くと、
「いえ、誰も一言も話してません」
と、ジリムさんの声。
…ってことは、ドラゴンが言ったの? しかも、私の頭の中に直接?
私もドラゴンの目をじっと見て、
(今、あなたが言ったの? 私はあなたのお母さんじゃないよ)
と、心の中で念じてみた。
すると、ドラゴンは、翼をひろげて、私のおなかあたりに突進してきた。
そして、私に抱きついた。まさに、さっき、私がユーリにしたように…。
「うそでしょ?! ドラゴンがこんなことするなんて! 信じられないわ…」
と、ブリジットさんの声が聞こえた。
(かあさん、かあさんだ!)
ドラゴンが抱き着いているせいか、さっきより、強烈に、頭の中にメッセージが届いてくる。
(いや、違うわよ。私は、あなたのかあさんじゃないし、そもそも、私、ドラゴンじゃないわ)
と、私も強く念じてみる。
すると、ドラゴンはキィーッと鳴きながら、更に強く、しがみついてきた。
「ドラゴンとアデルちゃんが、虹の大きな玉につつまれて、ひとつになってる!」
と、イーリンさんが驚いた声をあげた。
すると、覚醒したユーリが、猛然と歩いてきて、
「アデルに触るな! アデルから離れろ、このクソちび!」
と、ドラゴンに言い放った。
冴えわたった美貌は高貴なのに、この口の悪さ…。
すごい、ギャップ…。ユーリファンに聞かせてあげたいわ。
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