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くすぐり作戦は失敗だったようで、なんともいえない気まずさ。
そんな中、一番に声をあげたのが、
「アデル、ユーリさんになんてことするんだ! はしたないぞ!」
と、ランディ王子。
散々、奇行を繰り広げてきたランディ王子には言われたくなかった…。
とりあえず、この空気を変えるため、私は何事もなかったかのように、ブリジットさんに近づき、話しかけた。
「では、ドラゴンちゃんも大人しくなったことだし、次の場所に移動しましょうか?」
「え、…ええ、そうですね。では、次のドラゴンの部屋にご案内いたします」
と、言ったところで、
頭にビーンと響いてきた。
(かあさん、ぼくをおいていくの?)
ドラゴンちゃんからのメッセージだ。
伏せの姿勢のままで、つぶらな瞳で私を見上げているドラゴンちゃん。
うっ…。
「ごめんなさいね、ドラゴンちゃん。私は他の国から来てるから、あなたを連れていけないの」
と、思わず口にだして言った。
(じゃあ、かあさんにひとつお願いがある)
と、ドラゴンちゃん。
あ、私の言葉は口にだしても伝わるのね。
「なあに?」
私はつぶらな瞳を見ながら、問いかけた。
(ぼくに名前をつけて)
名前?
ドラゴンちゃんの黒光りする姿を見て、ふと思い浮かんだのは、
「ようかん」
思わず口をついてでた。
(ヨーカン…。ぼく、ヨーカンなんだね! ありがとう、かあさん!)
「ええっ? ようかんでいいの?!」
(うん、もちろん! かあさんがつけてくれた名前だもん。それに、これで、ぼくとかあさんはつながったからね。かあさんがどこにいるか、ぼく、わかるから。会いたくなったら、すぐに飛んで行くよ)
「え?! 名前にそんな機能があるのっ?!」
と、私が声をあげたところで、ブリジットさんが興奮気味に聞いていた。
「アデル王女様、ドラゴンと、どんな会話をされてるのか教えてください!」
「名前をつけてってお願いされて、思わず、ヨーカンと口にでてしまったんです」
「ヨーカン? どっかで聞いたことが…。ああ、あのアデル王女様が号泣した菓子のヨーコンと響きが似てるんだな。そう言えば、色も一緒だ…」
と、ジリムさん。
鋭いわ、ジリムさん! それからきてます!
が、本当は、ヨーコンじゃなくヨーカンなのよ!
「それで、そのヨーカンと名付けたら、ドラゴンは何て言ったんですか?!」
先を聞きたいブリジットさんが、急いで話をもどした。
「名前をつけたら、私とドラゴンちゃんは、つながったのですって。だから、私の居場所がわかるし、会いたくなったら、すぐに飛んで行くって言ってます。まさか、名前をつけることに、こんな重大な機能がついてくるとは思わず、ごめんなさい…」
と、ブリジットさんに謝る。
ブリジットさんは、目をきらきらさせながら、
「とんでもない! すごい発見です! やはり、アデル王女様には、ドラゴンにずっと関わっていっていただきたい! この保護センターにずっといてほしい!」
と、興奮状態で言い、私のくすぐり攻撃から回復したユーリに、すごい目でにらまれている。
「まあ、とりあえず、このドラゴンはもういいとして、次のドラゴンにいきましょう。時間もないですし」
と、冷静に仕切り始めるジリムさん。
(ぼくも、ほかのドラゴンのとこへいく)
と、ドラゴン改め、ヨーカンが伝えてきた。
「あのー、次のドラゴンのところへ、ヨーカンがついてくるそうです」
と、ブリジットさんに伝える。
「…え? …もう一匹のドラゴンは、けがをしていて療養していますが、おだやかな性格ですから、あわせてみるのもいいかもしれませんね…」
と、ブリジットさんが考えながら答えた。
「じゃあ、一緒にいこうか。ヨーカン」
と、私が声をかけると、キィーッと嬉しそうに鳴いた。
ユーリが、しっかりと私の腕をとると、
「アデルからは離れてろよ」
と、ヨーカンに冷たく言い放つ。
「ほんと、大人気ないね、次期公爵は。心がせますぎて驚くんだけど」
と、デュラン王子があきれたように言うと、
「おい、兄さん! ユーリさんに失礼なことを言うなら俺が相手になる」
と、ランディ王子がくってかかる。
「は? 相手にならないだろ…。魔力でも剣でも」
と、つぶやくジリムさんを制して、
「はいはい、わかったよ」
と、面倒そうに答える、デュラン王子。
そんなやりとりの横では、ユーリ対ヨーカンの攻防が続いていた。
ヨーカンは、ユーリがそばにいるせいか、ユーリの魔力がいまだ私に流れているからなのかわからないけれど、私に近づいてはこれないよう。
(かあさん! それ、じゃま! そのあくま、じゃま! かあさん、こっちきて!)
悲痛なメッセージに、急いで駆け寄ろうとしたけれど、腕をユーリにつかまれているので、前にすすめない。
「ヨーカンが呼んでる! 離して、ユーリ」
そう言って、ユーリを見上げると、ユーリが凶暴なほどの美しい笑みを浮かべた。
「アデル、それ以上、あのクソチビに近づいたら、今度はあれくらいの争いじゃすまないから。
2メートルは距離をたもってね? あ、2メートルより一歩近づいてる。ほら、下がって」
え?! ユーリ、そんな正確にわかるの?
そんな中、一番に声をあげたのが、
「アデル、ユーリさんになんてことするんだ! はしたないぞ!」
と、ランディ王子。
散々、奇行を繰り広げてきたランディ王子には言われたくなかった…。
とりあえず、この空気を変えるため、私は何事もなかったかのように、ブリジットさんに近づき、話しかけた。
「では、ドラゴンちゃんも大人しくなったことだし、次の場所に移動しましょうか?」
「え、…ええ、そうですね。では、次のドラゴンの部屋にご案内いたします」
と、言ったところで、
頭にビーンと響いてきた。
(かあさん、ぼくをおいていくの?)
ドラゴンちゃんからのメッセージだ。
伏せの姿勢のままで、つぶらな瞳で私を見上げているドラゴンちゃん。
うっ…。
「ごめんなさいね、ドラゴンちゃん。私は他の国から来てるから、あなたを連れていけないの」
と、思わず口にだして言った。
(じゃあ、かあさんにひとつお願いがある)
と、ドラゴンちゃん。
あ、私の言葉は口にだしても伝わるのね。
「なあに?」
私はつぶらな瞳を見ながら、問いかけた。
(ぼくに名前をつけて)
名前?
ドラゴンちゃんの黒光りする姿を見て、ふと思い浮かんだのは、
「ようかん」
思わず口をついてでた。
(ヨーカン…。ぼく、ヨーカンなんだね! ありがとう、かあさん!)
「ええっ? ようかんでいいの?!」
(うん、もちろん! かあさんがつけてくれた名前だもん。それに、これで、ぼくとかあさんはつながったからね。かあさんがどこにいるか、ぼく、わかるから。会いたくなったら、すぐに飛んで行くよ)
「え?! 名前にそんな機能があるのっ?!」
と、私が声をあげたところで、ブリジットさんが興奮気味に聞いていた。
「アデル王女様、ドラゴンと、どんな会話をされてるのか教えてください!」
「名前をつけてってお願いされて、思わず、ヨーカンと口にでてしまったんです」
「ヨーカン? どっかで聞いたことが…。ああ、あのアデル王女様が号泣した菓子のヨーコンと響きが似てるんだな。そう言えば、色も一緒だ…」
と、ジリムさん。
鋭いわ、ジリムさん! それからきてます!
が、本当は、ヨーコンじゃなくヨーカンなのよ!
「それで、そのヨーカンと名付けたら、ドラゴンは何て言ったんですか?!」
先を聞きたいブリジットさんが、急いで話をもどした。
「名前をつけたら、私とドラゴンちゃんは、つながったのですって。だから、私の居場所がわかるし、会いたくなったら、すぐに飛んで行くって言ってます。まさか、名前をつけることに、こんな重大な機能がついてくるとは思わず、ごめんなさい…」
と、ブリジットさんに謝る。
ブリジットさんは、目をきらきらさせながら、
「とんでもない! すごい発見です! やはり、アデル王女様には、ドラゴンにずっと関わっていっていただきたい! この保護センターにずっといてほしい!」
と、興奮状態で言い、私のくすぐり攻撃から回復したユーリに、すごい目でにらまれている。
「まあ、とりあえず、このドラゴンはもういいとして、次のドラゴンにいきましょう。時間もないですし」
と、冷静に仕切り始めるジリムさん。
(ぼくも、ほかのドラゴンのとこへいく)
と、ドラゴン改め、ヨーカンが伝えてきた。
「あのー、次のドラゴンのところへ、ヨーカンがついてくるそうです」
と、ブリジットさんに伝える。
「…え? …もう一匹のドラゴンは、けがをしていて療養していますが、おだやかな性格ですから、あわせてみるのもいいかもしれませんね…」
と、ブリジットさんが考えながら答えた。
「じゃあ、一緒にいこうか。ヨーカン」
と、私が声をかけると、キィーッと嬉しそうに鳴いた。
ユーリが、しっかりと私の腕をとると、
「アデルからは離れてろよ」
と、ヨーカンに冷たく言い放つ。
「ほんと、大人気ないね、次期公爵は。心がせますぎて驚くんだけど」
と、デュラン王子があきれたように言うと、
「おい、兄さん! ユーリさんに失礼なことを言うなら俺が相手になる」
と、ランディ王子がくってかかる。
「は? 相手にならないだろ…。魔力でも剣でも」
と、つぶやくジリムさんを制して、
「はいはい、わかったよ」
と、面倒そうに答える、デュラン王子。
そんなやりとりの横では、ユーリ対ヨーカンの攻防が続いていた。
ヨーカンは、ユーリがそばにいるせいか、ユーリの魔力がいまだ私に流れているからなのかわからないけれど、私に近づいてはこれないよう。
(かあさん! それ、じゃま! そのあくま、じゃま! かあさん、こっちきて!)
悲痛なメッセージに、急いで駆け寄ろうとしたけれど、腕をユーリにつかまれているので、前にすすめない。
「ヨーカンが呼んでる! 離して、ユーリ」
そう言って、ユーリを見上げると、ユーリが凶暴なほどの美しい笑みを浮かべた。
「アデル、それ以上、あのクソチビに近づいたら、今度はあれくらいの争いじゃすまないから。
2メートルは距離をたもってね? あ、2メートルより一歩近づいてる。ほら、下がって」
え?! ユーリ、そんな正確にわかるの?
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