天使かと思ったら魔王でした。怖すぎるので、婚約解消がんばります!

水無月あん

文字の大きさ
132 / 158

友達?

しおりを挟む
御者席から小窓があいて、ラスさんの顔がのぞく。
「王女様、申し訳ありません。すぐに目的地に到着するようにスピードをあげますので、それまで我慢してください。もし身の危険を感じたら、思いっきり叫んでください。私が決死の覚悟で主を一時的に仮死状態にして…」

最後まで言い終わることなく、小窓がバシンと閉められた。
ユーリから放たれた極寒の風で…。

しかも、一瞬にして小窓は真っ白。凍りついているみたい…。
溶けるまで時間がかかりそうなほど、しっかりと氷で閉ざされた小窓。

さすが、魔王ユーリ…。氷漬けはお手の物ね…。

そんなユーリに、なんだか不穏な言葉を発していたラスさん。
やはり、相当気を許したお友達なのね!

と、背後でユーリがため息をついた。
「本当にアデルは、すぐに人をたらしこむから油断も隙もない…。しかも面倒な奴が多いし…。それにしても、影としては完璧なあいつが、仕事中に、しかも俺にさからってまで、アデルに話しかけようとするとはね…。どんだけ、気に入ってんだよ? ほんと、もう二度と接触させないようにするしかないな」

俺って言っているし、口調も荒れて、かなり不機嫌そうなユーリ。

「ねえ、何言ってるの? ラスさんは、大事なお友達なのでしょう?!」

「は…?! 違うよ。俺に友達はいない」

「ええっ?! そうなの?!」

どうしよう、触れたらまずい話題だったかしら?

「友人なんていらないよ。だって、部下とか、下僕とか、使える者なら沢山いるし」

はああ?!
そんなにっこり微笑みながら、魔王全開の価値観を堂々と言われても…!

「ちょっと、ユーリ? 友達はそんなんじゃないわよ?!」

「なら、アデルは友達がいるの?」

「もちろん!」

「だれ?」

「マルクよ!」

「ふーん、マルクね。…やっぱり、全然いらないな」
冷たく答えるユーリ。

ユーリの弟なのに、なんたる言いぐさ。ムムムムム…。

ユーリになめられた親友マルク! 私が敵をとるわ! 
私にとって、マルクがどれだけ素晴らしい友人かをしっかり語り、「ぼくもマルクみたいな友人が欲しい」って、ユーリに言わせてあげる! 

「私にとってマルクは大事な親友なの! 初めて会ったのは、私が5歳、マルクが6歳の頃。同じ絵本が好きなことを知って、すぐさまうちとけた私たち。好きな本の話ができるなんて初めてで、とっても嬉しかったわ。あれから9年。マルクとは、物語好きなところも一緒だし、甘いものが好きなのも一緒だから、おやつを食べながら、本について話したりして、まったり楽しいのよ! ほら、マルクみたいな気の合う友達がいるって、いいものでしょ?」

自信満々で説明した私。

でも、あれ…? 寒いわ…? 
うん、ガタガタ震えてきた…。
…って、一気に馬車の中の気温がさがったわよね?!

もちろん、犯人は私をがっしり抱きかかえている人。
そう、私ってば、ユーリの上に座っているような状態だものね。

つまり、今の私は、冷気がでる椅子にすわっているようなものかしら? 
うん、寒いはずよね…。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

お堅い公爵様に求婚されたら、溺愛生活が始まりました

群青みどり
恋愛
 国に死ぬまで搾取される聖女になるのが嫌で実力を隠していたアイリスは、周囲から無能だと虐げられてきた。  どれだけ酷い目に遭おうが強い精神力で乗り越えてきたアイリスの安らぎの時間は、若き公爵のセピアが神殿に訪れた時だった。  そんなある日、セピアが敵と対峙した時にたまたま近くにいたアイリスは巻き込まれて怪我を負い、気絶してしまう。目が覚めると、顔に傷痕が残ってしまったということで、セピアと婚約を結ばれていた! 「どうか怪我を負わせた責任をとって君と結婚させてほしい」  こんな怪我、聖女の力ですぐ治せるけれど……本物の聖女だとバレたくない!  このまま正体バレして国に搾取される人生を送るか、他の方法を探して婚約破棄をするか。  婚約破棄に向けて悩むアイリスだったが、罪悪感から求婚してきたはずのセピアの溺愛っぷりがすごくて⁉︎ 「ずっと、どうやってこの神殿から君を攫おうかと考えていた」  麗しの公爵様は、今日も聖女にしか見せない笑顔を浮かべる── ※タイトル変更しました

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~

涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!

そんなに義妹が大事なら、番は解消してあげます。さようなら。

雪葉
恋愛
貧しい子爵家の娘であるセルマは、ある日突然王国の使者から「あなたは我が国の竜人の番だ」と宣言され、竜人族の住まう国、ズーグへと連れて行かれることになる。しかし、連れて行かれた先でのセルマの扱いは散々なものだった。番であるはずのウィルフレッドには既に好きな相手がおり、終始冷たい態度を取られるのだ。セルマはそれでも頑張って彼と仲良くなろうとしたが、何もかもを否定されて終わってしまった。 その内、セルマはウィルフレッドとの番解消を考えるようになる。しかし、「竜人族からしか番関係は解消できない」と言われ、また絶望の中に叩き落とされそうになったその時──、セルマの前に、一人の手が差し伸べられるのであった。 *相手を大事にしなければ、そりゃあ見捨てられてもしょうがないよね。っていう当然の話。

夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~

狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない! 隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。 わたし、もう王妃やめる! 政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。 離婚できないなら人間をやめるわ! 王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。 これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ! フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。 よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。 「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」 やめてえ!そんなところ撫でないで~! 夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――

【完結】せっかくモブに転生したのに、まわりが濃すぎて逆に目立つんですけど

monaca
恋愛
前世で目立って嫌だったわたしは、女神に「モブに転生させて」とお願いした。 でも、なんだか周りの人間がおかしい。 どいつもこいつも、妙にキャラの濃いのが揃っている。 これ、普通にしているわたしのほうが、逆に目立ってるんじゃない?

婚約破棄したら食べられました(物理)

かぜかおる
恋愛
人族のリサは竜種のアレンに出会った時からいい匂いがするから食べたいと言われ続けている。 婚約者もいるから無理と言い続けるも、アレンもしつこく食べたいと言ってくる。 そんな日々が日常と化していたある日 リサは婚約者から婚約破棄を突きつけられる グロは無し

処理中です...