天使かと思ったら魔王でした。怖すぎるので、婚約解消がんばります!

水無月あん

文字の大きさ
133 / 158

訂正できない

しおりを挟む
「ふーん…、相手がマルクじゃなかったら、消してるレベルだね?」

は? 消す?! なに、恐ろしいことを言ってるの、ユーリ?!

「ああ、そういえば、シンガロ国に、婚約解消になった公爵家の一人娘がいてね。王家とも親戚の重要な公爵家だから、婿入りできる優秀な貴族を探してるんだって。ミカル王太子から直々に、マルクを打診されたけど、マルクじゃ荷が重そうな令嬢だから断ったんだ。でも、気がかわった。マルクがいいかもね」

シンガロ国には私の姉、カレナ姉様が、ミカル王太子様に嫁いでいる。
その関係で関わりも深い国。

けれど、なぜ、いきなり?! 
馬車の中で、しかも私を抱えた状態のユーリが、マルクの婿入りを本人不在で決めようとしているの?!
しかもマルクじゃ荷が重い令嬢って、どんな令嬢?!

私は、親友マルクの将来のため、恐る恐る聞いてみた。

「今、急に、マルクの婿入りの話題がでてくるのは、どうしてかしら…?」

すると、ユーリは背後から私の肩にあごをのせ、私の耳元でクククっと笑った。

「だって、アデルと仲良すぎて邪魔だから? シンガロ国なら、結構遠いし」

「はああ?! ちょっと、そんな理由で?! 大事な弟でしょう?!」

「うーん、どうだろ? まあ、でも弟じゃなかったら、アデルに近づいた時点で、とっくにつぶしてるけどね」

「あのね、人は、つぶすものじゃないの、ユーリ。それに、マルクの婚約はマルクの意思を尊重しないとダメよ!」

「じゃあ、マルク自身がそうしたいと言えばいいってこと? なら簡単。ぼくが説得したら、すぐにうなずくよ」

「確かに、そうだろうけれど…。でも、それは説得じゃなく、脅迫じゃなくって?!」
思わず、声をあげる私に、ユーリは、全く悪びれずに答えた。

「それって、一緒だよね?」

でたわ、魔王発言。この価値観、正訂していくのは難しいわね…。

ということで、ごめんなさい、マルク…。とりあえず、逃げて!

と思った時、ガタンと馬車が大きく揺れた。そして、その後も揺れる、揺れる。

ラスさん、スピードをあげるって言ってはいたけれど、これ、なんだか、尋常じゃないスピードよね?! 
いくらなんでも危なくないかしら?!
 
ユーリの上に座っている状態の私は、放り出されないように、体に力を入れた。
すると、ユーリが私の胴にまわした腕に更に力をいれて、ちょっと苦しいくらいに、がっしりとだき抱えてきた。

冷たい魔力を放つ魔王ユーリだけれど、体温はあたたかいのね…。
しかも、爽やかな香りまでする。

なーんて考えてしまうほどの密着度…! ほんと、やめて?! 

私の顔はどんどん熱くなり、心臓が猛スピードでうちはじめた。
人間として、危険を知らせるアラームが頭の中にガンガンとなりひびいている。
ぼーっとして、思考もとぎれとぎれになってきた。

「…アデル。アデル。大丈夫?」

はっ、ユーリが呼びかけていたみたい。

「…な、な、な、なななにかしら?!」

「な、が異常に多いね。落ち着いて?」
ユーリが耳元でささやいた。

「は、は、は、離れなさい、ユーリ!」
思わず、叫ぶ私。

「ふふっ。…こんどは、はが多いよね。ねえ、どうしたの?」
そう言って、後ろから私の顔をのぞきこんできたユーリ。

「あ、アデル、顔が真っ赤だね?」
そう言って嬉しそうに微笑む美貌の魔王は、凶悪なほどの色気をまき散らしている。

これは、見てはいけないものよね? 
急いで目をそらすと、私の胴にまきついているユーリの腕に目がとまった。

シャツの袖口に、透明のボタンみたいなものが、うっすらと点滅している。

「あっ、もしや、これ! さっき言っていた通信機?!」
思わず興奮して聞くと、ユーリがちょっと拗ねたような顔をした。

「あーあ、せっかくいい雰囲気だったのに、一気にぶちこわすんだから。でも、そんなキラキラした目で見られたら、仕方ないか…。まあ、お楽しみは後にとっとこ。ね、アデル」
そう言って、妖しい笑みを浮かべた。

瞬間、私の体がぞわっと粟立った。
ユーリにとってのお楽しみは、私にとっては楽しくないような気がするわ…。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します

みゅー
恋愛
乙女ゲームに、転生してしまった瑛子は自分の前世を思い出し、前世で培った処世術をフル活用しながら過ごしているうちに何故か、全く興味のない攻略対象に好かれてしまい、全力で逃げようとするが…… 余談ですが、小説家になろうの方で題名が既に国語力無さすぎて読むきにもなれない、教師相手だと淫行と言う意見あり。 皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。 作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨ あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。 やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。 この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。

【完結】せっかくモブに転生したのに、まわりが濃すぎて逆に目立つんですけど

monaca
恋愛
前世で目立って嫌だったわたしは、女神に「モブに転生させて」とお願いした。 でも、なんだか周りの人間がおかしい。 どいつもこいつも、妙にキャラの濃いのが揃っている。 これ、普通にしているわたしのほうが、逆に目立ってるんじゃない?

お堅い公爵様に求婚されたら、溺愛生活が始まりました

群青みどり
恋愛
 国に死ぬまで搾取される聖女になるのが嫌で実力を隠していたアイリスは、周囲から無能だと虐げられてきた。  どれだけ酷い目に遭おうが強い精神力で乗り越えてきたアイリスの安らぎの時間は、若き公爵のセピアが神殿に訪れた時だった。  そんなある日、セピアが敵と対峙した時にたまたま近くにいたアイリスは巻き込まれて怪我を負い、気絶してしまう。目が覚めると、顔に傷痕が残ってしまったということで、セピアと婚約を結ばれていた! 「どうか怪我を負わせた責任をとって君と結婚させてほしい」  こんな怪我、聖女の力ですぐ治せるけれど……本物の聖女だとバレたくない!  このまま正体バレして国に搾取される人生を送るか、他の方法を探して婚約破棄をするか。  婚約破棄に向けて悩むアイリスだったが、罪悪感から求婚してきたはずのセピアの溺愛っぷりがすごくて⁉︎ 「ずっと、どうやってこの神殿から君を攫おうかと考えていた」  麗しの公爵様は、今日も聖女にしか見せない笑顔を浮かべる── ※タイトル変更しました

どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~

涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

婚約破棄したら食べられました(物理)

かぜかおる
恋愛
人族のリサは竜種のアレンに出会った時からいい匂いがするから食べたいと言われ続けている。 婚約者もいるから無理と言い続けるも、アレンもしつこく食べたいと言ってくる。 そんな日々が日常と化していたある日 リサは婚約者から婚約破棄を突きつけられる グロは無し

黒騎士団の娼婦

イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

処理中です...