天使かと思ったら魔王でした。怖すぎるので、婚約解消がんばります!

水無月あん

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大人気ない

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ユーリは、私に見えやすいように、袖口の通信機を近づけてくれた。

小さくて、透明で、ひらべったくて丸い。
近くで見てもボタンにしかみえない。

そして、若干、うすーく点滅しているが、それも、透明の宝石が光っているような、自然な感じだ。
なんにせよ、通信機とは到底思えない。

「ねえ、アデル。触ってみて?」
と、ユーリ。

「え? 通信機を?!」

「そう。ほら、触ってよ。アデル」
と、やけに甘ったるい声をだすユーリ。

甘い言葉に気をつけろ…。

ふと頭に浮かんできたわ。
もしや、天啓かしら?!

そうね、魔王だものね。油断させておいて、触ったら爆発するとか?
そうなると、ユーリの手も吹き飛ばされるから、違うわね…。

なら、触ったら、指がしびれて動けなくなるとか?
でも、そうなると、ユーリも触れないから、一番困るのはユーリよね…。

なんて考えていたら、私の手が持ち上がる感覚がして、指先が何かに触れた。
あ、ユーリが、私の指を通信機に押し当てているわ!

「アデルが、また変な妄想してるみたいだから。ぼくが勝手にするね」
と、ユーリが言った時、指の先がひんやりしてきた。

「冷たい!」
あわてて、指を離そうとするけれど、ユーリががっしり押さえているから、離せない。

「ダメだよ、アデル。もうちょっとこのままでいて」
と、優しい声で言うユーリ。

「でも、このままひっつけてたら、私の指、凍りついて、離れなくなるのじゃない?!」

「そうだね。離れなくなったら、ずーっとぼくとひっついていないとね? それも楽しそうだよね。ねえ、アデル」
ユーリが妖しく微笑みながら、焦る私の顔をのぞきこむ。

でたわね、魔王!

「ちっとも楽しくないわよ? 私の指が通信機にひっついたままで、ユーリとずっと一緒にいないといけないのなら、ユーリだって不便よ? …あ、でも、通信機だけシャツから外してもらえれば、私の指に通信機がひっついた状態ってことよね。とういうことは、ユーリからは離れていられるし、私の指の先が通信機付きになるだけで、被害は最小限…」

「やっぱり、アデルはばかかわいいな。でも、指に通信機がつくよりも、ぼくと離れたがっているところは気に食わないよね。うーん、どうしようかな」
そう言って、ククッと笑うユーリ。

「どうしようではなくて、すぐに私の指を通信機から放しなさい!」
と、王女らしい威厳を持って、命令する。

「はあー。本当、ばかかわいくて、たまらないな」
そう言って、ユーリが私の胴にまわしたほうの腕でぎゅーとしめてきた。

もしや…絞め殺す気かしら?

私がおびえはじめた時、通信機にふれている指の先から、何かはいあがってくるような感覚がした。

「ユーリ?! 指が、変なんだけど?! もしや、虫がはってるの?!」

「虫って、ひどいよね、アデル。虫じゃなくて、ぼくの魔力だよ。通信機はぼくの魔力が込められてるから、冷たいでしょ? で、触っているうちに、魔力がアデルの中に流れ始めたの。もうちょっとして、なじんできたら、気持ちよくなってくるよ?」
意味ありげに微笑むユーリ。

確かに、触れている人差し指から、なにやら冷たいものが、流れ込んでくる。
気持ちいいというよりも、スースーして、違和感がすごいのだけれど…?

と、思ったら、そこで、ガンッと馬車が急停車した。
そして、すごい勢いで馬車の扉が開いた。

「大丈夫ですか、王女様? それと主、魔力で襲うのをやめてもらえますか? 大人気ないですよ?」
そう言ったのは、鋭い眼差しでユーリを見るラスさんだった。
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