(第2章連載中)だれか溺愛見せてください。ちなみに、溺愛を見たいだけで、溺愛してもらいたいわけではありません。

水無月あん

文字の大きさ
62 / 108
第一章

伝わらない

しおりを挟む
ラルフが、まっすぐに王子を見て、
「申し訳ないが、踊ることはできません」
と、わかりやすい言葉だけで、簡潔に答えた。

ストレートすぎるくらいの答えだけど、目が笑ってない王子様に向かって、ラルフすごいね…。
ちょっと、私、怖いんだけど…。

そこで、王太子様が、にこやかに口をはさむ。
「ラルフは、ダンスは、あまり上手くありません。自分で言うのもあれですが、私のほうがうまいですよ? ルーシェ王女様、一曲いかがですか?」
と、王女様のほうをむいて誘った。

王太子様の言葉を、王子様が王女様に通訳しているようで、グラン国の言葉で話している。
一気に王女様の顔がくもった。そして、何か言った。

グラン国の王子様が、今度は私を見た。

えっ?! なになに? 怖いんだけど?

「そちらの御令嬢は、ラルフ君の幼馴染と聞いていましたが、まさか、その人のせいで踊れないのでしょうか?」
と、王子様。

となりの王女様が、明らかに私をにらんでいる…。

アイシャが、私のそばに寄った。
見ると、私にむかってにっこり微笑み、そのまま王女様のほうに焦点をあわせた。

笑顔で圧をかけている…。そして、私をにらんでいた王女様がついに視線をそらした。

アイシャ、ありがとうー!

という、女三人の攻防の横で、ラルフと王子、そして王太子様の攻防も続いている。


「リリーは関係ない。俺が踊りたくないだけです」
と、ラルフがはっきりと言う。

王子様の眉間にしわがより、はりつけていた笑みが消え去った。

そして、王女様に訳すことはせず、
「たかが、ダンスで、せっかく上手くまとまった両国の交渉にひびを入れるおつもりか?」
と、ラルフのほうを向いて言った。

ええ?! そんな大事になるの?!

と、思ったら、王太子様が、
「たかが、ダンスで、ダメになるような交渉なら、なくて結構ですよ? もともと、こちらがお願いした交渉ではありませんしね」
そう言って、不敵な笑みをうかべた。

王太子様が、腹黒全開になっている。
が、こっちのほうが断然、王太子様に似合っているわ! 穏やかなのは、外面だったんだね…。 

「それに、ラルフは学生だ。私の部下でもない。本来、王女をもてなす立場ではないんです。つまり、義理もない。交渉期間の間、グラン国の言葉がしゃべれるラルフに甘えて、王女に言葉を教えるということを頼んでいたけれど、その期間も終わりました。ラルフに無理は言えない」
と、王太子様は、真剣な口調で王子様に説明した。

王子様は不満げな顔で、黙って考えている。

王太子様は、そばに控えていたロイさんに、
「今、私が言ったこと、王女に訳して」
と言った。

ロイさんが、うさんくさい笑顔を浮かべてうなずくと、王女様に向かって、あちらの言葉で話しだした。

これで、納得して!と、心底願う。

が、ロイさんの言葉を聞きながら、王女様の顔が、どんどん、怒りでゆがんでいった。

そして、ついに王女様が、
「なんで? ラルフ? 私のこと好きだったよね?」
と、すごい爆弾発言を落とした。

一瞬、場がシーンとした。

何をいいだすの?! 驚きすぎて、言葉がでないんだけど…。

真偽はともかく、こんな他の人たちのいる前で、公の場で、良くそんなことが言えるなあと。
 
見た目はきれいだけれど、これでは、ヒロインにはなりえない…。
ヒロインに意地悪する当て馬だよね…、と妄想がひろがってきたところで、ラルフが口を開いた。

「そう思わせてしまう何かが俺にあったとすれば謝罪する。が、仕事として引き受けただけで、特別な感情はない」
と、王女様をしっかり見て言い放った。

疑う余地はみじんもないことは伝わってくる。

すると、王女様は、
「ひどい、ラルフ! なんで、そんなこと言うの?」
と、泣きだした。

え? 全然、ラルフの言ったことが伝わってないよ! 
なんでと聞きたいのは、こっちだよね…。 

そして、王子様が怒りに燃える目でラルフをにらみつけた。
「ダンスはもういい。が、私の国では、されたことは必ず返す。
ルーシェを泣かせたことは、必ずや返させてもらう」
そう言いながら、何故か私の方を見た。

そして、泣いている王女様に何か言うと、連れだって去っていった。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~

涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく

犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。 「絶対駄目ーー」 と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。 何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。 募集 婿入り希望者 対象外は、嫡男、後継者、王族 目指せハッピーエンド(?)!! 全23話で完結です。 この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。

転生した世界のイケメンが怖い

祐月
恋愛
わたしの通う学院では、近頃毎日のように喜劇が繰り広げられている。 第二皇子殿下を含む学院で人気の美形子息達がこぞって一人の子爵令嬢に愛を囁き、殿下の婚約者の公爵令嬢が諌めては返り討ちにあうという、わたしにはどこかで見覚えのある光景だ。 わたし以外の皆が口を揃えて言う。彼らはものすごい美形だと。 でもわたしは彼らが怖い。 わたしの目には彼らは同じ人間には見えない。 彼らはどこからどう見ても、女児向けアニメキャラクターショーの着ぐるみだった。 2024/10/06 IF追加 小説を読もう!にも掲載しています。

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 【ご報告】 2月15日付で、誤字脱字の修正および一部表現の見直しを行いました。 ただし、記載内容の趣旨に大きな変更はございません。 引き続きよろしくお願いいたします。

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、すれ違いの末に離れ離れになった夫婦の物語。 再会したとき、二人が選ぶのは「離婚」か、それとも「再構築」か。 妻を一途に想い続ける夫と、 その想いを一ミリも知らない妻。 ――攻防戦の幕が、いま上がる。

処理中です...