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第三話

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 というわけでやってきた、町の図書館。高校の図書館よりはるかに広く(当たり前ではあるが)、それに圧倒されていた俺を見て、(図書館に着いたからなのか)落ち着いた葵さんは、
 「晴人君は、ここに来るの初めて?」
 「はい。とても広くてびっくりしました」
 「だよね。うんうん、素直でよろしい。じゃあ、私は晴人君を案内するから、渚は自分の課題の本を探してきていいよ~」
 「はーい。りょうかい」
 (なんか渚さんだけ仲間外れになってないか?みんなで回ればいいんじゃ───)
 「じゃあ~、まずは1階から。こっちのコーナーがサスペンスコーナーで、西野佳子のとかもあって~、次にここのコーナーは───」
 (もしかして、葵さんって俺に気があるのか?初めて会ったときもなんかさらっと『私の男の子が───』とか言ってたし。いやでもちょっと考えすぎか?)
 などと、ひとり物思いにふけっていると、
 「───で~、ってちょっと聞いてる?」
 「あ、あぁ、うん」
 「あれっ?もしかして私のことでも考えてたのかなぁ~?なぁ~んちゃって」
 (あ、当たってるような、当たってないような……)
 「少し疲れたのなら、ここでちょっと休憩する?」
 「あっ、はい。少しだけ、お願いします」
 そこにあった置きイスに座ると、葵さんが“ポスッ”と俺の座っているイスに隣接してあるイスに座った。すると、花のいい香りに、ふわふわとゆれる黒髪、くりくりとした丸い目、白い肌。
 (あ。この前とおんなじだ。この感覚。どことなく心が落ち着く、この光景───)
 「……?そんなに私のこと見つめて、どうしたの?」
 「あっ、いやっ、これは、その、なんていうかちょっと考え事をしていまして……」
 「ま~た私のこと考えてたの?ちょっとかわいい女の子が近くにいるからって、いくらなんでも───」
 「ちっ、ちがいますよ!別に葵さんのことばっかり考えてなんか───」
 「ふ~ん。『ばっかり』ねぇ~」
 「……」
 「まぁ、それはおいといて、課題の本、晴人君は何にするの?」
 「そうですね、う~ん、この前借りた『被疑者Yの分身』にしようかなぁ」
 「ここでひとつ、私からのアドバイス!サスペンス系統の本は、紹介するのが難しいんだ。だから違う本にした方がいいよ。っていうか、しなさい」
 「……。それって、葵さんがこの本にしようと決め───」
 「ちっ、ちがうもんっ!そ、そんなことはないよ!うん、ぜったい。ただ、アドバイスとして、伝えておきたかっただけだから!」
 「わかりました。じゃあ、違う本にしようかな~」
 (これは確信犯だな。うんうん。)
 「さ、さて、元気も取り戻したことだし、晴人君の課題の本探しの旅にでかけるか~」
 「レッツゴー!……って、え?!葵さん?!どうしたんですか?」
 「いや、晴人君がこんなに乗り気になってくれるなんて。うれしいことこの上ないよ~」
 「は、はぁ」
 (この人の考えることは全く読めねーなぁ。でもなんか居心地はいい気もするし……。)
 ということで、サスペンスコーナーは諦めて、やってきたのは2階のファンタジーコーナー。
 「あっ、この本、僕大好きなんですよね。『日当240円の天使』」
 「へぇ~。どんな話なの?」
「それはビブリオバトルでのお楽しみですよ~」
 「え~っ。ちょっとくらい教えてくれてもいいのにぃ~。まぁ、晴人君がそう言うのなら仕方ないか。じゃあ、それ借りたら帰ろっか。ねぇ~っ?」
 (『ねぇ~っ?』じゃないですよホントに。そんな顔されたら意識してしまうっつーの。)
 「はぁーい」
 そんなこんなで本を借り終えて帰ろうとしていたが、
 (あれ?渚さんは?)
 「葵さん!渚さんはいいんですか?」 
「あっ、ほんとだぁ~。わすれてたわ~」
 「随分と遅かったわね。何をしていたのかしら」
 (うわ~。渚さんこわーい。めっちゃ怒ってるじゃん。どうしよ。)
 「晴人君と仲良くおしゃべりをしていたの。楽しかったわ~」
「ふ~ん。『仲良く』ねぇ」
 (あれ?このセリフ、どこかできいたような……?)
 「ごめんってば~。も~。そんなに怒らないでよ~。せっかく晴人君と一緒にいるのに~」
 「そうね。『晴人君』と一緒にいるもんね」
 (なんか、俺の名前が妙に強調されたような……?)
 「さぁ~て、お次はショッピングセンターでもいくとしますかっ!」
 「そうね。いつも通りにね」
 「いつもは二人でここに来るんですか?」
 「そうだよ。でも、今日は晴人君付きだからなぁ~。うふふ」
 (あ、また始まった、この謎モード。このテンションはいったいなんなんだろう……。)
 「ここで何をするんですか」
 「まぁ、葵についていったらわかるって」
 「ゲーセンへレッツゴー!!」
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