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第四章 魔人襲撃
EX12.魔人の歴史
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我が名は魔人将軍ダルセム。
かつて隆盛を誇った魔王軍、その中でも指折りの実力者六人に与えられる称号、『六魔将』を冠する者だ。
五百年前、憎き勇者どもに魔王様が討たれ、魔王軍は壊滅。激しい戦いによって半数以上の同胞を失った我々は、人間の手の届かない僻地での生活を余儀なくされた。
だが、我々はそこで諦めはしなかった。不自由な暮らしに耐え忍びながら、ひっそりと牙を研ぎ続けてきたのだ。
最初の反攻作戦は魔王軍の壊滅から六十年後、憎き勇者の没後に行われた。
勇者がどれだけの実力者であろうとも、人間どもの寿命など百年もない。人間という劣った生き物として生まれた限り、寿命という死神の鎌から逃れることはできないのだ。
当時生き残っていた六魔将は三人。優秀な戦士である六魔将が半数残ったのは僥倖だった。……とはいえ、多くの同胞を失い、戦力的には最盛期の二割程度だろう。
だが、それだけの戦力があれば事足りる。勇者を除けば、あとは有象無象だけ。結局、警戒すべきなのは勇者だけなのだ。
頼みの綱を亡くしたというのに、魔王様を討ったことで少しの不安も抱いていない平和ボケした人間どもを滅ぼすなど、造作もない。
――――そう、思っていた。
確かに勇者は死んでいた。それは念入りに確認をした。
だが、我々は人間どもの戦力を見誤っていたのだ。
真に恐れるべきは勇者ではなく――――『魔女』だったのだ。
勇者の一味にいたあの魔術師の女は、六十年経ったというのに姿を変えることなく、ただのひとりで我々の軍を迎え撃ってきた。
その強さは尋常のものではなかった。六魔将三名含む、総勢四十名の魔人……国の一つや二つは軽く滅ぼせる戦力だったはずなのに、たかが人間の女ひとりに蹂躙されたのだ。
そして、戦いのあと生き延びた六魔将は我ひとり。他の魔人も、両の手で数えきれる程度と、惨憺たる結末だった。
……今思えば、勇者一味が手強かったのは、あの魔女の手助けがあったからなのだろう。勇者の成長にも一役買っていたのかもしれない。
……それ以降、我々は魔女との正面衝突を避け、再び影に身を潜めた。
時折魔物をけしかけたり、竜をそそのかしたりして人間を攻めようと試みたが、どれもが魔女によって未然に防がれてしまった。
そうやって影で暗躍し続け、四百年と少しの時を経たある日、けしかけた魔物が放置され、魔物の生態系が大きく崩れるに至った。
今までこんなことはなかった。生態系か崩れれば、人間はその対処に追われることになり、混迷を極めるだろう。そんな事態、魔女は一度たりとも許さなかったはずなのに。
念入りに調査をし、あの魔女の存在が消えたのだと確信を得たときには、柄にもなく歓喜の声を上げたものだ。
これで唯一にして最大の障害は取り除かれた。魔女に頼りっきりだった人間どもに自衛する能力はないだろう。
――こうして我らは再び動き出した。
第一の標的に選んだのはアムダルシア王国、その王都であるアニマという都市だ。そこを選んだ理由だが、若い魔人がひとり、アムダルシアの人間ども殺されたからだ。
奴は五十年ほど前に新生した魔人で、まだ若く、戦いを知らない新兵だった。
しかし人間ごときに遅れをとることはないだろうと、単独行動をさせてしまったのが失敗だった。
ある日、運悪く人間の精鋭部隊と遭遇し、命を落としてしまったのだ。
若さ故の油断や驕りが多い奴だったし、能力的にもまだまだ半人前だった。人間どもにやられたと聞いても、まあ……そう驚きはしない。
だが、半人前の子供ひとりを倒した程度で、人間どもが調子づくのは看過できない。我ら魔人に勝てるなどと思われては困るからな。
だからわざわざ奴らの前に姿を現し、宣戦布告をしてやったのだ。
猶予を与え、万全に防備を固めた人間どもを真正面から叩き潰す。これが成さたとき、我ら魔人の驚異は世界中に知れ渡ることだろう。
そう、これが我々魔人復権の第一歩となるのだ――
かつて隆盛を誇った魔王軍、その中でも指折りの実力者六人に与えられる称号、『六魔将』を冠する者だ。
五百年前、憎き勇者どもに魔王様が討たれ、魔王軍は壊滅。激しい戦いによって半数以上の同胞を失った我々は、人間の手の届かない僻地での生活を余儀なくされた。
だが、我々はそこで諦めはしなかった。不自由な暮らしに耐え忍びながら、ひっそりと牙を研ぎ続けてきたのだ。
最初の反攻作戦は魔王軍の壊滅から六十年後、憎き勇者の没後に行われた。
勇者がどれだけの実力者であろうとも、人間どもの寿命など百年もない。人間という劣った生き物として生まれた限り、寿命という死神の鎌から逃れることはできないのだ。
当時生き残っていた六魔将は三人。優秀な戦士である六魔将が半数残ったのは僥倖だった。……とはいえ、多くの同胞を失い、戦力的には最盛期の二割程度だろう。
だが、それだけの戦力があれば事足りる。勇者を除けば、あとは有象無象だけ。結局、警戒すべきなのは勇者だけなのだ。
頼みの綱を亡くしたというのに、魔王様を討ったことで少しの不安も抱いていない平和ボケした人間どもを滅ぼすなど、造作もない。
――――そう、思っていた。
確かに勇者は死んでいた。それは念入りに確認をした。
だが、我々は人間どもの戦力を見誤っていたのだ。
真に恐れるべきは勇者ではなく――――『魔女』だったのだ。
勇者の一味にいたあの魔術師の女は、六十年経ったというのに姿を変えることなく、ただのひとりで我々の軍を迎え撃ってきた。
その強さは尋常のものではなかった。六魔将三名含む、総勢四十名の魔人……国の一つや二つは軽く滅ぼせる戦力だったはずなのに、たかが人間の女ひとりに蹂躙されたのだ。
そして、戦いのあと生き延びた六魔将は我ひとり。他の魔人も、両の手で数えきれる程度と、惨憺たる結末だった。
……今思えば、勇者一味が手強かったのは、あの魔女の手助けがあったからなのだろう。勇者の成長にも一役買っていたのかもしれない。
……それ以降、我々は魔女との正面衝突を避け、再び影に身を潜めた。
時折魔物をけしかけたり、竜をそそのかしたりして人間を攻めようと試みたが、どれもが魔女によって未然に防がれてしまった。
そうやって影で暗躍し続け、四百年と少しの時を経たある日、けしかけた魔物が放置され、魔物の生態系が大きく崩れるに至った。
今までこんなことはなかった。生態系か崩れれば、人間はその対処に追われることになり、混迷を極めるだろう。そんな事態、魔女は一度たりとも許さなかったはずなのに。
念入りに調査をし、あの魔女の存在が消えたのだと確信を得たときには、柄にもなく歓喜の声を上げたものだ。
これで唯一にして最大の障害は取り除かれた。魔女に頼りっきりだった人間どもに自衛する能力はないだろう。
――こうして我らは再び動き出した。
第一の標的に選んだのはアムダルシア王国、その王都であるアニマという都市だ。そこを選んだ理由だが、若い魔人がひとり、アムダルシアの人間ども殺されたからだ。
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だからわざわざ奴らの前に姿を現し、宣戦布告をしてやったのだ。
猶予を与え、万全に防備を固めた人間どもを真正面から叩き潰す。これが成さたとき、我ら魔人の驚異は世界中に知れ渡ることだろう。
そう、これが我々魔人復権の第一歩となるのだ――
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