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18. 心の悲鳴
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目が覚めたのは体が一瞬沈み込む感覚…。
ハッと目を開けると、オウガのにやけた顔が目の前にあった。
「あれ、もう目が覚めたのか。睡眠薬の耐性でもあったのか? さすがは薬師だな」
オウガは舌打ちしながらもニヤニヤと顔は崩さない。
さっきの飲み物は睡眠薬だったのね……。で、これは一体……?
自分が大きなベッドに押し倒されているという事実だけは理解できた。
ということはここはオウガの部屋……?
自分の状況の青ざめる。
「オ、オウガ様……、おやめください」
刺激しないよう、やんわりと制止をかける。しかしオウガは不思議そうな顔をした。
「どうして俺が止めなければならない? お前は誰にものを言っているんだ?」
本当に、私が何を言っているのかわからないといった様子だ。説得して通じる相手ではない気がしてきた。
さて、この状況をどうしよう。
ベッドに押し倒されて、オウガは私の上に覆いかぶさっている。力ではかなわない。もう、いっそのこと抵抗してみるか……?
そんなことしたら私は明日の朝にでも処刑されるだろう。命は惜しい。でも、このままやすやすと体を奪われるわけにはいかない。
飲まされたのは睡眠薬にはある程度耐性はあったから、少しぼんやりはするけれど思ったよりも早く目覚めることができたようだ。
だからと言って抵抗が出来ないならどうしようもできない。
じりじりと体を動かすが、オウガの脂肪たっぷりの太い腕が囲って邪魔をする。
「君は俺の好みではないけれど、まぁまぁ美人だし俺の側室にしてやってもいいぞ」
光栄だろうとでも言わんばかりに偉そうだ。
誰が側室なんかになるものか。
そう言ってやりたいところだけれど、行ったら即首をはねられそうな剣呑さがあるので口をつぐむ。そもそも男の力にかなうはずがない。
どうしよう、どうしよう……。
頭の中はいたって冷静なのに、体は小刻みに震えている。正直だな。
ベッドは広く、手を四方に伸ばしたところでクッションしか届かない。
クッションを投げつけるか?
必死に策を考えていた時だった。
コンコンと扉が控えめにノックされる。オウガは一度無視するが、ノックは何度も繰り返された。チッと舌打ちをし、オウガの体が私の上からどく。
今のうちに、と思うが体がだるくて思うように動かない。
「誰だ!」
「オウガ様、申し訳ありません。早急にお知らせしたいことがございます」
おずおずと声をかけられ、オウガは不快そうに眉を寄せながら、私から退いて扉を開ける。
「なんだ? 知らせたいこととは……」
「俺の来訪だ」
扉を開けて目の前にいた人物にオウガが大きく体を震わせると、その体躯を押しのけるようにしてカザヤ様が部屋に押し入ってきた。その後ろにはバルガとワサト隊長の姿もある。
カザヤ様……。どうしてここに……?
「あ、兄上。なぜここに……」
オウガは奥にいる私が見えないようにゆっくりとカザヤ様の前に立つが、身長差があるので丸見えだ。
カザヤ様は私と一瞬目が合うと、ホッとしたように細め、オウガには殺気を込めた冷たい視線を送る。
「どうして俺がここに来たか、お前は聞かずともわかっているのではないか?」
「……ここは俺の塔です。いくら兄上とはいえ、勝手な真似は遠慮していただきたい」
あくまでもここでは自分が優位なのだという姿勢を崩さないオウガは、軽く手を上げて自身の衛兵たちを呼び寄せる。
「別に争うつもりはない。ただ、彼女を返してもらいたいだけだ」
「返すなど物騒な物言いは止めていただきたい。ラナは自分の意志でここに居る。そうだよな?」
オウガは威圧的な視線をよこす。
カザヤ様の両隣にはバルガとワサト隊長が控えているが、オウガの衛兵は次々と部屋に入ってきて彼らを取り囲んでいる。
私の返答により、状況はあっさりと変わるだろう。
ピンと張り詰めたような空気感に冷や汗が自然と流れる。喉の奥がカラカラだ。
何かを言わなければ。
そう思い、口を開こうとした時、それをオウガが遮るように話し出した。
「そもそも、ラナは兄上の物ではありませんよね? 何の権利があってここへ来るんですか? この状況、見てわかるでしょう? 俺のベッドにラナがいる理由が」
口角を上げて嫌な笑みを浮かべるオウガに、カザヤ様は殺気を込めたまなざしで見返す。一瞬、オウガや周囲の衛兵がその迫力にたじろぐがそこで怯むような真似はしない。
「これからお楽しみの時間なんです。出て行ってもらえますか?」
そう言い放つと、オウガは私の元へ小走りで戻り胸元を掴みかかって私の体を引き起こす。弾みで上半身が起き上がるが、薬がまだ効いており力がうまく出ず、オウガに寄りかかるような体勢になってしまう。
「それとも、そこで見ていますか? この女がどんな風に乱れ嬌声を上げ、体を開くのか……。そこで見ていたいですかね? 俺はそれでもかまいませんよ。兄上が執着するものを手に入れられた喜びにますます興奮しそうだ」
下卑た笑みを浮かべながら、ねちっこい話し方でカザヤ様を揶揄うように挑発する。睨み続けていたカザヤ様がゆっくりと剣を抜いた。それを見て、オウガが片眉をあげる。
「おや、そんなことをしてもいいんですか? 兄上が少しでも動いたら、この女がどうなるか……。わからないなんて言わせませんよ?」
自分が優位に立っているのが分かっているので、その話し方もどこか余裕がうかがえる。
オウガは私を後ろから抱きかかえる様に立つと、ゆっくりと私の頬から首筋を撫でた。その不快感に体がソワッと鳥肌を立てる。
気持ち悪い。
吐き気がするくらいに不快だ。
カザヤ様に触れられた時とは大違いである。
「やめて……ください」
不快感に負けじと声を出すが、オウガは私の耳に顔を寄せた。
「白い肌だ。兄上はまだこの肌に触れていないのだろう? まず俺がどんな味がするのか味見してやるよ」
オウガの唇が私の首筋に触れた瞬間、カザヤ様が動いた。
衛兵がカザヤ様を止めるより一瞬早く、カザヤ様の剣先がオウガに届く。オウガは悲鳴を上げて肩から血を吹き出し、呻きながら膝をついた。
「衛兵!! 奴をとらえろ!!」
鬼のような形相で叫ぶオウガに、衛兵は少し動揺しつつもカザヤ様をとらえにかかる。
「お前たち、国王陛下を捕らえるというのか!?」
ワサト隊長の声が響くが、衛兵はオウガに逆らえないのかカザヤ様になだれ込むように向かっていった。
ワサト隊長とバルガがカザヤ様を庇うように前に出る。
「カザヤ様!!!」
嫌だ!! カザヤ様に触れないで!!
止めて!! 誰か助けて!!
言葉にならない心の声が悲鳴となって口から出る。
その時だった。
私の右腕につけていた腕輪が金色の光を発する。それは閃光のように周囲の目をくらませた。
部屋の中にいたもの全員が驚きと眩しさにうめき声を発して顔をそむける。その一瞬、腕輪から大きな蛇のような黒煙が立ち上った。
その蛇がオウガに襲い掛かる。
「ぎぃやぁぁぁぁ!!!」
オウガは絶叫を上げながら、黒い蛇の煙に飲み込まれていく。
黒い煙の中からしばらく悲鳴が聞こえていたが、ほどなくして静かになると黒い煙の蛇も霧散して消えて行った。
消えた煙の中から、床に倒れるオウガが見えた。
オウガは髪が真っ白になり、頬もこけ、人が変わったかのようにまるで生気がなくなった、うつろな目をしている。
「どういうことだ、これは……」
一瞬の出来事に、部屋の中にいた者たちは一様に唖然として、目の前の状況を飲み込めなかった。
腕輪はパリンという音を立てて割れ、床に落ちると粉々に砕け散った。それをただ茫然と見つめるしかできない。
一体何が起こったというのか。
さっぱり理解できなかった。ただ何か怖いことが起きてしまった。それだけはわかる。
静寂の中、一番最初に動いたのはカザヤ様だった。
「ラナ」
私の名前を呼びながら、震える体を抱きしめてくる。
「ラナ、大丈夫か?」
「カザヤ様……、今のは一体……?」
自分の腕と砕けた腕輪を交互に見るが答えは出ない。何が起こったのかただ唖然としていると、小さな笑い声が聞こえた。
「それは呪具よ」
ハッと声の方を振り返ると、シュウ前王妃が微笑みながら入口に立っていた。
ハッと目を開けると、オウガのにやけた顔が目の前にあった。
「あれ、もう目が覚めたのか。睡眠薬の耐性でもあったのか? さすがは薬師だな」
オウガは舌打ちしながらもニヤニヤと顔は崩さない。
さっきの飲み物は睡眠薬だったのね……。で、これは一体……?
自分が大きなベッドに押し倒されているという事実だけは理解できた。
ということはここはオウガの部屋……?
自分の状況の青ざめる。
「オ、オウガ様……、おやめください」
刺激しないよう、やんわりと制止をかける。しかしオウガは不思議そうな顔をした。
「どうして俺が止めなければならない? お前は誰にものを言っているんだ?」
本当に、私が何を言っているのかわからないといった様子だ。説得して通じる相手ではない気がしてきた。
さて、この状況をどうしよう。
ベッドに押し倒されて、オウガは私の上に覆いかぶさっている。力ではかなわない。もう、いっそのこと抵抗してみるか……?
そんなことしたら私は明日の朝にでも処刑されるだろう。命は惜しい。でも、このままやすやすと体を奪われるわけにはいかない。
飲まされたのは睡眠薬にはある程度耐性はあったから、少しぼんやりはするけれど思ったよりも早く目覚めることができたようだ。
だからと言って抵抗が出来ないならどうしようもできない。
じりじりと体を動かすが、オウガの脂肪たっぷりの太い腕が囲って邪魔をする。
「君は俺の好みではないけれど、まぁまぁ美人だし俺の側室にしてやってもいいぞ」
光栄だろうとでも言わんばかりに偉そうだ。
誰が側室なんかになるものか。
そう言ってやりたいところだけれど、行ったら即首をはねられそうな剣呑さがあるので口をつぐむ。そもそも男の力にかなうはずがない。
どうしよう、どうしよう……。
頭の中はいたって冷静なのに、体は小刻みに震えている。正直だな。
ベッドは広く、手を四方に伸ばしたところでクッションしか届かない。
クッションを投げつけるか?
必死に策を考えていた時だった。
コンコンと扉が控えめにノックされる。オウガは一度無視するが、ノックは何度も繰り返された。チッと舌打ちをし、オウガの体が私の上からどく。
今のうちに、と思うが体がだるくて思うように動かない。
「誰だ!」
「オウガ様、申し訳ありません。早急にお知らせしたいことがございます」
おずおずと声をかけられ、オウガは不快そうに眉を寄せながら、私から退いて扉を開ける。
「なんだ? 知らせたいこととは……」
「俺の来訪だ」
扉を開けて目の前にいた人物にオウガが大きく体を震わせると、その体躯を押しのけるようにしてカザヤ様が部屋に押し入ってきた。その後ろにはバルガとワサト隊長の姿もある。
カザヤ様……。どうしてここに……?
「あ、兄上。なぜここに……」
オウガは奥にいる私が見えないようにゆっくりとカザヤ様の前に立つが、身長差があるので丸見えだ。
カザヤ様は私と一瞬目が合うと、ホッとしたように細め、オウガには殺気を込めた冷たい視線を送る。
「どうして俺がここに来たか、お前は聞かずともわかっているのではないか?」
「……ここは俺の塔です。いくら兄上とはいえ、勝手な真似は遠慮していただきたい」
あくまでもここでは自分が優位なのだという姿勢を崩さないオウガは、軽く手を上げて自身の衛兵たちを呼び寄せる。
「別に争うつもりはない。ただ、彼女を返してもらいたいだけだ」
「返すなど物騒な物言いは止めていただきたい。ラナは自分の意志でここに居る。そうだよな?」
オウガは威圧的な視線をよこす。
カザヤ様の両隣にはバルガとワサト隊長が控えているが、オウガの衛兵は次々と部屋に入ってきて彼らを取り囲んでいる。
私の返答により、状況はあっさりと変わるだろう。
ピンと張り詰めたような空気感に冷や汗が自然と流れる。喉の奥がカラカラだ。
何かを言わなければ。
そう思い、口を開こうとした時、それをオウガが遮るように話し出した。
「そもそも、ラナは兄上の物ではありませんよね? 何の権利があってここへ来るんですか? この状況、見てわかるでしょう? 俺のベッドにラナがいる理由が」
口角を上げて嫌な笑みを浮かべるオウガに、カザヤ様は殺気を込めたまなざしで見返す。一瞬、オウガや周囲の衛兵がその迫力にたじろぐがそこで怯むような真似はしない。
「これからお楽しみの時間なんです。出て行ってもらえますか?」
そう言い放つと、オウガは私の元へ小走りで戻り胸元を掴みかかって私の体を引き起こす。弾みで上半身が起き上がるが、薬がまだ効いており力がうまく出ず、オウガに寄りかかるような体勢になってしまう。
「それとも、そこで見ていますか? この女がどんな風に乱れ嬌声を上げ、体を開くのか……。そこで見ていたいですかね? 俺はそれでもかまいませんよ。兄上が執着するものを手に入れられた喜びにますます興奮しそうだ」
下卑た笑みを浮かべながら、ねちっこい話し方でカザヤ様を揶揄うように挑発する。睨み続けていたカザヤ様がゆっくりと剣を抜いた。それを見て、オウガが片眉をあげる。
「おや、そんなことをしてもいいんですか? 兄上が少しでも動いたら、この女がどうなるか……。わからないなんて言わせませんよ?」
自分が優位に立っているのが分かっているので、その話し方もどこか余裕がうかがえる。
オウガは私を後ろから抱きかかえる様に立つと、ゆっくりと私の頬から首筋を撫でた。その不快感に体がソワッと鳥肌を立てる。
気持ち悪い。
吐き気がするくらいに不快だ。
カザヤ様に触れられた時とは大違いである。
「やめて……ください」
不快感に負けじと声を出すが、オウガは私の耳に顔を寄せた。
「白い肌だ。兄上はまだこの肌に触れていないのだろう? まず俺がどんな味がするのか味見してやるよ」
オウガの唇が私の首筋に触れた瞬間、カザヤ様が動いた。
衛兵がカザヤ様を止めるより一瞬早く、カザヤ様の剣先がオウガに届く。オウガは悲鳴を上げて肩から血を吹き出し、呻きながら膝をついた。
「衛兵!! 奴をとらえろ!!」
鬼のような形相で叫ぶオウガに、衛兵は少し動揺しつつもカザヤ様をとらえにかかる。
「お前たち、国王陛下を捕らえるというのか!?」
ワサト隊長の声が響くが、衛兵はオウガに逆らえないのかカザヤ様になだれ込むように向かっていった。
ワサト隊長とバルガがカザヤ様を庇うように前に出る。
「カザヤ様!!!」
嫌だ!! カザヤ様に触れないで!!
止めて!! 誰か助けて!!
言葉にならない心の声が悲鳴となって口から出る。
その時だった。
私の右腕につけていた腕輪が金色の光を発する。それは閃光のように周囲の目をくらませた。
部屋の中にいたもの全員が驚きと眩しさにうめき声を発して顔をそむける。その一瞬、腕輪から大きな蛇のような黒煙が立ち上った。
その蛇がオウガに襲い掛かる。
「ぎぃやぁぁぁぁ!!!」
オウガは絶叫を上げながら、黒い蛇の煙に飲み込まれていく。
黒い煙の中からしばらく悲鳴が聞こえていたが、ほどなくして静かになると黒い煙の蛇も霧散して消えて行った。
消えた煙の中から、床に倒れるオウガが見えた。
オウガは髪が真っ白になり、頬もこけ、人が変わったかのようにまるで生気がなくなった、うつろな目をしている。
「どういうことだ、これは……」
一瞬の出来事に、部屋の中にいた者たちは一様に唖然として、目の前の状況を飲み込めなかった。
腕輪はパリンという音を立てて割れ、床に落ちると粉々に砕け散った。それをただ茫然と見つめるしかできない。
一体何が起こったというのか。
さっぱり理解できなかった。ただ何か怖いことが起きてしまった。それだけはわかる。
静寂の中、一番最初に動いたのはカザヤ様だった。
「ラナ」
私の名前を呼びながら、震える体を抱きしめてくる。
「ラナ、大丈夫か?」
「カザヤ様……、今のは一体……?」
自分の腕と砕けた腕輪を交互に見るが答えは出ない。何が起こったのかただ唖然としていると、小さな笑い声が聞こえた。
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