目が覚めたら魔法使いだったので、とりあえず魔王を倒すことにした

佐倉ミズキ

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4、王様から命令キター

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フワフワ浮いたまま、あっという間に王宮へ。

どうやら、私が住んていた森は王宮の裏にあったらしい。
そりゃ、王宮管理の森も焼いちゃうよ。

「もう少し反省の態度を取りなさい」

騎士男は浮かびながらくつろぐ私に注意を促す。

「すみません。あの、私って処刑されちゃったりします?」
「聞き方軽いな! ゴホン、あー、いや。処刑はされないだろう」
「あ、それなら良かった」

さすがに転生して前世の記憶が蘇ったのに処刑は嫌だもんね。

もう少しこの魔法の国を満喫したい。

いつの間にか王宮の中に入り、立派な扉の前まで行った。

「失礼致します。件の魔法使いを連れて参りました」

騎士男は扉の前で高々に宣言し、そのままフワフワと浮いたまま中へ。

「凄い……」

何十メートルもある高い天井に広々とした部屋。窓ガラスはステンドグラス。
例えて言うなら結婚式の教会のよう。あれをもっと厳格化した感じ。
赤い絨毯の先には王様らしきおじさんが、一段高い所でこれまた立派な椅子に座って待っていた。

「陛下、これが例の魔法使いです」

私は浮かんだまま紹介される。

いや、そこは降ろしてよ!!

騎士男を睨むとゆっくり降ろされた。

浮かんでいるのも疲れるものね。

ふぅと一息つくと、王様が咳払いをした。

「娘、名は何と申す」

さすがに王様の前では緊張するな。

「里奈……じゃなかったリアーナです。まだ18歳」
「では、リアーナ。お主か? うちの森を焼いたのは」

王様は顔色を変えない。
怒っているのかな? さすがにこれはマズかったか。

ここは社畜時代に培ったわざ!
素直に謝罪! 何度も謝罪!

「大変申し訳ありませんでした!」

身体を90℃に曲げ、深々と頭を下げる。

勢いよく謝罪したので王様が一瞬たじろいだのが分かった。

「魔法が使えることが楽しくてついやり過ぎてしまいました。今後は他者の敷地を把握し、自分の敷地内で行うよう十分に気をつけてまいりたいと思います! さらに、音について苦情が出ているとのことですが、それについては朝は9時~夜は5時までとし、そちらも十分に配慮して参ります!」

早口で謝罪と今後の改良点について述べる。

王様はポカンとして目が点になっていた。

「陛下」

騎士男に声をかけられハッとする。

「ああ、まぁ反省しておるなら良い。だが、王宮管理の森を傷付けた処罰はせねばならん」
「はい……」

だよね。
肩を落とすと王様は言った。

「罰としてそなたに魔王討伐を命じる」

魔王……討伐?

まさか本当にファンタジーてしか聞かないようなセリフが出てきた。

「えっ、いるんですか? 魔王?」
「ああ、2級の資格をとったのなら聞いておるだろ? 北の山奥に住むと言われている魔王について」
「あ~……」

知らなかった。

本当に魔王とかいるんだ。

会ってみたいかも。どんななんだろう? 化け物みたいなのかな? 異様に大きいとか? 鬼のような感じ? 

会ったら、思いっきり魔法つかっていいのかな?

なんかちょっと……楽しそう。

「行きます!」

満面の笑みでそう答えた。




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