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黒幕
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「おーう、おっきしたのだー」
ぽっと、炎が灯る。
揺らめく炎髪が暗竜と戯れていた。
「みー。おはよう」
呼吸を三回。
幻想的な光景に、天の国に居るのかと錯覚してしまったが、やっとこ状況を理解する。
みーの両掌には、目に優しい弱火の炎。
「雷爪の傷痕」ではない、広目の部屋。
窓に目を向けると。
太陽だけでなく、鳥も獣も目覚めていない時間帯。
「けもけもはー、ずっとべったりのまったりだったんだぞー」
コウはまだ天の国から戻ってきていないのか、羨まし気な顔を向けてくるみー。
起き上がろうとすると、体が持ち上がらなかった。
体の調子が悪いわけではない。
確認するまでもない。
繋がった魂の感触。
柔らかな匂いに、気配。
「……ケモ」
毛布の内側に、猛獣がいた。
世界で最も凶暴で凶悪な「終末の獣」は、毛布からちょこんっと顔を出した。
「ケモ……」
「もしかして、ケモは寝ていないのかな」
「ケモ、ケモ」
前回と同じく昨日一日、僕は眠ったままだったようだ。
ただ、ケモはずっと僕と一緒に居たわけではなく、皆と出掛けたようだ。
その理由がケモから伝わってくる間際にーー。
「りゅうのはらんっ!」
炎幕を壊して跳び上がったみーは、手足を伸ばした格好のまま、お腹からホーエルの胸の上に落ちた。
みーの両掌から離れた炎は、中火になって、ふよふよと部屋の真ん中辺りで浮かんでいた。
「っ!?」
幾らみーが軽いとはいえ、「浮遊」を使っていないようだったので、それなりの衝撃はある。
軽くない衝撃にホーエルは、一気に覚醒。
そして。
起きしなの、眼前の仔炎竜の純炎に、絶句。
「っ……」
確かに、ホーエルにとっては、波乱の幕開け。
「氷絶」水準でホーエルが固まっていると、すりすりと撫で撫での併用炎撃。
みーの攻撃で、致命傷だったホーエルが脱力。
「わーう、わーもおっきさせてくるんだぞー」
言うが早いか、みーは「飛翔」で窓から飛び出していった。
「な、何だ……?」
「部屋に、炎……? みー様?」
あれだけ騒がしくしたのだから当然、コルクスとエルムスも目を覚ます。
しばらくしたら、みーに連れられてワーシュも遣って来るだろう。
「……ケモ」
ケモは、不思議な顔をしていた。
悲しんでいるわけでもなく、痛がっているわけでもなく。
ケモは隠しているわけではないようだが、上手く伝わってこない。
「ライルは、問題ないようだね」
ホーエルの声を聞いて、ケモはきゅっと僕の服を握った。
そこで僕は、やっとこ気付く。
布団の中で手を動かして、ケモの背中に。
撫でるのはまだ早いだろうから、手に軽く力を入れて、引き寄せて。
ケモを独占。
「ケモ~」
ふにゃっとケモの顔が緩んだ、というか蕩けた。
それから顔を擦り付けてくる。
皆、言いたいことはあるのだろうが、ワーシュが遣って来てからにするようだ。
時間があるようなので、昨日ーーではなく一昨日のことについて、ケモの温かさを感じながら振り返ることにする。
「砂糖事件」ーー頭がまだ回転していないので、簡単な名称にしておく。
一昨日は、多くの人に会い、頭を使い過ぎたので、「砂糖事件」のおかしさに気付くことが出来なかった。
それはもう、根本的なことから。
「知恵の極」であるヴァレイスナに、感覚に優れたラカールラカ。
この二竜が動けば、「砂糖事件」など風竜前の灯火。
氷竜まで加わったら、灯火は泣きながら逃げ去ることだろう。
おかしな妄想をしてしまったのは、「砂糖事件」のおかしさに、みーも係わっているからだ。
ヴァレイスナとラカールラカは、「砂糖事件」のことを知らなかったか、他の事案に感けて後回しにしていたのかもしれない。
みーもそう。
就寝していてもおかしくない時間帯に、竜の喉元の上空にいた。
偶々、用事があったのかもしれない。
残りは、ファスファール。
僕とケモへの依頼。
会話の流れしだいでは、ファスファールは僕たちに依頼しなかっただろう。
その後の、ヴァレイスナの魔法陣。
魔法陣の効果を教えてくれた、ザーツネルとフィヨル。
竜の喉元を勧めてくれた商会長。
竜の喉元で使われていた、粗悪品の砂糖。
「砂糖事件」に係わっていると思われる男が現場に。
抵抗した男の肘が当たって、倒れたみー。
みーが傷付けられて、衝動が抑えられなくなったケモ。
一連の、「砂糖事件」を目撃した、たくさんの竜の民。
最後には、ケモを受け容れてくれた老店主と若店主。
ーー偶然。
確かに、偶然に偶然が重なれば、一昨日の「砂糖事件」は起こり得る。
だが、同時に、この偶然と偶然を繋いだ者が居る可能性もまた、存在するのだ。
「……リシェだったら、嫌だ」
「ケモ?」
考えが雑然としていたので、ケモには伝わらなかったようだ。
仮に、裏にリシェが居るのだとしたら、目的はわかる。
いや、僕がわかるのは、僕たちに関係することだけだ。
リシェは善意だけでは動かない。
確実に、僕たちを利用して、他の何かも動かしている。
リシェには、フフスルラニード王とは異なる、怖さがある。
その一つは、何をするのかーー何をされるのかわからない恐怖。
ニーウ・アルンの手紙。
あれを読まなければ、そんな恐怖を感じずに済んだかもしれないのだが。
「み~んな~、え~んりゅ~」
「みゅーう、がんじがらめなみーちゃんなのだー」
寝巻きのワーシュが、みーと一緒に空中寝坊助。
「浮遊」の魔法を使っているのか、窓から一塊になって、ゆっくりと回転しながら入ってくる。
「先ずは、昨日のことを報告ーーなんだけど、ねっ!」
「っ……」
「ケモっ!?」
視界がブレた。
避けようと思えば避けられたが、そんなことをするわけにはいかない。
先ずは、問題ないことをケモに伝えてから、次に。
僕の脳天にゲンコを落としたホーエル。
「ホーエル。大丈夫か?」
「大丈夫……じゃないから、窓に……うぷっ」
口に手を当てて、フラフラと窓まで歩いていくホーエル。
叩かれた頭は痛いが、ホーエルのほうが何倍も苦しそうなので心配になる。
「氷翼」を使い続ける為に、過去の傷をそのままにしておくことをホーエルは選択した。
王都を出て、竜の国へ。
皆、何かを得て、そしてまた僕たちは選択する。
「ホーエルがあの調子だから、私から話そう。昨日、ケモのほうから、私たちと一緒に出掛けたい、と伝えてきた。ケモの言葉はわからなかったが、ケモの態度や仕草ーーそれと、シロップと拈華微笑の仲になっているワーシュが教えてくれた」
ワーシュとシロップの友情が理解し難いからか、エルムスは難しい言葉を使った。
「おややん? エルムスには、わからないのカナカナ~? あたしとシロップはワーシロだもんね~」
「だーっ! このっ堕落寝坊娘がっ! 語呂が悪ぃから、シロワーにしとけ!」
コルクスもまだ寝起きで、頭がしゃんとしていないようだが、僕とエルムスは指摘するのを控える。
シロップは朝が弱いのか、或いはまだ眠っているのか、ワーシュに頬擦りされても無反応だった。
恐らく部屋は、ファスファールが手配してくれた翠緑宮の一室だろう。
翠緑宮は、魔法が入り乱れた魔窟、ではなく竜窟のような場所だ。
大声を出しても大丈夫だとは思うが、これ以上続くようなら、ケモから注意してもらおう。
僕が注意するより、きっと効果があるはず。
「竜の喉元に行ってきたのだが、冒険者たちと同様に、竜の民もケモやシロップを受け容れてくれた。粗悪品の砂糖の一件を解決したことや、みー様を傷付けられたことでケモが怒ったことなどが、竜の民に好印象だったようだ」
どうやらエルムスも気付いているようだ。
物事がうまく運び過ぎていることに。
今回は、竜の国の内側でのことだった。
黒幕、などという存在がいたら、これだけでは終わらないだろう。
「すんっごかったわよ~、ケモちゃん人気は~。商店街の名前とかなかったみたいで~、喉元商店街からケモ商店街に変更待ったなしね~」
寝起きのワーシュは、いまいち信用が置けないので、コルクスを見る。
コルクスは概ね肯定する表情で、幾つか付け足した。
「喉元以外でも、問題なかったんだけどよ。気になったのは、噂ーー情報が正しく伝わり過ぎてる点だな。『使い魔になり立てだから、まだケモやシロップには触れないように』なんて注意点まで広まってる始末だ」
これはもう、リシェは隠す気はないのかもしれない。
それから、やけに静かだと思ったら、みーはワーシュに抱かれたまま眠っていた。
というより、みーは何故、こんな朝早くから僕たちの部屋に居るのだろう。
これまでより二つ時ほど早い時間帯。
「うぅ……、朝御飯は食べられないかもしれないね」
困ったような笑顔を浮かべたホーエルが戻ってきた。
その困った笑顔が、更に困ったーー渋々な表情になって、僕に向けられる。
どうやら、先程の続きのようだ。
「『おしおき』は終わったから、一言だけで済ますね。ライルは、無茶し過ぎだよ」
「ケモ……、ケモ?」
心配されていることが、嬉しく思える。
皆と、ケモ。
一緒に居られることの幸せを、ケモと共有。
皆はもう、理解してくれているのか、僕の言葉を待っていた。
「皆、心配してくれて、ありがとう。ただーー、本当に必要だと、大切だと思ったら、僕はまた無茶してしまうから。そこは今から謝っておく」
二度、死に掛けた。
僕の力ではない。
いや、僕の意思と力で。
足りない部分を皆に補ってもらった。
ケモと繋がることで、その意味に気付いた。
「説教は終わりってことで、あとはこれだな」
「これはーー、ケモのナイフ?」
「ケモ、ケモ、ケモノ」
コルクスは布を解いて、成れの果てを見せてくれる。
ケモのナイフだとすぐにわからなかったのは、竜が踏ん付けたかのように粉々に砕けていたからだ。
ケモが伝えてくれたので、ナイフがそうなってしまった原因を理解する。
「あのときの、腰の衝撃。ナイフが砕けたものだったのか」
「恐らく、ヴァレイスナ様が造られたナイフが、肩代わりとなったのだろう。ケモの膨大な魔力で許容量を超えたのかーー、ホーエルだけでなく、ヴァレイスナ様にも叱られてくるが良い」
「わかった。そうする」
溜め息一つに、僕への怒りと心配を乗せて吐き出すエルムス。
ワーシュとコルクスも、エルムスと同じ表情。
薄氷を踏むような状況。
ヴァレイスナの竜笑が思い浮かんだが、強ち間違いでもない。
竜に戦いを挑むような、無謀なことだった。
「ケモ……」
「うん。それでも無事だったのは、ケモとの絆があったからだよ」
「ケモ、ケモ~」
以前の僕にはない、変化。
皆の優しい表情が教えてくれる。
僕はこのまま、ケモとの絆を結わえていっていいのだと。
そうすることはもう、僕の、僕という存在を構成するものの一つだとーー疑いもなく信じられる。
リシェも同じなのかもしれない。
リシェの心はもう、竜の側に置かれている。
そこが僕とは違うところ。
僕は人間だ。
どうしようもないくらい、人間だ。
そして、そこから逃れることは出来ない。
僕と違って、リシェはそこから逃れることが出来る。
リシェがこのままならーー。
その時は、思ったより早く訪れるのかもしれない。
「皆、決まった?」
だが、それはリシェの物語だ。
僕たちは僕たちで、また一つ、選択を重ねなくてはならない。
「不思議よねぇ。竜の国は楽しーし、クラスニールを離れたことに未練なんてこれっぽっちもないつもりだったのにのに。……何か、遣り残してきたことがあるよーな、変な感じなのよねぇ」
時間が経過することで、見えてくるものもある。
降り積もって、気付く想いもある。
僕たちは、クラスニールで最低限のことをしただけだった。
争わず、反抗せず、ただ去っただけ。
そのことに一番、納得がいっていなかったのはワーシュだったのかもしれない。
「一度、帰るってのは賛成だな。置いてきちまった魔弓も回収してぇしな」
嘯いているが、コルクスが最も心配しているのは、子供たちのことだろう。
ランデルは、クラスニールの政策を踏襲して、魔石による資金も活用するはず。
それでも変わったことはある。
僕たちが竜の国に来たように、少なくない子供たちが環境の変化を強いられた。
自身の無力に一番、歯噛みしたのはコルクスだったかもしれない。
「私は、今でもわからない。何が正しかったのか、何が間違っていたのか。その答えを知る為には、戻らないといけないのだろう」
「そうだね。もう変えられない、変えるつもりもないけどーー。自分の目で見ないと、始められないのかもね」
僕やワーシュ、コルクスの年少組と違って、エルムスとホーエルは国の運営に携わっていた。
幽閉されていた僕と違って、最後まで見届けた。
魔石の鉱床のことを知らない二人。
自分たちが諦めることで国が発展する。
正しかったか、間違っていたか、そんな小さな枠組みではなく、自身が係わった結果を確かめなければ、振り切ることが出来ないのだろう。
「僕は、ニーウ・アルンの依頼を受けようと思う。東域に戻って、先ずは依頼を完遂する。それからクラスニールにーー。出来れば、ランデルとも話したい。皆にも、付いてきて欲しい」
「ケモ~っ!」
ケモが代わりに答えてくれたので、皆は笑うだけだった。
竜の国で遣り残したこと。
何となれば、ケモと同じくらいの温かさをくれたから。
マホマールに見透かされているようで、少し悔しくもあるが、今は、自身の想いに忠実であろうと思う。
「百竜」
「ーー何ぞ」
獣にも尻尾にも一応、確認しておくことにする。
スヤスヤで気持ちよさそうに眠っているみーに声を掛けると、待ち侘びていたかのように百竜は目を開けた。
望み薄だろうが、百竜に鎌を掛けてみる。
「百竜は、この一件にどこまで係わっているんだ?」
「む? ……何のことだ」
案外素直な百竜のことである。
本当に何も知らないようだ。
百竜に教えると、バレてしまうとリシェは判断したのかもしれない。
「百竜には世話になった。感謝する」
「……誤魔化しよったな」
「ケモ、ケモ、ケモノ」
「我はミースガルタンシェアリではないが、代理ということになっておる。なればこそ、其方らの前途を祝福しよう。ーーケモよ、せっかくの機会だ。世界を見てくるが良い」
竜の微笑み。
もしかしたら、竜の国で最後に見る、竜の姿だったかもしれない。
などと浸ってしまったのがいけなかった。
まだ用は済んでいなかったのに。
柔らかな残り火を振り撒いて、百竜は窓から飛んでいってしまった。
「というわけで、皆。僕は今日、マホマールの招待で暗黒竜に行ってくる。明日か明後日、竜の国を出国することになるから、ーー計画を伝える」
「ケモ、ケモ?」
「あれれん? 何の計画カクカク?」
「ガクガクじゃなけりゃいーけどな」
「不義理にならないように、世話になった方には後日、手紙が届くようにしておくか」
「計画の内容しだいでは、『雷爪の傷痕』には戻れないかもしれないのかな?」
これもリシェの手の内かもしれない。
それでもリシェに遣られっ放しのまま、竜の国から立ち去るわけにはいかない。
ニーウ・アルンの手紙。
その先にあるもの。
ーーおうさま。
僕はもう、あなたに憧れるだけの少年ではない。
「ケモっ、ケモ!」
「うん、そうだね。ケモにも手伝ってもらうよ」
クラスニールを旅立ったときとは異なる、予感に震えるような皆を前に、僕は計画について話をするのだった。
ぽっと、炎が灯る。
揺らめく炎髪が暗竜と戯れていた。
「みー。おはよう」
呼吸を三回。
幻想的な光景に、天の国に居るのかと錯覚してしまったが、やっとこ状況を理解する。
みーの両掌には、目に優しい弱火の炎。
「雷爪の傷痕」ではない、広目の部屋。
窓に目を向けると。
太陽だけでなく、鳥も獣も目覚めていない時間帯。
「けもけもはー、ずっとべったりのまったりだったんだぞー」
コウはまだ天の国から戻ってきていないのか、羨まし気な顔を向けてくるみー。
起き上がろうとすると、体が持ち上がらなかった。
体の調子が悪いわけではない。
確認するまでもない。
繋がった魂の感触。
柔らかな匂いに、気配。
「……ケモ」
毛布の内側に、猛獣がいた。
世界で最も凶暴で凶悪な「終末の獣」は、毛布からちょこんっと顔を出した。
「ケモ……」
「もしかして、ケモは寝ていないのかな」
「ケモ、ケモ」
前回と同じく昨日一日、僕は眠ったままだったようだ。
ただ、ケモはずっと僕と一緒に居たわけではなく、皆と出掛けたようだ。
その理由がケモから伝わってくる間際にーー。
「りゅうのはらんっ!」
炎幕を壊して跳び上がったみーは、手足を伸ばした格好のまま、お腹からホーエルの胸の上に落ちた。
みーの両掌から離れた炎は、中火になって、ふよふよと部屋の真ん中辺りで浮かんでいた。
「っ!?」
幾らみーが軽いとはいえ、「浮遊」を使っていないようだったので、それなりの衝撃はある。
軽くない衝撃にホーエルは、一気に覚醒。
そして。
起きしなの、眼前の仔炎竜の純炎に、絶句。
「っ……」
確かに、ホーエルにとっては、波乱の幕開け。
「氷絶」水準でホーエルが固まっていると、すりすりと撫で撫での併用炎撃。
みーの攻撃で、致命傷だったホーエルが脱力。
「わーう、わーもおっきさせてくるんだぞー」
言うが早いか、みーは「飛翔」で窓から飛び出していった。
「な、何だ……?」
「部屋に、炎……? みー様?」
あれだけ騒がしくしたのだから当然、コルクスとエルムスも目を覚ます。
しばらくしたら、みーに連れられてワーシュも遣って来るだろう。
「……ケモ」
ケモは、不思議な顔をしていた。
悲しんでいるわけでもなく、痛がっているわけでもなく。
ケモは隠しているわけではないようだが、上手く伝わってこない。
「ライルは、問題ないようだね」
ホーエルの声を聞いて、ケモはきゅっと僕の服を握った。
そこで僕は、やっとこ気付く。
布団の中で手を動かして、ケモの背中に。
撫でるのはまだ早いだろうから、手に軽く力を入れて、引き寄せて。
ケモを独占。
「ケモ~」
ふにゃっとケモの顔が緩んだ、というか蕩けた。
それから顔を擦り付けてくる。
皆、言いたいことはあるのだろうが、ワーシュが遣って来てからにするようだ。
時間があるようなので、昨日ーーではなく一昨日のことについて、ケモの温かさを感じながら振り返ることにする。
「砂糖事件」ーー頭がまだ回転していないので、簡単な名称にしておく。
一昨日は、多くの人に会い、頭を使い過ぎたので、「砂糖事件」のおかしさに気付くことが出来なかった。
それはもう、根本的なことから。
「知恵の極」であるヴァレイスナに、感覚に優れたラカールラカ。
この二竜が動けば、「砂糖事件」など風竜前の灯火。
氷竜まで加わったら、灯火は泣きながら逃げ去ることだろう。
おかしな妄想をしてしまったのは、「砂糖事件」のおかしさに、みーも係わっているからだ。
ヴァレイスナとラカールラカは、「砂糖事件」のことを知らなかったか、他の事案に感けて後回しにしていたのかもしれない。
みーもそう。
就寝していてもおかしくない時間帯に、竜の喉元の上空にいた。
偶々、用事があったのかもしれない。
残りは、ファスファール。
僕とケモへの依頼。
会話の流れしだいでは、ファスファールは僕たちに依頼しなかっただろう。
その後の、ヴァレイスナの魔法陣。
魔法陣の効果を教えてくれた、ザーツネルとフィヨル。
竜の喉元を勧めてくれた商会長。
竜の喉元で使われていた、粗悪品の砂糖。
「砂糖事件」に係わっていると思われる男が現場に。
抵抗した男の肘が当たって、倒れたみー。
みーが傷付けられて、衝動が抑えられなくなったケモ。
一連の、「砂糖事件」を目撃した、たくさんの竜の民。
最後には、ケモを受け容れてくれた老店主と若店主。
ーー偶然。
確かに、偶然に偶然が重なれば、一昨日の「砂糖事件」は起こり得る。
だが、同時に、この偶然と偶然を繋いだ者が居る可能性もまた、存在するのだ。
「……リシェだったら、嫌だ」
「ケモ?」
考えが雑然としていたので、ケモには伝わらなかったようだ。
仮に、裏にリシェが居るのだとしたら、目的はわかる。
いや、僕がわかるのは、僕たちに関係することだけだ。
リシェは善意だけでは動かない。
確実に、僕たちを利用して、他の何かも動かしている。
リシェには、フフスルラニード王とは異なる、怖さがある。
その一つは、何をするのかーー何をされるのかわからない恐怖。
ニーウ・アルンの手紙。
あれを読まなければ、そんな恐怖を感じずに済んだかもしれないのだが。
「み~んな~、え~んりゅ~」
「みゅーう、がんじがらめなみーちゃんなのだー」
寝巻きのワーシュが、みーと一緒に空中寝坊助。
「浮遊」の魔法を使っているのか、窓から一塊になって、ゆっくりと回転しながら入ってくる。
「先ずは、昨日のことを報告ーーなんだけど、ねっ!」
「っ……」
「ケモっ!?」
視界がブレた。
避けようと思えば避けられたが、そんなことをするわけにはいかない。
先ずは、問題ないことをケモに伝えてから、次に。
僕の脳天にゲンコを落としたホーエル。
「ホーエル。大丈夫か?」
「大丈夫……じゃないから、窓に……うぷっ」
口に手を当てて、フラフラと窓まで歩いていくホーエル。
叩かれた頭は痛いが、ホーエルのほうが何倍も苦しそうなので心配になる。
「氷翼」を使い続ける為に、過去の傷をそのままにしておくことをホーエルは選択した。
王都を出て、竜の国へ。
皆、何かを得て、そしてまた僕たちは選択する。
「ホーエルがあの調子だから、私から話そう。昨日、ケモのほうから、私たちと一緒に出掛けたい、と伝えてきた。ケモの言葉はわからなかったが、ケモの態度や仕草ーーそれと、シロップと拈華微笑の仲になっているワーシュが教えてくれた」
ワーシュとシロップの友情が理解し難いからか、エルムスは難しい言葉を使った。
「おややん? エルムスには、わからないのカナカナ~? あたしとシロップはワーシロだもんね~」
「だーっ! このっ堕落寝坊娘がっ! 語呂が悪ぃから、シロワーにしとけ!」
コルクスもまだ寝起きで、頭がしゃんとしていないようだが、僕とエルムスは指摘するのを控える。
シロップは朝が弱いのか、或いはまだ眠っているのか、ワーシュに頬擦りされても無反応だった。
恐らく部屋は、ファスファールが手配してくれた翠緑宮の一室だろう。
翠緑宮は、魔法が入り乱れた魔窟、ではなく竜窟のような場所だ。
大声を出しても大丈夫だとは思うが、これ以上続くようなら、ケモから注意してもらおう。
僕が注意するより、きっと効果があるはず。
「竜の喉元に行ってきたのだが、冒険者たちと同様に、竜の民もケモやシロップを受け容れてくれた。粗悪品の砂糖の一件を解決したことや、みー様を傷付けられたことでケモが怒ったことなどが、竜の民に好印象だったようだ」
どうやらエルムスも気付いているようだ。
物事がうまく運び過ぎていることに。
今回は、竜の国の内側でのことだった。
黒幕、などという存在がいたら、これだけでは終わらないだろう。
「すんっごかったわよ~、ケモちゃん人気は~。商店街の名前とかなかったみたいで~、喉元商店街からケモ商店街に変更待ったなしね~」
寝起きのワーシュは、いまいち信用が置けないので、コルクスを見る。
コルクスは概ね肯定する表情で、幾つか付け足した。
「喉元以外でも、問題なかったんだけどよ。気になったのは、噂ーー情報が正しく伝わり過ぎてる点だな。『使い魔になり立てだから、まだケモやシロップには触れないように』なんて注意点まで広まってる始末だ」
これはもう、リシェは隠す気はないのかもしれない。
それから、やけに静かだと思ったら、みーはワーシュに抱かれたまま眠っていた。
というより、みーは何故、こんな朝早くから僕たちの部屋に居るのだろう。
これまでより二つ時ほど早い時間帯。
「うぅ……、朝御飯は食べられないかもしれないね」
困ったような笑顔を浮かべたホーエルが戻ってきた。
その困った笑顔が、更に困ったーー渋々な表情になって、僕に向けられる。
どうやら、先程の続きのようだ。
「『おしおき』は終わったから、一言だけで済ますね。ライルは、無茶し過ぎだよ」
「ケモ……、ケモ?」
心配されていることが、嬉しく思える。
皆と、ケモ。
一緒に居られることの幸せを、ケモと共有。
皆はもう、理解してくれているのか、僕の言葉を待っていた。
「皆、心配してくれて、ありがとう。ただーー、本当に必要だと、大切だと思ったら、僕はまた無茶してしまうから。そこは今から謝っておく」
二度、死に掛けた。
僕の力ではない。
いや、僕の意思と力で。
足りない部分を皆に補ってもらった。
ケモと繋がることで、その意味に気付いた。
「説教は終わりってことで、あとはこれだな」
「これはーー、ケモのナイフ?」
「ケモ、ケモ、ケモノ」
コルクスは布を解いて、成れの果てを見せてくれる。
ケモのナイフだとすぐにわからなかったのは、竜が踏ん付けたかのように粉々に砕けていたからだ。
ケモが伝えてくれたので、ナイフがそうなってしまった原因を理解する。
「あのときの、腰の衝撃。ナイフが砕けたものだったのか」
「恐らく、ヴァレイスナ様が造られたナイフが、肩代わりとなったのだろう。ケモの膨大な魔力で許容量を超えたのかーー、ホーエルだけでなく、ヴァレイスナ様にも叱られてくるが良い」
「わかった。そうする」
溜め息一つに、僕への怒りと心配を乗せて吐き出すエルムス。
ワーシュとコルクスも、エルムスと同じ表情。
薄氷を踏むような状況。
ヴァレイスナの竜笑が思い浮かんだが、強ち間違いでもない。
竜に戦いを挑むような、無謀なことだった。
「ケモ……」
「うん。それでも無事だったのは、ケモとの絆があったからだよ」
「ケモ、ケモ~」
以前の僕にはない、変化。
皆の優しい表情が教えてくれる。
僕はこのまま、ケモとの絆を結わえていっていいのだと。
そうすることはもう、僕の、僕という存在を構成するものの一つだとーー疑いもなく信じられる。
リシェも同じなのかもしれない。
リシェの心はもう、竜の側に置かれている。
そこが僕とは違うところ。
僕は人間だ。
どうしようもないくらい、人間だ。
そして、そこから逃れることは出来ない。
僕と違って、リシェはそこから逃れることが出来る。
リシェがこのままならーー。
その時は、思ったより早く訪れるのかもしれない。
「皆、決まった?」
だが、それはリシェの物語だ。
僕たちは僕たちで、また一つ、選択を重ねなくてはならない。
「不思議よねぇ。竜の国は楽しーし、クラスニールを離れたことに未練なんてこれっぽっちもないつもりだったのにのに。……何か、遣り残してきたことがあるよーな、変な感じなのよねぇ」
時間が経過することで、見えてくるものもある。
降り積もって、気付く想いもある。
僕たちは、クラスニールで最低限のことをしただけだった。
争わず、反抗せず、ただ去っただけ。
そのことに一番、納得がいっていなかったのはワーシュだったのかもしれない。
「一度、帰るってのは賛成だな。置いてきちまった魔弓も回収してぇしな」
嘯いているが、コルクスが最も心配しているのは、子供たちのことだろう。
ランデルは、クラスニールの政策を踏襲して、魔石による資金も活用するはず。
それでも変わったことはある。
僕たちが竜の国に来たように、少なくない子供たちが環境の変化を強いられた。
自身の無力に一番、歯噛みしたのはコルクスだったかもしれない。
「私は、今でもわからない。何が正しかったのか、何が間違っていたのか。その答えを知る為には、戻らないといけないのだろう」
「そうだね。もう変えられない、変えるつもりもないけどーー。自分の目で見ないと、始められないのかもね」
僕やワーシュ、コルクスの年少組と違って、エルムスとホーエルは国の運営に携わっていた。
幽閉されていた僕と違って、最後まで見届けた。
魔石の鉱床のことを知らない二人。
自分たちが諦めることで国が発展する。
正しかったか、間違っていたか、そんな小さな枠組みではなく、自身が係わった結果を確かめなければ、振り切ることが出来ないのだろう。
「僕は、ニーウ・アルンの依頼を受けようと思う。東域に戻って、先ずは依頼を完遂する。それからクラスニールにーー。出来れば、ランデルとも話したい。皆にも、付いてきて欲しい」
「ケモ~っ!」
ケモが代わりに答えてくれたので、皆は笑うだけだった。
竜の国で遣り残したこと。
何となれば、ケモと同じくらいの温かさをくれたから。
マホマールに見透かされているようで、少し悔しくもあるが、今は、自身の想いに忠実であろうと思う。
「百竜」
「ーー何ぞ」
獣にも尻尾にも一応、確認しておくことにする。
スヤスヤで気持ちよさそうに眠っているみーに声を掛けると、待ち侘びていたかのように百竜は目を開けた。
望み薄だろうが、百竜に鎌を掛けてみる。
「百竜は、この一件にどこまで係わっているんだ?」
「む? ……何のことだ」
案外素直な百竜のことである。
本当に何も知らないようだ。
百竜に教えると、バレてしまうとリシェは判断したのかもしれない。
「百竜には世話になった。感謝する」
「……誤魔化しよったな」
「ケモ、ケモ、ケモノ」
「我はミースガルタンシェアリではないが、代理ということになっておる。なればこそ、其方らの前途を祝福しよう。ーーケモよ、せっかくの機会だ。世界を見てくるが良い」
竜の微笑み。
もしかしたら、竜の国で最後に見る、竜の姿だったかもしれない。
などと浸ってしまったのがいけなかった。
まだ用は済んでいなかったのに。
柔らかな残り火を振り撒いて、百竜は窓から飛んでいってしまった。
「というわけで、皆。僕は今日、マホマールの招待で暗黒竜に行ってくる。明日か明後日、竜の国を出国することになるから、ーー計画を伝える」
「ケモ、ケモ?」
「あれれん? 何の計画カクカク?」
「ガクガクじゃなけりゃいーけどな」
「不義理にならないように、世話になった方には後日、手紙が届くようにしておくか」
「計画の内容しだいでは、『雷爪の傷痕』には戻れないかもしれないのかな?」
これもリシェの手の内かもしれない。
それでもリシェに遣られっ放しのまま、竜の国から立ち去るわけにはいかない。
ニーウ・アルンの手紙。
その先にあるもの。
ーーおうさま。
僕はもう、あなたに憧れるだけの少年ではない。
「ケモっ、ケモ!」
「うん、そうだね。ケモにも手伝ってもらうよ」
クラスニールを旅立ったときとは異なる、予感に震えるような皆を前に、僕は計画について話をするのだった。
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