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炎の凪唄
絶雄の娘
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先程は、見ているようで、見ていなかったのかもしれない。
白髪に隠れるように、渇いた質感の、白磁の角が二本、額の上から生えていた。
竜人ほど、迫り出していない顎には、石すら噛み砕きそうな鋭い牙。
手の甲や首など、露出した箇所に、鱗が見える。
竜種の威厳に、息苦しさを覚え、絶雄から一旦、視線を剥ぐ。
部屋の右奥には、奥へと続く扉。
その横に、無造作に長剣が立て掛けられていた。
ーー甘い、匂い。
宝剣に奪われそうになった視線を、絶雄に戻した。
香水の匂い。
兎人の、ネーラが使っていた香水に似た匂いだが、こちらのほうが高級品のようだ。
偏見かもしれないが、絶雄が体臭を気にするとは思えない。
「さて、ハビヒよ。そろそろ話してくれないか」
俺はまだ、半信半疑なのだが、絶雄は、アルが「魔雄ハビヒ・ツブルク」であることを確信しているようだ。
あの、おかしな奇声ーー笑い声が決め手になったようだが、わけがわからない。
まさか、普段から、あんな風に笑っていたわけではないだろう。
「カステルとラクンさん。二人とも、わからないことがあるでしょうから、『ラクル・アル・ファリア』と『ハビヒ・ツブルク』について、話していきましょう」
アルが、俺を見る。
何が目的かはわからないが、絶雄よりも多く、俺の理解のために時間を割いてくれるようだ。
「十八年と、ちょっと前。僕は、『ラクル・アル・ファリア』として、生を享けました。ファリア家に、子爵家に生まれた、アル。アルについて、特に語ることはありません。そこそこに優秀な、明るい子供でした。野心家の父は、陰謀に巻き込まれ、母を道連れに処刑されました。訃報を聞いた、その日の夜。突如、『ハビヒ・ツブルク』の記憶が入り込んできたのです」
「記憶ーーと言ったが、そんな生易しものではないだろう? それだけで、わしが知っているハビヒにはならん」
絶雄の言う通りだ。
記憶を得ただけで、魔雄になれるはずがない。
「魔雄」と同等の、魔力量と才能を「アル」が具えていないと、宝の持ち腐れになる。
「ええ、カステルの推測の通りです。あの日の夜、『アル』は、『ハビヒ・ツブルク』として、生を享けました。『アル』の記憶は持たないまま、千と三年前に、魔王を倒す二十三年前に、生まれ落ちたのです。そうして、『ハビヒ・ツブルク』として、百十三年の生を全うすることになります」
「ちょ、ちょっと待ってくれ、アル。今、頭の中を整理するから……」
「はい。どうぞ、ごゆっくり」
楽しんでいる、アル。
あえて、わかり易いように説明しなかったのかもしれない。
一旦、頭を空っぽにし、情報を整理する。
ーーつまり、十歳のアルは、そこから千と三年前の過去に遡り、魔雄としての人生を歩んだ。
有り得ない、という考えは捨てる。
実際に、起こり得ないことが起こっているのなら、常識は邪魔になる。
アルは、記憶、と言った。
過去に、戻ったのではないのかもしれない。
明晰夢なのか、現実感を伴った幻なのか、十歳のときに体験したのだろう。
過去か現在か。
それは、そこまで重要ではない気がする。
すでに起こってしまったのだから。
本当の問題は、別にある。
「『ハビヒ・ツブルク』として天寿を全うしたあと、今度は、『ハビヒ・ツブルク』の記憶を持ったまま、あの日の夜の、十歳の『アル』として、そこにいました。本当に、一瞬の出来事でした。『アル』として十年。そこから『ハビヒ・ツブルク』として百十三年。僕は、『アル』であるはずなのに、『ハビヒ・ツブルク』の人生のほうが濃厚だったので、『ハビヒ・ツブルク』が『アル』として生まれ変わったような気がしています」
十年と、百十三年。
優秀な、明るい少年と、英雄として生きた、魔雄。
『アル』という少年は、『ハビヒ・ツブルク』に塗り潰されてしまったのかもしれない。
ーー『アル』の記憶を持った、『ハビヒ・ツブルク』。
それが、正解に一番近いのかもしれない。
「アルでもわからないことは、俺にもわからない。ーー問題なのは。その夢か現実なのか判然としないものを経験したあと、アルは、魔雄の魔力と才能を受け継ぐ、というより、享け継ぐ、のほうが良いか? アルにはなかった力を、手に入れたということだな」
「そう、問題は、そこです。そして、この事と関連しているかもしれない事柄を、カステルに宛てた、もう一通の手紙に、懸念として記しておきました」
「ぐぅ……」
「そのことは、あとで追及するとして、ハビヒ・ツブルクのことを語りましょう」
竜種の生殺しならぬ竜種が生殺し。
ーーあくどさが青天井。
魔王を倒すために、世界を味方につけた、魔雄の手練手管が垣間見える。
「後年、四英雄は、それぞれに誤解やら曲解やらを、ふんだんにされてきました。さて、ラクンさん。魔雄について、知っていることを教えてください」
まさか、魔雄本人(?)から、そんなことを聞かれることになるとは、夢にも思っていなかった。
「人種の、守護神。大聖人。魔法の番人。アオスタの誇り。アオスタの良心。魔雄ハビヒ・ツブルクが、四英雄の一人だったお陰で、獣種からの迫害はなくなった。魔雄の活躍で、弱小種という汚名を撥ねつけ、地位を確立することができた。ーー他にも幾らでも、伝説となった英雄への賛辞が尽きないことは、言を俟たない」
「そうなるとは思っていましたが、随分と脚色されたものです」
アルは、カステルを一瞥する。
事実を知っていたはずの絶雄は、これらの賛辞を、魔雄への崇拝を放置した。
「アオスタの、希望となっていたのだ。それを奪うなど、できるものか。彼らには、立ち直ってもらう必要があった。古代期の混乱を、再び現出させるようなことは、防がねばならなかった」
仲間としての、王としての、決断。
様々な葛藤があったことだろう。
「というわけで、ラクンさんには。人種の代表として事実を知ってもらい、ぶった切られてもらおうと思います」
「やめてくれ」
俺は、素直な気持ちを吐露した。
「はい。ラクンさんから了承を得られましたので、始めるとしましょう」
「今は、ラクン、と呼んでおこうか。ーーラクンよ。これからハビヒが語るのは、過去のこと。過ぎ去った出来事だ。お主は、感受性が豊かなようだから、必要以上に重く受け止めるな」
やはり、ノウ、というファミリーネームでバレていたようだ。
だが、今は、そんなことはどうでも良い。
絶雄の言葉を、一字一句、胸に刻み込む。
「戦災孤児だったのか、親に売られたのか。記憶からも、資料からも、辿ることはできません。僕は、三歳くらいのときに、『箱』に投げ入れられました」
「ーー『箱』?」
「僕は、そう呼んでいました。正確には、そんな心象を持っていました。森の中、四方を壁で囲まれていました。百と四歩、百と七歩、九十八歩、百と一歩だったので、だいたい正方形ですね。『箱』には、三十人くらいの、僕と同い年くらいの、アオスタの子供が入れられていました。二日に一回、二人の子供が連れて行かれ、不定期に、減った分の子供が補充されました。これは目安で、変動するときもありました」
明らかに、おかしな状況。
碌でもないと、予見できてしまう。
俺は、アルが語るのを、本気で止めなかった。
最後まで耳を塞がないのが、最低限の礼儀だ。
「餌は、与えられませんでした。死ぬ前に、或いは死にそうな子供は、優先的に連れて行かれたので、必要なかったのでしょうね。連れて行かれたら不味いーーと、僕は、本能的に悟りました。生きるために、連れて行かれないために、すべてのことをやりました。味覚がおかしくなったのも、これが原因でしょうね。栄養が偏っていたでしょうから、それもあるでしょうが。ーー僕は、嘘が嫌いですので、隠さずに、はっきりとは言いません。『箱』の中にあったものは、すべて、食べ物の、候補でした。土、植物、虫、それからーー」
嘘は言わない、が、すべてを言わない。
嘘吐きな、アルが選んだ、手段。
「箱」の中にあったもの。
生きるのに、最も理に適った、食糧源。
俺は、全身に入りそうになった力を、精神力を総動員し、緩めた。
「ただ、生きるだけに、汲々とした時間も過ぎて、到頭、大人に見つかってしまうことになります。大人は、いつも昼にやってくるのに、その日は、例外的に、夜でした。ーーやってきた彼らは、おかしなことに気づきます。松明の明かりの先に、有り得ない子供がいたからです。彼らは、目を疑ったことでしょう。そこには、大き過ぎる、子供がいたのです。『箱』に入れられてから、五年ほど経っていたでしょうから、僕は、八歳くらいになっていたのです」
想像もできない。
何かを、言うこともできない。
俺では、圧倒的に足りない。
アルに届く言葉を、俺は、持っていない。
「僕は、連れて行かれました。恐怖もありましたが、やっと終わってくれると、安堵もありました。ーーもしかしたら、ラクンさんは、『箱』に子供を入れていたのは、獣種かと思っているかもしれませんが、違います。僕たちを連れて行った、大人も、その先にいた者たちも、アオスタでした」
獣種の可能性。
それは、考慮していなかった。
獣種は、人種を奴隷にすることはあるが、それだけだ。
獣としての本能なのか、人種のような、弄ぶようなことは、ほとんどない。
「僕たちは、奴隷以下でした。奴隷は、働き、その対価として、食事を与えられます。僕たちは、働かず、食事も与えられませんでした。連れて行かれた先で、やっと、氷解しました。僕たちは、餌、だったのです。言葉通りの、餌。魔獣の、餌でした。ーー己の強さのみを頼りとする傾向のある獣種と異なり、人種は、自分より強い者を服従させたり、檻に閉じ込めて観賞したりといったことを行います」
悪癖ーーという言葉で片づけられない、人種の行い。
恐らくは、人種の弱さが、根源にある。
ーー人種の代表。
そんなことを、アルが言うから。
無意識に、背中が丸まってしまった。
しかし、膝に手を突き、視線だけはアルに固定する。
「檻の中に、入れられました。魔獣が、いました。『箱』の中で、生き抜いていた、僕。そんな珍種に、檻の外のアオスタは、盛り上がっていました。ーーこのときの、僕の気持ちを、正確に言い表すのは、難しい。透明なーー何かでした。目に映るものが、理解できませんでした。哀しかったのかもしれません。もしかしたら、怒りのようなものも、あったのかもしれません。……ただ、消えてしまえば良いと、思いました。何もなくなってしまうのが、一番良いことなのだと、僕は、目を閉じました。ーーというわけで、三人との出逢いまでを、カステル、お願いします」
「わしら三人は、その頃、冒険者として活動していた。魔法か、兵器か。アオスタが、獣種を倒すべく、何かを開発している疑惑があると、調べてくるのが依頼だった。ーー件の、その街に到着したときだった。全力で防いだ。わしらが全力でやらねばならぬほどの、魔法ーーというよりは、魔力を用いた、何らかの現象だった。始めは、アオスタが開発した兵器かと思ったが、何もなくなってしまった、塩のような乾いた大地にいたのは、一人のアオスタの子供だった」
「後に知ったことですが、その街には、一万人ほどの、人種がいたそうです。全員、僕が殺しました。さて、大虐殺ですが、あとで世界を救ったので、許してもらえるでしょうか。ーーそこら辺は、個人の判断に任せます。さてさて、そんな魔力暴走の中心にいたので、僕は、ぼろぼろでした。発現した魔力に、無理やり生かされている状況でした。そこで、三人と出逢わなければ、遠くない内に、僕も消えてしまっていたでしょう」
「恥ずかしいことにな、二対一だった。後顧の憂いをなくそうとする、わしと、子供を助けようとする、ヌーテとサッソ。何かあったときは、多数決で決めていたから、わしも渋々と二人に従った。ーー何故か、ハビヒは、わしに懐いたので、二人の嫉妬が痛かった」
爆雄と剣雄の嫉妬だけに、物理的にも痛かったのかもしれない。
「三人でも、僕を元通りにするには、時間が掛かりました。そこで、先程の、カステルがハビヒであると、確信した、笑い声です。どうです、カステル? 結構、上手かったでしょう」
「まあな。現実には、もっと掠れていたが、そこまで再現するのは無理だろう。喉が、体の内までやられていたからな。どんな笑い声とて、笑えるようになるまで体が、何より、心が回復してくれたと、わしらは嬉しかった。ハビヒが回復したあと、どこかのアオスタの、まともな居住地にでも託そうかと思ったのだが、またもや二対一だった。ハビヒを気に入った、ヌーテとサッソが、何より魔法の才能を惜しんだヌーテが、強硬に反対した」
「ヌーテの判断は、間違っていませんでした。いえ、間違っていたなどと、そんなことをさせるわけにはいきません。魔王を倒すには、四人、必要でした。誰か一人、欠けていても、魔王は倒せませんでした」
「わしらは、英雄になんぞ、なりたくはなかった。人知れず、四人で魔王を倒す算段だった。だが、魔王を倒すには、四人が万全の態勢で臨む必要があった。英雄に、ならざるを得なかった。ーーそこからは、ハビヒの独壇場だ。一年と経たず、世界を熱狂の渦に巻き込んだ」
「ーー魔王は、本当にいたのか?」
二人が、俺を見る。
仕舞った。
絶雄と魔雄に、最前線に立った者に、どれだけ阿呆なことを聞いているのだろう。
これだけだと、ただの間抜けなので、気になったことを、慌てて言葉を継ぐ。
「魔王は、四英雄全員と、同じくらい強かったんだろう? そんな奴が倒されるんだから、もしかして、魔王は、有り得ないくらいのーーお馬鹿さんだったのか?」
「ぶふっ、が…はっはっはっ、くひっ、がっかっかっかっ、そうくるか! 魔王は、お馬鹿さんか! 正にっ、言い得て妙! 後世に、これほどの罵倒を受けようとは、魔王とて想像だにせぬだろう!」
ツボだったのか、抱腹絶倒という言葉の、格好の見本となる絶雄。
絶雄が大ダメージを受けて役立たずになったので、軽傷のーー失笑しただけの魔雄を見る。
「ラクンさんの、言う通りですね。僕が魔王だったら、世界なんて簡単に、ぺちょん、で一巻の終わりです。ーーそうですね。ラクンさんは、家畜と会話しようと思いますか?」
「それは……、言葉を掛ける、くらいのことはするかもしれないが」
「ええ、そうでしょう。普通は、会話しようとは思わないものです。相手から言葉が返ってくるなど、思いもしないでしょうから。ーー魔王も、そうだったのだと思います。魔王は、僕たちを、対等な相手とは見做していないようでした。会話に応じてくれなかったので、魔王の目的もわかりません。僕たちに倒されるまで、ずっと、支配領域の奥にいてくれました。僕たちからすれば、賭けでした。魔王が居場所を変えるだけで、僕たちは、その分、消耗してしまい、魔王を倒せなかったのですから」
「それは、もう、四英雄に倒してもらいたいがために、あえてそこにいたという水準だな」
「そう見えますが、そうではなかったようです。途中から、魔王には、焦りが見えましたから。敗色が濃厚となってからは、死に物狂いでしたね。あれらの行動からしても、自身が倒されるのは、意想外だったようです」
床に転がっていた絶雄が長椅子に戻るのを待ってから、アルは、言葉を継ぐ。
「史上稀に見る、ラクンさんのボケで、話が逸れてしまいましたが。今少し、誤解がないように、僕のことを語っておかないといけません」
人の素朴な疑問を、よくも悪し様に言ってくれるものだ。
俺の疑問は、特別なものではない。
魔王不在説は、後世、幾らでも唱えられてきた。
それを四英雄に、面と向かって言った、初めての人物かもしれないというだけだ。
「話した通りで、僕は、まともな生育環境にありませんでした。ーー言葉は多く用いません。僕を傷つけたのは、人種で、救ってくれたのは、獣種でした。僕は、アオスタが嫌いになりました。反面、三人は、僕のすべてでした。僕自身よりも、大切でした。晩年になって、アオスタとも交流を持ちましたが、今も、アオスタが汚らわしい存在に見えています。たぶん、アルとしての人生を全うすれば、嫌いではなくなるくらいには、なってくれると思います」
人種だから、人種を嫌わない。
そんな保証など、どこにもないというのに。
アルの言葉を聞くまで、まったく考慮に入れていなかった。
獣種と、人種。
その垣根は、思っている以上に、低いのだ。
俺は、それを知っている、はずだったのに。
「その内、僕のことを、もっと話すことがあるかもしれませんが、今はここまでに。次は、三人のことを話すのですが、その前にーー。カステル、紹介してください」
アルは、扉に視線を向ける。
「ハビヒなら、気づいて当然か。扉の向こうで、わしらの話を盗み聞きしながら、魔力が揺らいでいたからな」
先程、見たときには気づけなかったが、扉が少し開いていた。
ーー甘い匂い、と。
思い至った、直後に、二人の獣種が部屋に駆け込んでくる。
人猫と犬人のーー女だ。
「ハビヒ様!」
犬人が、アルの左腕にーー俺が座っている反対側の腕に飛びつくと、少し遅れ、人猫が右腕を、ぎゅっと、もう放さないとばかりに、力強く胸に抱え込む。
まともに考えられたのは、ここまでだった。
「ーーぃっ!?」
胸が、焼かれた。
そう思えるほどの、衝動。
犯したいと、欲望をぶちまけないと、おかしくなってしまう。
抑制の利かない、これほどまでに激しい欲情は、初めてだ。
もう、駄目だ。
人猫の尻尾が、俺の手に触れた瞬間、弾けさせた。
「がぁっ!!」
歯が折れるかもしれない。
それでも、構わずに自分の頬を、何度も、何度でも、両手でぶっ叩く。
それから足をぶん殴り、動かし、右にあった、一人掛けソファに体を投げ出す。
「それ、ボルネア、オルタンス。駄々洩れになっているぞ、引っ込めんか」
「おいた、をしたので、おしおき、が必要ですね」
羨ましい。
未だ衝動はなくならないので、本音が駄々洩れになってしまう。
「ぅにゃ~っ!?」
「ぅわぁん!?」
尻尾を、ぐにっ、とつかまれ、二人は、鳴き声を上げる。
獣種は、突発的な出来事だったり、困ったり弱ったりしたときに、古き名残の、獣の性質を表すことがある。
と、思ったのも、ここまで。
尻尾を愛でられた所為で、より濃厚な何かが二人から溢れたようで、俺は足を踏み鳴らし、体を左右にガタガタさせながら耐え抜く。
「このっ、アルっ、馬鹿っ、アホっ、ツヴィングリの鍋に飛び込んでこい!!」
「実は、魔雄としての魔力は戻ったのに、味覚は、アルのままなんです。色んな料理を味わえるようになった反面、煮込みを食べられなくなってしまいました」
「それは、良いことではないのか?」
「そこは、難しいですね。何を食べても、ツヴィングリほど美味しくはありません。ただ、三人と一緒に食べられないのなら、ツヴィングリも、そこまで美味しくないのかもしれませんが」
平然と会話している、絶雄と魔雄。
アルに叱られたのが効いたのか、或いは、アルに可愛がられ、出し尽くしたのか、俺の内側が、暴れ回っていた衝動が、体に溜まっていた熱が抜けていく。
「アオスタでも、かなりのものだっただろうに、よく我慢したな」
「……ということは、獣種だと、もっと酷いのか? ……あ、いや、……ですか?」
「ハビヒの共連れなら、敬語などいらん。公式な場所なら、言葉に気をつけんと、わし以外の者に殺されるかもしれんがな」
絶雄が気さくな人柄だったので、気が緩んでいた。
本来なら、近づくことは疎か、獣国に入ることさえできない。
今から敬語を使えば、絶雄は、幻滅するだろう。
そうじゃない。
俺は、絶雄が感情を害すほどの、相手ではない。
取るに足らない、一人の、人種の男。
俺など、泣けてくるほどに、場違いな存在なのだ。
「ハビヒとは、逆だな。赤子の頃から、症状を呈していた。わしが引き取って、娘とした。ボルネア・グランデとオルタンス・グランデ。わし以外の獣種が苦手になったのは、仕方がないことだが。……話している、わしが、楽し気に、嬉しそうに見えたのか、思い出の中の人種に、二人は恋してしもうた」
「もう大丈夫ですわ、ハビヒ様! あたしたちが、ずっとお傍にいます!」
「心配いらない! ずっと一緒にいる!」
やわらかい喋りが人猫で、ぶっきらぼうなほうが、犬人。
ーー純白の、毛並みの美しい、ボルネア。
金瞳が妖しさを醸す、美貌の猫種。
人猫なので、猫人よりも、顔立ちが人種に近い。
オルタンスより背が低いが、より女らしい体つき。
さすがは、魔雄と呼ばれた男。
大きな胸を押しつけられているのに、表情一つ、変わっていない。
ーー茶色と白の斑の、精悍さを併せ持った、犬種の美人。
中性的な魅力もある。
黒瞳には、確固たる決意が漲っている。
人犬よりも犬寄りの犬人はーー獣人は、見慣れていない人種からすると、違和感を生じることがあるが、彼女には、それを感じない。
オルタンスは、人犬に近い犬人のようだ。
見た目からでは、人獣と獣人を見分けられないことがある。
俺の、育ての親とも言える兎人ーーネーラから聞いたところによると、骨格や、体の作りが異なっているらしい。
「絶雄様。……嬉しそうだな」
満面の笑みを浮かべている。
通常なら、目の前で、二人の愛娘が男にうつつを抜かしているのだから、心の内は煮え滾っていても不思議はない。
二人の娘と同様に、絶雄からすれば、ハビヒも息子のようなものなのだろう。
また、それだけではなく。
絶雄に、娘がいるなどと、聞いたことはない。
恐らくは、それに纏わる何かが、解消されたからこその笑みなのだろう。
「ははっ、嬉しいに決まっている。心配事の一つが、いいや、二つか? 消えたのだからな。二人には、魔法と、魔力操作を仕込みはしたが、完全に症状を抑え込むには至らなかった。ハビヒなら、二人に適切な対処を教え込むことができるし、何よりーー。これで二人は嫁に行けて、幸せになれる」
「お父様!」
「父上!」
涙ぐむ、三人。
感動的な場面なのかもしれないが、俺の心は真っ白だった。
俺は、邪魔者。
二人から、そんな気配が、ぷんぷんと漂ってきていた。
敵というか、嫌悪というか、彼女たちから、尖ったものが向けられている。
表向き、俺は、存在しないものとして扱われている。
「あとは、アルが、ミュスタイアの王位を継げば、絶雄様は、万々歳だな」
絶賛除け者中なので、嫌味を言うくらいは許してほしい。
「そうですわ! 戴冠式と併せて、結婚式も行ってしまいましょう!」
「決まった! すぐ決行しよう!」
見兼ねた絶雄は、左右の人差し指で、空気を弾く。
それだけで、ボルネアとオルタンスの顔に、突風が吹きつける。
「みゃっ?」
「をんっ?」
溜め息を吐いた絶雄は、アルのことを俺よりも理解している王様は、残念そうに長椅子に凭れ掛かる。
「そうなってくれたなら、どれだけ良いものか。ハビヒは、わしの頼みを断らない。だから、わしの後を継いでミュスタイアの王になってくれ、などとは口が裂けても言えん」
などと言いつつ、しっかりと願望を口にする王様。
無理だとわかっていても、言わずにはいられなかったのだろう。
そんな、一縷の望みを、絶雄の頼みを、魔雄は一刀両断にする。
「これから僕は、ラクンさんと一緒に、『魔雄の遺産』がある場所に向かいます。二人はーーボルネアとオルタンスは、僕たちについてきますか?」
二人の悪意が、突き刺さるどころか、貫通する。
ーーそのまま帰ってくるな。
見送ったが、無駄だった。
量産体制が整い、尽きることのない悪感情が、俺をめった刺しにする。
「ーーボルネア、オルタンス。心して聞くように。わしらはな、強すぎるのだ。通常の獣種とも、人種とも異なる。規格外なのだ。わしらは、存在しているだけで、周囲に、様々に影響を及ぼしてしまう。それは、子種とて、同じ。子を生せないだけなら、まだ増しで、下手すれば、相手は、耐え切れずに死んでしまう」
「ということは、絶雄と魔雄の相手は、爆雄と剣雄しかいなかったというわけか?」
この場面で茶々を入れられるのは俺だけだったので、しっかりと役目をこなす。
「っ! まさかまさかっ、ハビヒ様はっ、爆雄様と仲良しだったのかしら!?」
「っ! そんなそんなっ、父上から剣雄様を寝取っていたなんて!?」
「心配せずとも、僕は、童貞です。アルとしてだけでなく、ハビヒのときもです」
限界まで膨らんだ風船から、空気が抜けるように大人しくなる二人。
それから、要らない情報まで付け足してくれる。
「『千恋』との二つ名がある、カステルも、童貞継続年数世界一です」
過去に、千三百年も生きた存在は伝えられていないから、確かに、世界一だろう。
不名誉な称号と、思うかもしれないが、そうではない。
ハビヒが言った、ーー「千恋」。
剣雄に、生涯、貫き通した愛は、夙に有名である。
幻想団がミュスタイアに公演に来た際に、必ず上演されるのが、絶雄と剣雄の、愛の物語である。
大抵は、事実の通りに、悲恋として語られるのだが、そこはそれ、様々なバージョンがある。
替え玉説から、実は、二人には子供がいた、などなど、多種多様だ。
「わしのことは、どうでも良い。もう一度、言うがな、ボルネアとオルタンスは、今のままでは駄目だ。ハビヒの愛を欲するのなら、ハビヒの許で、これまで以上に研鑽に励み、強くなるのだ。ーーハビヒの子を、産めるようにな」
「はいっ! お父様!」
「父上。確と、心に刻んだ」
これも家族の団欒なのだろう。
どう反応したら良いかわからなかったので、俺は、騒ぎが一段落するまで、肌もごつごつとした暖炉の近くの壁さんと、愛を語らうことにした。
白髪に隠れるように、渇いた質感の、白磁の角が二本、額の上から生えていた。
竜人ほど、迫り出していない顎には、石すら噛み砕きそうな鋭い牙。
手の甲や首など、露出した箇所に、鱗が見える。
竜種の威厳に、息苦しさを覚え、絶雄から一旦、視線を剥ぐ。
部屋の右奥には、奥へと続く扉。
その横に、無造作に長剣が立て掛けられていた。
ーー甘い、匂い。
宝剣に奪われそうになった視線を、絶雄に戻した。
香水の匂い。
兎人の、ネーラが使っていた香水に似た匂いだが、こちらのほうが高級品のようだ。
偏見かもしれないが、絶雄が体臭を気にするとは思えない。
「さて、ハビヒよ。そろそろ話してくれないか」
俺はまだ、半信半疑なのだが、絶雄は、アルが「魔雄ハビヒ・ツブルク」であることを確信しているようだ。
あの、おかしな奇声ーー笑い声が決め手になったようだが、わけがわからない。
まさか、普段から、あんな風に笑っていたわけではないだろう。
「カステルとラクンさん。二人とも、わからないことがあるでしょうから、『ラクル・アル・ファリア』と『ハビヒ・ツブルク』について、話していきましょう」
アルが、俺を見る。
何が目的かはわからないが、絶雄よりも多く、俺の理解のために時間を割いてくれるようだ。
「十八年と、ちょっと前。僕は、『ラクル・アル・ファリア』として、生を享けました。ファリア家に、子爵家に生まれた、アル。アルについて、特に語ることはありません。そこそこに優秀な、明るい子供でした。野心家の父は、陰謀に巻き込まれ、母を道連れに処刑されました。訃報を聞いた、その日の夜。突如、『ハビヒ・ツブルク』の記憶が入り込んできたのです」
「記憶ーーと言ったが、そんな生易しものではないだろう? それだけで、わしが知っているハビヒにはならん」
絶雄の言う通りだ。
記憶を得ただけで、魔雄になれるはずがない。
「魔雄」と同等の、魔力量と才能を「アル」が具えていないと、宝の持ち腐れになる。
「ええ、カステルの推測の通りです。あの日の夜、『アル』は、『ハビヒ・ツブルク』として、生を享けました。『アル』の記憶は持たないまま、千と三年前に、魔王を倒す二十三年前に、生まれ落ちたのです。そうして、『ハビヒ・ツブルク』として、百十三年の生を全うすることになります」
「ちょ、ちょっと待ってくれ、アル。今、頭の中を整理するから……」
「はい。どうぞ、ごゆっくり」
楽しんでいる、アル。
あえて、わかり易いように説明しなかったのかもしれない。
一旦、頭を空っぽにし、情報を整理する。
ーーつまり、十歳のアルは、そこから千と三年前の過去に遡り、魔雄としての人生を歩んだ。
有り得ない、という考えは捨てる。
実際に、起こり得ないことが起こっているのなら、常識は邪魔になる。
アルは、記憶、と言った。
過去に、戻ったのではないのかもしれない。
明晰夢なのか、現実感を伴った幻なのか、十歳のときに体験したのだろう。
過去か現在か。
それは、そこまで重要ではない気がする。
すでに起こってしまったのだから。
本当の問題は、別にある。
「『ハビヒ・ツブルク』として天寿を全うしたあと、今度は、『ハビヒ・ツブルク』の記憶を持ったまま、あの日の夜の、十歳の『アル』として、そこにいました。本当に、一瞬の出来事でした。『アル』として十年。そこから『ハビヒ・ツブルク』として百十三年。僕は、『アル』であるはずなのに、『ハビヒ・ツブルク』の人生のほうが濃厚だったので、『ハビヒ・ツブルク』が『アル』として生まれ変わったような気がしています」
十年と、百十三年。
優秀な、明るい少年と、英雄として生きた、魔雄。
『アル』という少年は、『ハビヒ・ツブルク』に塗り潰されてしまったのかもしれない。
ーー『アル』の記憶を持った、『ハビヒ・ツブルク』。
それが、正解に一番近いのかもしれない。
「アルでもわからないことは、俺にもわからない。ーー問題なのは。その夢か現実なのか判然としないものを経験したあと、アルは、魔雄の魔力と才能を受け継ぐ、というより、享け継ぐ、のほうが良いか? アルにはなかった力を、手に入れたということだな」
「そう、問題は、そこです。そして、この事と関連しているかもしれない事柄を、カステルに宛てた、もう一通の手紙に、懸念として記しておきました」
「ぐぅ……」
「そのことは、あとで追及するとして、ハビヒ・ツブルクのことを語りましょう」
竜種の生殺しならぬ竜種が生殺し。
ーーあくどさが青天井。
魔王を倒すために、世界を味方につけた、魔雄の手練手管が垣間見える。
「後年、四英雄は、それぞれに誤解やら曲解やらを、ふんだんにされてきました。さて、ラクンさん。魔雄について、知っていることを教えてください」
まさか、魔雄本人(?)から、そんなことを聞かれることになるとは、夢にも思っていなかった。
「人種の、守護神。大聖人。魔法の番人。アオスタの誇り。アオスタの良心。魔雄ハビヒ・ツブルクが、四英雄の一人だったお陰で、獣種からの迫害はなくなった。魔雄の活躍で、弱小種という汚名を撥ねつけ、地位を確立することができた。ーー他にも幾らでも、伝説となった英雄への賛辞が尽きないことは、言を俟たない」
「そうなるとは思っていましたが、随分と脚色されたものです」
アルは、カステルを一瞥する。
事実を知っていたはずの絶雄は、これらの賛辞を、魔雄への崇拝を放置した。
「アオスタの、希望となっていたのだ。それを奪うなど、できるものか。彼らには、立ち直ってもらう必要があった。古代期の混乱を、再び現出させるようなことは、防がねばならなかった」
仲間としての、王としての、決断。
様々な葛藤があったことだろう。
「というわけで、ラクンさんには。人種の代表として事実を知ってもらい、ぶった切られてもらおうと思います」
「やめてくれ」
俺は、素直な気持ちを吐露した。
「はい。ラクンさんから了承を得られましたので、始めるとしましょう」
「今は、ラクン、と呼んでおこうか。ーーラクンよ。これからハビヒが語るのは、過去のこと。過ぎ去った出来事だ。お主は、感受性が豊かなようだから、必要以上に重く受け止めるな」
やはり、ノウ、というファミリーネームでバレていたようだ。
だが、今は、そんなことはどうでも良い。
絶雄の言葉を、一字一句、胸に刻み込む。
「戦災孤児だったのか、親に売られたのか。記憶からも、資料からも、辿ることはできません。僕は、三歳くらいのときに、『箱』に投げ入れられました」
「ーー『箱』?」
「僕は、そう呼んでいました。正確には、そんな心象を持っていました。森の中、四方を壁で囲まれていました。百と四歩、百と七歩、九十八歩、百と一歩だったので、だいたい正方形ですね。『箱』には、三十人くらいの、僕と同い年くらいの、アオスタの子供が入れられていました。二日に一回、二人の子供が連れて行かれ、不定期に、減った分の子供が補充されました。これは目安で、変動するときもありました」
明らかに、おかしな状況。
碌でもないと、予見できてしまう。
俺は、アルが語るのを、本気で止めなかった。
最後まで耳を塞がないのが、最低限の礼儀だ。
「餌は、与えられませんでした。死ぬ前に、或いは死にそうな子供は、優先的に連れて行かれたので、必要なかったのでしょうね。連れて行かれたら不味いーーと、僕は、本能的に悟りました。生きるために、連れて行かれないために、すべてのことをやりました。味覚がおかしくなったのも、これが原因でしょうね。栄養が偏っていたでしょうから、それもあるでしょうが。ーー僕は、嘘が嫌いですので、隠さずに、はっきりとは言いません。『箱』の中にあったものは、すべて、食べ物の、候補でした。土、植物、虫、それからーー」
嘘は言わない、が、すべてを言わない。
嘘吐きな、アルが選んだ、手段。
「箱」の中にあったもの。
生きるのに、最も理に適った、食糧源。
俺は、全身に入りそうになった力を、精神力を総動員し、緩めた。
「ただ、生きるだけに、汲々とした時間も過ぎて、到頭、大人に見つかってしまうことになります。大人は、いつも昼にやってくるのに、その日は、例外的に、夜でした。ーーやってきた彼らは、おかしなことに気づきます。松明の明かりの先に、有り得ない子供がいたからです。彼らは、目を疑ったことでしょう。そこには、大き過ぎる、子供がいたのです。『箱』に入れられてから、五年ほど経っていたでしょうから、僕は、八歳くらいになっていたのです」
想像もできない。
何かを、言うこともできない。
俺では、圧倒的に足りない。
アルに届く言葉を、俺は、持っていない。
「僕は、連れて行かれました。恐怖もありましたが、やっと終わってくれると、安堵もありました。ーーもしかしたら、ラクンさんは、『箱』に子供を入れていたのは、獣種かと思っているかもしれませんが、違います。僕たちを連れて行った、大人も、その先にいた者たちも、アオスタでした」
獣種の可能性。
それは、考慮していなかった。
獣種は、人種を奴隷にすることはあるが、それだけだ。
獣としての本能なのか、人種のような、弄ぶようなことは、ほとんどない。
「僕たちは、奴隷以下でした。奴隷は、働き、その対価として、食事を与えられます。僕たちは、働かず、食事も与えられませんでした。連れて行かれた先で、やっと、氷解しました。僕たちは、餌、だったのです。言葉通りの、餌。魔獣の、餌でした。ーー己の強さのみを頼りとする傾向のある獣種と異なり、人種は、自分より強い者を服従させたり、檻に閉じ込めて観賞したりといったことを行います」
悪癖ーーという言葉で片づけられない、人種の行い。
恐らくは、人種の弱さが、根源にある。
ーー人種の代表。
そんなことを、アルが言うから。
無意識に、背中が丸まってしまった。
しかし、膝に手を突き、視線だけはアルに固定する。
「檻の中に、入れられました。魔獣が、いました。『箱』の中で、生き抜いていた、僕。そんな珍種に、檻の外のアオスタは、盛り上がっていました。ーーこのときの、僕の気持ちを、正確に言い表すのは、難しい。透明なーー何かでした。目に映るものが、理解できませんでした。哀しかったのかもしれません。もしかしたら、怒りのようなものも、あったのかもしれません。……ただ、消えてしまえば良いと、思いました。何もなくなってしまうのが、一番良いことなのだと、僕は、目を閉じました。ーーというわけで、三人との出逢いまでを、カステル、お願いします」
「わしら三人は、その頃、冒険者として活動していた。魔法か、兵器か。アオスタが、獣種を倒すべく、何かを開発している疑惑があると、調べてくるのが依頼だった。ーー件の、その街に到着したときだった。全力で防いだ。わしらが全力でやらねばならぬほどの、魔法ーーというよりは、魔力を用いた、何らかの現象だった。始めは、アオスタが開発した兵器かと思ったが、何もなくなってしまった、塩のような乾いた大地にいたのは、一人のアオスタの子供だった」
「後に知ったことですが、その街には、一万人ほどの、人種がいたそうです。全員、僕が殺しました。さて、大虐殺ですが、あとで世界を救ったので、許してもらえるでしょうか。ーーそこら辺は、個人の判断に任せます。さてさて、そんな魔力暴走の中心にいたので、僕は、ぼろぼろでした。発現した魔力に、無理やり生かされている状況でした。そこで、三人と出逢わなければ、遠くない内に、僕も消えてしまっていたでしょう」
「恥ずかしいことにな、二対一だった。後顧の憂いをなくそうとする、わしと、子供を助けようとする、ヌーテとサッソ。何かあったときは、多数決で決めていたから、わしも渋々と二人に従った。ーー何故か、ハビヒは、わしに懐いたので、二人の嫉妬が痛かった」
爆雄と剣雄の嫉妬だけに、物理的にも痛かったのかもしれない。
「三人でも、僕を元通りにするには、時間が掛かりました。そこで、先程の、カステルがハビヒであると、確信した、笑い声です。どうです、カステル? 結構、上手かったでしょう」
「まあな。現実には、もっと掠れていたが、そこまで再現するのは無理だろう。喉が、体の内までやられていたからな。どんな笑い声とて、笑えるようになるまで体が、何より、心が回復してくれたと、わしらは嬉しかった。ハビヒが回復したあと、どこかのアオスタの、まともな居住地にでも託そうかと思ったのだが、またもや二対一だった。ハビヒを気に入った、ヌーテとサッソが、何より魔法の才能を惜しんだヌーテが、強硬に反対した」
「ヌーテの判断は、間違っていませんでした。いえ、間違っていたなどと、そんなことをさせるわけにはいきません。魔王を倒すには、四人、必要でした。誰か一人、欠けていても、魔王は倒せませんでした」
「わしらは、英雄になんぞ、なりたくはなかった。人知れず、四人で魔王を倒す算段だった。だが、魔王を倒すには、四人が万全の態勢で臨む必要があった。英雄に、ならざるを得なかった。ーーそこからは、ハビヒの独壇場だ。一年と経たず、世界を熱狂の渦に巻き込んだ」
「ーー魔王は、本当にいたのか?」
二人が、俺を見る。
仕舞った。
絶雄と魔雄に、最前線に立った者に、どれだけ阿呆なことを聞いているのだろう。
これだけだと、ただの間抜けなので、気になったことを、慌てて言葉を継ぐ。
「魔王は、四英雄全員と、同じくらい強かったんだろう? そんな奴が倒されるんだから、もしかして、魔王は、有り得ないくらいのーーお馬鹿さんだったのか?」
「ぶふっ、が…はっはっはっ、くひっ、がっかっかっかっ、そうくるか! 魔王は、お馬鹿さんか! 正にっ、言い得て妙! 後世に、これほどの罵倒を受けようとは、魔王とて想像だにせぬだろう!」
ツボだったのか、抱腹絶倒という言葉の、格好の見本となる絶雄。
絶雄が大ダメージを受けて役立たずになったので、軽傷のーー失笑しただけの魔雄を見る。
「ラクンさんの、言う通りですね。僕が魔王だったら、世界なんて簡単に、ぺちょん、で一巻の終わりです。ーーそうですね。ラクンさんは、家畜と会話しようと思いますか?」
「それは……、言葉を掛ける、くらいのことはするかもしれないが」
「ええ、そうでしょう。普通は、会話しようとは思わないものです。相手から言葉が返ってくるなど、思いもしないでしょうから。ーー魔王も、そうだったのだと思います。魔王は、僕たちを、対等な相手とは見做していないようでした。会話に応じてくれなかったので、魔王の目的もわかりません。僕たちに倒されるまで、ずっと、支配領域の奥にいてくれました。僕たちからすれば、賭けでした。魔王が居場所を変えるだけで、僕たちは、その分、消耗してしまい、魔王を倒せなかったのですから」
「それは、もう、四英雄に倒してもらいたいがために、あえてそこにいたという水準だな」
「そう見えますが、そうではなかったようです。途中から、魔王には、焦りが見えましたから。敗色が濃厚となってからは、死に物狂いでしたね。あれらの行動からしても、自身が倒されるのは、意想外だったようです」
床に転がっていた絶雄が長椅子に戻るのを待ってから、アルは、言葉を継ぐ。
「史上稀に見る、ラクンさんのボケで、話が逸れてしまいましたが。今少し、誤解がないように、僕のことを語っておかないといけません」
人の素朴な疑問を、よくも悪し様に言ってくれるものだ。
俺の疑問は、特別なものではない。
魔王不在説は、後世、幾らでも唱えられてきた。
それを四英雄に、面と向かって言った、初めての人物かもしれないというだけだ。
「話した通りで、僕は、まともな生育環境にありませんでした。ーー言葉は多く用いません。僕を傷つけたのは、人種で、救ってくれたのは、獣種でした。僕は、アオスタが嫌いになりました。反面、三人は、僕のすべてでした。僕自身よりも、大切でした。晩年になって、アオスタとも交流を持ちましたが、今も、アオスタが汚らわしい存在に見えています。たぶん、アルとしての人生を全うすれば、嫌いではなくなるくらいには、なってくれると思います」
人種だから、人種を嫌わない。
そんな保証など、どこにもないというのに。
アルの言葉を聞くまで、まったく考慮に入れていなかった。
獣種と、人種。
その垣根は、思っている以上に、低いのだ。
俺は、それを知っている、はずだったのに。
「その内、僕のことを、もっと話すことがあるかもしれませんが、今はここまでに。次は、三人のことを話すのですが、その前にーー。カステル、紹介してください」
アルは、扉に視線を向ける。
「ハビヒなら、気づいて当然か。扉の向こうで、わしらの話を盗み聞きしながら、魔力が揺らいでいたからな」
先程、見たときには気づけなかったが、扉が少し開いていた。
ーー甘い匂い、と。
思い至った、直後に、二人の獣種が部屋に駆け込んでくる。
人猫と犬人のーー女だ。
「ハビヒ様!」
犬人が、アルの左腕にーー俺が座っている反対側の腕に飛びつくと、少し遅れ、人猫が右腕を、ぎゅっと、もう放さないとばかりに、力強く胸に抱え込む。
まともに考えられたのは、ここまでだった。
「ーーぃっ!?」
胸が、焼かれた。
そう思えるほどの、衝動。
犯したいと、欲望をぶちまけないと、おかしくなってしまう。
抑制の利かない、これほどまでに激しい欲情は、初めてだ。
もう、駄目だ。
人猫の尻尾が、俺の手に触れた瞬間、弾けさせた。
「がぁっ!!」
歯が折れるかもしれない。
それでも、構わずに自分の頬を、何度も、何度でも、両手でぶっ叩く。
それから足をぶん殴り、動かし、右にあった、一人掛けソファに体を投げ出す。
「それ、ボルネア、オルタンス。駄々洩れになっているぞ、引っ込めんか」
「おいた、をしたので、おしおき、が必要ですね」
羨ましい。
未だ衝動はなくならないので、本音が駄々洩れになってしまう。
「ぅにゃ~っ!?」
「ぅわぁん!?」
尻尾を、ぐにっ、とつかまれ、二人は、鳴き声を上げる。
獣種は、突発的な出来事だったり、困ったり弱ったりしたときに、古き名残の、獣の性質を表すことがある。
と、思ったのも、ここまで。
尻尾を愛でられた所為で、より濃厚な何かが二人から溢れたようで、俺は足を踏み鳴らし、体を左右にガタガタさせながら耐え抜く。
「このっ、アルっ、馬鹿っ、アホっ、ツヴィングリの鍋に飛び込んでこい!!」
「実は、魔雄としての魔力は戻ったのに、味覚は、アルのままなんです。色んな料理を味わえるようになった反面、煮込みを食べられなくなってしまいました」
「それは、良いことではないのか?」
「そこは、難しいですね。何を食べても、ツヴィングリほど美味しくはありません。ただ、三人と一緒に食べられないのなら、ツヴィングリも、そこまで美味しくないのかもしれませんが」
平然と会話している、絶雄と魔雄。
アルに叱られたのが効いたのか、或いは、アルに可愛がられ、出し尽くしたのか、俺の内側が、暴れ回っていた衝動が、体に溜まっていた熱が抜けていく。
「アオスタでも、かなりのものだっただろうに、よく我慢したな」
「……ということは、獣種だと、もっと酷いのか? ……あ、いや、……ですか?」
「ハビヒの共連れなら、敬語などいらん。公式な場所なら、言葉に気をつけんと、わし以外の者に殺されるかもしれんがな」
絶雄が気さくな人柄だったので、気が緩んでいた。
本来なら、近づくことは疎か、獣国に入ることさえできない。
今から敬語を使えば、絶雄は、幻滅するだろう。
そうじゃない。
俺は、絶雄が感情を害すほどの、相手ではない。
取るに足らない、一人の、人種の男。
俺など、泣けてくるほどに、場違いな存在なのだ。
「ハビヒとは、逆だな。赤子の頃から、症状を呈していた。わしが引き取って、娘とした。ボルネア・グランデとオルタンス・グランデ。わし以外の獣種が苦手になったのは、仕方がないことだが。……話している、わしが、楽し気に、嬉しそうに見えたのか、思い出の中の人種に、二人は恋してしもうた」
「もう大丈夫ですわ、ハビヒ様! あたしたちが、ずっとお傍にいます!」
「心配いらない! ずっと一緒にいる!」
やわらかい喋りが人猫で、ぶっきらぼうなほうが、犬人。
ーー純白の、毛並みの美しい、ボルネア。
金瞳が妖しさを醸す、美貌の猫種。
人猫なので、猫人よりも、顔立ちが人種に近い。
オルタンスより背が低いが、より女らしい体つき。
さすがは、魔雄と呼ばれた男。
大きな胸を押しつけられているのに、表情一つ、変わっていない。
ーー茶色と白の斑の、精悍さを併せ持った、犬種の美人。
中性的な魅力もある。
黒瞳には、確固たる決意が漲っている。
人犬よりも犬寄りの犬人はーー獣人は、見慣れていない人種からすると、違和感を生じることがあるが、彼女には、それを感じない。
オルタンスは、人犬に近い犬人のようだ。
見た目からでは、人獣と獣人を見分けられないことがある。
俺の、育ての親とも言える兎人ーーネーラから聞いたところによると、骨格や、体の作りが異なっているらしい。
「絶雄様。……嬉しそうだな」
満面の笑みを浮かべている。
通常なら、目の前で、二人の愛娘が男にうつつを抜かしているのだから、心の内は煮え滾っていても不思議はない。
二人の娘と同様に、絶雄からすれば、ハビヒも息子のようなものなのだろう。
また、それだけではなく。
絶雄に、娘がいるなどと、聞いたことはない。
恐らくは、それに纏わる何かが、解消されたからこその笑みなのだろう。
「ははっ、嬉しいに決まっている。心配事の一つが、いいや、二つか? 消えたのだからな。二人には、魔法と、魔力操作を仕込みはしたが、完全に症状を抑え込むには至らなかった。ハビヒなら、二人に適切な対処を教え込むことができるし、何よりーー。これで二人は嫁に行けて、幸せになれる」
「お父様!」
「父上!」
涙ぐむ、三人。
感動的な場面なのかもしれないが、俺の心は真っ白だった。
俺は、邪魔者。
二人から、そんな気配が、ぷんぷんと漂ってきていた。
敵というか、嫌悪というか、彼女たちから、尖ったものが向けられている。
表向き、俺は、存在しないものとして扱われている。
「あとは、アルが、ミュスタイアの王位を継げば、絶雄様は、万々歳だな」
絶賛除け者中なので、嫌味を言うくらいは許してほしい。
「そうですわ! 戴冠式と併せて、結婚式も行ってしまいましょう!」
「決まった! すぐ決行しよう!」
見兼ねた絶雄は、左右の人差し指で、空気を弾く。
それだけで、ボルネアとオルタンスの顔に、突風が吹きつける。
「みゃっ?」
「をんっ?」
溜め息を吐いた絶雄は、アルのことを俺よりも理解している王様は、残念そうに長椅子に凭れ掛かる。
「そうなってくれたなら、どれだけ良いものか。ハビヒは、わしの頼みを断らない。だから、わしの後を継いでミュスタイアの王になってくれ、などとは口が裂けても言えん」
などと言いつつ、しっかりと願望を口にする王様。
無理だとわかっていても、言わずにはいられなかったのだろう。
そんな、一縷の望みを、絶雄の頼みを、魔雄は一刀両断にする。
「これから僕は、ラクンさんと一緒に、『魔雄の遺産』がある場所に向かいます。二人はーーボルネアとオルタンスは、僕たちについてきますか?」
二人の悪意が、突き刺さるどころか、貫通する。
ーーそのまま帰ってくるな。
見送ったが、無駄だった。
量産体制が整い、尽きることのない悪感情が、俺をめった刺しにする。
「ーーボルネア、オルタンス。心して聞くように。わしらはな、強すぎるのだ。通常の獣種とも、人種とも異なる。規格外なのだ。わしらは、存在しているだけで、周囲に、様々に影響を及ぼしてしまう。それは、子種とて、同じ。子を生せないだけなら、まだ増しで、下手すれば、相手は、耐え切れずに死んでしまう」
「ということは、絶雄と魔雄の相手は、爆雄と剣雄しかいなかったというわけか?」
この場面で茶々を入れられるのは俺だけだったので、しっかりと役目をこなす。
「っ! まさかまさかっ、ハビヒ様はっ、爆雄様と仲良しだったのかしら!?」
「っ! そんなそんなっ、父上から剣雄様を寝取っていたなんて!?」
「心配せずとも、僕は、童貞です。アルとしてだけでなく、ハビヒのときもです」
限界まで膨らんだ風船から、空気が抜けるように大人しくなる二人。
それから、要らない情報まで付け足してくれる。
「『千恋』との二つ名がある、カステルも、童貞継続年数世界一です」
過去に、千三百年も生きた存在は伝えられていないから、確かに、世界一だろう。
不名誉な称号と、思うかもしれないが、そうではない。
ハビヒが言った、ーー「千恋」。
剣雄に、生涯、貫き通した愛は、夙に有名である。
幻想団がミュスタイアに公演に来た際に、必ず上演されるのが、絶雄と剣雄の、愛の物語である。
大抵は、事実の通りに、悲恋として語られるのだが、そこはそれ、様々なバージョンがある。
替え玉説から、実は、二人には子供がいた、などなど、多種多様だ。
「わしのことは、どうでも良い。もう一度、言うがな、ボルネアとオルタンスは、今のままでは駄目だ。ハビヒの愛を欲するのなら、ハビヒの許で、これまで以上に研鑽に励み、強くなるのだ。ーーハビヒの子を、産めるようにな」
「はいっ! お父様!」
「父上。確と、心に刻んだ」
これも家族の団欒なのだろう。
どう反応したら良いかわからなかったので、俺は、騒ぎが一段落するまで、肌もごつごつとした暖炉の近くの壁さんと、愛を語らうことにした。
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