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3章
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結果的にアイリーン様作のフルーツティーは美味しくなかった。
微妙な生暖かさで、果物たちも生暖かくなっていたからだ。
ドラゴンフルーツと同じように、普通に食べればよかったのに、と思ってしまう。
そして、練習用の茶器や小皿を片付け、またフロアに出向く。
今度は下げもの(片付け)をするためだ。紅茶を旨く淹れられなくても、下げものが出来ればいまはいいと言われている。新人は、案内と下げものから覚えるらしい。
アイリーン様が後ろから見守ってくれているため、そのまま言われた席に下げものを取りに行く。
笑みを張り付けながら「失礼します。お済みのお皿よろしいですか?」と、言い回しを噛まずに言えたから、内心喜ぶ。そのまま、下げものを取ろうとすると。
「やあ、この前の子だね。眼鏡外さなかったんだ」
声を掛けられ、声の主を見ると、そこには…
どうして、私に手紙ひとつ寄越さない男がここにいる!!
驚きすぎて、下げようとした小皿をもう一度テーブルの上に置いてしまった。
お客様の顔などいちいち見ることもなく、自身に与えられたことをコツコツと覚えようと必死になっていたため、ユーゴだと気付かなかった。
否、気付いていながらユーゴ似の誰かだと思いたかったのだ。何故なら、一緒にいるのがジェーン様ではない。
ジェーン様は少なからず兄のことを想っているというのとを、この間の観劇会でわかった。
いま、目の前にいる女性はシルビア王女の取り巻きではないか。
他の者たちより派手な化粧はしていないが、あの御茶会からずっとシルビア王女の側にいたのだから、顔立ちは覚えている。
「そこの貴女、早く片付けなさい」
「は、はい」
喉が乾き、うまく声が出ない。やっと出せた声ですら、嗄れたような声だった。
「ユーゴ様に声を掛けられたからと言って、仕事を疎かにしないで欲しいわ」
「……」
返事をすることを躊躇う。これ以上、声を出すことも出来ないほどに喉が張り付くような感覚だ。
「あまり彼女を攻めないで欲しいな。まだ、仕事を始めたばかりみたいだから多目にみてあげようよ」
彼女の視界から私を反らすように自身に向けさせる。
「まあ、ユーゴ様。本当にお優しい方ですわ!やはり、シルビア様にはユーゴ様のような方と結ばれるべきなのですわ。はやく、あのような者との婚約を破談にしてくださいな」
「そう言われても…、王家と私では血が近すぎる。それに、我が家を贔屓していると勘違いする者たちもいるでしょう。だから、私たちにとってはこの距離がいいのですよ」
「そこまでお考えでしたのね」
彼女は恋愛小説の障害を乗り越えるふたりを想像しているのだろう。うっとりとしたような表情をしているから、何となくだが同じ性別を持つものとしてわかる。
障害があるほど、恋は燃えるのだと思っているはずだ。
「まだ、いらしたの。貴女には関係ない話だと言うのに」
関係ないとは、酷い言いようだ。破断しろと言われている本人に向かって関係ないとは。
まだ、私がアンジュ・グレアムだとわかっていないからかもしれないが、この話はどうやらあまりいい話ではないようだ。
救いかのように「では、この話はここまでにして何か甘いものでもいただきましょう」とユーゴが提案したから、注文をアイリーン様が伺いその場を供に離れた。
微妙な生暖かさで、果物たちも生暖かくなっていたからだ。
ドラゴンフルーツと同じように、普通に食べればよかったのに、と思ってしまう。
そして、練習用の茶器や小皿を片付け、またフロアに出向く。
今度は下げもの(片付け)をするためだ。紅茶を旨く淹れられなくても、下げものが出来ればいまはいいと言われている。新人は、案内と下げものから覚えるらしい。
アイリーン様が後ろから見守ってくれているため、そのまま言われた席に下げものを取りに行く。
笑みを張り付けながら「失礼します。お済みのお皿よろしいですか?」と、言い回しを噛まずに言えたから、内心喜ぶ。そのまま、下げものを取ろうとすると。
「やあ、この前の子だね。眼鏡外さなかったんだ」
声を掛けられ、声の主を見ると、そこには…
どうして、私に手紙ひとつ寄越さない男がここにいる!!
驚きすぎて、下げようとした小皿をもう一度テーブルの上に置いてしまった。
お客様の顔などいちいち見ることもなく、自身に与えられたことをコツコツと覚えようと必死になっていたため、ユーゴだと気付かなかった。
否、気付いていながらユーゴ似の誰かだと思いたかったのだ。何故なら、一緒にいるのがジェーン様ではない。
ジェーン様は少なからず兄のことを想っているというのとを、この間の観劇会でわかった。
いま、目の前にいる女性はシルビア王女の取り巻きではないか。
他の者たちより派手な化粧はしていないが、あの御茶会からずっとシルビア王女の側にいたのだから、顔立ちは覚えている。
「そこの貴女、早く片付けなさい」
「は、はい」
喉が乾き、うまく声が出ない。やっと出せた声ですら、嗄れたような声だった。
「ユーゴ様に声を掛けられたからと言って、仕事を疎かにしないで欲しいわ」
「……」
返事をすることを躊躇う。これ以上、声を出すことも出来ないほどに喉が張り付くような感覚だ。
「あまり彼女を攻めないで欲しいな。まだ、仕事を始めたばかりみたいだから多目にみてあげようよ」
彼女の視界から私を反らすように自身に向けさせる。
「まあ、ユーゴ様。本当にお優しい方ですわ!やはり、シルビア様にはユーゴ様のような方と結ばれるべきなのですわ。はやく、あのような者との婚約を破談にしてくださいな」
「そう言われても…、王家と私では血が近すぎる。それに、我が家を贔屓していると勘違いする者たちもいるでしょう。だから、私たちにとってはこの距離がいいのですよ」
「そこまでお考えでしたのね」
彼女は恋愛小説の障害を乗り越えるふたりを想像しているのだろう。うっとりとしたような表情をしているから、何となくだが同じ性別を持つものとしてわかる。
障害があるほど、恋は燃えるのだと思っているはずだ。
「まだ、いらしたの。貴女には関係ない話だと言うのに」
関係ないとは、酷い言いようだ。破断しろと言われている本人に向かって関係ないとは。
まだ、私がアンジュ・グレアムだとわかっていないからかもしれないが、この話はどうやらあまりいい話ではないようだ。
救いかのように「では、この話はここまでにして何か甘いものでもいただきましょう」とユーゴが提案したから、注文をアイリーン様が伺いその場を供に離れた。
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