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15話 「竜が恐れる”化け物”」
しおりを挟む次の日、事態は大きく動いた。
監視兵からヴィルシス率いる大軍が再び接近していると言う情報が入ってきた。
そしてティナを中心とした作戦会議が前回のように行われる形になった。
「いいですか。今回の相手はより注意が必要です。前回こちらが完璧に叩きのめしたということで気合も入っていますし、策も念入りに組んでいることだと考えられます」
「実際のところ竜騎兵軍団のグレードがかなり上がってしまったようだな」
「はい、前回はオーソドックスな火属性タイプしかいませんでしたが、今回は色々と違う属性の竜を連れてきた模様です」
「それって完全に俺に火が効かないっていう判断からだよな?火はどうにかなったけど、どんな属性が他にあるか知らないけど効かないとは言えないな」
「はい。なので今回は苦しいですが、焦ってシュウに単機突破も非常に危険です。今回質こそはいいですが、数は少ないので空からの攻撃は我々はしっかりと構えて防御優先で」
「俺はどうなるかわからんからいけそうだったら攻める。無理だったら間接で距離とりながらボウガンとあんまり使いたくないけど自分のブレスや火球でちまちま落とすしかないな」
そうなると非常にじれったい上に、間違いなく地上戦の援護は出来ない。
しかし、なんだろうかこの違和感は。
まるで国を潰すつもりなんてない。俺だけを潰すためだけの相手の行動にしか見えない。
それもヴィルシスがティナを手に入れるため?それならティナだけ生かしてあとは潰せっていう方法にしたほうが彼女の管理も追いつかなくなってより楽だと思うのだが。
「シュウ……無理だけはしないでくださいね」
「うん、シュウ無理したらダメだよ?」
「死にたくないからそれはしない。出来ることを考えてやるわ。後の作戦は俺には関与できかねるだろうし、先に準備行くわ。リースとの打ち合わせがあるからな」
そう言ってみんなよりも一足先に王城から飛び出した。
「……二人とも戦闘前にそんな顔になっちゃって。シュウをあんまり困らせちゃいけないって」
エルミーユの言葉にただただうつむく二人。
そうは言うものの、シュウ自身は何も気がついてはいないが。
「私は固めればいいか?嫌でもヴィルシスとは対峙することになるだろうが、私が相手するのがいいだろう。まったく勝てないいうわけでもないしな」
「申し訳ありませんがお願いします。エルミーユたち獣人部隊に森の横と裏から一般兵の数を出来るだけ奇襲で落としてもらって数をじわじわ減らして相手の戦力を落としていきましょう」
「了解っと。じゃあ私達も準備する。……ティナ、セリア様無理だけはしないように。この数日で確かめ合ったようにみんながいるから」
「うん、大丈夫」
「もちろんです。もう負けません。負けるわけにはいかないんです」
その二人の決意を最後にそれぞれの先頭に向けての準備に取り掛かった。
そして工場内にて_。
「………」
俺は無言だった。それはなぜか?
体全身に何か色んなものを取り付けられていたからだ。
「リースねぇさん、なんすかこれ……」
「ここ数日体のサイズや稼動域等色々図らせてもらったよね。それはね今回から戦闘であなたにも装甲をつけてもらおうと思って」
なにやらカチャカチャとつけられているのは鎧といったところか。リースなりに俺の安全を思ってのことだろう。
「ある程度の攻撃は完璧に防げるから。邪魔になったらパージしてくれたらいいから。あとね、何よりもその爪まで覆ったんだけども」
「ああ、ここまでしなくても……爪だし」
丁寧に爪先まで覆ってくれているが……
「それ簡単に着離脱できるから。その形で離脱して投げるとなんとも鋭いブーメランになります!」
「ほお……。考えたな。俺の爪を綺麗に覆おうと思ったら鎧すらも鋭利になって武器としても防具としても使えるようになったわけだ」
爪の長さに合わせて作られているので長さや大きさもそれぞれ違うブーメランが出来ていることにはなるのだが……。
「これ投げてちゃんと帰ってくるの?」
「重さの微調整や、あなたの行動や体を守るのに支障が出ない程度に調整して綺麗に帰ってくるようにしたよ。ただ力いっぱい投げるものじゃないからそこは注意ね。切れ味は私が保証するから力こめなくても結構な威力でるから」
「OK。ありがたく使わせてもらうぜ」
「あとこれがあなた提案の”例の秘密道具”よ。これはヴィルシスにしか全く使えないから要注意ね」
「了解」
「じゃ、がんばってきなさい!」
「おう、やってくるぜ」
思い切って工場から飛び出して街を出た。
すでにメオン率いる大部隊が進軍中で、エルミーユ率いる部隊が何手かに分かれて森に入っていくところが目撃できた。
このあとティナも合流するだろう。そしてきっとあのアクティブすぎるセリアもきっと飛び出してきてしまうだろうな。
数日前と同じように北の山脈のあたりにぽつぽつと黒い点が見えてきた。
数こそは少ない。だが__大きさは明らかに前回は違う。
「だからと言っておびえてる暇もない。やるしかないってな」
様々な色の竜がこちらの存在に気がついて威嚇の咆哮をあげる。
そして今回違った点がもうひとつあった。
乗り手がいない。竜単独だということだ。様々な色の竜がいる。どの色だからどんな属性だろうかなど予想がいろいろと浮かぶが考えても仕方がない。
「悪いが今回も勝たせてもらう!負けるわけにはいかない!」
今まで使うのを控えていたブレス、火球攻撃。
全身を集中させて口の中で大きな火球を形成すると___
目の前にいる一匹の竜に向けて放った。
そしてその火球はまっすぐターゲットに定めた竜に当たってその竜は燃え上がって墜落した。
その一手で本格的な戦闘が始まる。
ついに味方が倒されたことにより一斉に相手の竜がブレスを吐く、さまざまな属性がいる。電気、氷、水、あとは分析が出来ないが、光り輝くブレスや真っ黒なブレスを吐くやつまでいる。
それを避けながら、一匹ずつ剣で切っていく。過去のように当たっても構わない、攻撃してとり合えず数を減らすと言う無茶なことは避けていきたいところだ。
しかし、相手も甘くはない。今までとはスピードが違う。それは竜自体の能力が高いということでもあり、人間という気を使うものを乗せていないため規制のない動きが出来るからだ。
「ちっ……。さっそくリース使わせてもらうぜ!」
爪を覆う鎧を一つのけてそれを対峙している相手に向けて投げた。
相手はそれを何の苦労も無くかわしてした後、こちらに向かってきたが__
大きく弧を描いてシュウの元に戻ってきたブーメランが竜ののど元を切り裂いてシュウの元に戻ってきた。
「リース、お前ほんと天才だわ。これに応えなきゃいけないな!」
しかし、竜もそう一筋縄ではいかないやつらがそろっていた。
俺の周囲を囲むと一斉にブレスを吐く。
それを俺はかろうじて飛び上がり高度を上げて避けたが__
その上に待ち構えていた竜が一匹。大きな口をあけて待ち構えていた。
「こいつら……!」
その竜は氷球を作り上げた。今まで受けたことの無い属性の攻撃。炎は効かなかった分、こちらは致命傷になるかもしれない。
この僅かな瞬間で非常に恐怖と嫌な寒気がした。
もちろん避ける体制など整っているわけも無く、その大きな氷球が俺の顔に直撃した___。
その竜は勝ち誇ったように咆哮をあげたが、白い煙が晴れたところには__相変わらず敵だと判断した竜が体制を一つも崩さずにいる。
何も効いていないのか、凍り付いているのか_
その竜がその結果を知る前にその竜は___
自分が吐いた球と同じようなものを生成した攻撃対象にぶつけられた。
その竜は__どんな極寒でも平気だった。
自分が凍りつくどころか、寒くて凍えるという経験をしたことが無かった。
だから最初その感覚が分からなかった。
体が動かない。
爪先から体の先から感じたことの無い感覚に覆われて痛みすら走り出した。これは一体なんだろうか__
そんなことをその竜は初めて感じていた。
だが、体も動かなければ声も上げられない。
なぜならその竜は__シュウが吐き返した氷球に直撃して凍りついた。
その竜は初めて凍りつくと言う感覚を知ったあと森の中に動けないまま、受身の取れないまま森の中に墜落していった。
この様子を見て何も恐れていなかった竜ですら尻込みをした。
この反撃の仕方をするやつに喧嘩を売ってはいけないと生まれた頃からの禁忌だった。まさかそんなやつが退治する相手だったとは。
しかし、その後悔はもう遅かった。その”化け物”はその油断を逃さず、竜たちに襲い掛かった。
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