ティルナノーグの扉

Erie

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変化の予感

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異世界に来たせいなのかDNAレベルですぐにはわからないような変化が訪れていた。

 その密やかな変化は細胞レベルで行われていたので、妖精王ですらわからなかった。

 ある日、それが太ももに現れた。

 最初は薄いアザができたと思っていたんだけど、濃くなってきて、タトゥーをしたような感じになった。

 だけど、この世界ではヒト科の女性は太ももが見えるような服を着ることはないので、

 その変化が何を意味するものなのか「ニホン」から来た私にはわからなかった。

 足を見せるのははしたないという文化なのでみんな中世のドレスのような服装をしている。

 私は毎日それでは疲れるので、たまにワンピースっぽいものをプカに頼んで出して、

 もらったりしているけれど、それも足首まであるやつだ。

 妖精王が付けてくれた私の侍女、マリアンヌさんもこの世界の「ヒト」で、

 着替えの時に肌を見せる唯一の存在だけれど、内側の太ももを開くことはないので、

 彼女の気づいていない。

 だから、気づくのに時間がかかってしまった。

 太ももを広げて見せるような行為をするなんていう相手もいないし、そういうことを要求する紳士でない

 男性は私の周りにはいなかった。

 何故気に入ってくれたかわからないけど、私に好意を持っている妖精王も魔族の王になるアルフォンソも

 私を大切に扱ってくれていたから。

 わからなかった。その意味を。

 最初にその発作が訪れたのは戴冠式の前日だった。

 夜に喉が焼け付くような渇きを覚えて、目覚めると、

 私の体はベッドの20cm 上に浮いていた。

「えええええええええ??????」

 私の叫びと同時にベッドに落ちたが、

 普段から寝起きの悪い私は「夢だったのかも?」とその事をなかったことにしようとした。

 それがいけなかったのかもしれない。

 平和でのどかだった妖精国の暮らしに終わりを告げることになったのだから。

 ◇ ◇ ◇


 2000年に一度ヴィーナスの夜、変化の魔力を持つ月が大地を照らす。

 この地に生きる全てのものに祝福を与えるために。

 その魂の真の輝きが増すように古い波動を取り去っていく。

 妖精国の大きな月を眺めていると、そぐわないものが洗い流され、本来の姿になっていくような気がする。

 正直、異世界に来て、戸惑っていたのだ。自分と異なる存在達の中でどうやって生きていくのかということを。

「綺麗な月ですね」

 いつの間にか、リナの横には妖精王が立っていた。

「ええ」

「今夜の月はとても素晴らしいものなのですよ。今宵月の光を浴びると、天の祝福が得られます」

「例えば、どんな?」

「あなたの魂があなたらしく生きられるように」

「2000年に1度の特別な月ですからね」

「特別なんですか?」

「ええ。だからその加護があればいいなと思います。私のように長く生きていると、色々あるんですよ。それに魂の出会いは人を変える」

 妖精王はそういって静かに微笑む。

「魂の出会い?」

「ええ、どんなに離れていようとも、魂は愛する相手を覚えているものなのですよ。そして再び巡り合い、恋に落ちる」

「ソウルメイトみたいなもの、なのかな?」

「記憶がなくても姿形が変わっても、その魂は永遠ですからね」

「永遠かあ」

「月はその出会いをずっと見てきていますからね。月の寿命は妖精よりもずっと長い」

「綺麗ね」

「ええ」

「この月の力で、私も変われるかもしれない」

 全てを手にしているような妖精王も変えたいことがあるなんて不思議。

「月は私の世界と同じね」

 二人は身体中が洗われるような幻想的な月を眺めていた。




 
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