ティルナノーグの扉

Erie

文字の大きさ
16 / 22

魔華の刻印3

しおりを挟む
 魔族のいる世界に来て、まだ少し経っていないが、思っていたよりも、好戦的な種族はいなかった。

 己の本当の欲望を隠して、言葉と本音が違う「ヒト」よりもよっぽど正直な感じで生きている。

 心と言葉がシンクロしていて、矛盾がない。

 魔華の原因を探すためとはいえ、王子と毎日のように過ごすうちに言葉使いもお互い砕けたものになっていった。アルフォンソ様は良い人だと思うけれど、マナナンに見つめられてドキドキする様な感じにはならない。彼の立ち位置はあくまでいい友達といったところだ。相変わらず口説かれているのだけれど。

「リナの世界ではそのやり方でうまくいっているのか?」

「まあ、おかげで波風は立たないと思うわ」

「欲しいものは欲しい。感情を素直の表す方が楽だと思うがな」

 アルフォンソは私の異世界の事を聞きたがったので、色々話すたびに、違いに驚いている。

「うん。そうだね」

 お城の図書室はほとんど人がいない。まあ、王立図書館を使用できる人は限られているからっていうのもあるんだけれど。

「魔華の最初の文献はこれだろうな」

 羊の皮の巻物のような紙に書かれた異界の文字がみえる。

「なんて書いてあるの?」

「最初に兆候が現れたのは狼族の少女だそうだ。彼らは時折、ポータルを通ってお前たちのいる「異界のヒト」の世界に行っていたようだからな。多分そこで感染したのだろう」

「私の世界に?」

「ああ、4、5日間手がつけられたいほど、暴れまくり7日目の夜死んだ、とい書いてある」

「1週間」

「ああ、妹も時よりも断然短い。当時は異世界から来る者がいなかったからな。それから再び魔華が現れたのは200年後、初めの勇者が異世界から召喚された時だ」

「でも、私が来た世界にはこんな病気なかったわ」

「お前たちにはなんともなくてもドワールのものにとってはそうでないということだな。だがなぜ異世界人のお前に魔華が現れたのか?それが唯一今までと違うところだが」

「アルフォンソ様、そろそろ、お支度の時間でございます」

 アルフォンソ様のお付きの武官が話の腰を折った。

「ああ、もうそんな時間か?」

「会場には近隣諸国の王族や貴族が集まり始めております」

「わかった。リナ、お前も着飾って俺の目を楽しませてくれ」

「はい。あの、ありがとうございます」

 さっきまで親しげに話していたアルフォンソ様は、急に王の顔になると、戴冠式の支度に向かって行った。

 魔華が現れた唯一の国でも、その原因と治療法が記された文献はほとんどなかった。

 一番資料が豊富な王立図書館でさえ、片手で数えられるほどの文献が残されているだけで、

 唯一わかっていることは、魔華ができる元となったエネルギーは私が来た世界からもたらされたということ。

 そして、それに感染したドワールの世界の人たちは、己をなくし、やがて自滅するということ。

 ドワールのいかなる魔術も薬草も効かないということ。

 そして、今までで一番長生きしたアルフォンソ様の妹姫、強力な治癒魔力を持ったリリアナ様でさえ、治せなかったということ。

 それだけだった。

 私、これからどうなるのかな・・・・・

 不安に押し潰れそうになる。

「リナ様ー!リナ様ー!」

 女官の声がする。

「私はここよ!」

 バタバタと走る音がして、奥の文献の部屋に私付きの女官、サテラが入って来る。

 牙とツノの生えた魔族の女の子で小柄で目の大きな美少女だ。

「リナ様、お支度をされませんと、戴冠式に間に合いません!」

「えっ、でも夜からじゃあないの?」

「それは、湯浴みをしたり、体に香油を塗ったり、色々してからですから!王様の式なんですから、全て綺麗にしとかないと!早くお支度しないと、もうギリギリの時間です!早く、王宮に戻りましょう!」

 サテラに手を引かれて王立図書館を後にした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

助けた騎士団になつかれました。

藤 実花
恋愛
冥府を支配する国、アルハガウンの王女シルベーヌは、地上の大国ラシュカとの約束で王の妃になるためにやって来た。 しかし、シルベーヌを見た王は、彼女を『醜女』と呼び、結婚を保留して古い離宮へ行けと言う。 一方ある事情を抱えたシルベーヌは、鮮やかで美しい地上に残りたいと思う願いのため、異議を唱えず離宮へと旅立つが……。 ☆本編完結しました。ありがとうございました!☆ 番外編①~2020.03.11 終了

【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのになぜか溺愛ルートに入りそうです⁉︎【コミカライズ化決定】

sutera
恋愛
仕事に疲れたボロボロアラサーOLの悠里。 遠くへ行きたい…ふと、現実逃避を口にしてみたら 自分の世界を建て直す人間を探していたという女神に スカウトされて異世界召喚に応じる。 その結果、なぜか10歳の少女姿にされた上に 第二王子や護衛騎士、魔導士団長など周囲の人達に かまい倒されながら癒し子任務をする話。 時々ほんのり色っぽい要素が入るのを目指してます。 初投稿、ゆるふわファンタジー設定で気のむくまま更新。 2023年8月、本編完結しました!以降はゆるゆると番外編を更新していきますのでよろしくお願いします。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜

具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」 居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。 幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。 そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。 しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。 そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。 盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。 ※表紙はAIです

令嬢から成り下がったメイドの分際で、侯爵様と目が合ってしまって

真好
恋愛
彼はメイドの私に手を差し出した。「私と、踊っていただけませんか?」 かつては公爵令嬢として、誰もが羨む生活を送っていたエルナ。 しかし、国家反逆罪で家は没落し、今は嫌な貴族の下で働く「身分落ち」のメイド。 二度と表舞台に立つことなどないはずだった。 あの日の豪華絢爛な舞踏会で、彼と目が合うまでは。 アルフォンス・ベルンハルト侯爵。 冷徹な「戦場の英雄」として国中の注目を集める、今もっともホットで、もっとも手が届かない男。 退屈そうに会場を見渡していた彼の視線が、影に徹していた私を捉えて。 彼は真っ直ぐに歩み寄り、埃まみれの私に手を差し出した。 「私と、踊っていただけませんか?」 メイドの分際で、英雄のパートナー!? 前代未聞のスキャンダルから始まる逆転劇。

処理中です...