【荒れ地】で育った嫌われ者のDランク冒険者は拾遺者《ダイバー》として今日も最下層に潜る

嵐山紙切

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第二章 魔女の森編

第46話 剣がぶっ壊れるような技を使っても問題ない

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 影の振るミスリルの剣を避けて暗器を避けて、飛んできた矢を掴んで捨てる。

 このままではじり貧になるのは解っている。

 と言うかもう結構状況は悪い。

 いままでの影と違って、やっぱりこいつらは冒険者ダイバーだ。

 練度が違う。

 服とか頬とか少しずつ傷つき始めてる。

 最初に盾を切り裂こうとしなけりゃよかったよマジで。

 師匠はこんなときどう言っただろうか。

 
――早く斬れ。悩んでる暇があるなら手を動かせ。

 
 多分こんな感じか。

 あの人悩みとか無さそうだからな。

 はあ。

 俺は先ほどより大きく距離をとって、影たちから離れる。

 すでに俺の剣は折れてしまっている。

 であるならば、


「剣がぶっ壊れるような技を使っても問題ない」


 俺は折れた剣の柄を両手で握った。

 師匠が愛用していた技にして、俺が最も嫌う技。

 一振りしただけで剣が壊れ、くずれ、使い物にならなくなる、一つの武器で一度きりの技。

 まあ、師匠は特殊な剣を持っていたみたいだから何度使っても壊れなかったけれど。

 きっとアレはアーティファクトか何かだったんだろうといまになって思う。

 集中。

 魔力をこれでもかと言うほど流す。

 全力も全力。

 脳筋魔剣術では補いきれない刀身のない部分を、思い切り魔力を流すことで無理矢理補う。


――ミスリルに負けるんだったら、ミスリルに勝てるくらい魔力を流せば良いだけだろ by師匠


 と言う脳筋の考えで生み出された、脳筋魔剣術の発展形。

 真っ赤に燃える魔力の刀身が出現した。

 が、あまりの魔力量に、折れている実体の刀身の方まで真っ赤に燃えていて、熱を持って赤く輝いている。

 あっついんだよこれ!
 防御魔法、防御魔法!

 探索者シーカーに投げられたナイフなら使い捨てだから良いかと一瞬思ったけど、アレは全部金属でできてるから当然無理だ。

 しかし熱い!
 嫌い!
 コスパ悪いし!

 師匠の剣はこんなことがなかったはずだ。

 ずりいな、ほんと。

 しかも、この技、発動後すぐに攻撃しないと剣が崩れる。

 今も真っ赤になった刀身の刃が欠け始めている。

 急がねば!

 構えて駆け出す。
 影の冒険者たちの一歩手前、
 間合いの外にもかかわらず横薙ぎにする。

 途端、
 爆発するように刀身が伸びて、一番後ろにいる弓の冒険者の影まで巻き込んだ。

 魔力の刀身はすでに剣の形をしておらず、縦横無尽に好き勝手に伸びる。

 影の身体を切断している最中もその爆発は止まらない物だから、一振りしただけなのに、彼らの身体は木っ端微塵になる。

 ミスリルの盾も含めて。

 あーあ。

 もったいないけどな。

 遺品じゃないから売れないし、いいか。

 られるくらいなら、る。

 例え、俺の剣が壊れても。

 と言ってもセール品だけどさ。

 目の前にいた全ての影が俺の剣に巻き込まれた、その場に球体を形作ったあと、まっかに染まっていた俺の剣はバキンと音を立てて崩れ落ちた。


「魔女と戦うときどうすっかな……お!」


 ミスリルの盾はでかすぎて巻き込まれてしまったが、ミスリルの剣はその場に無傷で残っていた。


「借りちゃえ!」


 俺はその剣を手に取った。

 ほう、美しい。

 後で返せばいいや。

 そう思いながらライラの元に戻ろうとすると、


「シオンさん! あっちから影がアタシのところに走ってきます!! なんとかしてください!」


 ライラが叫んだ。

 見ると確かにパーティらしき数人が駆けてくる。

 防御魔法があるから大丈夫だろうが、急ぐか。

 その一瞬、ちらと骸骨野郎の方を見る。

 うまくマンドレイクをぶん投げてホウキを引きつけているみたいだ。

 影を倒したらすぐに合流しよう。

 そう思って、ライラの方を見た。

 防御魔法が消えていた。

 あ?


「シオンさん!!」


 ライラが叫んで剣をぬく。

 俺は駆け出すが、しかし、
 何かが目の前に振ってきて道を塞がれた。


「うっそだろ!」


 大きく回転して、完全に進路を絶って、
 俺を遮ったのは、二本目のホウキだった。

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