あなたの娘です、とは言ってません

あんど もあ

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中編

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 その時だけの恋ばかりしてきた。責任を取らず逃げてきた。
 だから、思いがけず結婚できて爵位を継げた時、家庭を領地を大切にして息子に譲るのだと心に決めたのだが……。

「そんなの、何の罪滅ぼしにもなってなかった」

 己の考えの甘さに押しつぶされそうだ。









 思いっきり走って、トワソン伯爵が付いてこないのを確認した私は、休憩用に用意された部屋の一番奥の部屋をノックした。
「どうぞ」
 母ではない人の声に、ドアを開けて覗き込むと、母の向かいに二人の老婦人が座っている。私がいない間に休憩に来たようだ。
 
 母に向かって歩いている間に、母が二人に「娘ですの」と話している。
 母の隣に座り、部屋付きのメイドがお茶を出してくれた後、母のお説教になった。
「タチアナ。また走って来たでしょう。足音が聞こえましたよ。レディは走ってはいけないと何度言ったら分かるの」 
「だって、走るのが遅いとお兄様やマックに馬鹿にされるんですもの」
「あなたは女の子でしょう! ……お恥ずかしいですわ」
と、老婦人たちに言うと
「まあまあ、元気なのは良い事じゃありませんか」
「健康でいてくれるのが一番の親孝行ですよ」
と、好意的に返された。いい人っぽい。

 その印象は当たっていて、
「タチアナさんは初めてこの国にいらしたんですって?」
「お父様がこちらの侯爵夫人の甥だそうですね」
「この国の食べ物は口に合ったかしら」
と、私にも話を振ってくれる。
  
 私は、この人たちの前なら今あった事を言ってもいいかと考えた。
「お母様、先ほどトワソン伯爵とお話ししたのですが、私をご自分の娘だと思ったようですわ」
「ええっ!? あなた、何をしてきたの?」
 お母様が淑女らしからぬ声を上げる。老婦人たちも好奇心を隠せないようだ。
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