玉の輿だったはずなのに!

木島

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初めての夫夫の時間2*

「俺はルキーノ様に伴侶にと言われて嬉しかったんです。嫌なはずがありません。でも仕事じゃないことなんて初めてだから緊張して……」
「あぁ、そう言うことか」

 性行為自体は初めてでもなければルキーノ以外の野郎との経験だって腐るほどある。そのどれもが仕事の一環で、プライベートでの行為は正真正銘彼が初めての相手なのだ。それがこの妙な緊張を生んでいるのであって、ルキーノの相手が嫌なわけじゃない。
 モゴモゴ言い募る俺の言葉にルキーノはすぐに理解を示してくれる。そうして彼はグラスをサイドテーブルに置くと足元で膝を突く俺を引っ張り上げて膝の上に乗せた。

「ならば今日は私に任せていればいい。奉仕するばかりが交わりではないと学ぶいい機会だろう」
「ルキーノ様……」

 大きく硬い手のひらが頬を撫でる。表情は相変わらず眉間に皺のよった厳しいものだけど、言葉から伝わる気遣いに俺は笑みを浮かべた。

「よろしくお願いします。旦那様」

 頬に触れる手に手を重ね、甘えるように頬を擦り寄せる。引き寄せられる腰に合わせてルキーノにしな垂れかかればつむじに軽くキスが降ってきた。
 つむじに始まり額、瞼、頬と唇が降りてきて、唇を飛ばして顎にキスが落とされる。些細だけど期待を裏切る意地悪に唇を尖らせると狙い澄ましたかのようにルキーノの唇ががぶりと噛み付いてきた。下唇を喰まれ舐められて、思わず開いた口に舌が滑り込んでくる。

「ん、ふ……」

 上顎や歯の裏を緩やかに撫でるルキーノ。まだ様子を伺っていた俺の舌を絡め取り、舌の裏や奥の方を撫でられると腰に熱が溜まり始める。
 ルキーノのキスは気持ちがいい。最初から快楽を引き出すために動き回る舌に喰らいつくとあっという間にルキーノの口内に誘い込まれて柔らかく舌を噛まれた。
 ビクッと震える背中を大きな手のひらが撫で上げる。そのまま頭を掴まれてキスの猛攻から逃れられなくなった。

「んぁ、ルキー、ノ……さま」
「ん?」

 溢れて顎を伝う唾液を追ってルキーノの唇が下へと降りていく。そのままネックガードに歯を立てられて熱の籠った吐息が漏れた。順調に高揚していく俺の様子をルキーノの青い目がじっと見つめている。
 この観察するような目。腹の底まで見透かされるようで俺は思わず目を閉じる。

 見られている。そう思うだけでゾクゾクと背筋が粟立った。

「今日が発情期ではないのが惜しいな。そうであればここに噛みついてやるものを」

 発情期でなければ噛んでも番にはなれない。『その時』以外は決して外してはならないとルキーノ自身が与えたネックガードを当の本人が忌々しげに噛んでいる。
 ああ、彼のこんな姿初めて見る。俺の心臓ははち切れんばかりに高鳴った。

「ぉれも楽しみに、してますよ。ルキーノ様だけのオメガになる日」
「そうか」

 嬉しすぎて耳まで真っ赤に染めている俺。わかりやすい態度に僅かに表情を緩めたルキーノはもう一度俺に口付けた。
 キスを交わしながらワンピースの裾から差し込まれる手が心地良い。太ももをなぞる指先が俺の緩く兆したものに触れて勝手に体がぴくりと震えてしまった。

「緊張していると言っていたが、反応はいいようだ」
「そりゃあ、これだけされれば、ねぇ」

 握り込まれて直接的な刺激を与えられてはたまらない。俺はびくびく震えながら負けじとルキーノのものに手を伸ばした。

「ルキーノ様だって勃ってる」
「役に立たない方が良かったか?」
「まさか」

 バスローブの裾を割って直接触れればずっしりと重いルキーノのものの熱さを感じる。これが俺の中に収まるのだと思うと自然と喉が鳴った。

「ん、んぅ」

 しばらくお互いのものを刺激し合っていれば硬く勃ち上がり先走りを溢し始める。
 背中を押されるままにルキーノにぴったりともたれかかってしまえば褒めるように頭を撫でられる。ルキーノの肩に頭を乗せて心地よさにうっとりと目を細めていると、ルキーノの濡れた指が後ろに触れた。

「あ……!」

 いつの間にやら香油の蓋が開いていて、ぬるりと滑る指が中に入ってきた。準備である程度柔らかくなったそこを慣れた様子で突き進んでいくルキーノの指。指2本は容易く滑り込み、濡れた音を立てながら彼を受け入れるために広げられていく。時々その指が中のいいところを悪戯に擦るものだからその度に俺は小さく悲鳴を上げた。

 急激に熱に浮かされて欲望だけに脳味噌が染まりゆく中、密着した体と体の隙間でルキーノのものを握る。ロクな動きはできないけど、それでも少しずつ大きく硬くなっていくそれに更に興奮した。

「そろそろいいか」
「っは、あ……はぃ、大丈夫です……」

 小さく頷くとルキーノは俺のワンピースを脱がせてベッドに転がす。ネックガード以外何も身に付けていない状態は非常に心許なくてシーツを手繰り寄せようとしたら腕を掴んで止められた。
 そのまま腕を頭の上に縫い止められて、覆い被さるルキーノが囁く。

「お前が私に何を隠すと言うのだ?」

 はわ、自信過剰。でもこんなセリフでぎゅんと締め付けられる心臓が痛い。どうぞどこまでも見てくださいと全てを投げ出したい気持ちになる。そのまま力の抜けた足を開かされ、硬く聳り立つルキーノのものが入り込むのを俺は陶然として受け入れた。

「あ、あぁ……ん」

 ルキーノが俺の中に入ってくる。唯一の人と決めたアルファが腹の中にいる。すっかり全部収まったら息をするのも苦しいくらいに腹が満ちた。
 早く全てが欲しい。欲望にどろりと溶けた目を向ければ、ルキーノもまた青い目の奥に煮え立つような熱を灯して俺を見ていた。

「ルキーノ、さま」
「お前は私のものだ、ネロ」

 ネックガードの上から強く噛みつかれる。それがいつかくるその日を思わせて、俺の頭は多幸感に塗り潰された。


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