31 / 77
ジュリエッタ先生!
「ナニーの言うことも一理あるかもよ?実際マナーなんてまだまだ勉強中だし。社交界にだって出たことないしね」
「だとしても、同じ屋敷の者が主人を侮っていい道理がありません」
なんとか場を納めようと言った言葉にブリジッタは反論する。彼女の言うことも確かにそうなので否定もできないところだ。屋敷を纏める立場になる俺が使用人に舐められちゃ示しがつかない。
だが今はそれよりも大人達のギスギスした空気に力なく眉を下げているジュリエッタだ。彼女の気を紛らわせつつ、この場を納めるにはどうしたら……
「そうだ!ジュリエッタ様、私のマナーの先生になってくれる?」
「えっ?」
「な、何ですって?」
「私は元々平民だから、色々教えてくれるいい先生が必要なんだ。家庭教師はいるけど、先生はいればいるほどいい。どうかな?」
俺の突然の提案に目を丸くしたジュリエッタとナニー。多分見えないけどブリジッタも驚いている。それをあえて無視して俺は話を続けた。
するとどうだろう。先程まで不安そうだったジュリエッタの表情がキラキラと輝き始めたのだ。
「ジュリがせんせ?わぁ、それすごいねぇ!ネロさま、ジュリせんせになんでもきいてください!」
「はぁーい、よろしくお願いします。ジュリエッタ先生」
先生、と呼ぶと嬉しそうに頬を綻ばせるジュリエッタ。作戦成功かな?
それに反してナニーの表情は硬く苛立ちを隠せていない。
「ネロ様、勝手な思いつきで大切なジュリエッタ様の時間を削らないでくださいませ。あなたにはあなたの教育係がいらっしゃるでしょう?」
「そんなに時間は取らせないよ。こんな風にお茶の時間に教えてもらえればいいんだ」
「うん!いいよー。ジュリがおしえてあげます!」
「ジュリエッタ様!」
まかせて!と胸を叩くジュリエッタに悲鳴を上げるナニー。そんなに嫌がらんでもいいのにな。焦る彼女の様子に俺はにこりと笑ってみせた。
「ふふ、知らない?人に教えるって自分の振り返りにもなって案外いいんだよ。下手なことを相手に教えられないって再勉強するでしょ?」
「ああ、なるほど。それはよいお考えですね」
「な、何を根拠に……そんな教育法聞いたことがありませんわ」
おや、これは前世の話だったかな。
でも男娼時代に芸事やマナーを下の子に教える時って自分の記憶が合ってるか振り返ったりしたし、間違いってことはないと思う。それを一考することもなく否定するナニーは多分俺を否定したいだけだろう。だって彼女の教育論だって同じように振り返りながら作られたものだろうから。
「カルロッタ、ジュリせんせいやりたい。ネロさまといっしょにおべんきょうするのよ?」
「ジュリエッタ様……」
じいっ、とナニー改めカルロッタを見つめるジュリエッタ。無垢な瞳に見つめられ言葉を詰まらせていたカルロッタはやがて諦めたのかゆっくり目を閉じて息を吐いた。
「わかりました……お茶の時間だけですよ!それ以上は認めません。ジュリエッタ様個人として学ぶことはまだまだありますので」
「わかってる。無理はさせないよ」
肩を落としたカルロッタに勝利の笑顔を贈る俺。不安げな表情から一転、嬉しそうなジュリエッタを連れて午後の勉強のためにバラ園を去っていく彼女の顔は非常に悔しそうだった。
これで彼女も俺が舐められて終わりの男ではないことはわかってくれたことだろう。
それにしても。
「いやぁ、嫌われたもんだ」
「業腹ですが致し方ありません。彼女は根っからの貴族至上主義でアルファ至上主義です。平民出身でオメガ性のネロ様を受け入れられないのでしょう」
「あーね」
ブリジッタが言うに、カルロッタの生家も婚家もアルファ至上主義かつ貴族至上主義という非常に選民意識の強い家らしい。前妻の侍女としてここに着いてきて、2人目の子のナニーとなった。ベネディクティス辺境伯であり優秀なアルファであるルキーノの血を継ぐジュリエッタを育てることは彼女にとっては名誉だ。辺境伯家に相応しい選民意識バリバリの教育を施すつもりだったのだろう。
それなのに俺という平民オメガ、しかも元男娼が正式な伴侶として伯爵家に乗り込んできた。まさに晴天の霹靂。彼女にとって俺は最も辺境伯家に相応しくない男。受け入れられないわけだ。
そして問題なのが、その選民意識が彼女だけに根付いたものではないというところだ。
「だとしても、同じ屋敷の者が主人を侮っていい道理がありません」
なんとか場を納めようと言った言葉にブリジッタは反論する。彼女の言うことも確かにそうなので否定もできないところだ。屋敷を纏める立場になる俺が使用人に舐められちゃ示しがつかない。
だが今はそれよりも大人達のギスギスした空気に力なく眉を下げているジュリエッタだ。彼女の気を紛らわせつつ、この場を納めるにはどうしたら……
「そうだ!ジュリエッタ様、私のマナーの先生になってくれる?」
「えっ?」
「な、何ですって?」
「私は元々平民だから、色々教えてくれるいい先生が必要なんだ。家庭教師はいるけど、先生はいればいるほどいい。どうかな?」
俺の突然の提案に目を丸くしたジュリエッタとナニー。多分見えないけどブリジッタも驚いている。それをあえて無視して俺は話を続けた。
するとどうだろう。先程まで不安そうだったジュリエッタの表情がキラキラと輝き始めたのだ。
「ジュリがせんせ?わぁ、それすごいねぇ!ネロさま、ジュリせんせになんでもきいてください!」
「はぁーい、よろしくお願いします。ジュリエッタ先生」
先生、と呼ぶと嬉しそうに頬を綻ばせるジュリエッタ。作戦成功かな?
それに反してナニーの表情は硬く苛立ちを隠せていない。
「ネロ様、勝手な思いつきで大切なジュリエッタ様の時間を削らないでくださいませ。あなたにはあなたの教育係がいらっしゃるでしょう?」
「そんなに時間は取らせないよ。こんな風にお茶の時間に教えてもらえればいいんだ」
「うん!いいよー。ジュリがおしえてあげます!」
「ジュリエッタ様!」
まかせて!と胸を叩くジュリエッタに悲鳴を上げるナニー。そんなに嫌がらんでもいいのにな。焦る彼女の様子に俺はにこりと笑ってみせた。
「ふふ、知らない?人に教えるって自分の振り返りにもなって案外いいんだよ。下手なことを相手に教えられないって再勉強するでしょ?」
「ああ、なるほど。それはよいお考えですね」
「な、何を根拠に……そんな教育法聞いたことがありませんわ」
おや、これは前世の話だったかな。
でも男娼時代に芸事やマナーを下の子に教える時って自分の記憶が合ってるか振り返ったりしたし、間違いってことはないと思う。それを一考することもなく否定するナニーは多分俺を否定したいだけだろう。だって彼女の教育論だって同じように振り返りながら作られたものだろうから。
「カルロッタ、ジュリせんせいやりたい。ネロさまといっしょにおべんきょうするのよ?」
「ジュリエッタ様……」
じいっ、とナニー改めカルロッタを見つめるジュリエッタ。無垢な瞳に見つめられ言葉を詰まらせていたカルロッタはやがて諦めたのかゆっくり目を閉じて息を吐いた。
「わかりました……お茶の時間だけですよ!それ以上は認めません。ジュリエッタ様個人として学ぶことはまだまだありますので」
「わかってる。無理はさせないよ」
肩を落としたカルロッタに勝利の笑顔を贈る俺。不安げな表情から一転、嬉しそうなジュリエッタを連れて午後の勉強のためにバラ園を去っていく彼女の顔は非常に悔しそうだった。
これで彼女も俺が舐められて終わりの男ではないことはわかってくれたことだろう。
それにしても。
「いやぁ、嫌われたもんだ」
「業腹ですが致し方ありません。彼女は根っからの貴族至上主義でアルファ至上主義です。平民出身でオメガ性のネロ様を受け入れられないのでしょう」
「あーね」
ブリジッタが言うに、カルロッタの生家も婚家もアルファ至上主義かつ貴族至上主義という非常に選民意識の強い家らしい。前妻の侍女としてここに着いてきて、2人目の子のナニーとなった。ベネディクティス辺境伯であり優秀なアルファであるルキーノの血を継ぐジュリエッタを育てることは彼女にとっては名誉だ。辺境伯家に相応しい選民意識バリバリの教育を施すつもりだったのだろう。
それなのに俺という平民オメガ、しかも元男娼が正式な伴侶として伯爵家に乗り込んできた。まさに晴天の霹靂。彼女にとって俺は最も辺境伯家に相応しくない男。受け入れられないわけだ。
そして問題なのが、その選民意識が彼女だけに根付いたものではないというところだ。
あなたにおすすめの小説
王太子に「戦友としか思えない」と言われたので、婚約を解消しました
明衣令央
恋愛
婚約者である王太子ヘンリーから「君のことは戦友としか思えない」と告げられた、公爵令嬢アリスティア。
十年以上の王妃教育を積んできた彼女は、静かに婚約解消を受け入れる。
一年後、幸せな結婚を迎えた彼女にとって、ヘンリーのその後は――もうどうでもいいことだった。
処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる
猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。
しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。
当然そんな未来は回避したい。
原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。
さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……?
平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。
ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)
夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。
古森真朝
ファンタジー
「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。
俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」
新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは――
※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。
愛する公爵と番になりましたが、大切な人がいるようなので身を引きます
まんまる
BL
メルン伯爵家の次男ナーシュは、10歳の時Ωだと分かる。
するとすぐに18歳のタザキル公爵家の嫡男アランから求婚があり、あっという間に婚約が整う。
初めて会った時からお互い惹かれ合っていると思っていた。
しかしアランにはナーシュが知らない愛する人がいて、それを知ったナーシュはアランに離婚を申し出る。
でもナーシュがアランの愛人だと思っていたのは⋯。
執着系α×天然Ω
年の差夫夫のすれ違い(?)からのハッピーエンドのお話です。
Rシーンは※付けます
※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。
※画像はpicrewさんよりお借りしました。
Xアカウント(@wawawa_o_o_)
過労死転生した公務員、魔力がないだけで辺境に追放されたので、忠犬騎士と知識チートでざまぁしながら領地経営はじめます
水凪しおん
BL
過労死した元公務員の俺が転生したのは、魔法と剣が存在する異世界の、どうしようもない貧乏貴族の三男だった。
家族からは能無しと蔑まれ、与えられたのは「ゴミ捨て場」と揶揄される荒れ果てた辺境の領地。これは、事実上の追放だ。
絶望的な状況の中、俺に付き従ったのは、無口で無骨だが、その瞳に確かな忠誠を宿す一人の護衛騎士だけだった。
「大丈夫だ。俺がいる」
彼の言葉を胸に、俺は決意する。公務員として培った知識と経験、そして持ち前のしぶとさで、この最悪な領地を最高の楽園に変えてみせると。
これは、不遇な貴族と忠実な騎士が織りなす、絶望の淵から始まる領地改革ファンタジー。そして、固い絆で結ばれた二人が、やがて王国を揺るがす運命に立ち向かう物語。
無能と罵った家族に、見て見ぬふりをした者たちに、最高の「ざまぁ」をお見舞いしてやろうじゃないか!
【完結】ダンスパーティーで騎士様と。〜インテリ俺様騎士団長α×ポンコツ元ヤン転生Ω〜
亜沙美多郎
BL
前世で元ヤンキーだった橘茉優(たちばなまひろ)は、異世界に転生して数ヶ月が経っていた。初めこそ戸惑った異世界も、なんとか知り合った人の伝でホテルの料理人(とは言っても雑用係)として働くようになった。
この世界の人はとにかくパーティーが好きだ。どの会場も予約で連日埋まっている。昼でも夜でも誰かしらが綺麗に着飾ってこのホテルへと足を運んでいた。
その日は騎士団員が一般客を招いて行われる、ダンスパーティーという名の婚活パーティーが行われた。
騎士という花型の職業の上、全員αが確約されている。目をぎらつかせた女性がこぞってホテルへと押しかけていた。
中でもリアム・ラミレスという騎士団長は、訪れた女性の殆どが狙っている人気のα様だ。
茉優はリアム様が参加される日に補充員としてホールの手伝いをするよう頼まれた。
転生前はヤンキーだった茉優はまともな敬語も喋れない。
それでもトンチンカンな敬語で接客しながら、なんとか仕事をこなしていた。
リアムという男は一目でどの人物か分かった。そこにだけ人集りができている。
Ωを隠して働いている茉優は、仕事面で迷惑かけないようにとなるべく誰とも関わらずに、黙々と料理やドリンクを運んでいた。しかし、リアムが近寄って来ただけで発情してしまった。
リアムは茉優に『運命の番だ!』と言われ、ホテルの部屋に強引に連れて行かれる。襲われると思っていたが、意外にも茉優が番になると言うまでリアムからは触れてもこなかった。
いよいよ番なった二人はラミレス邸へと移動する。そこで見たのは見知らぬ美しい女性と仲睦まじく過ごすリアムだった。ショックを受けた茉優は塞ぎ込んでしまう。
しかし、その正体はなんとリアムの双子の兄弟だった。パーティーに参加していたのは弟のリアムに扮装した兄のエリアであった。
エリアの正体は公爵家の嫡男であり、後継者だった。侯爵令嬢との縁談を断る為に自分だけの番を探していたのだと言う。
弟のリアムの婚約発表のお茶会で、エリアにも番が出来たと報告しようという話になったが、当日、エリアの目を盗んで侯爵令嬢ベイリーの本性が剥き出しとなる。
お茶会の会場で下民扱いを受けた茉優だったが……。
♡読者様1300over!本当にありがとうございます♡
※独自のオメガバース設定があります。
※予告なく性描写が入ります。
売れ残りオメガの従僕なる日々
灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才)
※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!
ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。
無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。
後悔なんて知ったことではありません!~ボクの正体は創造神です。うっかり自分の世界に転生しました。~
竜鳴躍
BL
転生する人を見送ってきた神様が、自分が創造した世界に誤って転生してしまった。大好きな人を残して。転生先の伯爵家では、醜く虐げる人たち。
いいよ、こんな人たち、ボクの世界には要らない!後悔しても知ーらない!
誰かに似ている従者1人を伴って、創造神スキルで自由に無双!
…………残してきた大好きな人。似ている侍従。
あれ……?この気持ちは何だろう………。
☆短編に変更しました。