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雑書
アレテーの書
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毎日似たような日々が続く中、ヤコブは目標を求めていた。
人生をかけて追求するに値する目標を。
「俺、将来どうしようかな。」
「どうしたんだ、ヤコブ?」
「おお、ジョンか。俺は、自分が人生でしたいことについて悩んでたんだ。」
「人気者になるのはどうだ?」
「いやあ、俺はあまり興味ないな。静かに暮らしたい。」
「金持ちになるのは?」
「あんまり金があっても使い道がないし、盗まれないか攫われないか常に気が狂いそうだ。俺はなりたいと思わないね。」
「権力者は?」
「そんなの、一番嫌だね。義務と胃痛だけで、いいことが何もない。死んだ後に歴史に名を残すことに何の意味があるんだか。」
「綺麗な奥さんと結婚すれば?」
「恋愛は狙ってするのはダメなもんだよ。属性で選んだら置き換え可能だから、対して長続きしないのさ。恋愛は運命に任せるほうがいい。」
「うーん、難しい奴だな。じゃあ、気になってることとか、解決したい問題とかないのか?今具体的に欲しいものがなくても、疑問ぐらいはあるだろう。」
「疑問かあ。」
そして、一つの疑問を得た。
「どうすれば、善い生き方が出来るだろうか。」
「なんだそれ、哲学者みたいだな。いいんじゃないか?お前にあってる。お前の目標は、『善い生き方の方法』を見つけることだな。俺は用事があるからもういくぞ。じゃあな。」
「おう、ありがとう、ジョン。助かったよ。」
ーーーーー
俺は古い遺跡に来て、一人考えていた。
大昔、ここは儀式に使われていたらしい。
今はただの廃墟だ。
そこで俺は一人考える。
「どうすれば、善い生き方が出来るだろうか。」
こんな時、人類の歴史上で、誰かすでに同じ疑問を考えたことがあるのではないかと思う。
「誰か知っている人がいれば、教えを乞いたいものだ。」
考えいると眠くなってきて、そのまま深い眠りに沈んでいった。
ーーーー
「やあやあ、元気かね?」
目が覚めると、そこには高貴に見える年上の男性がいた。
「善い生き方を知りたい君に質問だが、悪い生き方とは、どんなものかね?」
「…」
「例えを考えてみるとわかる。君は、どんな人がいると嫌な思いをするかな?」
こちらを傷つけてくる人は嫌だな。暴力を使う人はダメだ。嘘をつく人も嫌だな。
「なるほどね。では、少なくともそれらをしない人は、悪い生き方ではないのではないかな?
つまり、自分がされたら嫌だと思うことを他人にしないことは、悪くない生き方である、ということではないか?」
なるほど、確かに…
ーーーーー
なるほどと思い、物思いに耽っていると、外から鳥の鳴き声が聞こえて、気がつくと、目が覚めていた。どうやら、今のは夢の中であったようだ。
寝起きの水を飲みながら、考える。
「人は、嘘をつかれたくない、盗まれたくない、傷つけられたくない。じゃあ、自分もそれをしないようにしよう。」
そう考えながら、職場に向かった。
職場では、ある人が、他の人の悪口を言っていた。
「あの人は、いつも自分の話ばっかりなんだよな。」
ーーーー
とりあえず、自分がされたら嫌だと思うことを他人にしない、これが善く生きるには大事だな。
「でも、それは、悪くない生き方で、善い生き方ではないようだね。」
どこからともなく声が聞こえた。
驚いて、声のする方をみると、それは部屋に置いてある姿見のなかから聞こえていた。
姿見を覗き込むと、鏡の向こう側だけに、夢の中の男性が写っていた。
「人間は、他人に勘違いして欲しくないんだ。つまり、自分が見えていない人間には、なって欲しくない、自己矛盾する人にはなって欲しくないんだ。」
「自分ができていないことを他人にするように求めたり、知らないことを知っていると言ったり、そういうことだろう。」
「また、周りの人が怠けているよりも、元気に人の役に立つために働いている方がいいだろうし、言葉遣いが悪いよりも、良い方がいいだろうね。じゃあ、自分もそうしよう。」
「また、周りの人が娯楽ばかり楽しんでいるよりも、人生や、人はどう生きると善いか、他人を喜ばせるにはどうすれば善いかを考えていたほうが良いだろうね。じゃあ、自分もそうしよう。」
「また、周りの人がいつまでも必要もない時間も眠っていたり、睡眠のリズムが無茶苦茶で、いつ予定が合うかわからないよりも、健康的な睡眠リズムで生活しているほうが、いいだろうね。じゃあ、自分もそうしよう。」
「人間は誰でも、苦しみから救われたい、永遠の幸福を手に入れたい。なら、人を救い、永遠の幸福を人に届けようとする。これが善い生き方なのではないかな?」
「じゃあ、どうやったら、人を救い、永遠の幸福を人に届けられるのだろうか?」
「人は、世界の真のあり方を認識した時、救われて、永遠の幸福を手に入れる。」
「世界の真のあり方とは、自分の真のあり方であり、自分を知ること、自分の本当に欲しいものを知ることが、世界の真のあり方を知る方法だったんだ。」
「では、どうすれば自分の本当に欲しいものを知ることができるんだろうか?本当にと言うからには、手に入れて、やっぱりあんまりいらなかった、と言うことにはならないはずだ。」
「世界の真のあり方を知るには、自分の本当に欲しいものを知るには、何か見えにくいものを見る時と同じように、呼吸を落ち着けて、心を落ち着けて、集中した心の状態を作る必要がある。空気中の小さな埃を見つけようととする時のように。針の穴に糸を通そうとする時のように。」
「しかし、人の心はたいてい暴れ者で、集中が続かない。そのような穏やかな心を得るために、人を鏡とし、世界を鏡として、自分の感情、考え、発言、行動を観察し、他人にも持って欲しい理想を持つ。このようにして、己と世間の摩擦を解消して、内でも外でも穏やかな心を手に入れることで、ある種、虫眼鏡や顕微鏡のように、物事をよく観察できる心を手に入れることができる。」
「そこで、世界を鏡と認識するためのトレーニングとして、重要なことが二つある。それは、罪滅ぼしと恩返しだ。自分の犯した罪を償い、受けた恩を返す。
誰でも人の犯した罪や恩には、報いを望むものだ。
実際身近な人でも他人でも、人の心を苛立たせるのは、恩知らずと罪に対する罪悪感の欠如だ。
こちらの善行を忘れ、人に悪びれもなく悪行を行う場合、その人との関係性に関わらず不快なものだ。」
人生をかけて追求するに値する目標を。
「俺、将来どうしようかな。」
「どうしたんだ、ヤコブ?」
「おお、ジョンか。俺は、自分が人生でしたいことについて悩んでたんだ。」
「人気者になるのはどうだ?」
「いやあ、俺はあまり興味ないな。静かに暮らしたい。」
「金持ちになるのは?」
「あんまり金があっても使い道がないし、盗まれないか攫われないか常に気が狂いそうだ。俺はなりたいと思わないね。」
「権力者は?」
「そんなの、一番嫌だね。義務と胃痛だけで、いいことが何もない。死んだ後に歴史に名を残すことに何の意味があるんだか。」
「綺麗な奥さんと結婚すれば?」
「恋愛は狙ってするのはダメなもんだよ。属性で選んだら置き換え可能だから、対して長続きしないのさ。恋愛は運命に任せるほうがいい。」
「うーん、難しい奴だな。じゃあ、気になってることとか、解決したい問題とかないのか?今具体的に欲しいものがなくても、疑問ぐらいはあるだろう。」
「疑問かあ。」
そして、一つの疑問を得た。
「どうすれば、善い生き方が出来るだろうか。」
「なんだそれ、哲学者みたいだな。いいんじゃないか?お前にあってる。お前の目標は、『善い生き方の方法』を見つけることだな。俺は用事があるからもういくぞ。じゃあな。」
「おう、ありがとう、ジョン。助かったよ。」
ーーーーー
俺は古い遺跡に来て、一人考えていた。
大昔、ここは儀式に使われていたらしい。
今はただの廃墟だ。
そこで俺は一人考える。
「どうすれば、善い生き方が出来るだろうか。」
こんな時、人類の歴史上で、誰かすでに同じ疑問を考えたことがあるのではないかと思う。
「誰か知っている人がいれば、教えを乞いたいものだ。」
考えいると眠くなってきて、そのまま深い眠りに沈んでいった。
ーーーー
「やあやあ、元気かね?」
目が覚めると、そこには高貴に見える年上の男性がいた。
「善い生き方を知りたい君に質問だが、悪い生き方とは、どんなものかね?」
「…」
「例えを考えてみるとわかる。君は、どんな人がいると嫌な思いをするかな?」
こちらを傷つけてくる人は嫌だな。暴力を使う人はダメだ。嘘をつく人も嫌だな。
「なるほどね。では、少なくともそれらをしない人は、悪い生き方ではないのではないかな?
つまり、自分がされたら嫌だと思うことを他人にしないことは、悪くない生き方である、ということではないか?」
なるほど、確かに…
ーーーーー
なるほどと思い、物思いに耽っていると、外から鳥の鳴き声が聞こえて、気がつくと、目が覚めていた。どうやら、今のは夢の中であったようだ。
寝起きの水を飲みながら、考える。
「人は、嘘をつかれたくない、盗まれたくない、傷つけられたくない。じゃあ、自分もそれをしないようにしよう。」
そう考えながら、職場に向かった。
職場では、ある人が、他の人の悪口を言っていた。
「あの人は、いつも自分の話ばっかりなんだよな。」
ーーーー
とりあえず、自分がされたら嫌だと思うことを他人にしない、これが善く生きるには大事だな。
「でも、それは、悪くない生き方で、善い生き方ではないようだね。」
どこからともなく声が聞こえた。
驚いて、声のする方をみると、それは部屋に置いてある姿見のなかから聞こえていた。
姿見を覗き込むと、鏡の向こう側だけに、夢の中の男性が写っていた。
「人間は、他人に勘違いして欲しくないんだ。つまり、自分が見えていない人間には、なって欲しくない、自己矛盾する人にはなって欲しくないんだ。」
「自分ができていないことを他人にするように求めたり、知らないことを知っていると言ったり、そういうことだろう。」
「また、周りの人が怠けているよりも、元気に人の役に立つために働いている方がいいだろうし、言葉遣いが悪いよりも、良い方がいいだろうね。じゃあ、自分もそうしよう。」
「また、周りの人が娯楽ばかり楽しんでいるよりも、人生や、人はどう生きると善いか、他人を喜ばせるにはどうすれば善いかを考えていたほうが良いだろうね。じゃあ、自分もそうしよう。」
「また、周りの人がいつまでも必要もない時間も眠っていたり、睡眠のリズムが無茶苦茶で、いつ予定が合うかわからないよりも、健康的な睡眠リズムで生活しているほうが、いいだろうね。じゃあ、自分もそうしよう。」
「人間は誰でも、苦しみから救われたい、永遠の幸福を手に入れたい。なら、人を救い、永遠の幸福を人に届けようとする。これが善い生き方なのではないかな?」
「じゃあ、どうやったら、人を救い、永遠の幸福を人に届けられるのだろうか?」
「人は、世界の真のあり方を認識した時、救われて、永遠の幸福を手に入れる。」
「世界の真のあり方とは、自分の真のあり方であり、自分を知ること、自分の本当に欲しいものを知ることが、世界の真のあり方を知る方法だったんだ。」
「では、どうすれば自分の本当に欲しいものを知ることができるんだろうか?本当にと言うからには、手に入れて、やっぱりあんまりいらなかった、と言うことにはならないはずだ。」
「世界の真のあり方を知るには、自分の本当に欲しいものを知るには、何か見えにくいものを見る時と同じように、呼吸を落ち着けて、心を落ち着けて、集中した心の状態を作る必要がある。空気中の小さな埃を見つけようととする時のように。針の穴に糸を通そうとする時のように。」
「しかし、人の心はたいてい暴れ者で、集中が続かない。そのような穏やかな心を得るために、人を鏡とし、世界を鏡として、自分の感情、考え、発言、行動を観察し、他人にも持って欲しい理想を持つ。このようにして、己と世間の摩擦を解消して、内でも外でも穏やかな心を手に入れることで、ある種、虫眼鏡や顕微鏡のように、物事をよく観察できる心を手に入れることができる。」
「そこで、世界を鏡と認識するためのトレーニングとして、重要なことが二つある。それは、罪滅ぼしと恩返しだ。自分の犯した罪を償い、受けた恩を返す。
誰でも人の犯した罪や恩には、報いを望むものだ。
実際身近な人でも他人でも、人の心を苛立たせるのは、恩知らずと罪に対する罪悪感の欠如だ。
こちらの善行を忘れ、人に悪びれもなく悪行を行う場合、その人との関係性に関わらず不快なものだ。」
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