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お遣いの章
★ちょっとここで酔っ払いに絡まれました②
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ナギが突如現れた酒樽に目を丸くしたのは一瞬で、すぐさまヒノエに向かって叫んだ。
「どうして酒なんですか!?」
「シュスイでは、気に入った相手には、自ら酒を振舞うものなのですよ」
「あと、一体何処からこんなものを!?」
「ふふっここはもうシュスイの領地ですわ。酒樽なんてその辺に転がっておりますわ」
シュスイの秘境とは、一体どんなところなのだろうとナギは首を捻る。そんなナギを無視して、タツミは意気揚々と酒樽を覗き込んだ。
「ヒノエ、あざっす。これ結構、良い酒だわ」
「おだまりなさいっ、タツミ。最初はナギさまからですわっ」
ぴしゃりとタツミを跳ねのけて、さぁさぁ一献と、ヒノエはナギに酒を差し出した。けれど、ナギは首を横に振る。
「主君が、床に伏せっているときに、私が酒など……飲むことはできませんっ」
ナギは、強く反論をした。が、───次の瞬間、表情が凍りついた。ヒノエがナギのすぐ横の岩を砕いた……素手で。それは無言の強迫ともいえる行為だった。
「ちょいと、そこの優男。私の酒が呑めないって言うのかい?ああ?」
ヒノエはナギに杯を押し付ける。杯を突きだしたヒノエはまさに阿修羅のようだった。ナギは聡い。反論せず、ただ黙って杯を受け取った。
「ふふっ、二人とも弱いですわね」
それから一刻後、ヒノエは、酔いつぶれてしまったナギとタツミに、自分の衣をかけた。この三人の周りには、空になった酒樽が無数に転がっている。瑠璃が見たら、仰天して尻もちを付くぐらいに。
ちなみに、ナギとタツミが酒に弱いわけではない、ヒノエがとんでもなく酒豪なだけだった。
「辛いときは、酒の力をかりて寝るのも必要なのよ」
まったく顔色の変わらないヒノエは、やっと眠りに落ちたナギを見て、そう言いながら少し笑う。ナギは、この道中ほとんど寝ていない。常に何かに警戒して、一度だって緊張の糸が切れたことがなかった。顔には出さないが、疲労が蓄積されているのは間違いない。
「でも、これは休息っていうより、酔いつぶれただけじゃね?」
むくりと起き上がったタツミは、苦笑を浮かべながら、ナギの顔を覗き込んだ。ヒノエは、突然起き上がった兄を見ても、別段驚く風ではない。
それはいつものことであるからで、タツミは通常の人間より酔いが醒めるのが早い。それは、シュスイの影として生きるため、体術・剣術、それにありとあらゆるものに耐性をつけたからだった。
「さって、こんなところにナギ様を転がしてたら、余計、疲れるっしょ」
硬い岩にもたれているナギを一瞥すると、タツミはナギを担ぎ上げ、柔らかい草の上に横たえた。と、同時に、ナギの懐から何かが滑り落ちた。
「え……これって」
それを拾おうとしたヒノエは、そこまで言うと伸ばした手を止めた。それもそのはず。ナギの衿の合わせから、抜け落ちたものは、コキヒ国でもう見ることのないものだった。それは、珍品ではなく、禁忌といわれるもので絶対にコキヒ国に存在してはならないものであった。
ヒノエはもう一度手を伸ばし、それを手に取ると、寝落ちしたナギの顔をまじまじと見つめる。その眼には殺気が込められていた。
「…………」
「俺は、ナギ様に乗っかるよ」
何も言わないヒノエに、タツミは静かに口を開いた。その表情はいつもの揚々うとしたものではなく、強い意志を秘めたものだった。
ヒノエはタツミの顔を見つめること数拍。ヒノエはきつく瞼を閉じると、それをナギの袷にそっと戻した。その眼は、殺気が消えていた。
「っふふ、タツミ………あなた随分、ナギを気に入ったのね」
そう呟いたヒノエの声音は、今までにないほど柔らかなものだった。ヒノエの言葉に、タツミは目を細めて口を開いた。
「まぁ、なんとなく、ね」
「……そう」
タツミは、本能で生きている。だから、ナギを慕う気持ちを説明するのが難しいのだろう。けれど、ヒノエは知っている。タツミは、誰よりも警戒心が強く、そう簡単に自分から距離を詰めたりはしないのだ。
そのタツミが、そこまで言うのなら……分身の妹であるヒノエは、兄に従うまでだ。
「そうね。タツミがそこまで言うのなら、少しぐらい……協力しても、良いわよね」
ヒノエはそう呟いて、タツミを見つめる。タツミは、静かに頷いただけだった。
ナギのことは嫌いじゃない。瑠璃との桃花事件を差し引いても、有り余るほど、ナギは瑠璃に大切なものを与えてくれたのだ。それは、タツミとヒノエでは絶対にできないことで、素直に感謝の念を抱いている。
ナギには、誰にも言えない過去があることを知っている。そして、その過去をまだ清算しきれていないきとも。欠けた心を、彼は何処に落としてしまったのであろうか。
シュウトとナギはシュスイの秘境で、何かを企んでいる。先ほどの強襲は、野良武士や忍びの動きではない。統率のとれた動きで、間違いなく訓練を受けた者だった。
ナギは、その動きを読んでいた。つまりナギは、強襲の出処を知っているのだろう。その答えはきっと、彼の懐に忍ばせているものに繋がる。
ナギは聡い。これを持ち続けることは、とても危険なもので、主君のとシュウトにすら危険に晒すものだということを。それでも大事に持ち続けている、この矛盾した事実をきっと主であるシュウトも気付いていないのであろう。
「ナギ様が壊れたら、瑠璃様は間違いなく泣くっすね」
「……それは、一番望まない結果だわ」
タツミとヒノエにとって、瑠璃は無条件に大切な存在であった。その理由は、瑠璃がシュスイの秘境に行けばおのずと分かることであった。大切な者の涙など、見たくない。それだけで、二人はこの国の理を犯すことのできる人間なのだ。
「そういうことで、ナギ、わたくし達はあなたを手をとりますわ」
濁流に飲み込まれようとしている者でも、頼りない小枝があれば、多少の気休めになるかもしれない。
ヒノエはそう言うと、ナギの手を握り微笑んだ。
「どうして酒なんですか!?」
「シュスイでは、気に入った相手には、自ら酒を振舞うものなのですよ」
「あと、一体何処からこんなものを!?」
「ふふっここはもうシュスイの領地ですわ。酒樽なんてその辺に転がっておりますわ」
シュスイの秘境とは、一体どんなところなのだろうとナギは首を捻る。そんなナギを無視して、タツミは意気揚々と酒樽を覗き込んだ。
「ヒノエ、あざっす。これ結構、良い酒だわ」
「おだまりなさいっ、タツミ。最初はナギさまからですわっ」
ぴしゃりとタツミを跳ねのけて、さぁさぁ一献と、ヒノエはナギに酒を差し出した。けれど、ナギは首を横に振る。
「主君が、床に伏せっているときに、私が酒など……飲むことはできませんっ」
ナギは、強く反論をした。が、───次の瞬間、表情が凍りついた。ヒノエがナギのすぐ横の岩を砕いた……素手で。それは無言の強迫ともいえる行為だった。
「ちょいと、そこの優男。私の酒が呑めないって言うのかい?ああ?」
ヒノエはナギに杯を押し付ける。杯を突きだしたヒノエはまさに阿修羅のようだった。ナギは聡い。反論せず、ただ黙って杯を受け取った。
「ふふっ、二人とも弱いですわね」
それから一刻後、ヒノエは、酔いつぶれてしまったナギとタツミに、自分の衣をかけた。この三人の周りには、空になった酒樽が無数に転がっている。瑠璃が見たら、仰天して尻もちを付くぐらいに。
ちなみに、ナギとタツミが酒に弱いわけではない、ヒノエがとんでもなく酒豪なだけだった。
「辛いときは、酒の力をかりて寝るのも必要なのよ」
まったく顔色の変わらないヒノエは、やっと眠りに落ちたナギを見て、そう言いながら少し笑う。ナギは、この道中ほとんど寝ていない。常に何かに警戒して、一度だって緊張の糸が切れたことがなかった。顔には出さないが、疲労が蓄積されているのは間違いない。
「でも、これは休息っていうより、酔いつぶれただけじゃね?」
むくりと起き上がったタツミは、苦笑を浮かべながら、ナギの顔を覗き込んだ。ヒノエは、突然起き上がった兄を見ても、別段驚く風ではない。
それはいつものことであるからで、タツミは通常の人間より酔いが醒めるのが早い。それは、シュスイの影として生きるため、体術・剣術、それにありとあらゆるものに耐性をつけたからだった。
「さって、こんなところにナギ様を転がしてたら、余計、疲れるっしょ」
硬い岩にもたれているナギを一瞥すると、タツミはナギを担ぎ上げ、柔らかい草の上に横たえた。と、同時に、ナギの懐から何かが滑り落ちた。
「え……これって」
それを拾おうとしたヒノエは、そこまで言うと伸ばした手を止めた。それもそのはず。ナギの衿の合わせから、抜け落ちたものは、コキヒ国でもう見ることのないものだった。それは、珍品ではなく、禁忌といわれるもので絶対にコキヒ国に存在してはならないものであった。
ヒノエはもう一度手を伸ばし、それを手に取ると、寝落ちしたナギの顔をまじまじと見つめる。その眼には殺気が込められていた。
「…………」
「俺は、ナギ様に乗っかるよ」
何も言わないヒノエに、タツミは静かに口を開いた。その表情はいつもの揚々うとしたものではなく、強い意志を秘めたものだった。
ヒノエはタツミの顔を見つめること数拍。ヒノエはきつく瞼を閉じると、それをナギの袷にそっと戻した。その眼は、殺気が消えていた。
「っふふ、タツミ………あなた随分、ナギを気に入ったのね」
そう呟いたヒノエの声音は、今までにないほど柔らかなものだった。ヒノエの言葉に、タツミは目を細めて口を開いた。
「まぁ、なんとなく、ね」
「……そう」
タツミは、本能で生きている。だから、ナギを慕う気持ちを説明するのが難しいのだろう。けれど、ヒノエは知っている。タツミは、誰よりも警戒心が強く、そう簡単に自分から距離を詰めたりはしないのだ。
そのタツミが、そこまで言うのなら……分身の妹であるヒノエは、兄に従うまでだ。
「そうね。タツミがそこまで言うのなら、少しぐらい……協力しても、良いわよね」
ヒノエはそう呟いて、タツミを見つめる。タツミは、静かに頷いただけだった。
ナギのことは嫌いじゃない。瑠璃との桃花事件を差し引いても、有り余るほど、ナギは瑠璃に大切なものを与えてくれたのだ。それは、タツミとヒノエでは絶対にできないことで、素直に感謝の念を抱いている。
ナギには、誰にも言えない過去があることを知っている。そして、その過去をまだ清算しきれていないきとも。欠けた心を、彼は何処に落としてしまったのであろうか。
シュウトとナギはシュスイの秘境で、何かを企んでいる。先ほどの強襲は、野良武士や忍びの動きではない。統率のとれた動きで、間違いなく訓練を受けた者だった。
ナギは、その動きを読んでいた。つまりナギは、強襲の出処を知っているのだろう。その答えはきっと、彼の懐に忍ばせているものに繋がる。
ナギは聡い。これを持ち続けることは、とても危険なもので、主君のとシュウトにすら危険に晒すものだということを。それでも大事に持ち続けている、この矛盾した事実をきっと主であるシュウトも気付いていないのであろう。
「ナギ様が壊れたら、瑠璃様は間違いなく泣くっすね」
「……それは、一番望まない結果だわ」
タツミとヒノエにとって、瑠璃は無条件に大切な存在であった。その理由は、瑠璃がシュスイの秘境に行けばおのずと分かることであった。大切な者の涙など、見たくない。それだけで、二人はこの国の理を犯すことのできる人間なのだ。
「そういうことで、ナギ、わたくし達はあなたを手をとりますわ」
濁流に飲み込まれようとしている者でも、頼りない小枝があれば、多少の気休めになるかもしれない。
ヒノエはそう言うと、ナギの手を握り微笑んだ。
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今後の展開も楽しみにしてます(*・ω・*)wkwk
桐生千種 さま
コメントありがとうございます(*・ω・*)
沢山あるHOTランキングの作品の中から遊びに来ていただけて、本当に嬉しいです
♬いらっしゃいませ♬
お褒めの言葉まで頂いてしまって、本当に恐縮です(*ノдノ)
ハッタリのシーン、私も大好きです!←実はコレ、この作品を書こうと思ったときに真っ先に浮かんだシーンの一つなのです(/・ω・)/
これからも更新がんばります(`・ω・´)ゞ
*:..。o○* また是非×2遊びに来て下さい *○o。..:*
退会済ユーザのコメントです
かぐやさま
コメントありがとうございますヽ(*>∇<)ノワーイ♪
一気読みして頂いてとっても嬉しいです♪♪
じれじれ展開が続きますが、なるべく飽きないようテンポ良く楽しんで読んでもらえるような作品になるように頑張ります(`・ω・´)ゞ
マイペースな更新で申し訳ありませんが、最後までお付き合い頂ければ幸いです(o*。_。)oペコッ
*:..。o○* また是非×2遊びに来て下さい *○o。..:*
おもしろい🎵
今後の展開から目が話せない〰
更新 お待ちしてます❗
shikkoさま
コメントありがとうございますヽ(*>∇<)ノヤッホーイ♪
面白いという感想を頂けて、本当に嬉しいです!
ヤキモキする展開が続きますが、これからも、楽しんで読んでもらえるような作品になるように頑張ります(`・ω・´)ゞ
不規則な更新でお待たせしてしまうこともありますが、最後までお付き合い頂ければ幸いです(o*。_。)oペコッ
*:..。o○* また是非×2遊びに来て下さい *○o。..:*