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123話 五神と異世界転生
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『私は、貴方に必要な力を授けるためにここで待っていました』
僕にはわかる。
ミトラス神が待っていたのは紅玉龍の遺跡にある、壁画なのだろうと。
壁画には翼を広げた紅い龍、さまざまな動物たち、そしてミトラス神と思われる女性が描かれている。
そして、その壁画が上流貴族第二位の龍の紋章と彫りが似ていることにも気がついた。
『必要な力、それはName魔法。新しい無属性魔法です』
確かに、無属性魔法大全には『Name』魔法は記されていない。
でも、なぜその新しい魔法を僕が授かれるのだろうか?
僕がそう思うと、僕の頭の中でミトラス神が囁いた。
『分かりました。なら、過去の私の話をしましょう。貴方にも当てはまるところはあるでしょうから……』
それは二千年ほど昔にさかのぼることになる。
まだ上流貴族という階級はなかったものの、一部の権力者たちは自らを「貴族」と呼ぶようになり傍若無人にふるまっていた。
一般市民として生まれたミトラスは、生まれてから十数年を「名前なき少女」として過ごすことになる。
これは、名前というのは「貴族」たちが名乗るために自分につけたものであって、一般市民は名前を付けることを禁止されていたのだ。
名前なき少女は山の中で足を踏み外し意識を失ってしまう。
再び目を覚ました時、その少女は性格が変わったかのように大人しくなり、そして自らを「ミトラス」と呼ぶようになっていた。
なぜ、ミトラスは突如として性格が変わってしまったのか。
答えはとんでもなく単純だった。
__________名前なき少女の心は、何らかの理由でミトラスになってしまった。
その理由が、ミトラスの異世界転生だったということ。
異世界転生したミトラスは転生前に負ったトラウマから他人を信じることができなくなってしまっていた。
でも、彼女は動物と話すことができた。
いつしかミトラスは人と離れて生活するようになり、動物を愛するようになっていった。
しかし、そんな時間はいつまでも続かない。
どこからだろうか。
森に動物と話すことができ、動物と生活を共にしている少女がいるという噂が流れるようになり、その噂は「貴族」の耳にすら入る話になっていた。
そして、その少女に会ってみたいという、物好きな「貴族」もいた。
その「貴族」は最初こそミトラスに距離を置かれていたが、やがて少しずつミトラスと打ち解けていった。
やがてその「貴族」とミトラスは結婚をした。
子にも恵まれ、幸せな日々を過ごすはずだったのだ。
ミトラスはそれを快く思わなかった人々に襲われる。
必死に抵抗しようと放ったのは「無属性魔法」だった。
出てきたのは赤い瞳の龍。
たちまちにして襲ってきた人を返り討ちにして、ミトラスは助かった。
『でも、私を襲ったのは私の家族でした。何でこんな運命なのだろうか、私はもう限界でした』
ミトラスは自身をその紅い龍に襲わせた。
そここそがここ、「紅玉龍の遺跡」だったのだ。
僕にはわかる。
ミトラス神が待っていたのは紅玉龍の遺跡にある、壁画なのだろうと。
壁画には翼を広げた紅い龍、さまざまな動物たち、そしてミトラス神と思われる女性が描かれている。
そして、その壁画が上流貴族第二位の龍の紋章と彫りが似ていることにも気がついた。
『必要な力、それはName魔法。新しい無属性魔法です』
確かに、無属性魔法大全には『Name』魔法は記されていない。
でも、なぜその新しい魔法を僕が授かれるのだろうか?
僕がそう思うと、僕の頭の中でミトラス神が囁いた。
『分かりました。なら、過去の私の話をしましょう。貴方にも当てはまるところはあるでしょうから……』
それは二千年ほど昔にさかのぼることになる。
まだ上流貴族という階級はなかったものの、一部の権力者たちは自らを「貴族」と呼ぶようになり傍若無人にふるまっていた。
一般市民として生まれたミトラスは、生まれてから十数年を「名前なき少女」として過ごすことになる。
これは、名前というのは「貴族」たちが名乗るために自分につけたものであって、一般市民は名前を付けることを禁止されていたのだ。
名前なき少女は山の中で足を踏み外し意識を失ってしまう。
再び目を覚ました時、その少女は性格が変わったかのように大人しくなり、そして自らを「ミトラス」と呼ぶようになっていた。
なぜ、ミトラスは突如として性格が変わってしまったのか。
答えはとんでもなく単純だった。
__________名前なき少女の心は、何らかの理由でミトラスになってしまった。
その理由が、ミトラスの異世界転生だったということ。
異世界転生したミトラスは転生前に負ったトラウマから他人を信じることができなくなってしまっていた。
でも、彼女は動物と話すことができた。
いつしかミトラスは人と離れて生活するようになり、動物を愛するようになっていった。
しかし、そんな時間はいつまでも続かない。
どこからだろうか。
森に動物と話すことができ、動物と生活を共にしている少女がいるという噂が流れるようになり、その噂は「貴族」の耳にすら入る話になっていた。
そして、その少女に会ってみたいという、物好きな「貴族」もいた。
その「貴族」は最初こそミトラスに距離を置かれていたが、やがて少しずつミトラスと打ち解けていった。
やがてその「貴族」とミトラスは結婚をした。
子にも恵まれ、幸せな日々を過ごすはずだったのだ。
ミトラスはそれを快く思わなかった人々に襲われる。
必死に抵抗しようと放ったのは「無属性魔法」だった。
出てきたのは赤い瞳の龍。
たちまちにして襲ってきた人を返り討ちにして、ミトラスは助かった。
『でも、私を襲ったのは私の家族でした。何でこんな運命なのだろうか、私はもう限界でした』
ミトラスは自身をその紅い龍に襲わせた。
そここそがここ、「紅玉龍の遺跡」だったのだ。
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