幼馴染みの不良と優等生

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医者「脳や身体に異常はありませんが、傷跡は・・・」

獅子丸母「そうですか・・・」

獅子丸父「・・・退院はいつ頃・・・」

医者「もう少し様子を見たいので・・・一週間・・・五日くらい・・・は・・・」

獅子丸父「そうですか・・・ありがとうございます」

ヒロちゃんの両親は医者に頭を下げた
医者は病室を出て行った

獅子丸父「・・・ひとまず安静にね?」

「はい」

獅子丸母「ご両親には連絡してあるからね?」

「すみません・・・」

獅子丸母「いいんだよ。こっちが悪いんだから」

「・・・来ては・・・くれないんですね・・・」

獅子丸母「お、お仕事が忙しいって言ってたから!だから・・・」

「・・・」

僕の両親はお仕事で海外に行っている
一年に一度・・・帰ってくるか来ないかって感じだ
息子が怪我をしたのに帰って来ないくらいだし
そもそも、そんな期待してない・・・

「・・・」

獅子丸母「お母さんから『息子をよろしくお願いします』って言われてるから!僕達が側にいるから!」

「・・・はい。迷惑かけてすみません・・・」

そう言い僕は窓の外をみた
外は快晴で病院の前にある公園では白熊の親子が楽しそうに遊んでいる

(・・・親と遊んだの・・・いつ以来だろう・・・)

そんなことを考えていたら

獅子丸父「おい。いつまでそこでコソコソしてるんだ?」

そう言うとヒロちゃんが病室に入ってきた

獅子丸「いや・・・その・・・」

獅子丸父「学校は?」

獅子丸「・・・」

獅子丸父「はぁ・・・行きなさいって言っただろう・・・」

獅子丸「・・・」

獅子丸母「ま、まぁ・・・今日ぐらいいいじゃんw」

獅子丸父「・・・明日は行きなさい」

獅子丸「・・・ああ」

獅子丸父「・・・俺はなにか買ってくる。なにか欲しいのはあるか?」

獅子丸母「僕も一緒に行くよ」

獅子丸父「博昭は?」

獅子丸「俺は・・・」

獅子丸父「タバコは買わないぞ」

獅子丸「・・・じゃあ、いらない」

獅子丸父「春斗君はなにか欲しいのはないかい?」

「いえ・・・大丈夫です」

獅子丸父「そうか・・・じゃあ、博昭。春斗くんの傍にいなさい」

獅子丸「ああ」

そう言うとおじさんは病室を出て行った

「・・・」

獅子丸「・・・」

無言が続く

獅子丸「お前の親は・・・?」

「来ないよwいつもそうじゃんw」

獅子丸「・・・こういう時くらい来てもいいと思うんだがな・・・」

「おじさんたちを信用してるからねw安心して僕を一人にできるんだよw」

獅子丸「・・・」

「・・・」

また無言が続く・・・

(本当に・・・来てくれてもいいのにな・・・)

獅子丸「・・・無理してるだろう?」

「ん?そう見える?w」

獅子丸「ああ」

「・・・まぁ・・・本音を言うと・・・ちょっと怒ってるんだよねw」

獅子丸「・・・」

「ヒロちゃんにじゃないよ!w親にだよ?w」

獅子丸「・・・」

「一人息子が怪我して入院してるって言うのにスマホに連絡一つない。それどころかおじさんたちに言伝一つない。一言『大丈夫か?』って聞いてきてもいいと思うんだよね~。それを『息子をよろしくお願いします』だよ?本当・・・信じられない」

獅子丸「でもよ、お前の両親、仕事ホントに忙しいんだし・・・愛されてないわけじゃないだろう?」

「愛されてるとは思うよ?誕生日にはプレゼントとバースデーカードが届くし・・・でも、『おめでとう』だけって・・・もっとなにか言うことはないのか!って思うよ・・・それに!一生で一度しかない入学式や卒業式にも来ないって・・・どうなのかなって思うんだけど・・・」

獅子丸「でも・・・ほら・・・時々電話してくれるじゃないか!」

「時々ね!半年に一回電話が来ればいい方だよ!こっちからかけても『忙しい』で終わりだよ?」

獅子丸「しょ、しょうがねぇだろう・・・マジで忙しいんだろうし」

「だからって息子一人を置いていく!?」

獅子丸「でもお前は自分の意思で残ったんだろう?」

「う・・・」

そうだ・・・
確かに自分の意志でここに残った
ヒロちゃんと離れたくなかったから・・・

獅子丸「一緒に着いて行ってもよかったんじゃないか?」

「僕は・・・」

獅子丸「???」

「ヒロちゃんが心配だったからねwヒロちゃんを一人にしたら高校もロクに行かない本物の不良になっちゃうから!w」

獅子丸「俺の・・・せい・・・だな・・・」

「え・・・いや・・・そういうことじゃないよ?」

獅子丸「でも、お前は俺がいるから親と離れて暮らす道を選んだんだろう!俺がいなければお前は親と一緒に居られたんだろう!俺がいなければケガも・・・入院もすることはなかっただろう!!」

「ヒ、ヒロちゃん?ちょ、ちょっと落ち着こう?・・・ね?」

獅子丸「はっきり言えよ!!俺のせいだって!全部・・・全部俺が悪いんだって!!」

「・・・」

獅子丸「俺がお前を引き留めてる・・・高校だってそうだ・・・お前ならもっと上の頭のいい高校だって行けただろう!それなのに・・・お前は・・・」

「・・・」

獅子丸「俺のせいだって言えよ!俺のせいで人生がメチャクチャだって言えよ!!俺がいなければ・・・っ!?」

バチン!!

「それ以上・・・言うな・・・」

獅子丸「え・・・」

僕はヒロちゃんを叩いた
そして胸倉を掴んだ

獅子丸「っ!?」

「例えヒロちゃんでもこれ以上は許さない」

ヒロちゃんは驚いて目を見開いている

「ヒロちゃんのせい?ふざけるな!僕は自分で選んでここに居るんだ!自分で選んでヒロちゃんと居るんだ!それを人生をメチャクチャにされたなんて思ったこと一度もない!!」

獅子丸「・・・」

「勝手なこと言うなよ!自分が他人の人生を狂わせるほどの人物だとでも思ってるの?うぬぼれるな!」

獅子丸「!?」

「自分の人生は自分で決める!!自分がやりたいことは自分で選ぶ!!他人にとやかく言われる筋合いはない!!」

獅子丸「・・・」

「僕はヒロちゃんと一緒に居たいからここにいる!自分で決めたんだ!それを勝手にメチャクチャだとか責任だとか言われたくない!!・・・っ!!!」

その時、酷い頭痛がした

「い、たい・・・」

手を当てたら血が付いていた

獅子丸「!?春斗!?」

「・・・っ!!」

僕はそんなこと気にせずヒロちゃんの両頬をつかんだ

獅子丸「!?」

「よく聞けよ!お前みたいな不良がどうこうできるほど僕の人生は小さくないんだよ!!不良なら不良らしく堂々としてろ!!それが今の『獅子丸 博昭』だろう!!!!」

獅子丸「っ!?」

血が顔に流れてくるのがわかる
でも、僕は自分を止められない
伝えなくちゃいけない

「うぬぼれるのも大概にしろ!!お前はお前なんだ!他人にはなれないし他人の人生を狂わせることもできないんだよ!!自分がいなければいい?ヒロちゃんがいるから僕はここに居られるんだ!勝手にいなくなればいいとか言うな!!これ以上言うなら・・・僕はヒロちゃんを許さないから!!」

そして僕はヒロちゃんの頬を撫でた

「ヒロちゃんに責任はないんだよ?全部、僕が選んだ結果なんだから・・・だから・・・いなくなればいいとか・・・い、わない・・で・・・」

獅子丸「春斗!!」

僕は気を失った・・・

・・・獅子丸視点・・・
「春斗!!」

俺は春斗をゆすった
でも、目を覚まさない

「!!ナースコール!」

俺は急いでナースコールを押した

ナース『はい。どうされましたか?』

「春斗が!!血が!!」

ナース『すぐ伺います!!』

その時親父たちが帰ってきた

父「なにを騒いで・・・春斗くん!?」

母「ん? !?」

「親父!母さん!どうしよう!!春斗が!!」

父「ナースコールは!?」

「もう呼んだ・・・」

少しすると医者とナースが来た

医者「これは・・・一体なにが・・・」

「お、俺が・・・俺が・・・いけないんです・・・」

医者「話はあとで伺います!君!患者を手術室へ!」

そういうと春斗は手術室に運ばれていった
俺はその場で崩れた

父「なにがあったんだ?」

「・・・」

父「博昭!!」

俺は春斗とのことを話した

父「・・・それは春斗くんが正しい」

「・・・」

父「お前が春斗くんの人生をどうこうできるわけないだろう・・・」

「・・・それは・・・」

父「ちょっと春斗くんが言いすぎなところもある。でも、お前が春斗くんの人生をメチャクチャにできるわけないだろう?」

「でも・・・俺がいなければ・・・春斗はケガもしなかったし・・・高校ももっといいところに・・・」

父「・・・お前!!」

親父は俺の胸倉を掴んで持ち上げた

「!?」

父「お前・・・春斗くんの言ったことがまだわからないのか!!」

「・・・」

父「なんで傷口が開いてまで言ったのか、なんで怪我をしてるのに無茶をしてまで言ったのか・・・わからないのか!!」

「・・・」

親父は手を離した
俺は床に倒れた

父「考えろ・・・なぜそんなことを言われたのか・・・」

「・・・」

そういうと親父は急ぎ足で病室を出て行った

「なんで・・・?」

母「ヒロ・・・」

「俺にはわからねぇよ・・・わからねぇよ!!!」

そう言い床を殴った
その時、母さんが俺の前に屈んだ

母「お母さんね。昔、ハルちゃんと同じようなことしたんだよ?」

「え?母さんが?」

母「うん!」

「想像できない・・・」

母「そうだね・・・自分でもそう思うよw」

「母さんはなんでそんなことをしたんだ?」

母「そうだね・・・話すと長くなっちゃうんだけど・・・簡単に言えば『大切』だったからかなw」

「大切?」

母「うん!お母さん、ヒロがまだお腹の中にいたとき扉を破壊したんだよ?」

「え!?」

母「その時はそうするしかないって思ったからねw」

「なんでそこまで・・・」

母「だから大切だったからだよw」

「俺よりも・・・?」

母「違うよwお母さんにとってはヒロもお父さんも友達もだ~~~~~い好きで大切なのw」

そういうと母さんは立ち上がった

母「僕はハルちゃんの気持ちわかるんだよねw」

「俺には・・・」

母「今は無理に知ろうとしなくていいと思うな。でも、考えてみて?どうでもいい相手にここまでするのかを・・・」

「・・・」

母「ハルちゃんは僕に似てるなw」

「え・・・母さんに?」

母「うんw無茶しちゃうところとかねw」

そういうとハンカチを差し出してきた

母「顔を拭きなさい」

そういい母さんは病室を出た

「・・・春斗・・・」

俺は頬に付いた春斗の血を手で触り見ながら

「なんで・・・ここまで・・・」

下手をすれば死ぬかもしれないのに・・・
それでも俺に・・・

「・・・大切・・・春斗は俺を・・・?」

幼馴染でずっとそばにいた
それが当たり前だった
だからこの「当たり前」が理由で春斗は俺といる
そう思っていた
でも・・・それは違うのか?

「そうか・・・春斗は俺を・・・大事に思ってくれてるのか・・・w」

俺は自分の馬鹿さ加減に笑えて来た
ずっとそばにいてくれたのは「当たり前」じゃなく「大切な存在」だからなんだ
それなのに俺は・・・
その気持ちに気づかずあんなことを・・・

「・・・死なないでくれ・・・側に・・・いてくれ・・・」

俺は涙を流した・・・
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