水神様に溺愛されたら、死に戻り巫女になりました。――たとえ何度あなたを忘れても、私はきっとまた恋をします。

猫屋敷 むぎ

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第一部 ユイ編 第一章 

第九話 再会(第一部・第一章最終話)

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ある日のこと。

湖のほとりを歩いていたとき、ふと、視線の先に誰かの姿が見えた。

淡い藍の服、風に揺れるやわらかな碧い髪、静かに水面を眺める青年。

――不思議な人……。

陽の光に照らされたその横顔を見た瞬間、胸の奥がふっと熱くなった。
知らない人なのに、懐かしさが胸を満たす。

なぜかはわからない。
でも、どうしようもなく、目が離せなかった。

彼がこちらに気づき、ゆっくりと振り向いた。
湖のように深く、優しい瞳が私をまっすぐ見つめる。

「こんにちは、ユイ。君もこの湖が好きなのかい?」

なぜわたしの名前を知っているのか――
そんなことは、もうどうでもよかった。

「……ええ、きっと、ずっと好きだったの」

理由なんて知らないのに、その瞳を見た瞬間、
心の奥の何かがほどけた。
彼のことをずっと待っていた気がして――私の頬にふと涙が伝った。

どうして涙が出るのかわからなかった。
でも、身体が先に答えを知っているようだった。

「君を迎えに来たんだ、僕の愛しい人。
 もう、君を一人にはしないよ。一緒に年を取ろう」

思わず目を丸くする。
初めて会ったはずなのに、まるでプロポーズのような一言に――
思わず笑ってしまった。

「ふふ……本当におかしな人」

でも、どうしてだろう。嬉しくて仕方ない。

私につられて、はにかんで笑う彼の笑顔は不思議と懐かしくて――
けれど、もう理由なんていらなかった。

だって。

私の心は、その瞬間に――恋に落ちていたから。



湖は、今日も静かだ。

でも、波紋がひとつ立つたびに、
きっとどこかで、誰かが恋をしている。

だって、人は、恋の痛みも、焦がれた想いも、
忘れてしまうからこそ――また、恋に落ちるのだから。

――第二章へ続く。
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