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7章 牙をむく火星の大地
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それからも私は目印を探しながら歩きました。何も考えず、ただ歩いていただけなら、今も変わらない景色に飽き飽きしていたのでしょう。しかし、大葉部長に言われてから景色を注意深く見ていたので、変化に気づけて、案外、楽しいピクニックができました。
ただ、私たちはピクニックをするために火星に来たわけではありません。
「落下位置はこの辺なんですけど……」
大葉部長がホログラムのような仮想の火星地図を手の上に広げ、それをマリさんものぞき込んでいます。
「発信器で落ちた場所が分かるのはいいんだけど、範囲が広すぎるのがな……もうちょっと性能がいい発信器を付ければいいのに」
「仕方ないですよ。発信器に予算を割くわけにはいかないでしょうし」
「ケチりやがって……こういうところは日本の悪いところだよなぁ」
マリさんは私とは違い日本の悪口も口にしてしまうようです。
「文句言っても仕方ないか。で、どうする? これだと結構時間がかかりそうだけど」
マリさんが言う時間がかかりそうな原因というのは範囲の広さだけではありません。
「風が強くなってきましたからね……。やっかいですね」
風が強くなったことで、今まで以上に砂を巻き上げ、視界はかなり悪くなっています。晴れていれば、少し高い場所に登って見渡してみれば簡単に見つかったのでしょうが、今日は運が悪かったようです。
「一番は手分けして探すことだけど……」
「いえ、今日は1年生もいますし、単独行動は事故に繋がる危険性があります」
「じゃあ、纏まって探すか、それとも二手に分かれるか、だな」
「二手に分かれて、もし、一人で対処できない事態に遭遇したら倍の時間がかかりますし、今回は全員纏まって行動しましょう。その方が危険にも対処しやすいですし、それに、1年生もその方が安心できるでしょうから」
「それもそうだね。じゃあ、それで決まりだ」
やっと、今後の行動方針が決まったようです。蚊帳の外だった私と彦君の1年生コンビも話の輪へと加わりに行きます。
「投下された植物は、この付近に落ちているはずなんんですが、見ての通り、視界は悪いです。本来なら手分けして探しますが、彦君はまだ経験が豊富とは言えませんし、緋色さんは今日が2回目ということもあるので、今回は全員纏まって捜索したいと思います」
「分かりました!」
「……分かりました」
彦君は、自分がまだ頼りにならないと言われて不甲斐ない気分になっているのでしょう。私たち1年生はまだまだこれからだというのに、3年生である大葉部長に想いを寄せているから成長を急いているのでしょう。その焦りが悪い方向へ行かないことを私は祈るばかりです。
ただ、私たちはピクニックをするために火星に来たわけではありません。
「落下位置はこの辺なんですけど……」
大葉部長がホログラムのような仮想の火星地図を手の上に広げ、それをマリさんものぞき込んでいます。
「発信器で落ちた場所が分かるのはいいんだけど、範囲が広すぎるのがな……もうちょっと性能がいい発信器を付ければいいのに」
「仕方ないですよ。発信器に予算を割くわけにはいかないでしょうし」
「ケチりやがって……こういうところは日本の悪いところだよなぁ」
マリさんは私とは違い日本の悪口も口にしてしまうようです。
「文句言っても仕方ないか。で、どうする? これだと結構時間がかかりそうだけど」
マリさんが言う時間がかかりそうな原因というのは範囲の広さだけではありません。
「風が強くなってきましたからね……。やっかいですね」
風が強くなったことで、今まで以上に砂を巻き上げ、視界はかなり悪くなっています。晴れていれば、少し高い場所に登って見渡してみれば簡単に見つかったのでしょうが、今日は運が悪かったようです。
「一番は手分けして探すことだけど……」
「いえ、今日は1年生もいますし、単独行動は事故に繋がる危険性があります」
「じゃあ、纏まって探すか、それとも二手に分かれるか、だな」
「二手に分かれて、もし、一人で対処できない事態に遭遇したら倍の時間がかかりますし、今回は全員纏まって行動しましょう。その方が危険にも対処しやすいですし、それに、1年生もその方が安心できるでしょうから」
「それもそうだね。じゃあ、それで決まりだ」
やっと、今後の行動方針が決まったようです。蚊帳の外だった私と彦君の1年生コンビも話の輪へと加わりに行きます。
「投下された植物は、この付近に落ちているはずなんんですが、見ての通り、視界は悪いです。本来なら手分けして探しますが、彦君はまだ経験が豊富とは言えませんし、緋色さんは今日が2回目ということもあるので、今回は全員纏まって捜索したいと思います」
「分かりました!」
「……分かりました」
彦君は、自分がまだ頼りにならないと言われて不甲斐ない気分になっているのでしょう。私たち1年生はまだまだこれからだというのに、3年生である大葉部長に想いを寄せているから成長を急いているのでしょう。その焦りが悪い方向へ行かないことを私は祈るばかりです。
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