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10章 火星人との邂逅
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「助けましょう。やっと誰かが来たのに、こんなところに置き去りにされるなんて……。私たちが助けてあげるべきです」
しかし、全員が口を噤みます。その様子を見れば、誰だって分かります。答えはノーです。
「な、何でですか? 火星は常に物資不足なんですよね? これを持ち帰らない理由はないはずです!」
そのはずなのに、誰も何も言ってくれません。
そんな中、一人だけ、私の言葉で心が動いてくれる人がいました。
「俺は……緋色の意見に賛成です」
意外にも、彦君が私の意見に賛成してくれたのです。
彦君は大葉部長に好意を寄せているので、対立なんてしたくないはずです。それなのに、私の意見を押してくれました。
「もし、これが充電不足なだけだったなら、太陽光発電で動き出す可能性があります。俺たちは植物の育成がメインで、周辺の探索には時間が割けません。でも、これが動いてくれれば、それをカバーしてくれるかもしれません。それに、もし動かなくても、これに付いているソーラーパネルには価値があります。持ち帰るには十分かと……」
彦君が力説してくれましたが、大葉部長の首は動きません。後一押しだと思うのですが、その言葉が私には出てきません。
そんな私たちを眺めていたマリさんがやっと口を開きました。
「緋色の感情論は抜きにして、鷲斗の意見は正しい。迷っているのは、危険だからだろ?」
マリさんの問いに大葉部長が頷きます。
「はい。オートマーズだけなら抱えて崖を登ることも可能です。しかし、ローバーもとなると……」
持ち帰ることは難しいと言いたいのでしょう。それなら、壊れたオートマーズと一緒に登らなければいいだけです。
「なら、往復しましょう。それなら大丈夫なはずです」
「しかし……」
それでも大葉部長は許可してくれません。何がそんなに大葉部長の足を止めさせているのでしょうか。
そんな私たちの会話に呆れてしまったのか、マリさんはため息をついて話に割って入りました。
「みんなを危険な目に遭わせることはできない。それは分かる。でもさ、私はもちろん、鷲斗と緋色も、ここに足手まといになりに来たわけじゃない。私たちは火星探査部の部員として、何かをするために、ここに来てるんだ。そんで、その何かは、部長が決めることだろ」
「私が……」
「そう! 私たちは全力で手伝うだけだから。な!」
そう言って、マリさんは私と彦君を抱き寄せました。私たちにも同意を求めているのでしょう。その答えは、もちろん、イエスです。
「私にできることは少ないかもしれませんけど、できる限りお役に立てるように頑張ります!」
「俺は、自分の意見と違っていたとしても部長の判断に従います。俺は、部長を信じていますから……」
最後の言葉が大事だというのに、彦君の声はくぐもっていました。隅に置けないと思っていたのに、大葉部長と向き合った途端、男気を失ってしまうのは悪いところです。
しかし、それでも、私たちの気持ちは伝わってくれました。
「ミッションを追加します。この火星探査機ライチョウの引き上げを行います。危険と判断したら中止も考えますが、できるなら持ち帰りたいです。みんな、私の力になってくれますか?」
そんなこと、聞く必要もありません。
「「「もちろん!」」」
三人そろって同じ言葉を口にしました。
しかし、全員が口を噤みます。その様子を見れば、誰だって分かります。答えはノーです。
「な、何でですか? 火星は常に物資不足なんですよね? これを持ち帰らない理由はないはずです!」
そのはずなのに、誰も何も言ってくれません。
そんな中、一人だけ、私の言葉で心が動いてくれる人がいました。
「俺は……緋色の意見に賛成です」
意外にも、彦君が私の意見に賛成してくれたのです。
彦君は大葉部長に好意を寄せているので、対立なんてしたくないはずです。それなのに、私の意見を押してくれました。
「もし、これが充電不足なだけだったなら、太陽光発電で動き出す可能性があります。俺たちは植物の育成がメインで、周辺の探索には時間が割けません。でも、これが動いてくれれば、それをカバーしてくれるかもしれません。それに、もし動かなくても、これに付いているソーラーパネルには価値があります。持ち帰るには十分かと……」
彦君が力説してくれましたが、大葉部長の首は動きません。後一押しだと思うのですが、その言葉が私には出てきません。
そんな私たちを眺めていたマリさんがやっと口を開きました。
「緋色の感情論は抜きにして、鷲斗の意見は正しい。迷っているのは、危険だからだろ?」
マリさんの問いに大葉部長が頷きます。
「はい。オートマーズだけなら抱えて崖を登ることも可能です。しかし、ローバーもとなると……」
持ち帰ることは難しいと言いたいのでしょう。それなら、壊れたオートマーズと一緒に登らなければいいだけです。
「なら、往復しましょう。それなら大丈夫なはずです」
「しかし……」
それでも大葉部長は許可してくれません。何がそんなに大葉部長の足を止めさせているのでしょうか。
そんな私たちの会話に呆れてしまったのか、マリさんはため息をついて話に割って入りました。
「みんなを危険な目に遭わせることはできない。それは分かる。でもさ、私はもちろん、鷲斗と緋色も、ここに足手まといになりに来たわけじゃない。私たちは火星探査部の部員として、何かをするために、ここに来てるんだ。そんで、その何かは、部長が決めることだろ」
「私が……」
「そう! 私たちは全力で手伝うだけだから。な!」
そう言って、マリさんは私と彦君を抱き寄せました。私たちにも同意を求めているのでしょう。その答えは、もちろん、イエスです。
「私にできることは少ないかもしれませんけど、できる限りお役に立てるように頑張ります!」
「俺は、自分の意見と違っていたとしても部長の判断に従います。俺は、部長を信じていますから……」
最後の言葉が大事だというのに、彦君の声はくぐもっていました。隅に置けないと思っていたのに、大葉部長と向き合った途端、男気を失ってしまうのは悪いところです。
しかし、それでも、私たちの気持ちは伝わってくれました。
「ミッションを追加します。この火星探査機ライチョウの引き上げを行います。危険と判断したら中止も考えますが、できるなら持ち帰りたいです。みんな、私の力になってくれますか?」
そんなこと、聞く必要もありません。
「「「もちろん!」」」
三人そろって同じ言葉を口にしました。
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