炎と風の反逆者

小森 輝

文字の大きさ
15 / 70
襲来する紅蓮の女王

炎と風の反逆者 15

しおりを挟む
 視線を外すことができない。彼女の貫くような視線は、俺を釘付けと言うよりも串刺しにしていた。
 そんな彼女は俺の視線を気にもせずに、唇を妖艶に吊り上げた。
「探す手間が省けた」
 彼女はそう言いながら壁の中へと入ってくる。
 彼女が一歩踏み込んだだけで、周囲の温度が上がったような底知れぬ威圧感に襲われた。
「会いたかったよ。石動誘」
 彼女が俺の名前を呼んだ。
 なぜ俺の名前を知っているのか。いや、今はそんなこと、どうでもいい。
 俺は彼女の顔を知っている。
 確か、アストラルソロモン社に反旗を翻した反乱組織の幹部。
 名前は確か灰塚命(はいづかみこと)。
 ニュースなどでも顔写真が出ていた。炎を操るサクセサーを持っているという情報もある。
 そんなことを思いだしていると、突然、視界を遮るものが立ちはだかった。
「誘になにか用かよ」
 この声、そしてこの逞しい背中は、間違いなく紀彦のものだ。
「君に用はない。できればそこを退いてくれないか?」
「はい、とでも言うと思っているのか?」
「それなら、退きたいと思わせなければならないな」
 この会話を聞く限り、戦闘になるのは避けられないようだ。ならば、やらなければならないことがある。
「透真さん、茜音を連れて逃げてくれ」
 俺は視線を灰塚から外すことなく、小声で伝えた。
「分かりました。石動くんも気を付けてください」
「善処するよ」
 透真さんは会話が終わると、茜音と共に姿と気配を霧散させた。
 透真さんのサクセサーは透明化だ。自分と自分が触れている者を透明化させることが出来る。このサクセサーがあれば、茜音も一緒に逃げることが出来るだろう。
 あとは2人が逃げるまでの時間稼ぎをするだけだ。幸運にも、ここにはトップクラスの能力者が集まっている。さらに言えば、水を操るスペシャリストも目の前にいる。勝機はあるはずだ。
 目の前の二人に動く気配はない。紀彦は相手の出方を探っているようだが、灰塚には緊張感などなく、その表情に敵意なんてものは一切なかった。
「どうした? 攻撃してこないのか?」
「君に用はないからな。危害を加える気はないよ」
「そうかい。じゃあ、先手を打たせてもらうぜ!」
 紀彦は技を使うため手を前に突きだす。
「スプラッシュショット」
 小さな水滴を広範囲に高速で撒き散らす技だ。一発の威力は小さいが、攻撃範囲が広いので回避系のサクセサーなしでは避けることは不可能だろう。
 しかし、灰塚は避けるどころか動こうとしない。
 これで決まってしまうのだろうか。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

処理中です...