炎と風の反逆者

小森 輝

文字の大きさ
60 / 70
小さすぎる世界への抵抗

炎と風の反逆者 60

しおりを挟む
 サクセサーは使うごとに体力を消耗してしまう。そのため、永遠に使っていられることはできない。ここまでの力を使っているんだ。命にもかなりの負担を掛けていることだろう。
「命はまだ大丈夫か?」
「なにが?」
 本当に何が問題なのか分かっていないようだ。
 そう言えば、俺を抱えて凄まじいスピードで走っていた記憶がある。忘れていた。この人は体力お化けだった。
「やっぱり、正面玄関から入るべきだったかな」
 そこに裏口とかいう選択肢がないのが驚きだ。
「今からでも、正面玄関に行くか?」
 丁度、今いる場所から飛び降りれば正面玄関の前に降りられる。
「こいつらに一泡吹かせてやろう」
 命はそう言うと、俺の腹に手を回し抱えだした。
 そして、そのまま命はフェンスを越え、飛び降りた。
「ちょっと、やるんだったら合図ぐらいくれよ」
「私と誘の間に合図なんて必要だったか?」
 流石に必要だとは思うけど、声には出さないでおこう。
「見ろ、誘。あの顔。滑稽だ」
 悪戯が成功した少年のような反応だな。
 落ちていく俺たちをフェンスに這いつくばりながら、何もできずに見ている生徒たちは、確かにバカ丸出しだ。
 おっと、あまり観察している時間はなかったんだった。
「ウィング」
 下から風を吹かせ、落ちていくスピードを相殺する。そして、安全に地面へと着地した。
「改めて見ると、やはりでかいな」
「そりゃそうだ」
 なんせ、5000人を収容する施設だ。でかいに決まっている。
「それでは、案内よろしくな」
「それはいいけど、どこに案内すればいいんだ?」
 教員室か。それとも別の場所か。
「もちろん、誘が居た教室に決まっているだろ」
 ただ単に命の興味があるだけじゃないか。作戦には一切関係ないだろう。
「遊びじゃないんだぞ」
「じゃ、じゃあついでに誘の教室に寄るってことで」
 ま、まあ、それなら問題ないか。
「でも、校舎に入る必要はあるのか?」
「まあ、校舎に引き籠られると面倒だからな。追い出しておかないと、壊すことなんて出来ない」
 校舎に人が残っている状態で壊してしまうと、能力者だろうと瓦礫の下敷きになる人が出るだろう。
「じゃあ、説得……は無理だろうから、自主的に引いてもらわないといけないのか」
「武力行使と言う奴だな」
 賢明な判断をする人間ならば、命の能力を知れば撤退しかできないだろう。
「じゃあ、こうやって入口を塞いでおくのはまずくないか?」
「だから、早く入ろうと言っているんだ」
 入るしかないか。
 しかし、それならば、屋上から押し出していくほうが効率は良かった。防戦一方だったとはいえ、飛び降りたのは失敗だった。それに、もう人が集まっているだろうし、屋上には戻れないだろう。
「仕方ない。案内してやるよ」
 俺たち2人は一緒に入口の扉を蹴破った。行儀が悪いが、どうせ壊すなら関係ない。
「やばい、こっちに来たぞ!」
「俺たちが時間を稼ぐ。その間にお前たちは裏口から逃げろ」
 すでに数名が逃げようとしていたのだろう。やはり、正面玄関に降りてしまったのは失敗だったのだとかなり後悔。
 俺たちの目の前に残ったのは、見覚えのある3人。確か、3組の奴だったような気がする。サクセサーは銃の複製、無機物の投擲、昆虫の制御だった記憶がある。この程度の能力なら、俺の風でも攻撃を防げる。
 遠慮なく銃弾や置物、虫などが飛んでくるが、全て風で薙ぎ払う。
 まあ、俺は1組だったわけだし、3組の奴に負けるなんてこと、まずないんだけどな。
「おい、ここは引いてくれないか? 俺たちは追い打ちなんて卑怯な真似はしないからさ」
「おい、あいつって、もしかして1組の……」
 俺が語りかけると、あいつらは俺のことに気づいたようだ。やっぱり、成績上位者はわりと知られているんだな。
 そのこともあって、3人ともおとなしく引いてくれた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

処理中です...