インキュバスには負けられない

小森 輝

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 こんなのは絶対にあり得ない。パソコンがコンセントも繋がっていないのに動いているなんて、詐欺サイトがどうかとか、そんなレベルを越えている。
「なんだよ、これ……」
 おそらく、この状況をどうにかするには、あの「*」をクリックしなければならないのだろう。
「やってみるしかないか……」
 恐る恐る、マウスを動かし、「*」へと移動させる。
「大丈夫……だよな……」
 不安しかないのだが、もう、クリックするしかない。
「ええい! どうとでもなれ!」
 意を決してクリックしたが、画面は真っ暗になり、次の画面が現れる様子はない。
「な、なにも起こらないじゃないか」
 と安心した瞬間だった。
 急に画面が爆発して視界全てを煙で覆われてしまった。
「な、なんだよ、これ。爆発? でも、この煙、なんでピンクなんだ?」
 爆発して煙が充満していることに間違いはないのだが、なぜかその煙の色が黒やグレーではなく健康に悪そうなピンク色だった。
「ゴホッゴホッ……こんな色、壊れたにしたって出てくるわけないって……」
 色はピンクなのだが、煙に変わりはないので、視界は一寸先も見えないし、結構、煙たい。でも、体に悪そうな色なので、極力、吸いたくないのだが、ここまで部屋に充満していると、嫌でも煙を吸って咽せてしまう。
 ただ、こんな混乱状態の中にいるのに、おかしなことに気づく余裕はあった。いや、このピンクの煙がおかしいのはもちろんなのだが、それ以外にもこの部屋には異常が起きていた。
「はぁーじめま……ゴホッゴホッ……してぇ! 欲望に……ゴホッゴホッ……欲望にまみれた我が……ゴホッゴホッ……我が信徒……ゴホッゴホッ……信徒よ! 契約に基づき……ゴホッゴホッ……。ちょっと煙出し過ぎたかな? すごい煙たいし。それに何も見えない! どこだーい? 私の信徒ぉー。窓開けて煙をどうにかしてくれないかい?」
 あきらかに僕の知らない人の声が僕の部屋の中から聞こえてくる。煙のせいで全く姿は見えないが、男性の声で、おそらく、大人の声だ。
 まさか、強盗だろうか。しかし、窓もドアも閉めていたので、どこから入ってきたのか分からない。それに、もし強盗だとしたら、こんな煙を出しておいて自分も視界を失うなんて、自業自得にもほどがある。
 とりあえず、ここから逃げるためにも、まずはドア
を探さなければならない。
 記憶をたどりながら、ドアの方へと手探りで進んでいくと、ドアノブのような突起を見つけた。
 これで逃げれると思ったのだが、ドアノブにしては生暖かいし、それに強く握ると柔らかかった。
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