インキュバスには負けられない

小森 輝

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 そう言い放つと、なぜか全裸男の動きがピタリと止まった。
「今、なんて言ったのかな?」
 その声に、今までのおどけたような雰囲気はない。
「い、いや……男同士でそう言うことをやるのはって……」
 表情も僕に話しかけてくれるときは爽やかな笑顔を見せていたのに、口は引き締まり、目は鋭く僕を見据えている。ただし、不思議と、そこに冷たさは感じられない。あるのは激しい熱意と反逆心だった。
「一応、確認しておくんだけど、そう言うことっていうのはセックスのことだよね?」
「う、うん……」
 僕は健全な男子高校生なのでセックスという言葉の意味は知っている。しかし、言葉に出すのはまだ恥ずかしい年頃だ。大人になれば、セックスという言葉をなんの羞恥心もなく言えるのだろうか。
 そう思ったが、そもそもこいつは人間ではなく悪魔だった。それに全裸なので、今更、羞恥心なんてありはしないのだろう。
「つまり、君は男性同士でセックスするのはおっかしいって言いたいのかい?」
「そ、そうだよ……」
 なんだろうか。言葉に謎の圧力がある。まるで教師に説教をされているような気分だ。
「君はセックスのなんたるかを全く分かっていない。いや、そうか。君は見たところ高校生ぐらいだっもんな。ってことは、君は童貞か!」
「うっ……わ、悪いかよ」
 童貞。それは高校生男子が一番言われたくない言葉だ。でも、実際に高校生で性行為を体験しているなんて、それは逆にふしだらではないのだろうか。実際に性行為を体験するのなんて大学生ぐらいからなんじゃないのだろうか。
 しかし、童貞だと言われたことが悔しいことに変わりはない。
「童貞であることは悪くないさ。純愛を大事にする心は、とても素晴らしいものだ。けれどね、童貞だからってセックスのなんたるかを理解していないというのは問題だ。いざ、そのときが来たときに困るのは君だし、偏見を持っていれば間違った方向へ進んでしまうこともある。だから、私がこの世界を変えようと、偏見をなくそうとしているのさ! 本来あるべき真の姿を! 世界を私のように丸裸にしてするのさ!」
 最初こそ真面目に聞いていたのだが、最後はよく分からない野望のようなことを語り出してしていた。
「まずは手始めに、君の中にある世界を強制してあげようではないか」
 そう言って、全裸の男が笑顔で迫ってくる。もちろん、今までのような爽やかな笑顔ではない。妖艶さを纏った怪しい笑みだ。
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