インキュバスには負けられない

小森 輝

文字の大きさ
17 / 59

17

 あれから僕は安心して眠り、目を覚ましたのだが、やはり、全裸の悪魔はそこにいた。昨日の出来事は夢ではなかったのだ。まあ、まだ僕が幻覚を見ているという可能性は否定できないが。
「頭を打ったとかでもないし……。悪い夢だったらよかったのに……」
 しかし、改めてみると、酷い格好だ。いい歳の青年が、全裸のままベルトで縛られているのを朝から目にするなんて、今後の人生の中でもありはしないだろう。貴重な経験と言うよりかは……。
「最悪な体験だな……」
 朝からこんなものを見せられて頭を抱えるなんて、人類史上最悪な寝覚めなのではないのだろうか。やはり、払ってもらうべきか。しかし、曖昧な理由で親がお払いのお金を出してくれそうもないし、もちろん、僕のお小遣いからも出せそうにない。まあ、ベルトで縛っていればただの悪趣味な置物のようなものだし、このまま放置しておいてもいいだろう。
「それにしても、動いてないけど……大丈夫だよな?」
 目隠しをしているので、寝ているのかどうかもよく分からない。死んだ、のなら、それはそれでいいだろう。こいつは人間ではなく悪魔なので、消えてもらっても僕はかまわない。でも、悪魔なら死んだら消えるのではないのだろうか。だとしたら、まだ生きているということだろう。
「起こして騒がれるのも面倒だし、このままにしておくか」
 そう思い、悪魔はこのまま放置して、僕は部屋から出た。
 いつもと変わらない朝食の風景。いつもと変わらない早朝の支度。
 本当に何事もなかったのかのように、日常は進んでいき、支度を終えた僕は学校へと向かった。
 今朝の光景なんて忘れてしまうほどの清々しい朝だ。
「そう言えば、あの悪魔が言ってたっけ。「この世界に主人公ではない人間はいない」って」
 なんだか、この青空が僕を祝福してくれているみたいだ。まるで、僕にスポットライトが当たったかのように。
 でも、実際はそんなことはない。
 なぜなら、僕の一番近くにいる友達が誰よりも輝いているからだ。
「おはよう、精志郎。なんか、今日は特別天気がいいよね」
「おはよう、菊臣。僕も今日はいい天気だと思ったよ」
 空が祝福していたのは、おそらく僕ではなく菊臣のことだったのだろう。結局、僕にはスポットライトは当たっておらず、菊臣に当たっているスポットライトの光が僕のところまで届いているだけだったのだろう。
「菊臣? どうしたんだ? なんか、元気がないみたいだけど……。もしかして、悩み事とか?」
「ん? いや、そんなんじゃないよ」
 あの悪魔のことを悩み事と言えばそうなのだが、例え友達の菊臣にだってこんなことはいえない。
感想 0

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

【完】君に届かない声

未希かずは(Miki)
BL
 内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。  ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。 すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。 執着囲い込み☓健気。ハピエンです。

【完結】恋人になりたかった

ivy
BL
初めてのキスは、 すべてが始まった合図だと思っていた。 優しい大地と過ごす時間は、 律にとって特別で、 手放したくないものになっていく。 けれど……