インキュバスには負けられない

小森 輝

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 拘束の謎は解けたが、まだ疑問を感じることはある。
「じゃあ、僕がこの学校にいるって、どうして分かったんだ?」
「え? 学生は平日に学校へ行くものだろ? ちゃんと学校へ行く準備もしていたし、君は素行が悪い不良少年には見えなかったからね。学校で間違いないと思ったら大当たりだったよ」
 まさか、勘でこの学校とクラスを当てたのか。いいや、違う。こいつは悪魔だ。僕が知らない能力をまだ隠し持っているに違いない。
「どうやって、この学校とクラスが分かったんだ? それも悪魔の能力なんだろ?」
「うーん。察しがいいねぇ。その通り! 君の居場所が分かったのは私の力さ。と言っても、これぐらいの能力なら上級悪魔はみんな持っているんだけどね。自分の契約者を見失うなんて、滑稽だろ? まあ、私はそんなことしないけどね。もうすでにマーキング済みさ!」
 そう言いながら、悪魔は上機嫌に腰を振り出した。
「まさか……」
 こいつが強調しているのは、明らかに局部。そして、マーキングという言葉と言えば、犬や猫が自分の縄張りを主張するためにおしっこをして匂いをつける行為。つまり、こいつは僕が知らない間に尿をかけたのか? まさか、最初に出会ったときに触ってしまったあれがそうだったのか?
 そう考えると、とても手を洗いたい気持ちになってきた。
「そんなに嫌な顔をするなって。ほら、周りに不審がられるよ? それに、私は同意なくそんなことはしないよ。悪魔を飼い犬と一緒にしないでほしいね。まあ、してほしいって言うんなら話は別だけど。あぁ、されるのも私はいける口だよ。流石に飲尿は無理だけど。あっ! でも、心配しないでくれ。精子なら別腹だから」
「知るか、そんなの」
 この悪魔と話していると、不健全な言葉ばかり飛んでくるので貞操観念がおかしくなってしまいそうだ。
「で、どうやってきたかは分かったけど、なんで来たんだ? 家でおとなしく待ってればいいだろ」
「そんな冷たいことを言うなよ。自分のご主人様がどんな学校生活をしているのか気になるのは当然だろ?」
「そんな悪魔の事情なんて知らねぇよ」
「まあまあ。邪魔はしないからさ。それにしても、君は案外、モテるんだね。少し見てたけど、私が口を挟みたくなるぐらいモテモテじゃないか」
「……勘違いだよ」
 どうやらこの悪魔も勘違いをしているようだ。やはり、端から見たら女子から狙われている僕はモテているように見えるのだろう。
「勘違い? 勘違いしているのは君のほうだと思うんだけど……。まあ、そこは私が口出しをするところではないね。暖かく見守ってあげようじゃないか」
 そして、ニヤニヤした気持ち悪い笑みを浮かべながら悪魔は壁の向こう側へと消えていった。
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