インキュバスには負けられない

小森 輝

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 あの悪魔が学校に来てしまったのは予想外だったのだが、これといって被害はでなかった。
 いざというときのために、常に気を張っていたのだが、授業中もあの悪魔が邪魔をしてくることはなかったし、結局、朝に見に来てから悪魔が姿を現すことはなかった。
「結局、あいつは何をしに来たんだ?」
 やったことといえば、壁から局部を出して僕を驚かせようとしたことぐらいだ。悪魔っぽいことは何もしていない。
 しかし、それが逆に怪しい。あの悪魔はまだ僕に教えていない能力を隠し持っているはずだ。例えば、契約した僕にも姿を見えなくするような能力を持っているかもしれない。今もその辺で僕のことを観察しながら悪事を企んでいるかもしれない。
 油断はできないのだが、しかし、もう授業は終わり放課後。僕はもう帰るだけなので、もし透明になって僕のことを観察していたのなら、何がしたかったのか分からない。
 とりあえず、何かされる前に家に帰りたいのだが、今日の放課後は珍しく用事があった。
「菊臣、それで、用ってのはなに?」
 今日の放課後、菊臣は僕になにか用があるらしい。朝に言われたのだが、昼休みなどではなく、放課後と限定している。しかし、買い物や遊びに行くとかではないだろう。菊臣は僕と違って部活に入っている。放課後は暇ではないはずだ。それなのに、あえて放課後を選んだ。そこに何かしらの意図があるのだろうが、僕にはさっぱり分からない。
「とりあえず、ついてきてくれないか?」
「う、うん。分かった」
 そう言われたので、帰り支度をした鞄を持ち、菊臣の後をついて行く。
 菊臣と歩いていると、やはり女子からの目が他方から向いてくる。しかし、菊臣はそれに気づいていないのか、周りを気にする様子はない。むしろ、少し緊張した雰囲気を出している。なので、職員室にでも行くのかと思ったが、そうではない。向かった先は自転車置き場だ。確か、菊臣は自転車通学をしていたはずだが、僕は徒歩通学だ。このまま学校を出るのだろうかと思ったが、その自転車置き場も通過してしまった。
 自転車置き場を通り抜けると、一気に人気がなくなる。さっきまで感じていた女子からの視線も今はもうありはしない。
 どこまで行くんだと思いながらついて行くと、今は使われなくなった焼却炉のところまで来た。と、そこで菊臣は立ち止まり、僕の方へと振り返った。その表情は、酷く緊張していて、常に爽やかで余裕のある笑みを見せるイケメンな菊臣の姿ではなかった。
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