インキュバスには負けられない

小森 輝

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「そう言えば、告白されたってことは返事もしたんだよね? まさか、相手が男だからって理由で断ったりしてないだろうね?」
「いや……一応、待ってくれって言ったけど……」
「なんだい! そんな返答をしたのかい!」
 僕の言葉を聞いて、興奮気味に詰め寄ってきたので、思わず一歩引いた。僕の中途半端な返答に怒っているのかと思ったがそうではないようだ。
「君も隅に置けない男だねぇ。男同士だから無条件で拒否せずに、ちゃんと考えてから答えを出そうとするなんて、君も案外乗り気なんじゃないかぁ。いやぁ、あのサイトを作った甲斐があったよ」
 そう言えば、菊臣も僕の返答を聞いて、嬉しそうな反応をしていた。あのときは怒りで何も考えることができないでいたが、相手に考えてくれるだけでも救われるのだろう。
「それでそれで? 君はなんて答えるつもりなんだい?」
「それは……」
 菊臣はイケメンで学校の人気者だとしても、それ以前に僕の友達だ。それも、告白を受けるほどの仲だったので、親友と言っても過言ではない。これからだって仲良くしていきたいのだが、断ることでその友情にヒビが入ってほしくはない。でも、それは菊臣だってそう思っているはずだ。だからこそ、告白という手段に踏み切ったのだろう。僕のことを信じて告白してくれたんだ。その気持ちに答えたいという思いはあるのだが、菊臣は男。男同士が恋人という関係になるのはどうなのかと頭を悩ませてしまう。
「なんだよ、その歯切れの悪い返事は。なら、もういっそ、OKしちゃえばいいじゃないか」
「いや、それは……。男同士で恋人っていうのは……」
「男同士で恋人になることの何がいけないんだい?」
「いや、それは……」
 最初にこの悪魔と出会ったときにも問われた問題だ。その答えを僕は見つけていない。この悪魔が言っているとおり、愛し合うのは男女だけだというのは偏見でしかないのだろうか。
「じゃあ、質問を反転させてみよう。君はなぜ断ることを迷っているんだい?」
 その質問には素直に答えられる。
「それは、菊臣との友情にヒビが入るかもしれないから……。中学のときもそうだったけど、友達という友達って菊臣ぐらいなんだよな。だから、菊臣と友達でいられなくなったら僕はひとりぼっちになってしまう」
「ふん……。でも、それって菊臣君もそうやって考えてる訳でしょ? お互いが関係を壊したくないって考えてたら恋人にならなくても友達を続けられるんじゃないのか?」
「でも、お互いが望んでいても壊れていくことだってあるじゃないか」
「それは、確かにね」
 今回は男女の告白とは話が違う。菊臣が男性を愛する人間だと周りに知られれば、学校での風当たりは悪くなる。最悪、いじめだってあるかもしれない。そうなると、僕と菊臣の関係は壊されてしまうだろう。
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