インキュバスには負けられない

小森 輝

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「でも、そんな心配をするなら、余計、告白にOKするべきじゃないのかい?」
「いや、それは……」
「男同士だから嫌だって?」
「まあ、そうだけど……」
 菊臣はイケメンだし、性格もいい。こんな僕とも友達になってくれるほど心優しい。そんな菊臣を傷つけてしまうのは心苦しい。
「じゃあさ、もし仮にその菊臣君が女性だったら、君は告白されても悩まずにOKと言えたのかい?」
「悩まずにとかは無理だよ。相手のことを知っておかないといけないし、それに……その……見た目だって……」
「なるほど、見た目か。見た目で人を決めてはいけないと人間は言うけれど、第一印象はどうしても見た目に依存するからね。そうか……見た目か……」
 そう言いながら顎に手を当て何かを考えているようだ。
「お前……まさか……」
「なんだい?」
 その思案している姿を見て、僕はこの悪魔が何を考えているのか予想できてしまった。
「まさか、菊臣を女に変えようとか考えていないだろうな? やめろよ? そういうの」
 菊臣と僕をひっつけるために、菊臣を女性に変えようとしているのではないのかと考えたのだが、その予想は外れていた。
「えぇ? せっかく、菊臣君が勇気を出して告白したのに、そんな無粋なことしないよ。愛っていうのは自然に育まれるものだよ? 私にできるのは少し背中を押すだけ。菊臣君を女性にしたら、それこそ愛の形が歪んでしまうじゃないか!」
「じゃあ、そう言うことはしないんだな?」
「まあ、しないっていうよりは、できないんだけどね。いくら私が上級悪魔だからって、人間の性別を変えるなんて無理だよ。もし君がそう言うことを考えているんなら、私に頼るよりも性転換手術をする事をおすすめするね」
 そこまで言われると、この悪魔に人の性別や見た目を変える力がないのだと信じられる。悪魔の言葉を簡単に信じるのはいけないとは思うのだが、性転換手術をすすめられると、謎の説得力が生まれるのだ。
「でもさ、見た目が大事って言うんなら、菊臣君はクリアしてるんじゃないのか?」
「……どうしてだよ」
「朝、チラッとみた程度だけど、その菊臣君ってイケメンだったじゃないか。女子モテも良さそうだし、同じ男子相手にもいい顔をしていたじゃないか。アイドル事務所とか雑誌モデルになってもいいぐらいのイケメンなんだし、見た目という観点から言えば、OKなんじゃないのかい?」
「そりゃあ、菊臣は見た目もいいし、性格だっていいよ。菊臣との付き合いは長いんだし、家族以外なら僕が一番よく知っていると言ってもいいぐらい」
 僕の中では、彼氏にしたい男ナンバーワンだ。でも、それは僕が女性的目線から見たことであって、僕自身の考えではない。
「やっぱり、壁はそこか。これは壊し甲斐がありそうな壁だな」
 僕と菊臣を引っ付けたい様子の悪魔の目がやる気に満ちた目に変わった。
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