インキュバスには負けられない

小森 輝

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 久しぶりに菊臣にはいると、部屋の様子は様変わりしていた。昔はもっと子供っぽく、青とか戦隊もののイラストが描かれたものがあったりとか、そういう子供らしい部屋だったのだが、今は白や黒、茶色といった落ち着いた色に教科書や参考書のようなものが本棚に並べられていた。すごく大人っぽい部屋に変わっていた。しかし、見覚えのあるものもある。勉強机やベッドなんかは変わっていないし、家具の場所も変わってない。何というか、外見は変わっていないのに中身は大人になっているような感じだ。
 そんな奇妙な感覚を抱きながらも、僕はベッドの上に座った。
「久しぶりでも覚えてるもんだな……」
 小さい頃に菊臣の家に来たら、いつもこのベッドの上に座っていた。なんだか、とても懐かしい感覚だ。
 そんなことを感じていると、部屋のドアが開いた。
 変なものが飛び出してくるのではと身構えていたのだが、別に変なものなんて飛び出してきたりはしなかった。菊臣はお菓子の袋を持って現れただけだ。もちろん、服もちゃんと着ている。あの悪魔と生活を共にしているので、妙に気を張ってしまう癖ができてしまったのかもしれない。
「ん? どうかした?」
「いや、何でもないよ」
「あっ! もしかして、久しぶりに来て緊張してるのか? 昔は毎日のように遊んでたけどな。まあ、そのころに比べたら模様替えして別の部屋みたいになってるけど。まあ、くつろいでよ」
「じゃあ、遠慮なく」
 菊臣にそう言われるのだが、正直、菊臣が来る前からわりとくつろいでいる。来るのも久々で模様替えもされているのに、僕にとってはリラックスできる空間のようだ。
「一応、勉強を見るのがメインだから……」
「お、おう……」
 僕は割とリラックスしているのだが、菊臣には少し緊張が見える。おそらく、ここで失敗はできないと気を張っているのだろう。
 ともあれ、勉強を見てもらいたいのは僕の本心だ。もうすぐテストなので、今のうちに勉強しておかなければテスト期間で痛い目を見る。その点、菊臣は優秀なので、そんな心配はいらないのだろう。まあ、天才は一日でできあがることはないので、菊臣は毎日こつこつ勉強しているのだろう。
 そんなことを考えながら、僕は鞄から勉強道具を取り出した。
 菊臣の部屋には昔からちゃぶ台のような丸テーブルがあるので、そこに勉強道具を広げた。
 そう言えば、高校受験の時もたまに勉強を見てくれたが、そのころは図書室などがメインで菊臣の部屋で勉強というなかった。今思えば、菊臣の部屋で勉強するのは初めてかもしれない。もしかすると、中学生のあたりから、菊臣は僕のことをそう言う目で見ていたのかもしれない。だから、変なものが見つからないように僕を自分の部屋から遠ざけていたのだろうか。
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