インキュバスには負けられない

小森 輝

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 その辺の事情は分からないし、詮索する必要もないだろう。何か隠しているのだとしたら、僕が見つけるよりも菊臣から話してくれるのを待つ方がいいだろう。
 僕がテーブルに勉強道具を広げ終わると、菊臣も勉強の準備を始めた。
 最初にテーブルに置いたのは持ってきてくれたお菓子だ。今日のお菓子はチョコクッキーのようだ。個人的にはポテチみたいなのがよかったが、人の家でそんな我が儘なことは言えない。もし、自分がそんなことを言われたら、自分で買ってこいと言ってお菓子を独り占めするだろう。菊臣がそんな慈悲もない人間ではないだろうが、自分がされて嫌なことは人にもしないというのは当然のことだ。
 そんなことを考えながら、僕は菊臣の準備が終わるのを待つ間に持ってきてくれたクッキーを口に入れた。クッキーで失った水分をチョコレートが補ってくれるのかと思ったが、チョコレートが追い打ちのようにして喉の渇きを訴えてくる。しかし、そんな状況も菊臣は想定済みで、ちゃんとお菓子と一緒にお茶も持ってきてくれているので助かる。もちろん、ジュースがいいなんて文句は言わない。
 そうこうしているうちに、菊臣も勉強の準備を終えて、僕の対面に座った。
 小さいとは言っても二人には十分な広さがある丸テーブルを挟んで向かい合うようにして座っていると、なんだか変な感じになる。いつも学校では菊臣の背中ばかり見ていたので奇妙な感じになっているのだろうか。そういえば、小さい頃は、よくこのテーブルを挟んでカードゲームなんかをやっていた。
 そう言うことを懐かしく思っているのは、きっと僕だけじゃないはずだ。菊臣だって、懐かしく思っているはずだ。
「じゃあ、勉強、始めようか。分からないことがあったら聞いてくれ」
「あぁ。ありがとう」
 そうして、二人だけの勉強会は始まった。
 基本的には二人とも無言で勉強するのだが、僕が分からないところがあれば菊臣に聞いてを繰り返している。ただし、その逆はない。正直、菊臣に分からないことが僕に分かるとは思えないので、聞かれないだけ気は楽だ。
 しかし、それは気が楽なだけで、勉強し続けることが楽なわけではない。ちゃんと疲れるし、集中力はどんどんなくなっていく。
「はぁ……ちょっと休憩にしない?」
 僕は後ろにあるベッドにもたれ掛かって、疲労を体で表現した。
「そろそろ1時間だし、一旦、休憩にしようか」
「よっしゃ!」
 僕のアピールのおかげもあり、無事、休憩を勝ち取ることができた。
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