インキュバスには負けられない

小森 輝

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「酷いなぁ。人は見かけで判断しちゃだめだって教わらなかったのかい? まあ、私は人ではなく悪魔なんだけど」
 じゃあ、お前は例外だと言いたかったのだが、教室が目の前だったので、悪魔と話すのはやめにした。
 教室に入ると、早めに来てしまっただけあって、教室の中にいる生徒はまばらだ。そして、その中に菊臣の姿はない。昨日は僕と同じように早かったのだが、どうやら、今日はそうではないようだ。
 少し、寂しい思いをしながら自分の席に座り、勉強道具を鞄から出して授業の準備を始めた。
 菊臣が近くにおらず、僕一人の時はひっきりなしに女子が菊臣へ紹介してくれと集まってくるのだが、今日はそんなこともない。周りから狙われている視線というのは感じられない。僕と菊臣の関係が変わったからだろうか。いや、それに気づける人間はそんなに居ないはずだ。おそらく、いつもより早く来たので誰も僕が来ていることに気づいていないのだろう。
 そう思っていると、ふと、視線を感じた。
 視線を感じた方、教室の入り口を見ると、明らかに僕を見ている女子生徒と視線が合った。
「ん……?」
 疑問に思って首を傾げようとした瞬間に、その女子生徒は顔を引っ込めた。
「なんだったんだろ……」
 いつもの菊臣への紹介だとしたら、すぐに話しかけてきてもおかしくないのに、逆に逃げられてしまった。
「君もなかなか大変だね。菊臣君っていう人がありながら、周りには常に女の影があるなんて」
 悪魔はなぜか僕の机から顔だけをだしている。見方によっては生首だ。
「そう言う訳じゃないんだけど……さっきの子は初めてかもしれないな……」
 僕のところに協力を求めてくる女子は、大体、美人で気が強い女子が多い。気が弱い女子はそもそも菊臣へのアタックをしない傾向にあるのだろう。しかし、さっき僕を見ていた女子生徒は身長も低かったし、見るからに気が弱そうだった。
「気になるのかい? 菊臣君という人が居ながら……。君は案外浮気性なんだね。まあ、性欲の権化だから仕方ないかぁ」
「別にそんなんじゃないよ……ん……?」
 悪魔にからかわれているのをあしらっていると、再び、あの女子生徒が教室の入り口から顔を覗かせていた。明らかに僕に用がありそうだ。しかし、気が弱いせいか、話しかけられないで居るのだろう。
「そんなに気になるなら君から行けばいいじゃないか。大丈夫。話すだけなら浮気にはならないから」
 そんなことを言われるのだが、気になるのは確かだ。と言っても、あの女子生徒が気になると言うよりかは、教室の入り口から僕のことを見ているのが気になってしょうがないんだ。
 しかし、これも菊臣が来るまでの辛抱かと思っていると、入り口で覗いていた女子生徒がついに教室へと入ってきた。
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