インキュバスには負けられない

小森 輝

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 何かこの悪魔が悪さをするのかと気を張っていたのだが、下校中もそんなことはなく、家に帰ってからも変な行動をすることはなかった。正直、不気味だ。いつもと変わらず、全裸でマンガを読んでいる姿なのだが、何かを企んでいそうで怖い。なので、今日は入念に縛っておいた。
 それでも安心できず、よく眠れなかったのだが、翌朝、起きたときに、この悪魔は変わらず体を縛られていた。抜けた出した様子はない。どうやら、僕の思い過ごしだったようだ。
 この悪魔には少し悪いことをしたとは思うが、拘束を外すことはない。どうせ、自分で自由になれるし、わざわざ朝にこんな全裸悪魔の体に触れたくない。
 そう言うわけで、今日も朝の支度を済ませ、一人で家を出た。しかし、悪魔にも学習能力というものがあるらしい。
「声をかけてくれるだけでいいのに……目隠しをされているからそっと出て行かれると分からないんだからね?」
 今日は学校に着く前から悪魔が僕のところまで飛んできた。もちろん、比喩表現ではない。この悪魔は地面に足をついていないのだから。
「聞いてる? ねぇ? 聞こえてるんだろ? 返事ぐらいしたらどうだい?」
 それからも悪魔は僕に話しかけてくるが、基本的には無視をして、たまにうざったくなると、股間に向かって鞄を振るぐらいだ。もちろん、当たりはしない。むしろ、汚いので当たらないのを承知でやっている部分はある。
 そんな感じで完全に無視せず、ある程度悪魔にかまいながらの登校になったせいか、今日の学校への到着時間はぎりぎりになってしまった。
 登校時間ぎりぎりの昇降口は込み合っていて思わぬ時間を食ってしまい、教室までは早足になってしまった。
 そうやって急いだ甲斐あって、授業には遅れずにすんだ。
「精志郎……今日はずいぶん遅いじゃないか……。なにかあったのか?」
 教室で最初に会ったのは、席も近い菊臣だ。僕が菊臣より遅いなんて初めての経験かもしれない。それだけに、菊臣は僕に何かあったのではないのかと心配している。しかし、そんな心配は不要だ。なんせ、遅れた原因はこの全裸悪魔のせいなのだから。
 その原因の張本人は気にする様子もなくぷかぷかと中に浮かびながらくつろいでいる。
 その様子が僕の怒りに火をつけようとするのだが、ここで怒っても周りから白い目で見られるだけなので、押さえるしかない。
「いや、別になにもないよ。ちょっと家を出るのが遅れたってだけ。だから、心配するなって」
「なら、いいんだけど……」
 なぜか、菊臣は言いよどんだ。菊臣にはなにか心配事があるのだろうか。
 とりあえず、僕は自分の席に座り、授業の準備をしながら話を聞くことにした。
「どうした? 何かあったのか?」
 そう聞くと、どうしようかと悩んだ後に口を開いてくれた。
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