インキュバスには負けられない

小森 輝

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 僕の頭は混乱していても授業はいつも通り進んだ。おかしなことを一つ上げると、全裸悪魔が授業を受ける僕の邪魔をしなかったことだろう。僕と同じく、あの子が男性だということを知って何か悩んでいるのだろうか。
 全裸悪魔の事情なんて、正直、どうでもいい。あの子が僕に何の用があって来ていたのか。それだけが問題だ。もしかして、僕と菊臣の関係に気づかれたのだろうか。同じ道にいる人から見ると一目瞭然だったとか。だから、菊臣も注意しろという意味で僕に教えてくれたのだろうか。
 危険なのかどうなのかは分からない。しかし、あの子について行かなければ話は見えてこないだろう。
 そう決心した放課後。菊臣は、依然、心配そうだ。
「本当に大丈夫……?」
「大丈夫だよ。あの子はちょっと気が弱そうだけど。とりあえず、話を聞かないと、今後もずっとあの子が来そうだし……」
「そっか……。分かった。何かあったら連絡してくれよ?」
「大丈夫だって。ほら、部活行ってこいよ」
 心配は拭えないようだが、仕方なくといった様子で菊臣は部活に行った。
「さて、菊臣は送り出したし、後は僕の問題……っと、しまった! クラスとか聞いておけばよかった」
 菊臣はあの子のことを調べて本名も知っているので、おそらく、クラスも知っているのだろう。聞いておけば今からあの子を探す手間がはぶけたのに。
 そう悔しがっていたのだが、探し人は相手の方からやってきた。
「あっ! よかった、来てくれた」
 昨日と同じように、少女だと思っていたあの子が教室の入り口から顔だけ除かせていた。
 帰りの準備も終えていたので、ちょうどいい。このまま、あの子が言っていた僕に用がある人物のところまで案内してもらおう。
「仕方ない。菊臣君が不安そうにしていたからね。私が見張り役としてついて行ってあげよう」
 今日は一日中おとなしかった悪魔だが、どうやら僕のことが気になってついてくるようだ。
「そ、その……一人で来てもらえますか?」
 気が弱いのか、チラチラと僕から視線を外しながら喋っている。だが、その心配は不要だ。
「菊臣は部活だから。僕一人じゃないと、何かまずいことでも?」
「い、いえ、そんなことはないんで……じゃ、じゃあ、行きましょうか……」
 連れて行かれた先にヤンキーの集団がいてボコられる、なんてことにはならないことを祈るばかりだ。でも、そんな事態になったら、この悪魔がどうにかしてくれるだろう。いつもいつも自分は上級悪魔だと言っているので、それぐらいは期待させてもらいたい。
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