インキュバスには負けられない

小森 輝

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「それは貞操帯かい?」
 その言葉は薄い本で見たことがある。局部に自分では取れない拘束具のようなものをつけ、自慰行為をできなくするものだ。しかし、女性用のものなら知っているが、まさか、男性用のものまで存在しているとは思わなかった。
「腐ってもインキュバス。それぐらいは知っていて当然ね。でも、これは私が作った特別製なの」
 そう言って、サキュバスは手に持った鞭をアワセの股に入れ、そして、なぜか露出している睾丸を優しく刺激し始めた。
「こうやって刺激すると、男ってすぐに興奮するでしょ? でも、この中には棒があってね、大きくなると……」
「あぐっ……」
 優しく撫でられていただけなのに、急にアワセは悶えてうずくまってしまった。
「こんな感じで棒が尿道に入り込んで萎えさせるって訳。最高でしょ?」
 恍惚な表情を浮かべるサキュバスだが、僕もインキュバスも堅い表情をする。欲情して股間が大きくなると棒が尿道に入るなんてそんなの拷問だ。それはインキュバスも同意のようだ。
「サキュバスはより濃度が高い精液を求める傾向にあるから射精管理をするってよく聞くけど、過度な射精管理は炎症を引き起こす原因にもなる。最悪、睾丸摘出になるケースだってあるんだ」
「そんなの知らないわよ。出せなくなったら乗り換えるだけよ。それに、私は汚い精液なんて吸収したくないわ」
「なるほど、だから、下等な悪魔を誘き出して魔力を吸収しようとしているのか」
「腐っても悪魔ね。よく分かってるじゃない。まずは契約者を捕まえて、それを人質にする計画なんだけど、駒が言うことも聞かなくてね……いつまで痛がってるのよ! 気持ち悪いわね!」
 サキュバスは床で痛みに悶えているアワセに向かって思いっきり鞭を振り下ろした。
 声にならない叫びが部屋中に響くと、顔を歪ませずにはいられない。
 こんな光景を見せられては、もうサキュバスの方が良かったなんて言えない。サキュバスがこんなに男嫌いだとは思わなかった。
 そこでピンときたことがあった。
「もしかして、その服、お前が着させてるのか?」
 アワセは性同一性障害者だと菊臣が言っていたが、もしかしたら、これはサキュバスが女装させているだけではないのかと考えたのだが、案の定だった。
「そう。体つきも小さいし、似合ってるでしょ? 本当は下半身についてるのも切り落としたかったんだけど、そこまで私は酷い悪魔じゃないから」
「何が酷い悪魔じゃないだ。契約者に自殺なんてされたら意味ないからだろ」
 局部を切り落とされたりしたら、自殺するかもしれない。しかし、それでも、女装させて貞操帯をつけられ、鞭で叩かれたりするのに耐えられる自信はない。それだけアワセは我慢強いのだろう。
「それで、その子はいったい何日の射精管理をさせてるんだい?」
「心配しなくても大丈夫よ。今日、射精させてあげるから。ほら、連れてきたご褒美よ」
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