インキュバスには負けられない

小森 輝

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 そう言うと、サキュバスは指を鳴らした。
 これから何が起こるのかと身構えたのだが、無駄な抵抗だった。僕の意志とは関係なく腕が上がり、そして、どこからともなく木の板が現れ、僕の腕と首を拘束した。
「な、なんだよこれ!」
「所謂、ギロチン拘束というやつだね」
「そう言うことを聞いてるんじゃないんだよ! どうやって拘束されたのかって聞いてるんだよ!」
「まあ、それは所謂、魔法という奴だね。それで君を拘束したんだろう」
「そういうことできるのかよ……」
 こちらのインキュバスは魔法なんていう非科学的な超常現象を起こすような素振りは見せなかった。なので、てっきり悪魔でも魔法なんて都合がいいものは使えないと思っていたのに、こんなこともできるなんて完全に予想外だった。
「ほら、もう少し近くに来なさい」
 サキュバスにそう言われると、足が勝手に動き出して、行きたくもないサキュバスの方へと進んでしまう。
「ちょ、ちょっと、何でそっちに歩いていくんだい!」
「お前も悪魔なら少しは察しろよ! 操られてるんだよ! さっさとどうにかしろ!」
「どうにかしろって言われても……」
 そう言いながら、おろおろしているインキュバスに変わって、サキュバスが説明を始めた。
「その悪魔を頼っても無駄よ。私はサキュバス。七大悪魔の一角にして性欲を司る悪魔。インキュバスなんて、私より格下の悪魔が私の魔法を打ち消せる訳がないでしょ? ほら、無駄な抵抗はやめて、早くこっちに来なさい」
 そんなことを言われるが、抵抗はやめない。やめないのだが、体は勝手に動いていく。
「いい子ね。いい子には、ご褒美をあげないと」
 そう言って、再びサキュバスが指を鳴らすと、目の前に二本の木の棒が現れた。そして、僕はその棒の間へと上半身を降ろした。すると、腕と首を拘束していた木の板がすっぽりと木の棒の間にはまった。
「なっ……ちょ……動けない……」
 急いで抜け出そうとしたが、木の棒で固定されてしまって動けない。はまったときと同じように上へ行けば逃れられるのだろうが、それをさせないために腰の部分も拘束されてしまった。完全に身動きできない。
「それじゃあ、最後の仕上げね」
 またサキュバスが指を鳴らした。また体を勝手に動かされるのかと身構えたがそうではない。そうではないのだが、体に異変が起こっていることには気がついた。なぜか、体に直接風が当たる感覚があるのだ。空気と肌の間に隔たりがない感覚。しかし、体を拘束されているため、自分の体がどうなっているのか確認できない。
「な、何をしたんだ……。ぼ、僕はどうなってるんだ?」
 僕の味方のインキュバスへと問うと、申し訳なさそうに答えが返ってきた。
「今、君は……全裸になっている……」
 予感はしていたが、その予感は当たってほしくはなかった。
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