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3・南十星の災難(後)
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公正に見て、おれにはシンを詰る権利があると思った。さっきから聞いていればこいつのよく回る口から出るのは自分たち生態やら文化やらの一方的な解説ばかりで、そんなの被害者のおれがわざわざ斟酌してやる理由にはならない。シン本人も認める通りに、だ。
しかし。
「……罪悪感は、ないのか」
「へ?」
知らず口に出していたのは尋問でも詰問でもく、ただ純粋な疑問だった。きょとんと眼を丸くするシンの態度にも、不思議と怒りは沸かない。だからおれも片膝を立てて淡々と問う。できればタバコが欲しいところだが、あいにくアトリエは火気厳禁だ。
「さっきから聞いてるとお前、あんなことをした割にはやけに理性的というか、現状を弁えてるというか……少なくともおれの目には、他人を嬉々として嬲り者にするような人間には見えない」
「あはは、褒めてくれてます? どうも」
「率直な印象だ。なのにどうしてそんな平気な顔してられるんだ。普通ならもっとこう、おれに対する罪の意識とか、後悔とか……ああくそ、お前に説教したって響くわけないか」
「その言い方は酷いなあ。……んー。素直に答えていいんですよね?」
「ああ」
きっとろくな答えは返ってこないだろう。それでもどうやら、シンは嘘をつくことはない。相変わらず平気な顔をして、うーん、と唇に指を当てる。
「罪悪感ねえ。もちろんゼロではないですよ。かわいそうなことしちゃったなー、ぐらいには思ってますよ、これは本気で」
「その時点で既に大概だが、それですら信憑性がないな」
「ほんとですって、信じてくださいよ。まあ、でも、そのせいで自分の存在意義を苛んだり、自責の念で眠れなくなるまでのことは百パーないですね」
「……」
「だってそうでしょ? 想像してみてくださいよ。命を削る漂流の果てに、どことも知れない無人島に流れ着いた。腹を空かしてさまよった後に、故郷の家畜によく似た野生生物に出会った。そこでそいつを殺して食ったとして、普通死にたくなるレベルで後悔なんてします?」
「……なるほどな」
言葉通り苦悩のかけらも見えないあっけらかんとした態度に、改めておれは骨身に悟る。つまりこいつは、心の底からおれのことを、同じ人間だとは認識していないのだ。同じ姿形をして、同じ言葉を使っているにも関わらず、この地球に棲む人類のすべてを、本心から犬と同等の生物と見做しているのだ。
理屈はわかった。理解はできない。だがおれもこれからはその意識を持たねばならないのかもしれない。本能的にも習性的にも相容れるわけがない、この宇宙人を相手にするためには。
「わかった。じゃ、最後だ。一番肝心な質問だ」
「まだやるんですか? もういいでしょ。南十さんもそろそろ疲れてきてません?」
「駄目だ。地球人類にとって最大の懸念事項だ。侵略とやらについて、詳しく説明しろ」
「侵略? ……あー」
僅かに眉をひそめたあとで、シンは思い出したように軽く首を振る。
「詳しくも何も言葉通りですよ。えーと、なんだったっけ。流刑先の知的生命体に我らが『地球』の教えを広め、共に学び共に生きる同志としての理解を賜ることができれば、その功績によって罪を赦免する、だっけ? まあ小難しいことは置いといてひらたく言えば、この星一個手土産にして帰れば僕は無罪放免ってことです」
「念のために聞くが、その同志ってのはつまり、犬と人間としての同志ってことだな」
「当然、そうなるでしょうね。僕らから見ればここは犬の星ですから」
「……」
微かに持ちえた融和への希望は、この瞬間に粉砕された。いや、元々そんなもの存在しなかったのかもしれない。この男が初手でおれを強姦した、その時点で。
あぐらをかいたシンの足先が、ぱたぱたと床を打ち始めた。こんな状況に置いてなお、この男は退屈を隠そうともしない。
「で? こんだけ長々聞き出したところで、どうするんですか、南十さん。さっきも言いましたけど、僕なら警察に丸投げしておしまいにしますね。まあ、ありのままを話したところで、イカれてるか薬でもやってんのかと思われるのが関の山でしょうけど」
「……お前は、どう思ってるんだ」
「僕?」
「ああ。そもそもお前自身はどうするつもりだったんだ。おれを襲って犬にできたとして、その後。命令通り地球を侵略して、例の宗教国家に帰るつもりだったのか」
「あー……」
一瞬、シンの顔に影がよぎった。物理的にも比喩表現としても、どちらの意味でも同時に。月をよぎる雲の影になったその顔からは、さっきまでの不真面目な笑みが剥ぎ取られたかのように消えていた。
だがそれも一瞬のことだ。雲が流れて再び照らされたシンは、いっそ演技じみて見えるほどの軽薄なニヤケ面に戻っている。
「……どうでしょう。今はもう、かねてからの大願も果たし終わったことだし。適当に生きて、腹が減ったら食って、ああ、もちろん、気が向いたら帰るってのも、選択肢としてはアリですね」
「それは、当然……地球人類を犬にして、という意味か」
「そりゃそうでしょ。理論上僕の力があればこの星の人間は言いなりにできるはずなんで……まあ、南十さんみたいに効かない人もいる可能性はありますけど、おそらくはごく少数でしょう。ついでに言うまでもないことですけど、食うのは心の胃袋の方も込みですよ? 南十さんのアレ、極上でしたし」
「……っ!」
言ってシンはおれの首筋に目を移し、見せつけるようにぺろりと唇を舐めた。ちらりと覗く牙の白さに、おれの全身に怖気が走る。理性では、シンの露悪だとわかっている。けれどおそらく、おれの肉体に刻まれた遺伝子の本能が、おれの心身を恐怖とも期待ともつかない鎖で縛りつけている。強張りを隠せないおれを見て、シンはくすりと笑った。
「ねえ、南十さん」
妙な猫撫で声を出しながら、彼はわずかに上半身を乗り出す。
「実際のとこ、めちゃくちゃよかったですよ、あんたの体。あんただってよかったんでしょ? 隠せないですよ。なんせこの身をもって味見させてもらってますから」
「……やめろ、ゲス野郎」
「ふふ。ああ、ほんと、甘露って言うんでしょうね、ああいうの。食いちぎられそうなくらい苦しいのの中に、とろっとろに溶けかけた理性が混ざり合って」
「……っ、やめろ」
「キツくて気持ちよくて、わけわかんなくなってるのがビンビンに伝わってきて、最っ高にオレ好みでしたね。中に入った途端甘ったるくやわらかくなって、嫌なのにきゅんきゅん締めつけて、泣いてんのか喘いでんのかももう全然」
「やめろって言ってるだろ!!」
声を荒げて肩に掴みかかる。くそ。何回めだ。命の危機だというのにお構いなしのシンのニヤニヤ笑いに、そろそろおれも確信し始めた。こいつ、楽しんでやがる。ことによっては自分が危害を加えられる可能性すらも。
「ま、とにかく。僕としては話せることは全部話しました。それで、センセイの裁定は? 警察? 絞殺? それともまさかこのまま野に放つとか?」
「……」
肩から離した手をそのまま額に当てた。提示された三つの選択肢のうち、三番は、ありえない。できることなら一番目か二番目を選んでやりたいところではある。だが、おれにシンは殺せない。それはおそらく良心や殺人への忌避感に基づくものではなく、おれの根幹に今もなお根付いた、一種の心的外傷によるものだ。
──父さん! 母さんっ!!
瞼の上の暗いところに、一瞬、燃え上がる炎が映った。無意識に心臓の巡りが速くなる。蘇りかけた光景を振り払うように、拳を強く握って首を振る。
深く息を吸って、吐く。三度繰り返してからシンに向き直った。これからおれの取る選択は消去法の結果でしかない。それでも現状、おれはこうするしかない。楽しげに首を傾げるシンを、無感情に見つめながら口を開いた。
「たぶん、おれにお前は殺せない」
「はあ」
「一度言葉を交わした人間を害獣として駆除することは、おれにはできない。例えそいつの正体が誰彼構わず噛みついて回る、躾の悪い犬だったとしてもだ」
「はあ、そうですか。で?」
「かと言って警察に突き出したところで、お前、逃げ出すだろ」
「……えー?」
「あるんだろ、なんかそういう手も。おれを宇宙に放り出したときみたいなやり方を使えば、どうとでもなる」
「あ、バレました? はは、さっすがセンセイ」
「だったらおれにできることはひとつしかない。が、その前に、最後の質問だ」
「えぇー? さっきのが最後って」
「お前、なんでおれの絵を見てた」
シンの文句を無視して言い放つ。なぜかそこで、意表を突かれたみたいにシンは黙った。ふっとおれから視線を外して、描きかけのキャンバスに目を移す。下塗りの黒い宇宙の中に、穴のような月だけが浮かんだ絵。
おもむろに立ち上がったシンが、紙上の月と相対して、わずかに目を細める。
「なんで、ですか」
「ああ。なんでだ」
「難しいこと聞きますね。なんで、か。うん、でも、ああ、そうだ、これは」
瞳の奥で、一瞬、赤い光がまたたいた気がした。その色の意味をおれが見極めるより早く、シンがこちらに振り向いた。
風が吹く。雲が流れる。怖いくらいに青い満月が、シンの長身を真正面から照らし出す。
「好きだから」
「……!」
「うん。好きだからです」
曇りなき声を耳にしたとたん、全身の力が抜けた。
おれの運命が否応なしに決定されたのは、おそらくその瞬間だった。
「……わかった」
「判決は、決まりましたか」
「ああ」
床に散らばった画材に目を落とす。絵の具とペインティングナイフの間に転がる真っ黒な木炭。焦げた骨のようなそれを片手で拾い上げ、シンと向き合う形で立ち上がった。
「ん?」
未決囚にしては余裕のありすぎる表情で、シンが首をかしげた。その喉仏に木炭を押し当て、首切りのごとく一閃する。刻まれたのは彼の喉そのものではなく、一本の黒い線。
「今からお前を飼うことにした。おれが、お前を、だ」
「…………は?」
おれにとっては自明の結論だったが、しかしシンにとっては意外な選択だったようだ。鳩が豆鉄砲を食ったように、ぽかんと眼を丸くする。
「えーっと……すいません、話が見えないんですけど。なんですか、飼うって」
「言葉通りの意味だ。餌と寝床は与える。代わりにお前は行儀よく、人間の善き友として大人しくここにいろ」
「えぇ……っと、……なんで……?」
どうやらおれはここに来て、初めて彼の意表を突くことに成功したらしい。それはそれで微妙に複雑だが、いいように弄ばれるよりはいくらかマシだ。散らかった画材をケースに拾い集めつつ、おれはここに至る理論を説明する。
「おれはお前を殺せない。他人に預けたところでどうにもならない。なら、おれがお前を飼うしかないだろう」
「いや、だから、なんで? っていうか南十さん、飼うって。意味わかって言ってます?」
「義務を果たせばいいんだろ。衣食住に体調管理、基本的な躾、排泄の処理……はさすがに自分でやってもらうが」
「いや、じゃなくて。僕言いましたよね? 母性の文化から生物学的なネタまで織り込んで、長々と話しましたよね? 僕には満たさなきゃいけない胃袋がもう一つあるんだって」
「ああ。そうだな」
「ああ、って。つまり、南十さんはソッチの方も満たしてくれるつもりなんですか? あなた自身の、カラダで」
「……」
改めてはっきり言われるとさすがに眉間に皴が寄る。が。
「……それが、本当にお前の生存に必要不可欠なことなら。おれとしてもやぶさかではないと言わざるを得ないだろうな」
「えぇ!?」
あえて思考を断ち切って早口で答えると、シンはぎょっとしたように目を剝いた。
「マジで、わかってます? セックスですよ。掘られるんですよ。さっきみたいに尻の穴にチンコ入れられるってことですよ、南十さん?」
「い、言うな! わかってる。覚悟の上だ」
「いや、ちょっと……僕の方が意味わかんないんですけど。何、さっきのでハマっちゃったとか? そんなによかったですか、僕のアレ?」
「そんなわけあるか! 違う、おれはっ」
下劣な冗談に頬が染まる。自分の反応をあえて無視しつつ、おれは深く重い息を吐く。
「……目の前で誰かに死なれるとか、おれのせいで地球が侵略されるとか、そういう事態に耐えられる気がしないだけだ。そんなのを目にするよりは……その、そっちの方が、いくらかマシだ」
「はぁ?」
シンの両眉が、ぴくりと上がった。不快そうに歪んだ表情はすぐに戻して、はあ、と呆れたようなため息を漏らす。
「一応聞いときますけど、正気ですか? それってもはや、優しさとか倫理観で出せる結論じゃないですよ」
「百も承知だ。おれだって正気の沙汰だとは思ってない」
「なら……いや」
そこから先にシンが何を言おうとしたのか、おれにはわからない。シンは言葉を止めて、眉間をほぐすように押さえて、少しの間を置いて、軽く肩をすくめた。その瞳に、何か諦めとも軽蔑ともつかない色を宿して。
「……南十さんがそう言うなら、僕としてはありがたく利用させてもらいますけど。いいんですね、それで」
「ああ。だが約束しろ。おれに飼われてるうちは、お前は地球に手を出すな」
「はは、かっこいー。でも南十さん、僕におとなしく躾けられるつもりがあるとでも? 僕がいきなり反旗を翻して、地球ごと母星に引っ張ってったらどうするんです?」
「つもりは知らんが、少なくともお前にとってもメリットはあるだろう。お前どうせ母星に戻る気なんてないんだろうが」
「あれ、それもバレてるんだ? お見通しですね、南十センセイには」
「お見通しも何もあるか。あれだけベラベラ喋っておいて」
「……ふうん」
シンの視線が、ちらりとおれの絵に映る。それから首に引かれた黒線を、確かめるように指先で撫でた。木炭の黒い粉がシンの指を染める。その指をしばらく、考え込むように見つめたあと、シンはおもむろにおれの喉へと手を伸ばす。
「いいですよ。契約成立。僕はあなたに自由を預ける。その代わりあなたは、今日から僕の犬だ」
「……っ、い、言っておくがな、犬ってのはその、性的……行為のときだけだぞ!? おれ自身の、人間としての生活までお前に売り渡すつもりはないからな!?」
「はいはい。僕も別に南十さんの生活に興味はないですよ」
一本立てた人差し指が、おれの首をすっとなぞった。すぐに離れていった指先の黒は、僅かに色を薄くしている。恐らくおれの首元にもシンと同じく、ぼやけた黒い線が引かれているだろう。
青くおぼろげな月光の下で、その線は所有の証たる首輪に見えている。
そうして──
おれと、この無礼でめちゃくちゃな宇宙人の、不本意かつ必然的な同居生活は幕を開けてしまったのだ。
* * *
ぽつりと灯った赤い火を、灰皿の上で押し潰した。けだるい体を引きずるように立ち上がる。尻の奥に出された粘液が、ぬちゃりと気分の悪い音を立てる。
シンが開け放したままの障子戸からは、あの日より少し欠けた月が忍び込んできている。汚れたままの裸身を照らし出す明るさに、わずかな抵抗を感じないでもなかったが、どうせ風呂場まではそう距離もない。おれを置いて風呂場に向かったシンも、そろそろシャワーを浴び終える頃だろう。終わっていなかったら追い出せばいい。外とガラス一枚で隔てられたくれ縁の、板張りの冷たさを素足で感じながら、おれは浴室に向かう一歩を踏み出した。
次の刹那。まったく何の気もなしに空を見上げて、おれはそのまま息を止めた。
月が出ている。星が散っている。住宅街の静かな灯に濁された藍色の宇宙が、全天から針のような視線をもっておれを見ている。
腹の奥から、行為のときとは違う吐き気が込み上げてくるのを感じた。喉奥で飲み下し、荒くなる呼吸を抑えて、踵を返す。向かう先は風呂場とは逆方向にあるアトリエだ。叩きつけるように開けた障子戸の先へ、おれは全裸のまま、半ば突き動かされるようにして飛び込んでいく。
木炭を手にキャンバスに向かって、いくらも経たないうちにシンは戻ってきた。正確に言えば部屋に戻る最中、開けっぱなしにしたアトリエの中におれを見つけた、ということだが。
「……何してるんですか、南十さん」
背中から聞こえた声は、明確に呆れたような響きを帯びている。
「素描」
「全裸で?」
「ああ」
それ以上の説明をする気はなかった。ため息をついたシンが、おれの背後に腰を下ろしたようだ。構わず振り返りもせず手を動かし続ける。この行為は言うなればおれにとって排泄のようなもので、自分の意思で止められもしなければ最中他人に構っている余裕もない。そしてこの時ばかりはシンもまた、どういうわけかおれの邪魔をしようとしない。
下地も塗らないキャンバスに、無心のまま木炭を走らせる。円弧の左端を影にかすめとられた月、遥か光年の彼方から地球を撃ち抜く星の光、そして間に満ちているようで本当は何もない虚の空、それらをどうにか閉じ込めるように、絵になる前の画面へと配置していく。
シンは何も言わない。おれもあえて彼を意識に入れない。だがどうやらおれは心理の底でわずかに彼の、鑑賞者としての目線を知覚している。証拠におれは月を描く寸前に躊躇した。縦横の分割線、明暗のバランスを意識して、衝動よりもわずかに配置を変えた。どうせ売り物にもならない、自慰にも等しい描画のくせに。
「……っは」
ぜんまいが切れたように止まった腕を、重力に従ってゆるゆると下ろした。焦燥感にも似た創作意欲は、急速に萎み始めていた。
ふと我に返ってみれば、腿の裏側を一筋、シンに出された精液がつたい落ちている。不快だ。気持ちが悪い。歪むおれの顔を見ないまま、背後でのそりと、シンが立ち上がる気配がする。
「やめるんですか」
「ああ」
「ふうん。続きは?」
「さあ。気が向いたらな」
「ふうん……」
木炭を画材入れに置くと同時に、シンがおれの真後ろに立った。同時に後ろから、腰を回って内腿へとシンの手が伸びる。自然、眉間にさらに皺が寄る。
「……おい。なんだこの手は」
「したくなりました。しましょう」
「ふざけたこと言うな。それにお前もう……んぅっ!」
顎を持ち上げられ、唇で言葉を塞がれる。半端に開いたままの口から、軟体動物みたいな舌が入り込んでくる。口蓋の粘膜を体温をもった柔らかい舌でくすぐられ、背筋がぞくりと粟立つ。
「……っふ、ぁ……んっ、……ぷぁっ」
「……っはは」
抗うつもりで伸ばした腕には、意志に反して力が入らなかった。代わりに口内を這い回る舌に、自らの舌をゆるりと絡める。送り込まれた唾液を、喉の筋肉が嚥下する。いつからだろう、抵抗が形ばかりのものになったのは。諦めや自己防衛本能よりもむしろ、震えるような期待と官能が先に立つようになったのは。そしてそういうおれの変化は、おそらくシンにも気づかれている。おれの欲情と後悔を喰らう、この忌々しくも抗しがたい魔物には。
脚の間に割り入ってきたシンの膝が、おれの股間と尻を押し潰すように持ち上がる。んぅ、と低い声が漏れた。さっきまでシンのものを受け入れていたせいで、入口も中もまだ十分すぎるほどに柔らかい。外から押されただけで肉壁同士が擦れる。奥に残っていた精液が、綺麗とは言い難い音を立てて溢れてくる。
「はっあ、んっ、あ、あぁー……っ♡」
「くっふ……南十さん、僕のも」
「あ……っ♡」
持ち上げられた手のひらに、半勃ちのものが押し付けられる。熱を持ち始めた内部が、その瞬間、きゅっと収縮するのがわかった。半ば無意識に逆手でさすり上げ、幹に指を絡めて往復させる。さっきおれの中に出したばかりだとは思えないほどに、それは即座に準備を整え、収まる場所を求めるようにどくんどくんと脈打ち出す。
「ほら南十さん。どこに入れればいいか、わかりますよね?」
「っ、は、ぁうっ……っ、ふ」
「うん、そう……そのまま」
全身が火照っている。頭はとっくに思考を止めている。痛いほどに張り詰めた前が望んでいるままに、シンのものを尻の割れ目に導いた。
粘液の滲み出した先端が、白濁で汚れた窄まりに触れる。我知らずごくりと唾を飲んだ。動物的な本能だけが、頭の中を主人のように支配していた。
そのまま、手の内を滑らせるようにして、おれはおれの中にシンの雄を送り込む。中に溜まったままの精液が、ぷちゅ、と濡れた音を立てた。
「……あ、……ぐ……っ!」
「……っふ。いい子」
抵抗は、恥ずかしいほどになかった。肉棒の直径と同じ形まで緩んだ入り口は、あっさりと、いやむしろ自ら進んでシンのものを呑み込んだ。
「あっ、あ……はあぁあ……っ♡」
押し出された吐息に、甘ったるい喘ぎが混じる。触れられもしない性器に、電気を流されたような痺れが走る。男の味を教え込まれてしまった前立腺が、歓喜してシンの男にむしゃぶりついている。意志とは無関係に揺らめきだした腰は、やがてシンの長さと同じ分だけ、前後に行き来を繰り返し始めた。
「あっ、う、あぁ、あっ、あっ、はぁうっ♡」
「っ、は、あー、きもちぃー……っ、ねえ、南十さん、も、気持ちいい?」
「あっぐ、ぅう、だ、だれっ、がっ、あぁっあぅっ♡」
「あれ。っはは、も、素直じゃ、ないなぁっ」
「あーあぁあっ! あっ! あぁっ♡♡♡」
快感を振り払うように、必死で首を横に振る。自分でも、説得力のかけらもないと思う。だって今のおれは自ら腰を振りたくり、シンの股間に浅ましく尻を打ちつけているのだ。誰が見たって合意の上で、肛姦の快楽を貪る淫乱だ。それでもおれは、それがもはや朽ちかけた形ばかりの強情であろうと、おれの中でおれ自身を売り渡すわけにはいかない。いかないと、決めているのに。
目をきつく閉じて耐えるおれの耳に、シンの唇が忍び寄る。
「……ね、南十さん」
「は、んん゛ッ」
「素直に、なった方が、いいと……っ、思いますよ。そしたら僕も、もっと、してあげる」
「はっ、あ、……もっ、と……?」
「うん。もっと」
「んぁっ、はっ♡」
絡めた手で腿の付け根を妖しく撫でながら、シンはおれの耳をねっとりとねぶる。その舌に、悪魔のように甘いささやきを乗せて。
「この姿勢、不安定でしょ? だから羽交い絞めにして、後ろからガン突きしてあげる。太いので前立腺ゴリゴリってして、腹の奥が潰れるくらいずんずん突き上げてあげる」
「あっ、は、はっ、……ぁっ♡」
「ね? したいでしょ? ってか、されたいでしょ? だって気持ちいいもんね。オレの南十さんは、ちんちんでお尻の穴ごしごしされるのだぁい好きだもんね?」
「はっ、うぁあっ♡♡」
わざとらしいほどに子供じみた、それでいて淫猥な単語。けれどそんな単純な卑語にすら、肉体は生々しい記憶を腹の奥に蘇らせている。口元を押さえていたはずの自分の指を、おれは気づかぬうちに自ら舐めしゃぶっていた。犬のように息が荒い。彼の手のすぐそばで、張りつめきった性器がびくりと跳ねた。限界まで膨れ上がった期待と欲情を、今にも射出しようとしているみたいに。
「ねえ、南十さん。されたい? されたくない? どっち? 言って」
「っあ、は、ぁ、……っ、た、い……っ」
「聞こえないですよ。ちゃんと言って」
「あっあっ、されっ、されたいっ、されたいっもっとっあぁっ♡」
「っはは、なんで? なんでされたいの?」
「っあいいっ、いいからっ、気持ちいいからっ♡ きもちぃからもっと、シンっ、シンっあぁっもっとぉっ♡♡♡」
水門が決壊したみたいに、唾液と一緒に言葉が溢れ出す。どうでもいい。今はこの背徳めいた悦楽以外、何も要らないし考えたくない。そして自ら放棄するまでもなく、思考は真っ白に塗りつぶされている。
ふふ、と小さな笑い声が耳をくすぐる。同時に、シンの腕がおれの両脇を下から持ち上げ、今までとは比べ物にならない力強さでおれを締め上げた。
「うあ゛ッ、ぐっ、んんんん゛ッ♡♡」
「うお、キッツ……っ、は、やっぱ、最高……ッ!」
「あぁあ゛ーあ゛ぁッ♡♡♡ あ゛ッ! あぁあ゛ッ♡♡♡」
羽交い絞めされた腕と挿入された肉棒、そこだけを支点に体が反り返る。宣言通りにシンは激しい抽送を開始した。腹の裏に硬いものがぶち当たった一瞬後、引きずり出されんばかりの勢いで腸壁を擦り上げられる。シンの恥骨がおれの尻を、仕置きの手みたいに何度も打っている。半ば拷問じみた行為のすべてをしかし、おれの体は極度の快感として受け入れている。
「はっ! あっ! あ゛ぅッ♡ あ゛ぅう゛ンッ♡♡♡」
「っ、は、ははっ、ね、いい? 南十さんいいっ?」
「あンッ、いいっ、いぃっ、あっいい゛ぃッ♡♡♡」
さっきとは反対に、必死に首を縦に振る。顎が持ち上がり、視界がぐるんと裏返った。気持ちいい。苦しい。死ぬ。逝く。死んでもいいとすら思うほど、たまらなく、気持ちいい。
上向いた顎をさらに上げ、シンの唇が覆いかぶさってくる。性器を挿入するみたいに挿し込まれる舌を、すがるように吸い舐る。
「んゔッ、んんーっ、ぷぁっ、はぁっあっ♡」
「あっ、は、っ、南十さんっ、っく、このままっ……!」
「あっあ゛ッ、ん、いい、あぁいいッ、シン、き、て……っ!」
「……ッ!!」
シンの腕に、苦しいほどに力がこもる。海老反りになった体の芯を、硬くて太いものがまっすぐに撃ち抜いて動きを止める。
「あ゛ッ! あっ、ゔ、んッ!! ……んはぁあ……ッ♡♡♡」
「……っく、ぁ……、……ふ……ッ♡」
腹の奥に広がる熱に、脳がとろける。中出しの感触を多幸感として受け止めながら、おれの性器からもとろとろと白濁が落ちていく。射出というよりむしろ、シンのものに押し出されたと言った方が正しいような力なさで。
「……っふ……はぁ……ッ♡」
くたりと力の抜けた体を、背中のシンに預ける。今さらながらに襲い来る罪悪感とやるせなさを、ひと時彼に押しつけるように。
いつからだろう。こんなふうにシンとの行為において、自ら快楽を貪るようになってしまったのは。
常に、じゃない。本意でもない。おれの中にある何らかの条件が、悪い形で噛み合ってしまったときだけだ。その条件が何なのか、追求すれば今度はおれの弱い部分に触れてしまいそうで、直視するどころか考えることすらも憂鬱だ。
ただ少なくとも現時点でおれ自身の肉体が、おぞましいはずのシンとの交合に、否めない悦びを見出すようになってしまったことだけは確かな事実で──
今のおれにはもう、それがいいことなのか悪いことなのかすらもわからない。
しかし。
「……罪悪感は、ないのか」
「へ?」
知らず口に出していたのは尋問でも詰問でもく、ただ純粋な疑問だった。きょとんと眼を丸くするシンの態度にも、不思議と怒りは沸かない。だからおれも片膝を立てて淡々と問う。できればタバコが欲しいところだが、あいにくアトリエは火気厳禁だ。
「さっきから聞いてるとお前、あんなことをした割にはやけに理性的というか、現状を弁えてるというか……少なくともおれの目には、他人を嬉々として嬲り者にするような人間には見えない」
「あはは、褒めてくれてます? どうも」
「率直な印象だ。なのにどうしてそんな平気な顔してられるんだ。普通ならもっとこう、おれに対する罪の意識とか、後悔とか……ああくそ、お前に説教したって響くわけないか」
「その言い方は酷いなあ。……んー。素直に答えていいんですよね?」
「ああ」
きっとろくな答えは返ってこないだろう。それでもどうやら、シンは嘘をつくことはない。相変わらず平気な顔をして、うーん、と唇に指を当てる。
「罪悪感ねえ。もちろんゼロではないですよ。かわいそうなことしちゃったなー、ぐらいには思ってますよ、これは本気で」
「その時点で既に大概だが、それですら信憑性がないな」
「ほんとですって、信じてくださいよ。まあ、でも、そのせいで自分の存在意義を苛んだり、自責の念で眠れなくなるまでのことは百パーないですね」
「……」
「だってそうでしょ? 想像してみてくださいよ。命を削る漂流の果てに、どことも知れない無人島に流れ着いた。腹を空かしてさまよった後に、故郷の家畜によく似た野生生物に出会った。そこでそいつを殺して食ったとして、普通死にたくなるレベルで後悔なんてします?」
「……なるほどな」
言葉通り苦悩のかけらも見えないあっけらかんとした態度に、改めておれは骨身に悟る。つまりこいつは、心の底からおれのことを、同じ人間だとは認識していないのだ。同じ姿形をして、同じ言葉を使っているにも関わらず、この地球に棲む人類のすべてを、本心から犬と同等の生物と見做しているのだ。
理屈はわかった。理解はできない。だがおれもこれからはその意識を持たねばならないのかもしれない。本能的にも習性的にも相容れるわけがない、この宇宙人を相手にするためには。
「わかった。じゃ、最後だ。一番肝心な質問だ」
「まだやるんですか? もういいでしょ。南十さんもそろそろ疲れてきてません?」
「駄目だ。地球人類にとって最大の懸念事項だ。侵略とやらについて、詳しく説明しろ」
「侵略? ……あー」
僅かに眉をひそめたあとで、シンは思い出したように軽く首を振る。
「詳しくも何も言葉通りですよ。えーと、なんだったっけ。流刑先の知的生命体に我らが『地球』の教えを広め、共に学び共に生きる同志としての理解を賜ることができれば、その功績によって罪を赦免する、だっけ? まあ小難しいことは置いといてひらたく言えば、この星一個手土産にして帰れば僕は無罪放免ってことです」
「念のために聞くが、その同志ってのはつまり、犬と人間としての同志ってことだな」
「当然、そうなるでしょうね。僕らから見ればここは犬の星ですから」
「……」
微かに持ちえた融和への希望は、この瞬間に粉砕された。いや、元々そんなもの存在しなかったのかもしれない。この男が初手でおれを強姦した、その時点で。
あぐらをかいたシンの足先が、ぱたぱたと床を打ち始めた。こんな状況に置いてなお、この男は退屈を隠そうともしない。
「で? こんだけ長々聞き出したところで、どうするんですか、南十さん。さっきも言いましたけど、僕なら警察に丸投げしておしまいにしますね。まあ、ありのままを話したところで、イカれてるか薬でもやってんのかと思われるのが関の山でしょうけど」
「……お前は、どう思ってるんだ」
「僕?」
「ああ。そもそもお前自身はどうするつもりだったんだ。おれを襲って犬にできたとして、その後。命令通り地球を侵略して、例の宗教国家に帰るつもりだったのか」
「あー……」
一瞬、シンの顔に影がよぎった。物理的にも比喩表現としても、どちらの意味でも同時に。月をよぎる雲の影になったその顔からは、さっきまでの不真面目な笑みが剥ぎ取られたかのように消えていた。
だがそれも一瞬のことだ。雲が流れて再び照らされたシンは、いっそ演技じみて見えるほどの軽薄なニヤケ面に戻っている。
「……どうでしょう。今はもう、かねてからの大願も果たし終わったことだし。適当に生きて、腹が減ったら食って、ああ、もちろん、気が向いたら帰るってのも、選択肢としてはアリですね」
「それは、当然……地球人類を犬にして、という意味か」
「そりゃそうでしょ。理論上僕の力があればこの星の人間は言いなりにできるはずなんで……まあ、南十さんみたいに効かない人もいる可能性はありますけど、おそらくはごく少数でしょう。ついでに言うまでもないことですけど、食うのは心の胃袋の方も込みですよ? 南十さんのアレ、極上でしたし」
「……っ!」
言ってシンはおれの首筋に目を移し、見せつけるようにぺろりと唇を舐めた。ちらりと覗く牙の白さに、おれの全身に怖気が走る。理性では、シンの露悪だとわかっている。けれどおそらく、おれの肉体に刻まれた遺伝子の本能が、おれの心身を恐怖とも期待ともつかない鎖で縛りつけている。強張りを隠せないおれを見て、シンはくすりと笑った。
「ねえ、南十さん」
妙な猫撫で声を出しながら、彼はわずかに上半身を乗り出す。
「実際のとこ、めちゃくちゃよかったですよ、あんたの体。あんただってよかったんでしょ? 隠せないですよ。なんせこの身をもって味見させてもらってますから」
「……やめろ、ゲス野郎」
「ふふ。ああ、ほんと、甘露って言うんでしょうね、ああいうの。食いちぎられそうなくらい苦しいのの中に、とろっとろに溶けかけた理性が混ざり合って」
「……っ、やめろ」
「キツくて気持ちよくて、わけわかんなくなってるのがビンビンに伝わってきて、最っ高にオレ好みでしたね。中に入った途端甘ったるくやわらかくなって、嫌なのにきゅんきゅん締めつけて、泣いてんのか喘いでんのかももう全然」
「やめろって言ってるだろ!!」
声を荒げて肩に掴みかかる。くそ。何回めだ。命の危機だというのにお構いなしのシンのニヤニヤ笑いに、そろそろおれも確信し始めた。こいつ、楽しんでやがる。ことによっては自分が危害を加えられる可能性すらも。
「ま、とにかく。僕としては話せることは全部話しました。それで、センセイの裁定は? 警察? 絞殺? それともまさかこのまま野に放つとか?」
「……」
肩から離した手をそのまま額に当てた。提示された三つの選択肢のうち、三番は、ありえない。できることなら一番目か二番目を選んでやりたいところではある。だが、おれにシンは殺せない。それはおそらく良心や殺人への忌避感に基づくものではなく、おれの根幹に今もなお根付いた、一種の心的外傷によるものだ。
──父さん! 母さんっ!!
瞼の上の暗いところに、一瞬、燃え上がる炎が映った。無意識に心臓の巡りが速くなる。蘇りかけた光景を振り払うように、拳を強く握って首を振る。
深く息を吸って、吐く。三度繰り返してからシンに向き直った。これからおれの取る選択は消去法の結果でしかない。それでも現状、おれはこうするしかない。楽しげに首を傾げるシンを、無感情に見つめながら口を開いた。
「たぶん、おれにお前は殺せない」
「はあ」
「一度言葉を交わした人間を害獣として駆除することは、おれにはできない。例えそいつの正体が誰彼構わず噛みついて回る、躾の悪い犬だったとしてもだ」
「はあ、そうですか。で?」
「かと言って警察に突き出したところで、お前、逃げ出すだろ」
「……えー?」
「あるんだろ、なんかそういう手も。おれを宇宙に放り出したときみたいなやり方を使えば、どうとでもなる」
「あ、バレました? はは、さっすがセンセイ」
「だったらおれにできることはひとつしかない。が、その前に、最後の質問だ」
「えぇー? さっきのが最後って」
「お前、なんでおれの絵を見てた」
シンの文句を無視して言い放つ。なぜかそこで、意表を突かれたみたいにシンは黙った。ふっとおれから視線を外して、描きかけのキャンバスに目を移す。下塗りの黒い宇宙の中に、穴のような月だけが浮かんだ絵。
おもむろに立ち上がったシンが、紙上の月と相対して、わずかに目を細める。
「なんで、ですか」
「ああ。なんでだ」
「難しいこと聞きますね。なんで、か。うん、でも、ああ、そうだ、これは」
瞳の奥で、一瞬、赤い光がまたたいた気がした。その色の意味をおれが見極めるより早く、シンがこちらに振り向いた。
風が吹く。雲が流れる。怖いくらいに青い満月が、シンの長身を真正面から照らし出す。
「好きだから」
「……!」
「うん。好きだからです」
曇りなき声を耳にしたとたん、全身の力が抜けた。
おれの運命が否応なしに決定されたのは、おそらくその瞬間だった。
「……わかった」
「判決は、決まりましたか」
「ああ」
床に散らばった画材に目を落とす。絵の具とペインティングナイフの間に転がる真っ黒な木炭。焦げた骨のようなそれを片手で拾い上げ、シンと向き合う形で立ち上がった。
「ん?」
未決囚にしては余裕のありすぎる表情で、シンが首をかしげた。その喉仏に木炭を押し当て、首切りのごとく一閃する。刻まれたのは彼の喉そのものではなく、一本の黒い線。
「今からお前を飼うことにした。おれが、お前を、だ」
「…………は?」
おれにとっては自明の結論だったが、しかしシンにとっては意外な選択だったようだ。鳩が豆鉄砲を食ったように、ぽかんと眼を丸くする。
「えーっと……すいません、話が見えないんですけど。なんですか、飼うって」
「言葉通りの意味だ。餌と寝床は与える。代わりにお前は行儀よく、人間の善き友として大人しくここにいろ」
「えぇ……っと、……なんで……?」
どうやらおれはここに来て、初めて彼の意表を突くことに成功したらしい。それはそれで微妙に複雑だが、いいように弄ばれるよりはいくらかマシだ。散らかった画材をケースに拾い集めつつ、おれはここに至る理論を説明する。
「おれはお前を殺せない。他人に預けたところでどうにもならない。なら、おれがお前を飼うしかないだろう」
「いや、だから、なんで? っていうか南十さん、飼うって。意味わかって言ってます?」
「義務を果たせばいいんだろ。衣食住に体調管理、基本的な躾、排泄の処理……はさすがに自分でやってもらうが」
「いや、じゃなくて。僕言いましたよね? 母性の文化から生物学的なネタまで織り込んで、長々と話しましたよね? 僕には満たさなきゃいけない胃袋がもう一つあるんだって」
「ああ。そうだな」
「ああ、って。つまり、南十さんはソッチの方も満たしてくれるつもりなんですか? あなた自身の、カラダで」
「……」
改めてはっきり言われるとさすがに眉間に皴が寄る。が。
「……それが、本当にお前の生存に必要不可欠なことなら。おれとしてもやぶさかではないと言わざるを得ないだろうな」
「えぇ!?」
あえて思考を断ち切って早口で答えると、シンはぎょっとしたように目を剝いた。
「マジで、わかってます? セックスですよ。掘られるんですよ。さっきみたいに尻の穴にチンコ入れられるってことですよ、南十さん?」
「い、言うな! わかってる。覚悟の上だ」
「いや、ちょっと……僕の方が意味わかんないんですけど。何、さっきのでハマっちゃったとか? そんなによかったですか、僕のアレ?」
「そんなわけあるか! 違う、おれはっ」
下劣な冗談に頬が染まる。自分の反応をあえて無視しつつ、おれは深く重い息を吐く。
「……目の前で誰かに死なれるとか、おれのせいで地球が侵略されるとか、そういう事態に耐えられる気がしないだけだ。そんなのを目にするよりは……その、そっちの方が、いくらかマシだ」
「はぁ?」
シンの両眉が、ぴくりと上がった。不快そうに歪んだ表情はすぐに戻して、はあ、と呆れたようなため息を漏らす。
「一応聞いときますけど、正気ですか? それってもはや、優しさとか倫理観で出せる結論じゃないですよ」
「百も承知だ。おれだって正気の沙汰だとは思ってない」
「なら……いや」
そこから先にシンが何を言おうとしたのか、おれにはわからない。シンは言葉を止めて、眉間をほぐすように押さえて、少しの間を置いて、軽く肩をすくめた。その瞳に、何か諦めとも軽蔑ともつかない色を宿して。
「……南十さんがそう言うなら、僕としてはありがたく利用させてもらいますけど。いいんですね、それで」
「ああ。だが約束しろ。おれに飼われてるうちは、お前は地球に手を出すな」
「はは、かっこいー。でも南十さん、僕におとなしく躾けられるつもりがあるとでも? 僕がいきなり反旗を翻して、地球ごと母星に引っ張ってったらどうするんです?」
「つもりは知らんが、少なくともお前にとってもメリットはあるだろう。お前どうせ母星に戻る気なんてないんだろうが」
「あれ、それもバレてるんだ? お見通しですね、南十センセイには」
「お見通しも何もあるか。あれだけベラベラ喋っておいて」
「……ふうん」
シンの視線が、ちらりとおれの絵に映る。それから首に引かれた黒線を、確かめるように指先で撫でた。木炭の黒い粉がシンの指を染める。その指をしばらく、考え込むように見つめたあと、シンはおもむろにおれの喉へと手を伸ばす。
「いいですよ。契約成立。僕はあなたに自由を預ける。その代わりあなたは、今日から僕の犬だ」
「……っ、い、言っておくがな、犬ってのはその、性的……行為のときだけだぞ!? おれ自身の、人間としての生活までお前に売り渡すつもりはないからな!?」
「はいはい。僕も別に南十さんの生活に興味はないですよ」
一本立てた人差し指が、おれの首をすっとなぞった。すぐに離れていった指先の黒は、僅かに色を薄くしている。恐らくおれの首元にもシンと同じく、ぼやけた黒い線が引かれているだろう。
青くおぼろげな月光の下で、その線は所有の証たる首輪に見えている。
そうして──
おれと、この無礼でめちゃくちゃな宇宙人の、不本意かつ必然的な同居生活は幕を開けてしまったのだ。
* * *
ぽつりと灯った赤い火を、灰皿の上で押し潰した。けだるい体を引きずるように立ち上がる。尻の奥に出された粘液が、ぬちゃりと気分の悪い音を立てる。
シンが開け放したままの障子戸からは、あの日より少し欠けた月が忍び込んできている。汚れたままの裸身を照らし出す明るさに、わずかな抵抗を感じないでもなかったが、どうせ風呂場まではそう距離もない。おれを置いて風呂場に向かったシンも、そろそろシャワーを浴び終える頃だろう。終わっていなかったら追い出せばいい。外とガラス一枚で隔てられたくれ縁の、板張りの冷たさを素足で感じながら、おれは浴室に向かう一歩を踏み出した。
次の刹那。まったく何の気もなしに空を見上げて、おれはそのまま息を止めた。
月が出ている。星が散っている。住宅街の静かな灯に濁された藍色の宇宙が、全天から針のような視線をもっておれを見ている。
腹の奥から、行為のときとは違う吐き気が込み上げてくるのを感じた。喉奥で飲み下し、荒くなる呼吸を抑えて、踵を返す。向かう先は風呂場とは逆方向にあるアトリエだ。叩きつけるように開けた障子戸の先へ、おれは全裸のまま、半ば突き動かされるようにして飛び込んでいく。
木炭を手にキャンバスに向かって、いくらも経たないうちにシンは戻ってきた。正確に言えば部屋に戻る最中、開けっぱなしにしたアトリエの中におれを見つけた、ということだが。
「……何してるんですか、南十さん」
背中から聞こえた声は、明確に呆れたような響きを帯びている。
「素描」
「全裸で?」
「ああ」
それ以上の説明をする気はなかった。ため息をついたシンが、おれの背後に腰を下ろしたようだ。構わず振り返りもせず手を動かし続ける。この行為は言うなればおれにとって排泄のようなもので、自分の意思で止められもしなければ最中他人に構っている余裕もない。そしてこの時ばかりはシンもまた、どういうわけかおれの邪魔をしようとしない。
下地も塗らないキャンバスに、無心のまま木炭を走らせる。円弧の左端を影にかすめとられた月、遥か光年の彼方から地球を撃ち抜く星の光、そして間に満ちているようで本当は何もない虚の空、それらをどうにか閉じ込めるように、絵になる前の画面へと配置していく。
シンは何も言わない。おれもあえて彼を意識に入れない。だがどうやらおれは心理の底でわずかに彼の、鑑賞者としての目線を知覚している。証拠におれは月を描く寸前に躊躇した。縦横の分割線、明暗のバランスを意識して、衝動よりもわずかに配置を変えた。どうせ売り物にもならない、自慰にも等しい描画のくせに。
「……っは」
ぜんまいが切れたように止まった腕を、重力に従ってゆるゆると下ろした。焦燥感にも似た創作意欲は、急速に萎み始めていた。
ふと我に返ってみれば、腿の裏側を一筋、シンに出された精液がつたい落ちている。不快だ。気持ちが悪い。歪むおれの顔を見ないまま、背後でのそりと、シンが立ち上がる気配がする。
「やめるんですか」
「ああ」
「ふうん。続きは?」
「さあ。気が向いたらな」
「ふうん……」
木炭を画材入れに置くと同時に、シンがおれの真後ろに立った。同時に後ろから、腰を回って内腿へとシンの手が伸びる。自然、眉間にさらに皺が寄る。
「……おい。なんだこの手は」
「したくなりました。しましょう」
「ふざけたこと言うな。それにお前もう……んぅっ!」
顎を持ち上げられ、唇で言葉を塞がれる。半端に開いたままの口から、軟体動物みたいな舌が入り込んでくる。口蓋の粘膜を体温をもった柔らかい舌でくすぐられ、背筋がぞくりと粟立つ。
「……っふ、ぁ……んっ、……ぷぁっ」
「……っはは」
抗うつもりで伸ばした腕には、意志に反して力が入らなかった。代わりに口内を這い回る舌に、自らの舌をゆるりと絡める。送り込まれた唾液を、喉の筋肉が嚥下する。いつからだろう、抵抗が形ばかりのものになったのは。諦めや自己防衛本能よりもむしろ、震えるような期待と官能が先に立つようになったのは。そしてそういうおれの変化は、おそらくシンにも気づかれている。おれの欲情と後悔を喰らう、この忌々しくも抗しがたい魔物には。
脚の間に割り入ってきたシンの膝が、おれの股間と尻を押し潰すように持ち上がる。んぅ、と低い声が漏れた。さっきまでシンのものを受け入れていたせいで、入口も中もまだ十分すぎるほどに柔らかい。外から押されただけで肉壁同士が擦れる。奥に残っていた精液が、綺麗とは言い難い音を立てて溢れてくる。
「はっあ、んっ、あ、あぁー……っ♡」
「くっふ……南十さん、僕のも」
「あ……っ♡」
持ち上げられた手のひらに、半勃ちのものが押し付けられる。熱を持ち始めた内部が、その瞬間、きゅっと収縮するのがわかった。半ば無意識に逆手でさすり上げ、幹に指を絡めて往復させる。さっきおれの中に出したばかりだとは思えないほどに、それは即座に準備を整え、収まる場所を求めるようにどくんどくんと脈打ち出す。
「ほら南十さん。どこに入れればいいか、わかりますよね?」
「っ、は、ぁうっ……っ、ふ」
「うん、そう……そのまま」
全身が火照っている。頭はとっくに思考を止めている。痛いほどに張り詰めた前が望んでいるままに、シンのものを尻の割れ目に導いた。
粘液の滲み出した先端が、白濁で汚れた窄まりに触れる。我知らずごくりと唾を飲んだ。動物的な本能だけが、頭の中を主人のように支配していた。
そのまま、手の内を滑らせるようにして、おれはおれの中にシンの雄を送り込む。中に溜まったままの精液が、ぷちゅ、と濡れた音を立てた。
「……あ、……ぐ……っ!」
「……っふ。いい子」
抵抗は、恥ずかしいほどになかった。肉棒の直径と同じ形まで緩んだ入り口は、あっさりと、いやむしろ自ら進んでシンのものを呑み込んだ。
「あっ、あ……はあぁあ……っ♡」
押し出された吐息に、甘ったるい喘ぎが混じる。触れられもしない性器に、電気を流されたような痺れが走る。男の味を教え込まれてしまった前立腺が、歓喜してシンの男にむしゃぶりついている。意志とは無関係に揺らめきだした腰は、やがてシンの長さと同じ分だけ、前後に行き来を繰り返し始めた。
「あっ、う、あぁ、あっ、あっ、はぁうっ♡」
「っ、は、あー、きもちぃー……っ、ねえ、南十さん、も、気持ちいい?」
「あっぐ、ぅう、だ、だれっ、がっ、あぁっあぅっ♡」
「あれ。っはは、も、素直じゃ、ないなぁっ」
「あーあぁあっ! あっ! あぁっ♡♡♡」
快感を振り払うように、必死で首を横に振る。自分でも、説得力のかけらもないと思う。だって今のおれは自ら腰を振りたくり、シンの股間に浅ましく尻を打ちつけているのだ。誰が見たって合意の上で、肛姦の快楽を貪る淫乱だ。それでもおれは、それがもはや朽ちかけた形ばかりの強情であろうと、おれの中でおれ自身を売り渡すわけにはいかない。いかないと、決めているのに。
目をきつく閉じて耐えるおれの耳に、シンの唇が忍び寄る。
「……ね、南十さん」
「は、んん゛ッ」
「素直に、なった方が、いいと……っ、思いますよ。そしたら僕も、もっと、してあげる」
「はっ、あ、……もっ、と……?」
「うん。もっと」
「んぁっ、はっ♡」
絡めた手で腿の付け根を妖しく撫でながら、シンはおれの耳をねっとりとねぶる。その舌に、悪魔のように甘いささやきを乗せて。
「この姿勢、不安定でしょ? だから羽交い絞めにして、後ろからガン突きしてあげる。太いので前立腺ゴリゴリってして、腹の奥が潰れるくらいずんずん突き上げてあげる」
「あっ、は、はっ、……ぁっ♡」
「ね? したいでしょ? ってか、されたいでしょ? だって気持ちいいもんね。オレの南十さんは、ちんちんでお尻の穴ごしごしされるのだぁい好きだもんね?」
「はっ、うぁあっ♡♡」
わざとらしいほどに子供じみた、それでいて淫猥な単語。けれどそんな単純な卑語にすら、肉体は生々しい記憶を腹の奥に蘇らせている。口元を押さえていたはずの自分の指を、おれは気づかぬうちに自ら舐めしゃぶっていた。犬のように息が荒い。彼の手のすぐそばで、張りつめきった性器がびくりと跳ねた。限界まで膨れ上がった期待と欲情を、今にも射出しようとしているみたいに。
「ねえ、南十さん。されたい? されたくない? どっち? 言って」
「っあ、は、ぁ、……っ、た、い……っ」
「聞こえないですよ。ちゃんと言って」
「あっあっ、されっ、されたいっ、されたいっもっとっあぁっ♡」
「っはは、なんで? なんでされたいの?」
「っあいいっ、いいからっ、気持ちいいからっ♡ きもちぃからもっと、シンっ、シンっあぁっもっとぉっ♡♡♡」
水門が決壊したみたいに、唾液と一緒に言葉が溢れ出す。どうでもいい。今はこの背徳めいた悦楽以外、何も要らないし考えたくない。そして自ら放棄するまでもなく、思考は真っ白に塗りつぶされている。
ふふ、と小さな笑い声が耳をくすぐる。同時に、シンの腕がおれの両脇を下から持ち上げ、今までとは比べ物にならない力強さでおれを締め上げた。
「うあ゛ッ、ぐっ、んんんん゛ッ♡♡」
「うお、キッツ……っ、は、やっぱ、最高……ッ!」
「あぁあ゛ーあ゛ぁッ♡♡♡ あ゛ッ! あぁあ゛ッ♡♡♡」
羽交い絞めされた腕と挿入された肉棒、そこだけを支点に体が反り返る。宣言通りにシンは激しい抽送を開始した。腹の裏に硬いものがぶち当たった一瞬後、引きずり出されんばかりの勢いで腸壁を擦り上げられる。シンの恥骨がおれの尻を、仕置きの手みたいに何度も打っている。半ば拷問じみた行為のすべてをしかし、おれの体は極度の快感として受け入れている。
「はっ! あっ! あ゛ぅッ♡ あ゛ぅう゛ンッ♡♡♡」
「っ、は、ははっ、ね、いい? 南十さんいいっ?」
「あンッ、いいっ、いぃっ、あっいい゛ぃッ♡♡♡」
さっきとは反対に、必死に首を縦に振る。顎が持ち上がり、視界がぐるんと裏返った。気持ちいい。苦しい。死ぬ。逝く。死んでもいいとすら思うほど、たまらなく、気持ちいい。
上向いた顎をさらに上げ、シンの唇が覆いかぶさってくる。性器を挿入するみたいに挿し込まれる舌を、すがるように吸い舐る。
「んゔッ、んんーっ、ぷぁっ、はぁっあっ♡」
「あっ、は、っ、南十さんっ、っく、このままっ……!」
「あっあ゛ッ、ん、いい、あぁいいッ、シン、き、て……っ!」
「……ッ!!」
シンの腕に、苦しいほどに力がこもる。海老反りになった体の芯を、硬くて太いものがまっすぐに撃ち抜いて動きを止める。
「あ゛ッ! あっ、ゔ、んッ!! ……んはぁあ……ッ♡♡♡」
「……っく、ぁ……、……ふ……ッ♡」
腹の奥に広がる熱に、脳がとろける。中出しの感触を多幸感として受け止めながら、おれの性器からもとろとろと白濁が落ちていく。射出というよりむしろ、シンのものに押し出されたと言った方が正しいような力なさで。
「……っふ……はぁ……ッ♡」
くたりと力の抜けた体を、背中のシンに預ける。今さらながらに襲い来る罪悪感とやるせなさを、ひと時彼に押しつけるように。
いつからだろう。こんなふうにシンとの行為において、自ら快楽を貪るようになってしまったのは。
常に、じゃない。本意でもない。おれの中にある何らかの条件が、悪い形で噛み合ってしまったときだけだ。その条件が何なのか、追求すれば今度はおれの弱い部分に触れてしまいそうで、直視するどころか考えることすらも憂鬱だ。
ただ少なくとも現時点でおれ自身の肉体が、おぞましいはずのシンとの交合に、否めない悦びを見出すようになってしまったことだけは確かな事実で──
今のおれにはもう、それがいいことなのか悪いことなのかすらもわからない。
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