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1-1 別れる
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「好きです。付き合ってください」
そう伝える自分の声が震えてかすれた。
「あー……俺友達優先だけど、2番目でもいいなら……」
気怠げな彼がそう言った。そう答えられて、断られると想像していただけに、彼と2番目でも付き合える嬉しさが込み上げてきた。
私は震える手でぎゅっとスカートを握る。それでもいい。大好きなあなたの恋人になれるなら。
楠木くすのき拓斗たくとと付き合って3年ほど経った。彼女ではあるが優先順位は2番目。
私、大健おおだて彩綾さあやは、胸は普通よりは大きめだけどそれ以外はどこにでもいるような普通の女子だ。友達はいるけどそんなに多い方じゃない。どちらかといえばインドアな方かもしれない。
そんな私と比べて拓斗くんはイケメンで頭も良くてスポーツ万能。仕事も要領よく出来て、完璧な彼氏だ。ただ欠点を言わせてもらうとすればそれは、彼が彼女の私以外を優先するということだろうか。
友達も多くてノリがいいのでみんなから人気がある拓斗くんは、彼氏としてはちょっと……というのが周りの、特に女子側の意見だ。私は見る目がないとよく言われて、もっと自分を大事にしなよと女友達から言われる始末。
確かに自分でも見る目がないなとは思ったが、好きになってしまったのだ。仕方がない。恋は先に落ちた方が負けとよく聞くが、本当にその通りだと思った。
その日、私は部屋の前に立っていた。
彼の玄関のドアを開けたら、たまに、あー来たんだ、とニコッと笑う彼の笑顔が好きだったのに、玄関に現れたのは見慣れない女物の赤いパンプス。
じくじくと嫌な音を立てて喚く心臓の音を聞きながら、廊下を進んで部屋の前に立った。
ガチャリと響いたドアの向こう側には裸の男と女がいて、女がベッドの上で慌ててシーツを手繰り寄せている。
「…………っ!」
私は唇を震わせながら何か言おうとしたけれど、何を言おうとしたのかもわからずに、また口を閉じた。目の前の光景が信じられなくて、何も言葉が出てこない。そんな私の姿を見て彼はため息をついた。
「今日は俺予定あるって言ってたよね?何で来たの?」
冷たく突き放すような彼氏の言葉に目の前が一瞬で真っ暗になり、震える手を握りしめた。
「ご、ごめん、ちょっと会いたくなっちゃって……」
「俺そーゆーの嫌いなんだけど」
またため息を吐きながらベッド上に置いていた煙草を掴んでライターを探しているのかゴソゴソとし出した。
「ま、いいけどさ」
「ご、ごめん……。今日は帰るね」
テーブルの上にライターが見えて、どうしてか咄嗟に手に取って彼に渡した。彼は何も言わずに受け取ると煙草に火をつけた。
お邪魔しました……と消えそうな声で呟いて2人から背を向けた。
鼻の奥がツンとして、涙が出る直前だということを教えてくれた。
何がお邪魔しました、よ……
何言ってんの私……
友達を優先してはいたけれど、それはほぼ男友達ばっかりだったし、こんな浮気なんてしているなんて思ってもみなかった。
そう伝える自分の声が震えてかすれた。
「あー……俺友達優先だけど、2番目でもいいなら……」
気怠げな彼がそう言った。そう答えられて、断られると想像していただけに、彼と2番目でも付き合える嬉しさが込み上げてきた。
私は震える手でぎゅっとスカートを握る。それでもいい。大好きなあなたの恋人になれるなら。
楠木くすのき拓斗たくとと付き合って3年ほど経った。彼女ではあるが優先順位は2番目。
私、大健おおだて彩綾さあやは、胸は普通よりは大きめだけどそれ以外はどこにでもいるような普通の女子だ。友達はいるけどそんなに多い方じゃない。どちらかといえばインドアな方かもしれない。
そんな私と比べて拓斗くんはイケメンで頭も良くてスポーツ万能。仕事も要領よく出来て、完璧な彼氏だ。ただ欠点を言わせてもらうとすればそれは、彼が彼女の私以外を優先するということだろうか。
友達も多くてノリがいいのでみんなから人気がある拓斗くんは、彼氏としてはちょっと……というのが周りの、特に女子側の意見だ。私は見る目がないとよく言われて、もっと自分を大事にしなよと女友達から言われる始末。
確かに自分でも見る目がないなとは思ったが、好きになってしまったのだ。仕方がない。恋は先に落ちた方が負けとよく聞くが、本当にその通りだと思った。
その日、私は部屋の前に立っていた。
彼の玄関のドアを開けたら、たまに、あー来たんだ、とニコッと笑う彼の笑顔が好きだったのに、玄関に現れたのは見慣れない女物の赤いパンプス。
じくじくと嫌な音を立てて喚く心臓の音を聞きながら、廊下を進んで部屋の前に立った。
ガチャリと響いたドアの向こう側には裸の男と女がいて、女がベッドの上で慌ててシーツを手繰り寄せている。
「…………っ!」
私は唇を震わせながら何か言おうとしたけれど、何を言おうとしたのかもわからずに、また口を閉じた。目の前の光景が信じられなくて、何も言葉が出てこない。そんな私の姿を見て彼はため息をついた。
「今日は俺予定あるって言ってたよね?何で来たの?」
冷たく突き放すような彼氏の言葉に目の前が一瞬で真っ暗になり、震える手を握りしめた。
「ご、ごめん、ちょっと会いたくなっちゃって……」
「俺そーゆーの嫌いなんだけど」
またため息を吐きながらベッド上に置いていた煙草を掴んでライターを探しているのかゴソゴソとし出した。
「ま、いいけどさ」
「ご、ごめん……。今日は帰るね」
テーブルの上にライターが見えて、どうしてか咄嗟に手に取って彼に渡した。彼は何も言わずに受け取ると煙草に火をつけた。
お邪魔しました……と消えそうな声で呟いて2人から背を向けた。
鼻の奥がツンとして、涙が出る直前だということを教えてくれた。
何がお邪魔しました、よ……
何言ってんの私……
友達を優先してはいたけれど、それはほぼ男友達ばっかりだったし、こんな浮気なんてしているなんて思ってもみなかった。
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