クズ男と別れたら、ヤンデレ化して執着されました

ノルジャン

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 私とセックスは月1くらいで、内容も入れて出したら終わり。拓斗くんは淡白な方だったし、最近はめっきりレスになっていて、あまりそういうのが好きじゃないと思っていたのに。好きじゃないのは私とのセックスだったのかな。

 好きだとは一度も言われたこともないけれど、彼なりに少しだけでも私のことを思ってくれていると信じていたのに。だって3年も付き合ってるんだもん。

 彼の部屋を出てしばらく歩いた後、我慢していた涙が滲み出てきた。

「………っ、ふ、ぅぅ~!」

 こんな酷い対応をされても、それでもまだ私は、いつかは見てくれる、もっと大事にしてくれるかも、と希望の一光に縋りついていた。

 好きなのだ。
 なんでこんなにも彼のことが好きなのか自分でもわからない。でもこの恋のやめ方がわからない。

 好きになってしまった。
 こんなに苦しくなるなんてわかっていたら、最初から好きになんてなりなくなかったのに。

 (辛い……)

 次々と涙が溢れてきては手で何度も拭って、目の周りがひりひりと痛み出すまでごしごしと擦り続けた。

 ただ彼の側にいさせてくれるだけで満足すべきなんだ。そう自分に言い聞かせながら涙が止まるまでどこかもよくわからない道端でじっと丸くなった。
 


 

 付き合い始めはよく約束をすっぽかされた。デートの約束をしても、ちょっとした口約束も全て無かったかのように対応される。

「あー、今友達から呼び出しあったから行ってくるわ」
 
『俺、友達優先だけどいい?』
 付き合ってと告白した時の返事通りに動く彼。

 イベントごとのクリスマスやバレンタインも友達とカラオケに行き、飲み会、ボウリング、たまに付き合いで麻雀。

 私の誕生日でさえも忘れられる。彼の誕生日ももちろん彼の友達が誕生日会を開いてくれると聞いて、私と一緒にいたのに構わず行ってしまった。

「ちょっと行ってくる」
「うん、わかった。気をつけてね」

 そんな彼に、文句も言わずに送り出す私。本当は行って欲しくなんかないのに、一緒にいて欲しいのに、嫌われたくなくて何も言えない。

 ただただ物分かりのいい彼女を装っていた。



 けれど、そんな関係ももう終わりにする。そう決意したのだ。

 浮気された時に何で決意しないんだって思われるかもしれないけど、浮気が決定打な訳じゃなかった。

 もう疲れてしまったのだ。彼に期待するのに。好きになってくれる訳でもないのに、ずっとずっと彼を想っているのに疲れてしまった。

 彼を好きでいるのに疲れてしまった。


 

 今日は私の誕生日。
 付き合ってから4回目の誕生日だ。かろうじて1回目はほぼ1日一緒にいられて、2人でケーキを食べたっけ。夜は友達から呼び出しがあって行ってしまったけど。

 それ以降は、そもそも誕生日を覚えてくれていなかった。友達との約束を事前に取り付けてしまって、何も言えなかった。

 今回は何ヶ月も前に事前に伝えて、彼の家で2人で過ごす予定を組んだ。お互いの仕事終わりの短い時間だけど、それでも、少しでも一緒にいれたら、それだけでこれからもいい思い出を胸に頑張れる。2人一緒に過ごした幸せな気持ちで、別れられる。

 そう思って待っていたけど、約束の19時になっても彼は帰ってこない。何時間かは誤差というか彼の通常運転だから、まぁ仕方ない、待とう、と半ば無理矢理自分に言い聞かせた。

 一刻、一刻と時間が過ぎていく。そして23時になってやっと彼から連絡が入った。

 ――ごめん、友達と飲んでる

 今回は大丈夫、約束は守ってくれる、私の誕生日くらい一緒に祝ってくれる。最後だから。
 
 そう期待して膨らんでいた気持ちは一気に萎み、ぐちゃぐちゃに切り刻まれて、もう2度と膨らまなくなった。

 

 よし、別れよう。

 ぐたぐだとまた自分に言い訳して別れるのを先延ばしにしないように、パチンッと自分の頬を両手叩いて気合いを入れた。痛みで溢れ出てこようとしていた涙が引っ込んだ。

 彼氏の家に置いていた荷物をリュックに詰め込み、ああ荷物すっごく少ない、これだけしか置いてなかったんだ、と自分で自分に落ち込んだ。
 
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