クズ男と別れたら、ヤンデレ化して執着されました

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「な、何言ってるの、やめて……」
「もういい！ほっといてくれ。俺のこと好きじゃないならほっといて」

　もう全部どうでもいい、と頭を抱えながら涙を垂れ流す拓斗くん。
　
　好きだよ……。まだ好き。
　でも、もう疲れたら終わりにしたいの。
　
「このまま死んだらさ、お前の心にずっと残るだろ？側にいれないならもうそれでいい。死んでずっとお前の心に残る」
「ちょっと、やめてよ……」

　やめて、また苦しくなる。
　これ以上私を苦しめないでよ……。

「ねぇ、そいつと別れて、俺と付き合ってよ。じゃないと俺死ぬから」

　今まで彼と付き合ってきて知っているが、彼は頑固でこうと決めたらテコでも動かずに有言実行する。融通が利かないところがあるのだ。

　このままここで彼と付き合うと言わなければ彼は本当に死のうとしてしまうかもしれない。

　「ねぇお願い、お願いだからっ……！」と膝に咽び泣かれて縋りつかれてしまうと、もうどうしようも出来なくなった。その場から動けなくなり、彼の顔から溢れ出る涙で膝がしっとりと濡れた。

　存在しない彼氏のせいで拓斗くんが死んでしまうかもなんて、そんな馬鹿なことは考えたくない。
　はっきりと断った方がいい事はわかっているけど……。
　
　どれくらいの時間そうしていたかわからないが、拓斗くんはずっと私の膝に縋りついたままだった。私は彼の身体に触れないようにしてずっと考えていた答えを出した。

「………………わかった」
「……付き合ってくれるの？」
「うん」
「そいつとも別れてくれる？」
「……うん、別れるから。死ぬなんてやめて」
「さあやがいてくれるなら死なない。すっげー嬉しい。今度こそ大事にするから」

　そんなに簡単に口にする、大事にするなんて言葉を今更鵜呑みにするほど勘違いできる女だと思われているのか。とりあえず今は彼が間違っても死ぬなんて気を起こさせなければいい。
　
　何故だか執着してきているけど、どうせ今だけだ。すぐに落ち着いて「別れよう」と彼から切り出してくるだろう。その時はこちらから振られてあげて、今度こそさよならだ。

　痛いぐらいにギュッと抱きしめられた彼の身体は前よりも痩せて角ばっていたことに気づいた。
　
　こんなになるまで弱ってしまうなんて……。
　
　痩せこけた身体を抱きしめて返して、こんなにも追い詰められていた彼がかわいそうに思えて胸が締め付けられた。

「ねぇ、キス、しよ？キスだけでいいから……」

　苦しそうな顔で見つめられて、キスだけならと受け入れた。震える手で優しく後頭部を支えられて、かさかさの唇がゆっくりと私の唇に落ちてきた。

　久しぶりの彼とのキスはお酒と煙草の味がして、とても苦かった。