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3-1 えっちしよ
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すぐに飽きるかと思ったが、私はまだ拓斗くんと付き合っている。
だってあれだけ友達優先で遊びに行っていたからまた同じようになると思っていたのに。拓斗くんは友達からの誘いをほとんど断っているようだった。友達と遊んできなよと言っても全く聞かない。
それから、2人で色んな所にデートに行くようになった。私の好きな食べ物や好きなことを理解して知ろうとしてくれて、行く先を選んでくれてるみたいだ。
私はガヤガヤと人の多い場所よりも、落ち着いた場所の方が好きで、2人でおうちデートや温泉旅行なんかによく行くようになった。おうちデートはほとんど私の部屋に彼がきてくれるようになった。
彼の部屋は嫌な思い出があるからあまり行きたくない、あの日のあの女と一緒にいる拓斗くんを思い出してしまうから。
あまり彼の部屋に行きたがらない私の理由に気づいたのか気づいてないのか聞いたことはなかったけど、いきなり部屋を引っ越すと言い出した拓斗くん。
「一緒に住もう」と言ってくれた。私は「一緒に」の前に「ついでに」が付くんだろうなと思った。
理由は言ってなかったけど、彼にとって一緒に住んだ方が都合がよかったんだろう。あれよあれよという間に一緒に住むことになった。
新しく住む所はちゃんと場所もお互いが職場に行きやすい場所にしてくれた。他の条件なんかも希望を聞いて叶えてくれて、家賃だけは俺が払うからとゆずってくれなかったけれど。
単純だと笑われてしまうかもしれないが、拓斗くんと一度別れたその日からアイスクリームが嫌いになった。彼の部屋に行った時、冷凍庫の奥底にはまだ私が食べ残した半分のアイスケーキが残っていた。
全てそのまま残っていて、あの後ここを訪ねたかもしれない他の女の人に食べられなくてよかった、と思う反面、あの日むしゃくしゃして暴力的なまでに貪り食べて、気持ちも悪くなったし、実はあの後お腹を壊した。散々な目にあったのでもうアイスは食べたくない。
そんな事情は言わなかったけど、私がアイスが嫌いになったとわかったら、あんなに好きだったのに彼もアイスは食べなくなってしまった。私なんかに合わせて、好きな物を我慢させているのが申し訳なかった。
私が「拓斗くんアイス好きでしょ?食べていいよ」と言っても、彼は頑固にも「いい、いらない」と絶対に食べなかった。一度自分の中で決めたことはやり通す芯の強い所がある。こんなところでも発揮しなくてもとは思ったが。
人が変わったように尽くして気を遣って優しくなった。『大事にする』と誓ってくれた言葉を信じたわけじゃなかった。信じたわけじゃなかったのに、こんなにも態度が行動が変わるなんて思わなかった。
彼が私に優しく接するたびに、勘違いしそうになる。彼が私のことを好きなんじゃないかって。彼が私と付き合っているのは、ただ単に私に振られたのが気に食わなかったから、今度は彼の方から別れを切り出すために私とまた付き合っただけだ。私から振られるのが会社を休むくらい彼のプライドを傷つけて、あんな状態まで落ち込むとは思わなかったけど。
「好きだ、彩綾だけだよ」
そんな風に愛を囁いてくれるようになった。好きだと言われるたびに私の胸はドクドクと心臓が飛び出るんじゃないかと思うくらいに激しく高鳴り出す。本当に私のことを好きでいてくれるって思っちゃうからやめて欲しい。「私も好き」だなんて口走ってしまいそうになる。
そもそも彼のことを嫌いになったから別れた訳じゃない。ずっとずっと好きなのは今でも変わらない。
けれど辛くなってきた。彼から振られるために、別れを切り出されるまで待つつもりだったけど、彼と一緒にいるうちに、笑顔が溢れ、愛されてる気分になって、彼のことをもっと好きになってしまった。
好きになったらなった分、振られた時を考えるのが怖い。
彼から別れようとする気配がないので、もういっそこちらから振られにいこう、そう考えた私は行動に出た。
だってあれだけ友達優先で遊びに行っていたからまた同じようになると思っていたのに。拓斗くんは友達からの誘いをほとんど断っているようだった。友達と遊んできなよと言っても全く聞かない。
それから、2人で色んな所にデートに行くようになった。私の好きな食べ物や好きなことを理解して知ろうとしてくれて、行く先を選んでくれてるみたいだ。
私はガヤガヤと人の多い場所よりも、落ち着いた場所の方が好きで、2人でおうちデートや温泉旅行なんかによく行くようになった。おうちデートはほとんど私の部屋に彼がきてくれるようになった。
彼の部屋は嫌な思い出があるからあまり行きたくない、あの日のあの女と一緒にいる拓斗くんを思い出してしまうから。
あまり彼の部屋に行きたがらない私の理由に気づいたのか気づいてないのか聞いたことはなかったけど、いきなり部屋を引っ越すと言い出した拓斗くん。
「一緒に住もう」と言ってくれた。私は「一緒に」の前に「ついでに」が付くんだろうなと思った。
理由は言ってなかったけど、彼にとって一緒に住んだ方が都合がよかったんだろう。あれよあれよという間に一緒に住むことになった。
新しく住む所はちゃんと場所もお互いが職場に行きやすい場所にしてくれた。他の条件なんかも希望を聞いて叶えてくれて、家賃だけは俺が払うからとゆずってくれなかったけれど。
単純だと笑われてしまうかもしれないが、拓斗くんと一度別れたその日からアイスクリームが嫌いになった。彼の部屋に行った時、冷凍庫の奥底にはまだ私が食べ残した半分のアイスケーキが残っていた。
全てそのまま残っていて、あの後ここを訪ねたかもしれない他の女の人に食べられなくてよかった、と思う反面、あの日むしゃくしゃして暴力的なまでに貪り食べて、気持ちも悪くなったし、実はあの後お腹を壊した。散々な目にあったのでもうアイスは食べたくない。
そんな事情は言わなかったけど、私がアイスが嫌いになったとわかったら、あんなに好きだったのに彼もアイスは食べなくなってしまった。私なんかに合わせて、好きな物を我慢させているのが申し訳なかった。
私が「拓斗くんアイス好きでしょ?食べていいよ」と言っても、彼は頑固にも「いい、いらない」と絶対に食べなかった。一度自分の中で決めたことはやり通す芯の強い所がある。こんなところでも発揮しなくてもとは思ったが。
人が変わったように尽くして気を遣って優しくなった。『大事にする』と誓ってくれた言葉を信じたわけじゃなかった。信じたわけじゃなかったのに、こんなにも態度が行動が変わるなんて思わなかった。
彼が私に優しく接するたびに、勘違いしそうになる。彼が私のことを好きなんじゃないかって。彼が私と付き合っているのは、ただ単に私に振られたのが気に食わなかったから、今度は彼の方から別れを切り出すために私とまた付き合っただけだ。私から振られるのが会社を休むくらい彼のプライドを傷つけて、あんな状態まで落ち込むとは思わなかったけど。
「好きだ、彩綾だけだよ」
そんな風に愛を囁いてくれるようになった。好きだと言われるたびに私の胸はドクドクと心臓が飛び出るんじゃないかと思うくらいに激しく高鳴り出す。本当に私のことを好きでいてくれるって思っちゃうからやめて欲しい。「私も好き」だなんて口走ってしまいそうになる。
そもそも彼のことを嫌いになったから別れた訳じゃない。ずっとずっと好きなのは今でも変わらない。
けれど辛くなってきた。彼から振られるために、別れを切り出されるまで待つつもりだったけど、彼と一緒にいるうちに、笑顔が溢れ、愛されてる気分になって、彼のことをもっと好きになってしまった。
好きになったらなった分、振られた時を考えるのが怖い。
彼から別れようとする気配がないので、もういっそこちらから振られにいこう、そう考えた私は行動に出た。
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