25 / 36
FILE・#7 憤り&不愉快がいっぱい
25
しおりを挟む3
カァーカァー……カァー……。
烏の鳴き声が、うら寂しい墓地に喧しくも不気味な味わいを添えている。
真新しいものもあれば、長年風雨に曝され続けてきたであろう苔むしたものもある。いったい何基くらいあるのだろう、辺りには墓石や卒塔婆が所狭しと並んでいた。
涼介の妖怪のお兄ちゃん姿が、場所柄にあまりにも相応しすぎたのだろう。
向かいからやって来たカップルが、露骨にギョッとした表情をした。
二人とも、涼介と同じくらいの年頃だ。
男の方は、胸元に一眼レフのカメラをぶら下げている。
(なんだろう……この人たち)
美咲は、涼介の隣でちょこっと首を傾げた。
夕陽の放つ光線が、墨染寺本堂裏の墓地に降り注いでいる。
じきに逢魔が時もやって来るだろう。
少なくとも、人が好んで訪れるような場所でも時間帯でもない。
……何をしているんだろう。
目の前の若いカップルは、どう見てもお参りにきている様子ではなかった。
まさかデート中だとも思えない。
一眼レフのカメラなど持ち出して、こんな場所でいったい何を撮ろうというのか。
思い出の1枚……というには、この場所はあまりにも最低最悪のロケーションだ。
(……変な人たち)
たっぷりの好奇心と共にそう思ったけれど、美咲はすぐに苦笑する。
(それは、あたしたちも同じかあ……)
夕暮れの墓地を歩いているカップルという意味では、こちらも向こうと一緒だ。
あちらの二人も、自分と同じようなことを思っているに違いない。
美咲はもたれ掛かるようにして、涼介の腕に自分の腕を絡ませていた。
涼介の個性的な風体に、美咲の方は学校帰りのセーラー服姿。
夕暮れ時の寂しげな墓地で、寄り添い歩く妖怪男と女子高生の二人連れ……。
あちらの二人の目には、さぞかし奇怪なカップルに映っていることだろう。
ちらちらと、何かを探るように女性の視線が涼介に向けられている。
遠慮気味の女性に対し、男の方はあからさまに涼介を見つめていた。
その視線が隣の美咲に移る。
目と目とが合った。美咲はにっこり微笑んだ。
微笑に意味などない。ただ単に、「こんにちは」の挨拶代わりくらいのものだった。
なのに、狼狽したように、男が慌てて美咲から目を逸らす。
男には、「にっこり」が口裂け女に代表される「にやり」にでも見えたのかもしれない。
男の反応に、美咲はムッとした。
(なによそれ! 人のことを物の怪か妖怪みたいに!)
擦れ違いざまに、美咲は男の方をむすっとした顔で睨みつけた。
それでも収まらず、くるりと身体の向きを変え、去っていく男の背中に「あっかんべー」をくれてやる。
その時、間が良くか悪くか、男の方も後ろを振り返った。
男の眉間に皺が寄る。
相手の顰めっ面に、とりあえず美咲は溜飲を下げる。
「フン、だ!」
さっさと正面に向き直る。
背後でカメラ男がどんな顔をしていても、もう知ったことではない。
目的の墓は、あと数ブロック先だった。
会いに来た知人の姿もすでに見えている。こちらに向けて手を挙げている。
どうやら、美咲の「あっかんべー」が見えていたらしい。
知人、神谷探偵事務所・別働隊元締め、西河晋次郎はおかしそうに笑っていた。
「晋さん!」
と、美咲は、警官姿の享年48歳の幽霊に手を振り返した。
0
あなたにおすすめの小説
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
あまりさんののっぴきならない事情
菱沼あゆ
キャラ文芸
強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。
充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。
「何故、こんなところに居る? 南条あまり」
「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」
「それ、俺だろ」
そーですね……。
カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
子持ち愛妻家の極悪上司にアタックしてもいいですか?天国の奥様には申し訳ないですが
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
胸がきゅんと、甘い音を立てる。
相手は、妻子持ちだというのに。
入社して配属一日目。
直属の上司で教育係だって紹介された人は、酷く人相の悪い人でした。
中高大と女子校育ちで男性慣れしてない私にとって、それだけでも恐怖なのに。
彼はちかよんなオーラバリバリで、仕事の質問すらする隙がない。
それでもどうにか仕事をこなしていたがとうとう、大きなミスを犯してしまう。
「俺が、悪いのか」
人のせいにするのかと叱責されるのかと思った。
けれど。
「俺の顔と、理由があって避け気味なせいだよな、すまん」
あやまってくれた彼に、胸がきゅんと甘い音を立てる。
相手は、妻子持ちなのに。
星谷桐子
22歳
システム開発会社営業事務
中高大女子校育ちで、ちょっぴり男性が苦手
自分の非はちゃんと認める子
頑張り屋さん
×
京塚大介
32歳
システム開発会社営業事務 主任
ツンツンあたまで目つき悪い
態度もでかくて人に恐怖を与えがち
5歳の娘にデレデレな愛妻家
いまでも亡くなった妻を愛している
私は京塚主任を、好きになってもいいのかな……?
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる