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雨の向こう側へ ⑪
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《Shou side》
雨の土曜日、11:00__。
木曜日から梅雨入りしたようで、止むことを忘れたかのように降り続いている。
梅雨らしい小雨の景色を眺めながら、水族館のある駅の改札前で悠里さんを待つ。
昨日から緊張してきて、夜はなかなか寝つけず、目の下にクマが出来やすいから心配だったけど、今朝鏡を覗いて一安心した。
家の最寄り駅から6駅先にあるこの駅に、初めて降り立った。
15分早めに到着したのも、少しでも場馴れしたかったからでもあり、悠里さんより後に着くよりはドキドキしないかなと思ったからで。
それにしても、生憎の雨のはずなのに、カップルが多い気がするのは気のせい?
水族館があるのは知っていたけど、駅ビルも大きいし、他にも何かデートスポットがあるんだろうか。
思っていた以上に華やかな駅で、ひとりじゃ心細くなってきたその時だった。
『紫陽くん、お待たせっ。』
青と白のストライプのシャツに身を包んだ悠里さんが、不安を断ち切るように無邪気に僕の目の前に現れた。
太陽みたいに暖かい笑顔。
そんな言葉が不意に浮かんで目を逸らす。
『こ…こんにちは。』
『こんにちは。
待たせちゃったかな?』
『いえっ、早めに着いたので…。』
『そっか。
紫陽くんの私服姿、新鮮だな。
ジムのトレーニングウェアと、ジム帰りに一度だけ見たのと…俺が貸した寝巻きだけだったかな。』
『そ、そうでしたっけ…。』
『あ、寝巻きは俺のだから私服じゃないかっ、ははっ。』
『ぁ…ですね。』
『スゲー似合ってる。
シンプルなのに、美人さんだしスタイルもいいから映えるんだろなぁ。』
『びっ…。』
『さっ、行こっ。』
美人って、この前も言われたけど。
そのままの意味に取れば、僕は少しも美しくない。
本当の僕なんて、容姿だけじゃ何も解らないのに。
会って早々、混乱させてくる悠里さんの後を慌てて追うと、振り向いて右腕を伸ばし、僕の左腕を優しく掴んできた。
『人、多いから。
はぐれないようにね。』
『は、はい…。』
これじゃ、心臓が幾つあっても足りない。
今日は悠里さんのことをもっと知りたいと思っているし、僕のことも知ってもらいたいと思っているけど。
思っているだけで、行動に移せる余裕が無さすぎる。
駅の屋根が途切れて、外へ出る人達が立て続けに傘の花を咲かせていく。
僕達も差すために、悠里さんの手が腕から離れ、ふたり同時に傘を開き、並んで歩を進めた。
『お、紫陽くんの傘、お洒落だね。』
『雨が好きなんです。
だから…傘には少し拘ろうかなと思って。』
『へぇ、そうなんだ。
雨が好きって言う人、初めて出会った。』
『珍しいですよね…。
雨の中をひとりで散歩するのも、気分転換になるんです。』
『なるほどね。
聞いてたら、俺もやってみようかなって興味が湧いてきた。』
『ふふ…是非。』
『でもさ。』
『ん?』
『こうして雨の中をふたりで歩く方が、俺は好きかも。』
『……。』
悠里さんが発する言葉のひとつひとつに敏感に反応して、自分の言葉を見失ってしまう。
彼に対して、【友達】ではなく恋愛感情を抱いていると自認してしている以上、仕方のないことではあるけど。
変な期待だけはしたくない。
ていうか、しちゃいけない。
『ふたりして傘持ってるから、この距離がちょっともどかしいけど。』
『もど、かしい…?』
『ほら、人が多かったり雨音で声が通りにくいじゃん?
その分、声を張り上げないといけないし。』
『あぁ…確かにふたりだとそうですよね。』
『相合傘とか、憧れたよなぁ…若い頃。』
相合傘…。
縁がない単語だから、思い浮かべるのに数秒時間がかかった。
浮かんだ途端、それは恋人同士がする行為だと認識して、興味本位が勝って聞いてしまっていた。
『相合傘…したこと、ありますか?』
『んー…無いなぁ。』
『えっ?』
『あれ?意外だった?』
『はい。
てっきり何度もあるのかと。』
『無い無い。
俺、いざとなると照れちゃうから。』
『それも意外です。』
『嘘っ。』
『ほんとです。
凄く積極的な人だと思ってました…。』
『あははっ、ギャップだらけなのかな、俺。
恋愛経験も少ないんだよ。』
全くこの人は…。
無自覚に人を惹きつけて、好意を寄せられても気づかないに違いない。
僕も惹きつけられた内のひとりなのかと思うと、やっぱり友達以上の存在になるのは無謀なんだと思い知らされる。
ゲイの男よりもノンケの女性。
偏見が無くたって、世の中はそれが自然の摂理になってしまっているのだから。
ゲイがどう足掻いたって、到底敵わない。
『おぉ、結構大きな水族館だね。』
『はい…立派です。』
『テンション上がるね。』
『はい…ワクワクします。』
『ふふ…良かった。』
『……。』
『行こうかっ。』
『はいっ。』
こうして一緒に居られるだけでいい。
勝手に期待したり望んじゃいけない。
何度も繰り返し唱えて、今という時間をしっかりと記憶に刻みたい。
傘を閉じて、何もかもが初めての世界への入り口をふたりでくぐり抜けた。
____
『どうして水族館を選んだの?』
想像していたよりもずっと面白くて、暗がりの中で泳ぐ魚達に夢中になる僕に、斜め後ろから悠里さんの声に問われた。
『一度も来たことがなかったんです…。』
『えっ、そうだったんだ。』
『はい…凄く興味はあったんですけど、たまたま機会がなかったというか。』
『へぇ…じゃ、紫陽くんの初めてを一緒に体験出来てるんだ、俺。』
『えっと…そう、なりますね。』
『やった♪
なんかスゲー嬉しい。』
『僕の方こそ、一緒に来てくれてありがとうございます。
こんなに楽しい場所だなんて、驚きました。』
『うん、俺も楽しい。
あ、この先、大水槽があるみたい。
ヤバっ、ワクワクするーっ♪』
『ふふっ…。』
ほんと、子供みたい。
だけど、それはほんの一部であって、僕よりずっと大人だ。
今までは、短時間だけの悠里さんを見てきたけど、こうしてじっくりと一緒に居ると、子供みたいに振舞いながら包み込んでくれる感覚になる。
案内表示通りに進むと、徐々に光が差し込んできて、まるでタイムマシーンに乗った先の世界のように、大きな水槽が現れて。
あまりの大きさに息を飲み、立ち止まってしまった僕の背中に、悠里さんの手がそっと触れ、水槽の中心まで誘ってくれる。
『大きいね。』
『はい…すごい…。』
『海の中に居るみたいだ。』
『本当に…。』
『この中でどの生き物が好き?』
『あの、エイ…かな。』
『あー、いいよねぇ。
どんなところが好き?』
『あの白いお腹のところが、笑った顔に見えて可愛いから…です。』
『解るっ。
ゆるキャラみたいだよね。』
『なんか…悠里さんに似てます。』
『えっ?俺っ?』
『ぁ…はい。』
『俺、ゆるキャラっぽい?』
『すみません…でも、そうかも。』
『あっは!』
少し砕けた会話にも、悠里さんのお陰で慣れてきて。
楽しくて、嬉しくて、もっと話したくなる。
『悠里さんは、どの子が好きですか?』
『俺はね~、あの子っ。』
『どれ、ですか?』
『ウミガメさん。』
『あー、僕も大好きです。』
『顔もキリッとしてるし、泳ぎも優雅だし。
あ…。』
『??』
『紫陽くんに似てる。』
『……。』
慣れてくると同時に、段々と悠里さんの言葉の真意を知りたくて、もどかしくなってきている。
僕が一方的に好意を寄せているせいで、どうしても僕にも好意的な意味で発しているんじゃないかと受け止めてしまう。
【友達】になるのも、相手のことが【好き】じゃなきゃ不可能で。
でも、悠里さんが僕を【好き】だとしても、それは【友達】としてで。
黙る僕の肩を叩き、大水槽の後ろにある階段状のベンチの一角に導かれる。
水槽のガラスの近くから見るのも圧巻だけど、こうして全体を見渡すと、まるで映画を観ているかのようだ。
『魚の群れって、沢山の家族が団結して泳いでるのかなぁ。』
『そうかもしれませんね。』
『俺さ、仲のいい家族にちょっと憧れてた時があって。』
『……?』
『うち、両親が亡くなってるって話はしたよね。』
『はい。』
『高校の時に父親は脳幹出血で。
大学の時に母親は…所謂、自殺だった。』
『ぇ…。』
突然の告白に、血の気が急速に引いていくのを感じる。
大水槽の中で、沢山の魚の群れが平和にキラキラと泳いでいる姿を見つめながら、そのまま淡々と悠里さんの【影】を語ってくれた。
悠里さんのお父さんは、仕事もせずに酒に溺れ、悠里さんとお母さんに手を上げる時もあったこと。
そのせいで、お母さんは女手ひとつで悠里さんを育てながらクリーニング屋を切り盛りしていたこと。
お父さんが亡くなって、お母さんが開放されると安堵して、葬式で嬉し泣きをしたこと。
それなのに、お母さんは持病の術後に退院して2日後の真夜中に、置き手紙を残して家を抜け出し、お父さんを追って外で亡くなっていたこと。
ひとつひとつ耳にして、ひとつひとつ頭に思い浮かべて、ひとつひとつ噛み締める毎に、涙が溢れそうになるほど涙袋に溜まってきて。
溢れ落ちそうになる寸前に、バッグからハンカチを急いで取り出し拭った。
『ごめんね…せっかくの場所なのに、こんな話。』
『ぃえ…。』
『俺も、まさかこのタイミングで打ち明けるとは思わなかった。』
『いいんです…。』
『泣かせてごめんね。
でも、泣いてくれてありがとね。』
『僕こそすみません…泣いちゃって。』
『今日は、俺のことを少し知ってもらいたいって気持ちがあってさ。
気持ちよさそうに泳ぐ魚達を見ていたら、家族の話が先に浮かんでしまった。』
『話してくれて、ありがとうございます…。
悠里さん、辛かったですね…。』
『いや…。
仁が全てを知っていて傍に居てくれたからね。
それに、商店街の人達やお客様も支えてくれて今があるから。』
僕の存在なんて全く知り得なかった頃の悠里さんが、沢山存在する。
そこに僕が入り込むことは、夢物語でしか出来ない。
それでも、悠里さんを支える人達のひとりになりたいと思うのは軽率だろうか。
『僕は、恵まれてるのかもしれないですね…。
今まで、僕ばかりが辛い想いをしてるんだと思いながら生きてきたけど、そうじゃなかった…。』
『紫陽くんも、セクシャルのことで沢山辛い経験をしてきてると思う。
人それぞれ、苦難や困難に遭遇する機会や度合いは違うし、比べちゃいけないんだけどさ。
でも、辛い経験をするのって悪いことばかりじゃないと思うんだよね。』
『……?』
『相手の気持ちに寄り添える力は、辛い経験をしてきていない人達よりずっとある。』
『悠里さん…。』
『だから、紫陽くんもさ。
辛い時や苦しい時、俺に話してね。
何らかの力にはなれると思うから。』
『はい…ありがとうございます。』
やっぱり、読みは当たっていたんだ。
そして悠里さん自身も、辛い経験をしてきて人に寄り添える力があると自覚していて。
僕も、そう在りたい。
自分を卑下したり憐れだと思って、周りの人をシャットアウトするんじゃなくて、寄り添える力に変えていけたら。
『僕…。』
『ん?』
『悠里さんに出会えて、本当に良かったです…。
ジムで話し掛けてくれなかったら、この時間は無かった…。』
『紫陽くん。』
『僕はゲイです。
だけど、悠里さんともっと仲良くなりたいと思ってます…。』
ベンチから立ち上がった悠里さんは、ニンマリという表現がぴったりな笑顔で僕を見下ろす。
眩しくて目を逸らしそうになるけど、逃げずにその光を見つめ返した。
『ありがとう。めちゃくちゃ嬉しい。』
『僕もです…。』
『手、繋いでみる?』
『えっ??』
『いや、俺まだ良く解ってないからさ。
男同士で手を繋ぐ感覚を知りたい。』
『えっ…と…でも、手を繋ぐ行為は、その…。
ゲイの世界でも、友達同士ではしないんですけど…。』
『ダメ?』
『ぃ、いや、ダメでは…ないですけど…。』
『じゃぁ…ほいっ。』
いとも簡単に僕の左手をすくい上げ、悠里さんの手中に収まった。
同じような行為なのに、握手とは全く違う。
向かい合ってする握手と、隣り合ってする手繋ぎの違いに愕然としてしまい、とてもじゃないけど顔を上げられない。
『うん、なんか…しっくりくる。』
『……。』
『このまま歩いてみたいけど、紫陽くんはどう?
無理強いはしないよ。』
『ぃ…いいですけど。』
『ありがと。
そろそろイルカのショーが始まるから、そこまでね。』
『はい…。』
眩しすぎるんだよ…。
少しは放つ光を加減してほしいとさえ思うけど。
どういうつもりなんだろう。
ゲイに対して何か勘違いしているのかと思ったけど、そうでもなさそうで。
何より僕自身も、繋ぐ手に動揺はしていても、違和感を感じていない。
通り過ぎる人達の視線が気にはなるけど、こうして悠里さんと手を繋いでいる時間を終わらせたくはなくて。
今だけは魔法がかかって、僕達は恋人なんだと勝手に暗示をかけ、恥ずかしさから逃れようと必死だった。
____
『あー楽しかったっ!』
水族館の外へ出るや否や、腕を上げて伸びをする悠里さんは、やっぱり背が高い。
佐々木から聞いた話では、身長は183cmだったっけ。
僕とちょうど10cm違いか…。
バランス的にはいい…のかな。
て、何を考えているんだ。
『紫陽くん、リフレッシュ出来た?』
『はい…とっても。』
『よかった。また別の水族館にも行けるといいね。』
『ぁ…そうですね。』
次を期待してもいい台詞を聞けただけで、こんなに安心するんだな。
コンビニで鉢合わせした後に、悠里さんを避けていた自分が信じられない。
『あれ…?』
ふと声を上げた悠里さんの視線の先を見ると、後にした水族館の出入口に、小さなお子さんを連れた母親らしき人が佇んでいて。
更に目を凝らすと、どうやら傘が無くて外に出られないらしい。
『紫陽くん。』
『はい。』
『相合傘、してくれる?』
『えっ?』
『俺の初めて、叶えて。』
『ぇ…あ、ちょっと…。』
僕の返事は聞かずに、母子の元へ小走りに向かった悠里さんを、あえて走らずにゆっくりと追う。
自分の傘を閉じて、何やらその母親らしき女性に話をする悠里さんを、まだ2歳か3歳くらいの子供が眉間に皺を寄せながらじっと見上げていて。
母親が笑顔になってペコペコと頭を下げるのを確認すると、その子の顔も同じ笑顔になって、しゃがんだ悠里さんが差し出す傘を嬉しそうに受け取った。
絵になる光景が、ここにある。
夢のような世界が、ここにある。
『お待たせ。』
『悠里さん…。』
『ごめんね、相合傘、無理しなくていいから。
人目もあるし。』
『何行ってるんですか…入ってください。』
『ありがとう…俺でよければ、傘持つよ。』
『ぃ、いいんですか?』
『もちろん。
では、素敵な傘にお邪魔します。』
雨模様の中を、悠里さんと相合傘。
優しくて、温かくて、愛しい空間。
悠里さんと【友達】になれたことを、心から誇りに想う。
親愛なる【友達】に。
________
《Yuuri side》
『んで?
どうだったよ、紫陽くんとのおデートは。』
最寄り駅から、霧雨の中を濡れながら帰還した俺に、店頭に出ていた仁がフロアでタオルを手渡してくれた。
今朝、出掛ける前から【デートだデートだ】と茶化すように言ってきたけど、仁なりの俺を気遣う行動だってことも解っていたから。
俺の顔を見るなり眉を下げてくれて、まるで親のようだ。
『めちゃくちゃ楽しかった。』
『それだけかーい。』
『いや…なんつーかさ。』
『うん。』
『手、繋いでみたんだよね。』
『はっ??』
ふわふわのタオルで髪を拭く俺とは対照的に、仁の動きが微動だにしなくなった。
片手を仁の目の前で振ると、生き返ったように目覚めて生唾を飲み込む一連の流れ…流石である。
『どうして、そうなった?』
『俺が繋ぎたいって言った。』
『お前が?なんで?』
『どんな感覚になるのかなと思って。』
『男と手を繋ぐ感覚?』
『んー、そうじゃなくて。
紫陽くんと手を繋ぐ感覚を知りたかった。』
『ほぉぅ…。』
顎髭を撫で、斜め上に黒目を持ち上げ、今度は名探偵に変身したようだ。
タオルを頭に被ったまま、ポケットに手を突っ込んで回答を待つ俺に、片方の口角を上げてニヤリと微笑みかけてきた。
『それはよぉ、悠里。』
『うん。』
『お前、紫陽くんに恋してるだろ。』
『え?』
『間違いない。
いいか?相手が男とか女とか考えるな。
そして、今日の紫陽くんとの手繋ぎを思い出せ。』
『うん…。』
『どうだ、どんな気持ちだ。』
どんな気持ち…。
あの時は【しっくりくる】と感じて、そのまま伝えたけど。
目を閉じて、右手に残る紫陽くんの温もりを呼び起こす。
じんわりと温かくなってきて、少しだけ細くてしなやかな手を包み込めるこの感覚に、俺は…。
『幸せ。』
『……。』
『ずっと、繋いでいたい。』
『ぉ……っ。』
『愛しい…守りたい…一緒に居たい…それから…』
『ちょ、ちょちょちょっ!
もういいっ、大丈夫っ!』
『ほい。』
『その感覚が、紫陽くんに惚れてるっていうんだよ。』
『そう…なのかな。』
『俺に対して【愛しい】とか【守りたい】とか思うか?
そもそも、手を繋ぎたいと思うか?』
『んー…思わないな。』
『素直で真っ直ぐがお前のいい所だろ?
そんなに紫陽くんのことを想ってるなら、その想いが何なのか、しっかり向き合わないと。』
『うん…そう、だよな。』
『紫陽くんもきっと、セクシャルのことが引っ掛かって、お前に踏み込めないところもあるんだろう。』
『今日、一緒に居てさ。
だいぶ素直に話をしてくれたし、聞いてくれたんだよね。
俺と出会えて良かったとも言ってくれて。』
『それは大きな成果だな。』
俺が、紫陽くんに惚れている。
仁に言われて、ピシャっと言い当てられたような気になったのか、じわじわと照れ臭さが湧いてくる。
男だから女だから、歳上だから歳下だから。
そんな括りには収まらないところで、俺は紫陽くんに惚れているということ。
もう恋愛はしないと決めていたはずなのに、心は勝手に動いてしまうものなのか。
『仁は?
若菜ちゃんにプロポーズしたのか?』
『明日するよ。』
『おっ!マジかぁ。』
『まぁ、期待せずに一生懸命仕事しててくれたまえ。』
『あはっ。
働きながら応援してる。』
『おぅ、ありがとよ。』
__
浴室に直行して、シャワーのお湯を強めに出して頭から被る。
『恋心…か。』
元カノを傷つけた自覚と、両親の偏愛の光景がフラッシュバックする。
それでも。
これから先の未来を、紫陽くんと共に生きていけるならどんなにいいだろうと、想い描かずにはいられなかった。
✂ーーーーーーーーーーー✂
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